と、言い切っちゃうのも語弊がありますが、ほんと、それぐらいの勢いなんです。

5/31に公開が迫る『ラスベガスをぶっつぶせ』。初登場&2週連続1位の全米大ヒット作です。

これに主演してるのが彼、ジム・スタージェス。ほとんどの日本人が聞いたこともない俳優だと思います。イギリス人で、アメリカ映画に進出して出演作もまだほとんどありませんから、たぶん米本国でもあまり知られてないんじゃないでしょうか。

そんな彼が先日、プロモーションのため来日したので、インタビューしてきました。すでに当チャンネルの放送でその模様の一部が流れてますが、ここで完全版をテキストに起こして収録します。

まず作品について。

「この作品は楽しいジェットコースターのような映画だけど、それだけじゃなくて、青春映画でもあり、主人公の自分探しの物語でもある。主人公たちは、平日は普通に学生生活を送っている、どっちかと言えばガリ勉系な連中なんだけど、週末ともなるとラスベガスで大金を賭けて、VIP待遇を受けてる。実際にベガスから何百万ドルも巻き上げてるんだ。そして、それが実話だってことがポイントだね」

数学がむちゃくちゃ得意な人は、ブラック・ジャックというギャンブルでカードが読める。で、スタージェス演じる主人公は数学の超天才で、同じような大学の天才たちとチームを組んでベガスで荒稼ぎする、ってストーリーです。

この行為って、イカサマじゃないんだけど限りなく黒に近いグレーで、万一バレるとカジノの用心棒にボコられる、そのスリリングなハラハラ感や、貧乏学生が豪遊セレブに大変身、みたいな展開が「ジェットコースターのよう」ということでしょう。

自分探しってのは、この半イカサマ行為がもともとは進学資金集めという目的のための手段に過ぎなかったはずなのに、あまりにも天文学的な額を稼げちゃうので、次第に手段が目的化してくるんですね。人まで変わってきちゃう。初心を貫いて進学しようか、それともこのままリッチなイカサマ師の道を突っ走るか、みたいな躊躇がドラマとして描かれてるので、ちゃんとした青春映画としても立派に成立してる娯楽作品に仕上がってます。

なみにご本人は、数学とかギャンブルとかってどうなんですか?

「数学は嫌いじゃないけど得意でもない。もし得意だったら今頃ベガスで荒稼ぎしてるって。ギャンブルもある程度は楽しむけどハマるってことはない。撮影が終わってからは一度もやってないよ。撮影中はずいぶんやったけどね」

とのこと。まぁギャンブルやるようなタイプには見えないけど、彼はどっからどう見ても文化部系な雰囲気なので、頭良さそうには見えますね。本作で大儲けする前のアキバ系ガリ勉スタイルも板に付いてて、こういう役をすんなり演じられるイケメンってのも珍しいです。

なんとなくアキバ系を演じてる時の方が、演じるのがラクそうに見えましたけど?

「どっちがラクとは言えないね。どっちも僕自身とはかけ離れてるから。役作りは環境が助けてくれたよ。学生の格好で大学の構内で演技してる時は自然と芝居もそうなったし、ベガスで高価なアルマーニのスーツでキメてる時は、そういう気持ちに入りやすかった」

アメリカ版アキバ系も演じられる文化部風イケメン俳優。この映画を大ヒットに導き、早くもマネー・メイキング・スターの仲間入りか?これから特に注目しておいた方がいいハリウッド・スターであることは間違いないです。

ところで、この映画の試写に行く前、「ラスベガスを舞台に息詰まるポーカーの戦いが繰り広げられる」的な内容の、さるギャンブル映画を見たんです。有名ハリウッド俳優が出ている、そこそこ近年に公開されたこの映画が、年に1本あるかないか級につまらなかった…。調べたら興収的にも大コケしたそうです。
ちょっと前にそういう痛い思いをしてたので、この『ラスベガスをぶっつぶせ』も、かなり警戒してマスコミ試写を見に行きました。

何を警戒してたかと申しますと、ギャンブルの描かれ方です。

現在、ワタクシ家にトランプってものがありません。トランプは子供の頃にババ抜きと神経衰弱をやったぐらいで、それすら今はもうルール忘れました。ポーカーとかブラック・ジャックなんて一切ルール知りません。って言うか競馬パチンコなどギャンブルそのものをやりません。そのヒマがあれば映画を見ます。つまり、爪の先ほども興味関心が無いのです。

そういう人間でも楽しめるような映画作りしてるか?トランプのルールに精通してる人なんて10人中1人ぐらいだろうから、残り9人のこともちゃんと考えて作れよ?って言うかむしろ9人の方が数的に言って重要だろ。という観点から、徹底的にシビアに採点してやろうと、構えて見に行ったのです。

例の大コケしたギャンブル映画ってのは、そこらへんがまるっきりなってなかった!DVDの映像特典で、監督が「ギャンブルを知らない人でも楽しめる映画になったと思うよ」としゃあしゃあと自画自賛してましたけど、いや、なってねーから!話に全然ついてけません。

『ラスベガスをぶっつぶせ』は、この点が実にお見事。これから本作を見ようという人で、しかもギャンブルをやらない人は、どうやって何も知らない自分をこの映画が楽しませてくれるのか、ぜひ映画の作りを意識しながらご覧ください。1人でも多くのお客に、より高い満足度を与える、という崇高なる使命を担ったエンターテインメント映画の、これぞ正しい作られ方です。いやはや感服つかまつりました!

最後に、あともう1本、ジム・スタージェス主演のヒット作が日本で公開されます。それについては続きの(2)で。■