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コラム・ニュース一覧
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COLUMN/コラム2015.11.22
話題の食人族映画『グリーン・インフェルノ』のイーライ・ロスが原案・製作・脚本・主演したディザスター・パニック・ホラー〜『アフターショック』〜
これはルッジェロ・デオダート監督の『食人族』(81年)やウンベルト・レンツィ監督の『人喰族』(84年)等の人喰い族を題材にしたモンド映画をリスペクトした作品である。とりわけ前者の『食人族』は、POV(主観映像)によるファウンドフッテージ形式をとったモキュメンタリー(疑似ドキュメント)作品にも関わらず、日本では衝撃のドキュメンタリーという悪ノリ宣伝にのって劇場公開され、真実か?作り物か?の議論を呼んで異例の大ヒット! ちなみにモンド映画とは、観客の見世物的な好奇心をそそらせるような猟奇系ドキュメンタリー、もしくはモキュメンタリーのことを指し、モンドはグァルティエロ・ヤコペッティ監督のドキュメンタリー映画『世界残酷物語』(62年)の原題“MONDO CANE”に由来する。 でも『グリーン・インフェルノ』は、ファウンドフッテージ物でもモキュメンタリーでもなく、モンド映画が持ついかがわしさは多少薄れているものの、生々しい残虐描写を盛り込みつつ、現代的アプローチで食人族映画を復活させた。ジャングルの森林破壊によって先住民のヤハ族が絶滅に瀕すると考えた過激な学生グループが小型飛行機に乗るが、熱帯雨林に墜落する。生き残った学生数人はヤハ族に捕われてしまい、一人ずつ喰われていった。ヤハ族は食人族だったのだ……。 生きた人間からえぐった眼球を生のまま食べたり(オエッ)、生きた人間の四肢をナタで切断して肉塊を燻製にして(笑)食べるなど、ロス監督らしいエゲツない描写に溢れている。 血生臭い『グリーン・インフェルノ』の脚本を務めたロスとギレルモ・アモエドは、その前にディザスター・パニック・ホラー『アフターショック』(12年)の脚本で組んでいる。 ロスは、ある映画祭で上映されたニコラス・ロペス監督の作品を観てとても気に入り、いつか一緒に組もうと約束した。そしてロペス監督がチリ地震での体験を基にした作品を作りたいと言うと、ロスも意気投合し製作が決定。ロペス監督の盟友ともいえる脚本家ギレルモ・アモエドも参加し、ロスは製作と共同脚本を務め、俳優として出演もした。 チリを観光旅行する男友だちの3人が、ワインを愉しみつつ、昼は観光、夜はクラブで女性をハント。さながら導入部は、『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(09年)風のダメンズな匂いを感じさせながら、そこに巨大地震が起きて一変! ガラス片が体に突き刺さった女性とか(痛々しいっ)、壁が崩れ、天井からコンクリートの塊が落下してきて人間が果実のように潰れて圧死する! さっきまで、生の狂騒を感じさせていた空間が、阿鼻叫喚の地獄絵図に様変わり。津波が来るぞ、来るぞっという噂(情報)が流れだし、生き残った人間たちは高台を目指して右往左往するし、パニックに乗じて暴動や略奪があちこちで起こり、しかも刑務所から囚人たちが多数脱走し、更に混沌とした世界に変貌する。 大地震による恐怖もあるが、それによって引き起こされた人間のモラル崩壊が相次いで描かれる。地震の恐怖以上に人間の様々な凶行が、一層恐ろしく映し出される。 実は『ホステル』と『グリーン・インフェルノ』と同じく、『アフターショック』も似たようなシンプルな構成を取っている。導入部は若者たちの姿を、妙に脳天気に映し出しながら、突然ある異常な事態を迎えて恐怖の坩堝に落ちていく展開だ。その落差により、ショックと残虐に満ちた描写が一層際立つし、観る者たちに主人公たちの苦しみを疑似体験させようとする。ちぎれた腕を探す男の姿はどこか滑稽に映るが、どこか真実味をおびているし、時に不快感をももよおさせるほどの陰惨な場面も続出する。 例えば『ホステル』でいえば、拷問人に肉体を痛めつけられて肉体損壊される過程を丹念に見せながら、主人公と思しき人物が、隙をついてなんとか逃げ出そうとする際の、きりきりと胃が痛むような緊迫感が持続していた。あのなんともいいようのないショックと恐怖がたまらなかった。 おそらくイーライ・ロスが固執し続けるのは、彼自身が若い頃に『食人族』や『人喰族』等のモンド映画を観て受けた、超絶トラウマ体験の衝撃……すなわち“恐くて目を覆いたくなるようなショックで不快なものを見せつけてやろう”という精神なんだと思う。それがロスの心にも息づいていて、自分と同じようなトラウマ体験を、今の観客にも味あわせてやろうという意気込みが感じられる。まさにロスの監督作品は、“恐怖とショックと残酷の遺産”である。 だからロスにとって、作品がモンド映画か否かではなく、思わず観客の気持ちをひかせてしまうほどの、人間たちのリアルで恐るべき所業が主として映し出される。人間ほど恐くて魅力的なものはないのだから。 『アフターショック』では、地震よりも人間たちのほうが恐ろしい。パニックに乗じて囚人たちが民衆の中に巧みに入り混じってしまい、助けてもらいたいと思っても助けてもらえない状況に陥ってゆくし、普段は人の良さそうな人たちでも、銃を手にして発砲してくる始末だ。無法地帯になってしまった街中では、危険な不良グループがたむろし、だからといって重傷者を助けるわけでもなく、逆に弱っている者を血祭りにあげて嬌声をあげるし、若い女性を見れば、ここぞとばかりに襲いかかって欲望の赴くままにレイプする。 そうかと思えば、クラブから主人公たちを外に導こうとする、優しい清掃のおばさんがあっけなく死んでしまうし、展望台に運ぶケーブルカーのワイヤーが突然切れて、高所から傾斜度の高い坂をすべり落ちて婦女子全員が死んでしまう場面がある。人間の善悪では関係ないところで起きる自然災害の恐怖を伝える一方、神に仕える神父と修道女たちのいかがわしい関係によってできただろう堕胎児が地下墓地に埋葬されていて、善悪の人間に関わらず、誰しも恐ろしい本性を隠し持っていることを匂わせている。 そしてラストで、なんとか助かって、ようやく解放された空間に出てきたヒロインが直面する恐怖には、観る人によっては御都合主義と見られそうだが、私なりの解釈では、地獄からなかなか抜け出せなかった悪夢のようなものだと解釈した。現実かもしれないし、ヒロインが見た恐ろしい夢かもしれない。そのあたりのさじ加減が、実に上手い。 『アフターショック』はイーライ・ロスの監督作品ではないが、ロスの特徴が多分に盛り込まれた作品である。ちなみに『アフターショック』でロスが、ヒロインの一人、ロレンツァ・イッツォと共演し、その数年後に結婚するまでに到った記念碑的な作品でもある。ロスはイッツォを『グリーン・インフェルノ』の主役に起用し、食人族の族長が見染める処女を演じさせた。『アフターショック』の彼女とはかなりイメージが異なるので、見比べてみるのも一興である。■ ©2012 Vertebra Aftershock Film, LLC
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COLUMN/コラム2015.11.15
イエスマン “YES”は人生のパスワード
ロサンゼルス。銀行員のカールは何に対しても消極的な性格。呆れた恋人にも出ていかれ、孤独な日々を送っていた。そんなある日、友人に無理矢理誘われて出席したカリスマ教祖テレンスの自己啓発セミナーで暗示をかけられたカールは、何に対しても「イエス」と答える「イエスマン」に変身してしまう。すると仕事もプライベートも良い方向に向かいだし、キュートな女子アリソンとも付き合うようになり・・・。 そんなブッとんだストーリーの『イエスマン“YES”は人生のパスワード』だけど実はこれ、英国人のダニー・ウォレスというライターが「すべてにイエスと答えたらどうなってしまうか?」を試してみた体験談が原作だったりする。つまりこうした行動をダニーは自由意志で行っていたわけだ。 だが脚本化を任されたニコラス・ストーラーはこの物語を「暗示をかけられた男が暴走する話」に改変してしまった。でも人はそんな安直な暗示にかかるものなのだろうか? それにそんな暗示をかけられた男なんて異常なだけで全然笑えないのではないか? 大丈夫、主演俳優は天才コメディアン、ジム・キャリーなのだから! カナダ生まれのキャリーがアメリカでブレイクしたきっかけは『In Living Color』(90〜94)というお笑い番組だった。この番組は他のお笑い番組とは少々毛色が変っていた。ホスト兼ヘッドライターを務めていたのは黒人コメディアンのキーナン=アイヴォリー・ワイアンズで、出演者も彼の弟たちを含めて黒人ばかり。スタジオ観覧席も黒人で埋め尽くされていた。つまり黒人向けコメディ番組だったのだ。キャリーは唯一の白人男性のレギュラー出演者で完全なアウェイ状態。それでも当時の映像を観ると、ガンガン笑いを取っているのだからスゴい。その笑いの源はキャリーの驚異的に変化する顔や身体芸にある。 アメリカは多民族・多文化国家なので”あるあるネタ”が通用しない。白人にとっては爆笑ギャグでも、黒人はクスリともしないということだってある。でも顔や身体芸で笑わせる芸なら環境の壁を超えてしまうことが可能だ。キャリーが『エース・ベンチュラ』(94)で映画界に進出して以降、トップスターの座に君臨し続けているのは、そうした顔&身体芸のレベルの高さゆえなのだ。作品の出来に少々ムラがあるキャリーだけどスキル面では依然、最強のコメディアンであることは間違いない。下積み時代に一緒にコメディ・ツアーを行った経験を持つジャド・アパトーも彼についてこう語っている。「二番目に面白いコメディアンが誰なのか決めるのは難しい。でも一番面白いコメディアンはジム・キャリーで決まりだ!」 そんなキャリーが本作では主人公カールに扮し、冒頭のダメ人間モードから暗示をかけられた躁状態モード、そして真実にたどり着いた姿までを、あらゆる芸を駆使して魅せてくれるのだから面白くないわけがない。本作はキャリーの代表作のひとつだと思う。 対するヒロインのアリソンを演じているのは近年TVコメディ『New Girl / ダサかわ女子と三銃士』(12)で人気のズーイー・デシャネルだ。その番組の主題歌も自分で歌っている彼女だけど、それ以前から『エルフ〜サンタの国からやって来た〜』(03)や『ジェシー・ジェームズの暗殺』(07)といった作品で深みのあるハスキーヴォイスを聴かせているほか、マット・ウォードとのユニット「シー&ヒム」名義で活躍するミュージシャンでもある。 そのズーイーが、LAインディシーンで活動するヴォン・アイヴァと共にガールズ・ロックバンド「ミュンヒハウゼン症候群」名義で劇中のステージに登場、オーガニックなシー&ヒムとはうって変わったエレクトロを披露するシーンが本作のハイライトのひとつだ。特にジミ・ヘンドリックスのウッドストックでの演奏をパロって、ショルダーキーボードで「星条旗よ永遠なれ」を弾くあたりが最高。あまりにハジケすぎて現実味がないように思えるかもしれないアリソンだけど、実はこのキャラは原作版「イエスマン」で主人公が恋に落ちるリジーをモデルにしている。事実は小説より奇なりだ。 こうした二人と並んで本作の隠れた主人公となっているのが、物語の舞台となっているロサンゼルス内のシルバーレイクやエコパークといったエリアだ。映画を観たなら、このエリアが、僕らがLAと言われて思い浮かべるセレブが住むビバリーヒルズや、巨大ショッピングモールが林立するサンフェルナンド・ヴァレーといったエリアとは少々趣が異なっていることに気づくはず。さほど高級そうじゃないし、ビーチからも遠そう。でもユルい空気が漂う、とても住みやすそうなエリアだ。 ハリウッドの東側に位置し、天文台と屋外劇場ハリウッド・ボウルがあるグリフィス公園(アリソンが主宰する「早朝ジョギング兼写真クラス」の練習場はここだ)以外はこれといった名所がないシルバーレイクが、一躍世界中で注目を浴びるようになったのは90年代のこと。当時ロック・シーンを席巻していたオルタナ系ミュージシャンがこぞってこのエリアを本拠地にしていることが明らかになったのだ。思いつくまま名前を挙げてみよう。レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ジェーンズ・アディクション、ニューヨークから移住してきたビースティー・ボーイズ、ヘンリー・ロリンズ、ペイヴメント、故エリオット・スミス、ベック、そして本作のサウンドトラックを手掛けているイールズだ。 イールズは、「E」ことマーク・オリバー・エヴェレットが96年に結成したソロ・ユニットだ。決して大スターとは言い難いミュージシャンだが、ロック・マニアほど凄さが分かる「ミュージシャンズ・ミュージシャン」として熱狂的なファンを獲得し続けている。かつてバンドマンで、劇中にも登場するライブハウス「スペースランド」に出入りしていた本作の監督ペイトン・リードもそのうちの一人。ファースト・アルバムからイールズを愛聴し続けてきたという彼が本作の音楽にイールズを起用したのは、サウンドがシルバーレイクの雰囲気をよく反映していること、またEの書く歌詞が『イエスマン』のテーマ<内にこもっていた主人公が世界と繋がろうと苦闘する>にぴったりだったからという。 「さあ立ち上がる時/僕は君に相応しい男だ」と自らを鼓舞するような「Man Up」だけが書き下ろしで他は全て既存曲だが、どれも映画のために作ったかのよう。「僕は疲れすぎてしまった、一人でいることに」(Bus Stop Boxer)や、「真夜中の空に虹は見えないけど、いつか僕はうまくいく」(Blinking Lights(For Me))など、どのナンバーの歌詞もカールの心情を絶妙に表現している。 出世作『チアーズ!』(00)から最新作『アントマン』(15)まで、既存曲の使い方が天才的に上手いリードの手腕は本作も健在だ。カールとアリソンが夜中に忍び込んだハリウッド・ボウルで初期ビートルズの名曲「キャント・バイ・ミー・ラブ」を歌うシーンはその代表例。というのも、このハリウッド・ボウル、もともとはクラシック専門会場だったのだが、64年にビートルズがライブを行ったことを境にロックのメッカになったコンサート会場なのだ。 もうひとつの技ありは、カールがギター弾き語りでサード・アイ・ブラインド97年の大ヒット曲「ジャンパー」を歌うシーン。これに関してはどういうシチュエーションで彼が歌うかは敢えて書かない。とりあえず「観れば爆笑間違いなしだ!」とだけ書いておこう。 © Warner Bros. Entertainment Inc.
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COLUMN/コラム2015.11.12
【DVD/BD未発売】暗殺組織のキテレツな内部抗争を英国流のブラックユーモア満載で描いたアクション・コメディ~『世界殺人公社』~
今にして振り返れば、1980年代以前のテレビ東京(かつての名称は東京12チャンネルだった)やUHFの映画枠は宝の山だった。真っ昼間や深夜にたまたま観てしまったアクションやスリラーやホラーがいちいち強烈で、あの頃の記憶をたどると「あれ、何ていうタイトルだったかなあ」「死ぬまでに何とかもう一度観られないものか」という怪作、珍作、ケッ作がわんさか脳裏に浮かび上がってくる。日本での封切り時に「殺人のことなら、何でも、ご要望に応じます!!」という人を食ったキャッチコピーがつけられた1969年のイギリス映画『世界殺人公社』も、まさにそんな幻の1本であった。 20世紀初頭のヨーロッパ各地で謎だらけの殺人事件が続発し、ロンドンの新米女性記者ソーニャが取材に乗り出すところから物語が始まる。道ばたで盲目の男性からメモを手渡され、指示に従って帽子の仕立屋に赴くと、あれよあれよという間に馬車に乗せられ、到着した先は“世界殺人公社”の本部。何とこのアングラ組織は殺人代行サービスを請け負い、奇想天外な手口で要人の暗殺を遂行しているのだ! 実はこの映画、「野性の呼び声」「白い牙」などで名高い動物文学の大家ジャック・ロンドンの未完小説の映画化なのだが、動物はさっぱり出てこず、不条理なまでに奇抜なストーリー展開が滅法面白い。組織の2代目チェアマンであるロシア系のイワン・ドラゴミロフと対面したソーニャは、殺しのターゲットを尋ねられて「イワン・ドラゴミロフよ」と返答する。するとイワンは「おやおや、信じがたいことだが、標的はボクのようだな」などと困惑しつつも、その意表を突いた依頼を2万ポンドで受諾。欲にまみれて堕落した組織の幹部たちに自分の命を狙わせ、自らも幹部たちを殺しにかかると宣言する。要するに、世にも奇妙な暗殺組織内での殺人合戦が繰り広げられていくのだ。 何ともデタラメな話ではあるが、映画の中身は驚くほど多彩な趣向を凝らした仕上がりで、まずは伝説のTVシリーズ「プリズナーNO.6」の音楽を手がけたロン・グレイナー作の胸弾むスコアが、アールヌーヴォー風デザインのお洒落なメインタイトルに響き渡るオープニングからして掴みはOK。 続いて登場するヒロインはダイアナ・リグですよ。彼女こそは『女王陛下の007』のボンドガール、すなわちジェームズ・ボンドが唯一結婚したテレサを演じたイギリス人女優。ボンドガール女優は大成しないというジンクス通り、その後のキャリアはパッとしなかったが、本作は『女王陛下の007』と同年に製作されたリグの貴重な主演作なのである。 そして真の主人公たるイワン・ドラゴミロフに扮するのは、紳士の国イギリスらしからぬ異端の野獣派スターとして当時名を馳せたオリヴァー・リード。暗殺を生業とする言わばシリアルキラーのくせに、罪を犯した悪人殺しに崇高な使命感を抱き、世界をよりよくするために活動していると豪語するイワンを堂々と演じている。シーンチェンジごとに神出鬼没の変装&コスプレを披露しつつも、持ち前の無骨な風貌に反したスマートなアクションと、ドヤ顔で大見得を切るセリフ回しには見惚れずにいられない。 そんなオリヴァー・リード=イワンの命を狙う幹部連中のキャスティングもやけに豪華だ。クルト・ユルゲンス、フィリップ・ノワレらの国際色豊かな面々が、ドイツの将軍やらパリの売春ホテル経営者に扮して曲者ぶりを発揮。おまけに組織を乗っ取ってヨーロッパを支配する野望に燃える副チェアマンをテリー・サバラスが演じるのだから、濃厚にして重厚な存在感もたっぷり。それなのにベイジル・ディアデン監督(『紳士同盟』『カーツーム』)の語り口は、とことんハイテンポで軽妙洒脱だったりする。 前述の通り、本作は『女王陛下の007』と同年に作られたが、まるで歴代ボンドの中で最もユーモア感覚に長けたロジャー・ムーアの登場を先取りしたかのようなスパイ・コメディのテイストも味わえる。序盤、組織の幹部が円卓を囲むシーンは“スペクター”の会議のようだし、イワンとソーニャがロンドン、パリ、チューリッヒ、ウィーン、ヴェニスをめぐって群がる敵を返り討ちにしていく設定も“007”風。ダイアナ・リグに至ってはノングラマーのスリムボディを大胆露出(といってもヌードではなく、素肌にバスタオル姿どまりだが)し、『女王陛下の007』以上のお色気サービスを満喫させてくれる。 クライマックスは観てのお楽しみだが、巨大な飛行船と特大の爆弾を持ち出したそのシークエンスの何と馬鹿馬鹿しくて壮大で痛快なこと! ジェームズ・ボンドばりに八面六臂の大暴れを見せつけるオリヴァー・リードが、ますますロジャー・ムーアのように見えてくるこの懐かしの怪作。ザ・シネマでの放映にあたって初めてエンドロールを確認できたが、撮影場所のクレジットは案の定“made at パインウッド・スタジオ”であった。イギリス流のシニカルなユーモアが大爆発する逸品を、とことんご堪能あれ!■ TM, ® & © 2015 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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NEWS/ニュース2015.11.10
甘酸っぱく清々しい感動作『マルガリータで乾杯を』。 公開記念して行われたトークショーイベントの様子を(ほぼ)全文レポート!!します!!
ゲストには、裸も辞さない体当たり演技が高い評価を獲得している女優の安藤玉恵さん、自らの経験を活かし、障がい者の性活動を支援するNPO法人ノアールの理事長を務めるくましのよしひこさん、そしてくましのさんの10年来の友人であり、ノアールの活動に共鳴するリリー・フランキーさんという豪華布陣が登場。その模様を、(ほぼ)全文レポートします!! ※ネタバレ有。映画の内容、結末についての記載があります。 司会:岩田和明(「映画秘宝」編集長/以降、司会)登壇者:安藤玉恵(以降、安藤)、くましのよしひこ(以降、くましの)、リリー・フランキー(以降、リリー) 司会:早速ですが、映画の感想からお聞かせください! リリー:本当に良い映画だから、「映画秘宝」なんかが取り上げるべきじゃないですよ。「キネマ旬報」しかダメ。 司会:場違いですいません(笑)。安藤さんはいかがでした? 安藤:すごく元気になりました。笑顔になれますよね。 リリー:あれ、「私は主人公と歯茎が似てる」って言わないとダメじゃない? 安藤:主人公のライラは笑うとすごい歯茎が出るんですけど、それが私とソックリなんですよ。でもそのことは黙っていようと思ってたんですが、さっきからずーっとリリーさんが「言え言え」って(笑)。 リリー:でもさ、本当に良い映画なんだよね。インド映画できっちりタブーを描きつつ、役者の演技も素晴らしいし。しかもさ、まさか同性愛の展開になるなんて思わないよね。 安藤:本当にそう。まさかって思った! リリー:それでいて家族の物語でもあってさ、ちょっと凄いよね。 司会:くましのさんはいかがでしたか。 くましの:実は僕、1年くらい前から本作の存在は知っていて、ずっと追いかけていたんです。それでようやく初めて観た時、自分が障がい者なんで、「どっかで気を抜いて主人公が障がい者じゃなくなる一瞬があるんじゃないか」と、アラを探す感じで観たんですよ。でもね、正直騙されましたね。 リリー:プロの障がい者が騙されたんだ。 くましの:そうなんですよ。主演の女優さんを調べたら、普通に健常者だったんですよ。 リリー:あの子、魅力あるよね。あとさ、主人公のように同じ脳性麻痺で車いすの人でも、くましのくんみたいにハッキリ喋れる人と、ライラみたいに滑舌が良くない人もいるよね。 くましの:脳性麻痺は2、3タイプあって、僕は体が固まっちゃうタイプなんです。ライラは上手く卵を割れないシーンがありましたけど、手が揺れちゃったり、言語障害が出たりするタイプなんでしょうね。 リリー:くましのくんの場合、卵は割れないけどTENGAのエッグは上手にできるでしょ。 くましの:封を開けるのがちょっと難しいんですけどね。 司会:TENGAといえばオナニーということで(笑)、ライラも冒頭でしてましたよね。安藤さんも劇団ポツドールの舞台でオナニーシーンを披露されていましたけど…。 安藤:いいんですよ、それは(笑)。 リリー:それでいえばさ、これまでのドラマや映画で描かれてきた障がい者像って、すごく聖人化されてたんだよね。あの人は性欲がない、あるはずがないみたいなさ、とても驕った見方の作品が作られてきた。くましのくんが「ノアール」って団体で活動しているのは、僕ら障がい者にだって性欲はあるしセックスだってしたいんだってことを訴えるために活動しているわけです。んで僕もそれに共鳴してお手伝いしているんですけど、彼らの基本的な欲求や尊厳を、ボランティアの人でさえ認めてないんですよ。性欲があるってことを知った途端、冷たくなったりするんです。だから障がい者の人たちは“天使”を演じなきゃいけないんです。そういう意味でこの映画は障がい者の性をしっかり描いていて、くましのくんの活動にすごく近いんだよね。…っていう話をしたかったんだけど、なぜか安藤玉恵のオナニー話になるというね。でもね、彼女のオナニーもすごいですよ。 安藤:あくまで舞台で、ですから(笑)。それにしても主演のカルキ・ケクランは体当たりの演技でしたね。男の人ともするし、同性の女の子ともしてますしね。 リリー:そうなんだよ!幼なじみの男の子とチューしたかと思えばバンドマンによろめいて、NYではかっこいい男ともしちゃうしさ。あの時なんてさ、全然ションベンしたくないのにわざとトイレ行って男にパンツ脱がさせてたもんね。 安藤: うそ~。ちゃんとおしっこしてたでしょ! リリー:いや、俺ずーっと耳すませて音聞いてたけど、まったくションベンの音しなかったもん。 安藤:じゃあトイレに行ったのは、誘ってたってこと? リリー:そうですよ。また良いパンツはいてましたもんね。 くましの:間違いなく勝負パンツでしたね、あれは。 安藤:じゃあ彼の家に勝負パンツで行ってたってこと? くましの:たぶん。 安藤:もうちょっとふたりとも純粋に観てくださいよ(笑)。まあでも、あの状況になったらしたくなりますよね。それはわかります。 ■全盲の人でも家族おぶって天ぷらバリバリ揚げてる人もいるし、そういう生活描写も本当のリアルに近いよね。(リリー) リリー:話は変わるけどさ、全盲のレズビアンの子もライラにしてもさ、いつもパキっとした色の洋服を着てるよね。やっぱ目立つ服着ていないと危ないってことなんだよね。くましのくんもいつも赤い服着てるもんね。 くましの:はい。車いすも赤です。 リリー:スティービー・ワンダーも目立つジャケット着てるもんね。あ、そういえばくましのくんは監督と主演の人と会ってるんだよね。 くましの:9月にあいち国際女性映画祭でお会いして。ご拶程度でしたけど、日本でこんな活動してますって伝えました。カルキさん、いい匂いでしたね~。 リリー:カルキさんって、フランス人だけどインド育ちなんでしょ。インドって今、世界で一番映画作ってる国ですよね。 安藤:最近のニュースだとあんまりいい話を聞きませんけど、そんな国がこういう映画を作るんだって、最初は信じられなかったです。 リリー:まあ、インド映画の9割が踊りまくってますもんね。この映画でも途中、いい感じのダンスミュージックがかかって、「あ、やっぱ踊るんだ」って思ったよね。踊りは外せないんだろうね。あとさ、劇中の曲もすごい良かったよね。 くましの:踊る場面が2つあるじゃないですか。家族で踊っているシーンと、全盲の女の子と踊るところと。で、その2回ともライラが膝かっくんってなるんですけど、あれは“脳性麻痺あるある”ですね。力がぐいぐいって抜けちゃうんですよ、ライラみたいなタイプの脳性麻痺って。見る人が見ると、ああいう描写で騙されちゃんうんです。 リリー:健常者は勝手に「障がいのある人は何にもできない」って思いがちだけど、意外とそんなことないんですよね。全盲の人でも家族おぶって天ぷらバリバリ揚げてる人もいるし、そういう生活描写も本当のリアルに近いよね。 くましの:僕個人のことで言えば、時間をかければ大体のことはできます。ただ時間がかかりすぎるってことがあって、自分で全部やろうとしたら1日が35時間くらいないと収まりきらなくなっちゃうんです。だからヘルパーさんを入れるんですね。ライラもNYにお母さんと一緒に行くじゃないですか。あれをもし彼女ひとりで全部やろうとしたら、きっと1日じゃ収まりきらなくなっちゃうと思います。 リリー:お母さんもお父さんも良い感じだよね。そして小太りの弟がまた効いているよね。あの小太りの弟がいるだけで、ものすごい家族感がでるもんね。 ■すごいなって思ったのは、嘘がないのと、足りないことがひとつもないことです。(安藤) 司会:安藤さんは女優としてライラをご覧になっていかがでしたか? 安藤:本当に感動しましたね。すごいなって思ったのは、嘘がないのと、足りないことがひとつもないことです。 司会:障がいのある役を演じられたことはありますか? 安藤:ありますね。山下敦弘監督の『松ヶ根乱射事件』です。 リリー:そういえばさ、くましのくんは編集前の違うバージョンも観てて、公開版とエンディングが違うんだよね。俺はさ、最初本編を観た後に『マルガリータで乾杯を!』って邦題見てさ。この邦題のつけ方、ふんわり感がハンパないですよね。まあでも、原題が『Margarita, With A Straw』だから、『ストローでマルガリータを』にはならないか。それにしても最近はウッディ・アレンの映画も全部『恋するバルセロナ』とかさ、観たいんだけどDVD取るのが恥ずかしいみたいなタイトルのつけ方じゃないですか。この映画のポスターにしたって、全然内容と違うしね。でもラストシーンを考えると、『マルガリータで乾杯を!』はしようがないか。 くましの:原題はトンチが効いてるっていうか、脳性麻痺で手が動かないからビールも何もストローじゃないと飲めないんですよ。しかも、ビールはストローで飲むとめちゃくちゃ酔いが回るんですよね。あとこれも“障がいあるある”なんですけど、アルコールが入ると言語障がいが軽くなるんですよ。普段ガチガチの言語障がいの子も、お酒を飲むとスラスラ喋れるんです。 リリー:飲むとションベン行きたくなるじゃない。でも、車いすで入れるトイレを併設してる飲み屋ってほぼないんだよね。だから、飲むとしたら便所チェックするよ。俺はラブドールのリリカっていうのが家にいて、車いすにリリカを乗せて友だちと会わせたりしてるからさ。リリカが来たことによって、くましのくんの生活がもっと分かるようになった。 安藤:真面目に聞いて良いのか分かんない(笑)。 リリー:あとラストシーンでさ、ライラが新しい髪型にして、「今日はデートなの」って言ってレストランでマルガリータを飲んでるんだけど、そこに誰が来たかは映してないじゃないですか。あれちょっとお客さんに誰が来ると思ったか、挙手で聞きたいです。考えられるのは幼なじみか、レズビアンの元恋人か、このふたりでもない誰かじゃないですか。で、そこに来るのが誰であって欲しいかって、お客さんそれぞれが考える一番のハッピーエンドなのかなって。 (会場のお客さんに手を上げてもらう) 司会:幼なじみだと思った人はおひとりですかね。意外と少ないですね。レズビアンのハヌムは3、4人…これも少ないですね。ではこのふたりでもない、第3の人だって方は…これもあんまりいないか。じゃあ、誰も来ないと思った人っています?あ、これが一番多いですね。実は、僕もそう思ったんですよね。でもたしかに、お客さんに委ねるようなラストになっていましたもんね。 くましの:可能性としていろいろあるよっていう感じでしたね。 リリー:あとさ、ライラは言い難いことを親に告白したり、自分が浮気したことを彼女に言ったりとかさ、一番人間が持ちにくい勇気を持ってたよね。 司会:安藤さんは、お母さんに女優になるって言った時はどうでしたか。 安藤:うちは映画のお母さんのように反対されることはなくて、逆に「裸になれないなら、女優になるのはやめなさい」って言われました。 リリー:そして、ポツドールでオナニーしたっていうね。 安藤:もういいよそれは!でも、映画のお母さんも結局は理解しようとしていたよね。最初はつっぱねてたけど。 リリー:あと、インドからNYに行く展開もいいよね。 安藤:NYに留学できるってことは、ライラは裕福なお家ですよね。 リリー:借金してでも留学させたいって感じじゃない?だって弟と相部屋だったよ。だからオナニーする時も背中向けてたもん。でも、ハヌムの方はお金持ちでしょうね。実家が金持ちの顔してる。それにしても、本当に良い映画だったな。今年観た中でベスト5に入りますよ。 司会:これまでのインド映画は歌と踊りばっかりでしたが、最近はこういったおしゃれな作品も数多く作られています。今、インド映画は本当に一番おもしろくて豊かだと思いますよ。 安藤:日本でもインド映画ってけっこう公開されてるんですか? 司会:やっていますね。東京国際映画祭でも公開しています。 リリー:でも日本で一番ヒットしたのは『ムトゥ 踊るマハラジャ』でしょ。江戸木純さんが2万円くらで買ってきて大ヒットした伝説の映画ですよね。俺もね、名古屋の街で踊りまくるっていうインド映画のポスター書いたことあるよ。インド人がドジャースに入団するっていう話。 司会:『ムトゥ〜』の後はたくさんのインド映画が日本に上陸しましたもんね。最近では『きっと、うまくいく』がヒットしました。 ■女性が主人公でストレートに障がい者の性を描いた作品って、おそらく本作が初めてではないでしょうか。(くましの) リリー:しかしさ、女性が観るような映画で、障がい者の当たり前の性欲求を作品にしてくれるっていうのはいいよね。くましのくんと俺がトークショーしてもさ、こんな香ばしい女子は来てくれないじゃないですか。だからこういう機会にさ、ポスターに騙されたとしてもですよ、障がい者の現実をこんな甘酸っぱい温かい映画にしてもらえるっていうことは、くましのくんの活動にも説得力をもたらしてくれることだと思います。 くましの:これまで男性の障がい者が主人公の映画はありましたけど、女性が主人公でストレートに障がい者の性を描いた作品って、おそらく本作が初めてではないでしょうか。 リリー:障がい者の人の苦労って感覚的に分かっても、知らないことがたくさんあるんですよね。最近だと『最強のふたり』とかもあって、障がいのある人をきちんと描いた作品はいいなって思いますよね。マイノリティの人が主人公になる映画はまだまだ続いていくだろうね。 司会:安藤さんはライラ役のオファーがきたら演じたいと思いますか? 安藤:いいんですか?歳がアレですけど(笑)。 リリー:『マルガリータで乾杯を!3』だったら年齢も間に合いますよ。晩年のライラとしてさ。 安藤:顔も似てるしね。歯茎がね。 リリー:あとさ、ライラがNYの大学で会った男の子とセックスするじゃない。あれ、初体験じゃなかったっぽいよね。 安藤:初体験じゃないでしょ。だって最初にデートしてたよね。あれ、でもその時はしてなかったのかな。 リリー:幼なじみの男性とはしてたのかな? くましの:うーん。どうすかね。 リリー:なんか初体験じゃないっぽい反応だったんだよね。 司会:ちょっと痛がってませんでした? 安藤:でもあの時はすでに女の子とは関係があるわけだから…。 リリー:ペニスバンドでしてたってこと?そうかな〜。別にアラを探しているわけじゃくて、「彼らの映ってない部分の生活はどんなんだろう」って想像させるのは、良い映画ってことですよね。 安藤:でも初めてとは思ってなかった。 司会:僕も初めてじゃないだろうなって思って観てました。 リリー:そうなのかなあ。俺は初めてだと思ってたからなあ。ショックだなあ。じゃああの幼なじみとやってたのかなあ。アイツと最初、濃厚なキスしてたしな。 くましの:その時も誘ったのはライラの方ですもんね。 リリー:でもあのふたりはしてないでしょう。なんかしてないと思う。だってあのふたりがするとしたら実家になるでしょ。 安藤:意外とできるんじゃない? リリー:まあ、誰がやったかやってないかなんて、本当に下衆の詮索ですけどね。 くましの:でもそれって、監督の術中にハマってるってことですね。 リリー:それにしてもこの映画って、ものすごいテンポで進んでいくじゃないですか。それなのに忙しく感じないっていうのは、出演者の濃密な存在感だと思うんですよ。だってさ、「え?レズ?」と思いきや「え?癌!?」ってなってさ、ジェットコースタームービーっていってもいいような展開なのに、本当に緩やかな空気が流れてる。やっぱり監督や出演者の濃度とか精度がすごいんだろうね。 安藤:ライラの表情がひとつひとつ、いちいちものすごいリアルなんですよね。ひとつ事件があると、彼女の心情ががすごい伝わってくるでしょ。だから話は忙しいけど、そう感じないのかなって思いました。 リリー:あとさ、最近エンドロールって延々長くて1曲じゃ終わらないじゃない。でもこの映画のエンドロールはさ、1曲目が終わって次の曲に移る時、ライラの声が入るじゃない。「1、2、3、4」ってさ。だから切り替わりがすごく自然なんだよね。とはいえね、あの「1、2、3、4」がピエール瀧の声じゃダメなんですよ。余韻がなくちゃ。本当に監督が隅々まで心を砕いている映画なんだなって気がしましたよ。 司会:2曲目の歌詞の内容も、映画とリンクしているんですよね。歌詞と映画の内容が全然合っていない、ただのタイアップ曲、みたいな映画も多いですからね。 リリー:あとさ、映画の中ではインドの母国語が一切なくて、英語しか喋らないんですよね、言語問題ってどうなってんだろうね。その時さ、ライラはもしかしてもらいっ子なのかなって思ったんですよ。肌の色も白いし。 司会:すいません…そろそろ終了のお時間になってしまいました…。 リリー:まだ良い話全然してないですよ。このまま帰ったら俺はバカだと思われますよ。せっかくバリアフリーじゃない会場にわざわざ登壇してくれたくましのくんの活動とも繋がりますからね、この映画は。 くましの:女性向けってことでは激オシです。 リリー:この映画を観た後、レズビアンのシーンが嫌だったって人は、何か偏見を持っているかもしれない。そして何より、障がいのある人をテーマに選んで、いろんな性のタブーを描いているってところが素晴らしいと思いますよ。くましのくんも今は人前だから真面目に喋ってますけど、本当はものすごいユーモアの持ち主なんですよ。知り合った時、くましのくんに「夢とかある?」って聞いたら「立ちバックですよね」って。そういうね、身を切ったギャグが言える人っていうのはおもしろい人ですよ。障がい者はギャグや下ネタを言わないって思うなんて、それこそ健常者の驕りだよね。よく乙武洋匡さんも「手も足も出ないや」とかって言うけど、それを素直に笑えない感覚こそ、一番の偏見ですよ。だってせっかくおもしろいこと言ってるのにさ。 くましの:でも最近、エロくなくなってきたって怒られたんですよ。 リリー:どういうこと? くましの:なんかエロオーラがないって。ショックでしたね。修行します。気合入れ直します。 リリー:それどうするの?気合入れるって言っても。 くましの:どうしますかね…。まずはTENGAのエッグあたりからならし運転します。 リリー:でもさ、こうやって基本的な、誰もが持っている欲求を、手が動かなくたって全盲の人だって持っているんだってことを、くましのくんやこの映画がちゃんと言っているっていうことですよ。しかもこの映画は障がい者に性欲があるってことを描いている上に、バイセクシャルだからね。 安藤:でも描かれ方がすごく自然だし、オシャレなんですよね。だから私、『アメリ』みたいだよって周りにすすめようと思って。 リリー:でも『アメリ』でグッとくる人って、もうけっこういい歳いっているでしょ。今だとなんて言えばいいんだろう。『好きっていいなよ。』とかかな。 司会:あ、でもこの映画は『アメリ』に携わっていた方が宣伝をしているんですよね。 リリー:これはでも「映画秘宝」が取り上げないのが一番良いですね。「映画秘宝」は映画界の“おくりびと”ですから。個人的には友だちがやっている活動に近いことだし、精神的な価値観のバリアフリーが同時多発的に起きていることが嬉しいですね。映画の中で出てくる、偏見を持ったコンテストの審査員みたいなヤツって、現実に本当にいるんだよね。すごくドラマ的に見えるけど、現実にいるんだよ。 安藤:私、あの人見て佐村河内さんを思い出しちゃった。ああいう胡散臭い感じ。 リリー:佐村河内さんが話題になった時は、みうらじゅんさんとこにすごい取材依頼がきたって。長髪サングラスだからさ。 安藤:あと私はトイレのシーンが大好きです。グッときました。あ、でも幼なじみとキスするところも良いですね。そう考えると体で感じちゃうシーンが多かったですね。全体的に性を描いているところは圧倒的に良かった。 リリー:障がいの有無に関係なく、女の人の性がかわいく描けてるよね。 安藤:そうなんですよ。本当にああいう反応するよねっていう感じで。 リリー:甘酸っぱいよね。だからやっぱり『アメリ』っぽいね。くましのくんはどんなシーンが良かった? くましの:この前ちょうどNYに行って来たこともあって、ライラがイエローキャブの行き交う横断歩道をサーッと疾走するシーンとかがいいなって思いました。 リリー:意外とくましのくんの電動車いすも早いんですよ。重いから安定感あって。 くましの:NYでもコレで疾走してきたんですけど、誰も振り向いてくれないんですよね。それくらいいろんな人がNYにはいて、障がい者なんてめずらしくもなんともない。だからちょっと寂しかったですね。チラ見すらされないんですよ。LEDとかチカチカさせても振り向いてもくれなかった。 リリー:次行くときは志茂田景樹みたいな、南国の鳥っぽい格好していけばいいんじゃない。逆に目立ってくれないと危ないしね。まあでも、障がい者であるかどうかってこともそうですけど、女性の性欲求が本当にチャーミングに描かれているんで、珍しいと思いますよ。本当に良い映画なんで観て欲しいなって思います。 安藤:ちゃんと性を描いているのに、すっごいすんなり入ってきました。 くましの:しかも途中から障がい者っぽくなくなるんですよ。自然な感じで。 リリー:圧倒的に人間ドラマなんですよね。親の反対があったり勉強との兼ね合いがあったりさ。映画の途中からは障がいがあるってことを忘れて人間ドラマとして観ちゃいますよね。俺もくましのくんと10年くらい知り合いだけど、障がいがあることを忘れてるっていうか。こんなにメールの返信が早い手の曲がった人はいませんよ。あとくましのくんて、屋外で撮影する時もちゃんと警察に撮影許可取るし、本当にちゃんとした友だちなんですよ。だから周りに紹介する時は“ちゃんとした友だち”って言ってますよ。 司会:それではそろそろお時間がきてしまいましたので…。 リリー:最後になんかお客さんとゲームでもしますか。まあ、もう話し足りないことはないんですけどね。終わり方がわかんないの。お客さん、なんか物をもらったら帰ってくれるかな。 くましの:あ、リリーさんにイラストを描いてもらった、僕がやっているNPO法人ノアールのシールがあるんで、それをプレゼントしますよ。 リリー:せっかくくましのんがくれるんですから皆さん、捨てるんだったら劇場からなるべく遠いところで捨ててくださいね。劇場の外で見るのが一番傷つくんで。こんな良い映画観てもあいつら何も心変わってないなって思うから。ちなみに俺が描いた絵は車いすに乗ったクマがちんこ勃ててるやつですから、財布に一番貼りやすいデザインですよ。<終了> 取材、文:小泉なつみ ■ ■ ■ ■ ■ いかがでしたでしょうか?作品の魅力を余すことなくお話し下さった安藤さん、くましのさん、リリーさんの作品への愛が伝わる1時間をご紹介させて頂きました!本作は現在劇場にて絶賛公開中です。一人でも多くの方に観て頂きたい素晴らしい一本です!(編成部) 10月24日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー■公式サイト:http://www.margarita.ayapro.ne.jp/■facebook:https://www.facebook.com/margaritadekanpaiwo/■twitter:https://twitter.com/margaritamovie (C) ALL RIGHTS RESERCED COPYRIGHT 2014 BY VIACOM 18 MEDIA PRIVATE LIMITED AND ISHAAN TALKES
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COLUMN/コラム2015.11.10
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2015年12月】
ご存知『ダーティハリー』の爆発的人気でアクション・スターの名をモノにしたイーストウッドですが、その『ダーティハリー』シリーズがいよいよ3作目に突入したその翌年に公開されたのが本作『ガントレット』。いわずもがな、アクション・スターとして脂が乗りまくったギンギラギンのイーストウッドが拝められます。 物語はというと・・・とある事件の証人ガス(ソンドラ・ロック)を刑務所から裁判所まで護送する任務に就いたはぐれ刑事ショックリー(イーストウッド)。「命を狙われている」と身の危険を激しく訴えるガスを初めのうちは信じないショックリーだったが、護送中なぜか身内である警察官に銃撃されまくり、命スレスレの窮地に陥ってしまう。次第に犯人を突き止めたショックリーは、常識破りの手段をつかって護送任務を完遂しようと決死の強行作戦に打って出る!というお話。 イーストウッド十八番の痛快アクションと言うにふさわしく、全編通して繰り広げられる激しい銃撃シーンやヘリコプターとのチェイスシーンは必見。特に、前代未聞の銃弾攻撃を浴びせられる最後の銃撃シーンが最大の見所!!と、ここまではいかにもアクション映画な感じで書きましたが、本編をよく見るとショックリー(イーストウッド)はほとんど丸腰でひたすら逃げ回っているだけ。実はあんまり強くなくて、ちょっぴり情けないヒーローだということに気づきます。前述の最後の銃撃シーンも、実は一方的にヤラレているだけで撃ち返してはいないんですねー。 余談ですが、ショックリーとガスは護送という名のロードトリップを共に過ごす中で次第にと心(と体)を通わせるわけですが、、、撮影当時イーストウッドとソンドラ・ロックが実生活においても恋人同士だったことを考えると、本気でラブラブな感じ出ちゃってるよね?いつも無骨なイーストウッドだけど、若干ほっこりしちゃってるよね??とミーハーな気持ちになってしまいます。『ダーティハリー4』などイーストウッド作品に度々ヒロインとして出演しているソンドラですが、悩殺ボディなわけでも超演技派なわけでもなく。きっとスクリーンでは計り知れない人柄の良さがあったのでしょう・・・(と勝手に思っている)。 (話を戻して、)丸腰刑事が一方的に攻撃されまくるという一風変わったアクションに加え、反発しあう男女が次第に恋に落ちていくという王道アメリカン・ラブコメディの要素を盛り込んだ、痛快アクションラブコメ(何だそれ)。このあたりはイーストウッド監督ならでは?の隠れた見所なのであります!『ダーティハリー』に次ぐ人気を誇る、はぐれ刑事の痛快アクション!是非11月のザ・シネマでお楽しみ下さい!! © Warner Bros. Entertainment Inc.
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COLUMN/コラム2015.11.07
【DVD/BD未発売】淡い詩情を漂わせ、恋愛の残酷な本質にそっと触れた珠玉の小品~『くちづけ』~
なぜか日本では未だソフト化されていない1969年のアメリカ映画『くちづけ』は、アラン・J・パクラ監督のデビュー作である。ハリウッド・メジャーの一角、パラマウントでプロデューサーを務めたのちに監督へと転身したパクラは、ジェーン・フォンダ主演のサスペンス劇『コールガール』(71)で成功を収め、ウォーターゲート事件を題材にしてアカデミー賞4部門を制した『大統領の陰謀』(76)で名匠の仲間入りを果たした。そのほかにも『パララックス・ビュー』(74)、『ソフィーの選択』(82)、『推定無罪』(90)など、陰影あるミステリー映画や人間ドラマで職人的な手腕を発揮した。 そのパクラ監督が『コールガール』の2年前に発表した本作は、何やらエロティックな連想を誘う邦題がついているが、扇情的な官能描写とは無縁のみずみずしい青春ロマンスだ。主人公はアメリカ東部の大学に入学するため、バスに乗ろうとしているジェリー。いかにも内気な優等生といった風情で、昆虫オタクでもある彼の視界に突然、プーキー・アダムスという女の子が飛び込んでくる。 プーキーはジェリーとは別の大学の新入生なのだが、彼女は見かけも性格も普通の女子大生とは違っていた。文学少女風のショートヘアにべっ甲の丸縁メガネをかけ、困惑するジェリーにお構いなく「人間は70年間生きたとしても、いい時間は1分だけなのよ」などと甲高い声で一方的に奇妙なことをしゃべりまくる。バスを降りていったん別れた後も、ジェリーが入居した男子学生寮に押しかけてきて、一緒に遊ぼうと持ちかけてくる。かくして、すっかりプーキーのペースに巻き込まれたジェリーは、成り行き任せで彼女とのデートを重ねていくのだが……というお話だ。 本作が作られた1969年はアメリカン・ニューシネマの真っただ中だが、ここには『いちご白書』(70)のような若者たちの悲痛な叫びはない。翌1970年に大ヒットした『ある愛の詩』のように、身分の違いや難病といったドラマティックな要素が盛り込まれているわけでもない。ジェリーとプーキーが草原、牧場、教会などをぶらぶらとデートし、他愛のない会話を交わすシーンが大半を占めている。 しかし大学街の秋景色をバックに紡がれるこのラブ・ストーリーは得も言われぬ淡い詩情に満ちあふれており、フレッド・カーリン作曲、ザ・サンドパイパーズ演奏による主題歌「土曜の朝には」のセンチメンタルなメロディも耳にこびりついて離れない。このフォークソングはアカデミー歌曲賞候補に名を連ねたが、この年オスカー像をかっさらったのは『明日に向って撃て!』におけるバート・バカラックの「雨にぬれても」だった。 とはいえ、本作の魅力はノスタルジックな詩情だけではない。やがて中盤にさしかかるにつれ、映画のあちこちに不穏な“影”が見え隠れし始める。デートで墓場に立ち寄ったりする主人公たちに強風が吹きつけたり、プーキーがウソかマコトかわからない身の上話を告白したりと、それまで恋に夢中であることの喜びを謳い上げていた映画に、そこはかとなく嫌な予兆がまぎれ込んでくるのだ。エキセントリックな言動を連発していたプーキーが、実はただならぬ“孤独恐怖症”とでもいうべき病的な一面を抱えていることが明らかになってきて、ふたりの関係はメランコリックなトーンに覆われていく。 終盤、忽然と姿を眩ましたプーキーのことが心配になったジェリーが、ようやく彼女の居場所を突き止めてある部屋の“扉”を開けるシーンは、観る者に最悪のバッドエンディングさえ予感させ、ほとんどスリラー映画のように恐ろしい。 プーキーを演じたライザ・ミネリはご存じ代表作『キャバレー』(72)でアカデミー主演女優賞に輝いた大スターだが、それに先立って本作でもオスカー候補になっている。まるでストーカーのように押しかけてくるファニーフェイスのプーキーが、ジェリーとの恋を通してぐんぐんキュートに変貌していく様を生き生きと体現。後半には一転、ヒロインの内なる孤独の狂気をも滲ませたその演技は、今観てもすばらしい。ライザ・ミネリがまだ日本で“リザ・ミネリ”と呼ばれていた頃の映画初主演作である。 言うまでもなくラブ・ストーリーは今も昔も映画における最も“ありふれた”ジャンルだが、本作は何も特別なことを描いていないのに、一度観たら忘れられないラブ・ストーリーに仕上がっている。愛すべきキャラクターと魅惑的な詩情を打ち出し、誰もが経験したことのある恋愛の残酷な本質にそっと触れたこの映画は、今なお切ない刹那的なきらめきを保ち、ザ・シネマでの放映時に新たなファンを獲得するに違いない。■ TM, ® & © 2015 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2015.10.30
憧れのウェディング・ベル
アメリカ西海岸の都市サンフランシスコ。腕利きシェフのトム(ジェイソン・シーゲル)と心理学者を志すバイオレット(エミリー・ブラント)は、大晦日のパーティでの運命的な出会いからちょうど1年後に婚約した。 だがバイオレットに中西部のミシガン大学から採用通知が来たために結婚式の日程は棚上げに。トムは、バイオレットのキャリアを優先して一緒にミシガンに移り住むものの、実績を積み重ねていく彼女とは対照的にシェフとしてのスキルを活かせる職場が見つからず落ち込んでいく。そしてその格差は、愛しあっていたはずのふたりの関係にも影響を及ぼしてしまうのだった…。 大抵のロマンティック・コメディでは、主人公のふたりが困難を乗り越えて互いの愛情を確かめるとすぐに結婚式のシーンに切り替わって大団円を迎えたりする。でも『憧れのウェディング・ベル』はそんな「お約束」を守らない。ふたりは婚約までしながら、そこから結婚式までなかなか辿り着けないのだから。 このユニークなストーリーを書いたのは、ジェイソン・シーゲルとニコラス・ストーラーの主演俳優・監督コンビだ。実生活でも親友同士であるふたりの盟友関係は今から14年前に遡る。始まりは『Undeclared』(01〜03)というテレビ番組だった。イケてない高校生の青春をリアルに描いて一部で絶賛されながら、視聴率不振で打ち切られた『フリークス学園』(99〜00)のクリエイター、ジャド・アパトーが「今度こそは」と立ち上げたこの大学コメディには、『フリークス学園』で発掘された21歳のシーゲルがジェイ・バルチェルやセス・ローゲンらとともにキャスティングされていた。このプロジェクトに脚本家として参加したのがストーラーだったのだ。 やはりこのドラマも視聴率は振るわずに打ち切られてしまったのだが、ストーリー作りの才能を認められたストーラーは、アパトーと共同でジム・キャリーの主演作『ディック&ジェーン 復讐は最高! 』(05年)の脚本を書いてハリウッド・デビューに成功する。この作品での仕事をキャリーに気に入られたストーラーは、引き続きキャリー主演作『イエスマン “YES”は人生のパスワード』(08年)の脚本を担当。単なるノン・フィクションだった原作をコメディ・ドラマに仕立て直して大ヒットさせるという離れ業をやってのけた。 一方、シーゲルもシットコム『ママと恋に落ちるまで』(05〜14年)のマーシャル役でお茶の間の人気者となっていた。この頃には『40歳の童貞男』(05年)と『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』(07年、シーゲルは主演のセス・ローゲンの友人役で出演した)の連続ヒットでハリウッドを代表する売れっ子プロデューサー兼監督となっていたアパトーの強い勧めもあり、シーゲルは映画進出を決意する。この時に彼がパートナーとしてあらためて声をかけたのがストーラーだったというわけだ。 記念すべきコンビ第一作は『寝取られ男のラブバカンス』(08年)。突然ガールフレンドに捨てられたシーゲル扮する主人公が、傷心旅行先のハワイで巻き起こす騒動を描いたこの作品は大ヒットを記録した。 以降もシーゲルとストーラーは、スウィフトの有名な風刺小説をモダンにリメイクしたSFX大作『ガリバー旅行記』(10年、主演はジャック・ブラックだがシーゲルも出演)、『寝取られ男』に登場するロックスター、アンガスをメインキャラに据えたロード・ムービー『伝説のロックスター再生計画!』(10年、シーゲルは原案のみ)、カーミットやミス・ピギーが登場する、マペット・ショーへの愛に溢れたミュージカル『ザ・マペッツ』(11年)、そしてシーゲルとキャメロン・ディアスが、SEXを撮影したビデオが誤ってネット上で拡散されてしまう夫婦に扮したエッチな『SEXテープ』(14年)といったヒット作を生み出し続けている。特筆すべきは、どれも気軽に楽しめるコメディ映画でありながら、似ている作品はひとつとしてないこと。シーゲルとストーラーは妥協を許さないアーティストなのだ。 そんな中でも『憧れのウェディング・ベル』はビターで大人びたタッチの異色作である。ヒロインに『ガリバー旅行記』でシーゲルと既に共演していたエミリー・ブラントを起用したのは、ストーラーとシーゲルが気心のしれたメンツで映画作りに集中したかったからだろう。 本作でふたりが力を注いで描いているのは「アメリカの正式な結婚式」の面倒くささだ。アメリカというとノリがいい国に思えるかもしれないけどトンデモない! 日本の場合、一般的な婚約期間はせいぜい半年程度だけど、アメリカでは1年半くらいはザラだ。その長い間、新婦とメイド・オブ・オナー(花嫁付添人のリーダー、通常は新婦の一番の親友が就任)は工夫を凝らした結婚式のプランを延々と練り上げる。そして遂に訪れた結婚式の前夜には豪華な晩餐会を開き、二次会は新郎側と新婦側に分かれて「独身さよならパーティ」を夜通し開催する。そして翌朝、ヨレヨレになりながら本番へとなだれ込むのだ。 日本でも劇場公開されたクリステン・ウィグの主演作『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(11年、この作品もプロデュースはジャド・アパトーだ)は、社会性が欠如しているにもかかわらず、親友からメイド・オブ・オナーを頼まれてしまった女子の苦闘を描いたものだった。また日本でもヒットした『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(09年)や『バチェロレッテ あの子が結婚するなんて!』(12年)は、独身さよならパーティではしゃぎすぎて結婚式開催に赤信号を灯してしまう付添人たちを描いたコメディだ。結婚式にトラブルと笑いはつきものなのである。 でも『憧れのウェディング・ベル』の場合、主人公のふたりは晩餐会にすらなかなか辿り着けない。原題(The Five-Year Engagement)通り、婚約期間は五年にも及んでしまう。ひとつのトラブルが何とか収まったと思ったら、別の予期せぬトラブルが起きて結婚自体が仕切り直しになってしまうからだ。その間に結婚式をすっ飛ばして「デキ婚」をしたトムの同僚アレックス(今をときめくクリス・プラット!)とバイオレットの姉のスージー(アリソン・ブリー)のカップルが、どんどんハッピーになっていく姿が並行して描かれることによって、シニカルさはレッドゾーンに突入する。 もちろんロマンティック・コメディなので、主人公のふたりはラストぎりぎりになって最高の結婚式へと超特急で向かっていく。でもそこで語られるのは「結婚する心の準備とは自分の抱える問題を解決することではない。その問題をふたりで分ちあえるほど相手を信頼できているかどうかだ」という、男女の仲について悟りきった者だけが放てるメッセージだ。師匠のジャド・アパトーが45歳のときに撮った苦いファミリー・ドラマ『40歳からの家族ケーカク』(12年、シーゲルはスポーツ・ジムのインストラクター役で出演している)の境地に、シーゲルは弱冠32歳で辿り着いてしまったのかもしれない。 そのシーゲルは、クロエ・セヴィニーやミシェル・トラクテンバーグ、リンジー・ローハン、ミシェル・ウィリアムズといった華麗なガールフレンド歴を経て、現在は写真家のアレクシス・ミクスターと交際中。今度こそゴールイン間近と噂されている。はたして彼がどんな工夫を凝らした結婚式を挙げるのか、それとも式をすっ飛ばすのか、固唾を飲んで見守っていきたい。 Artwork © 2012 Universal Studios. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2015.10.30
ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン
中西部の地方都市に住むアニーは、起業に失敗して貯金もゼロの30代半ばの独身女子。楽しみと言えば幼馴染みのリリアンとバカ話をすることだけだった。そんなある日、リリアンから結婚することを告白された彼女は、ブライズメイズ(新婦介添人)の代表を頼まれて、喜んで引き受ける。でも不器用な彼女は失敗ばかり。加えて新郎の上司のセレブ妻でなんでも器用にやってのけるヘレンの存在が引き金となって、リリアンに先を越された寂しさと焦りが爆発。ブランチ・パーティをぶち壊して、ついにはリリアンと大喧嘩をしてしまう。はたして二人の友情は元通りになるのだろうか…。 結婚式の介添人が大騒動を引き起こすというプロットが、『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』を彷彿とさせたため、“女版ハングオーバー!”との前評判の中、2011年に米国で公開されてメガヒットを記録したのが『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』である。でも見終わったあとで「『ハングオーバー! 』とそっくり」と感じる観客はまずいないはず。何て言うか、もっと痛くて切ないのだ。 ティーンの頃に思い描いた未来の可能性は年々閉ざされていく。その一方で同世代の友人たちは結婚して大人へのステップを上っていく。本作はあらゆる角度から追いつめられていくアニーの心理を執拗にほじくり返す。そこに男と女という違いは存在しない。三十代ボンクラというひとりの人間がただそこにいるだけである。バカの一つ覚えのように異性を「スイーツ」呼ばわりする男子も、この映画には魂の片割れを見いだして涙するかもしれない。コメディに冷淡なアカデミー賞で脚本賞にノミネートされたのも納得の完成度だ。 映画の発案者であり、主人公アニーを演じたのは「サタデー・ナイト・ライブ」史上最高の女性キャストとの呼び声高いコメディエンヌ、クリステン・ウィグ。彼女が、古くからの友人アニー・マモロと共同で書いた脚本を持ち込んだ先は、それまでも脇役として顔を出していた『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』(07年)や『寝取られ男のラブ♂バカンス』(08年)といった映画の監督/プロデューサーだったジャド・アパトーだった。こうしたヒット作を通じて、男同士の友情をメインにした”ブロマンス映画”というジャンルを確立したアパトーは、その方程式を女子に応用したウィグの脚本を絶賛。テレビドラマ『フリークス学園』以来の盟友ポール・フェイグを監督に指名して映画を現実のものとしたのである。 コメディ映画としての本作の大きな特徴は、ギャグのボケをすべて女優がこなしているところにあるだろう。しかも生半可なギャグではなく、セックス、ゲロ、ウンコ絡みのギャグがふんだんに飛び出す過激なものだ。そんなコメディ映画はそれまでハリウッドには存在しなかった。「女性が悲惨な目に遭っても男のようには笑えない」という認識が世間では一般的だからである。普通の監督なら出演者の一部を男優に差し替えるところだろう。しかしポール・フェイグはウィグとともに「悲惨な目に遭っても笑える」最強の女性キャスト陣を選んだのである。 まずアニーの親友リリアンを演じたのはマヤ・ルドルフ。名曲「ラヴィング・ユー」で知られるミニー・リパートンの娘で、ポール・トーマス・アンダーソン夫人でもある彼女は、実生活ではロサンゼルスのコメディ劇団「グラウンドリングス」時代以来のクリステンの親友。だから映画内の二人の友情はとても真実味が感じられる。 劇中最も難しいキャラであるイヤミなヘレン役に指名されたのは、オーストラリア出身の正統派美女ローズ・バーンだ。それまで『トロイ』(04年)や『28週後…』(07年)といったシリアス映画に出演しながら、いまひとつパッとしなかった彼女は、アパトーのプロデュース作『伝説のロックスター再生計画!』(09年)でイカれたポップスター役を好演。コメディ・センスを全面開花させた本作以降は、『ネイバーズ』(14年)や『ANNIE/アニー』(14年)といった作品で活躍。コメディ界に欠かせない人材になっている。 同じオーストラリア出身でも、アニーのルームメイトの妹を演じたレベル・ウィルソンはこの時点ではアメリカでの知名度はゼロだった。だが強烈な存在感を本作で示した彼女は、『バチェロレッテ あの子が結婚するなんて!』(12年)やパワフルな歌声も披露した『ピッチ・パーフェクト』(12年)、『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』(14年)によってスターへの階段を駆け上っていった。年末に日本公開が予定されている『ピッチ・パーフェクト』(15年)は、すでに本国でメガヒットを記録しており、パート3の製作が早々と決定している。 こうした才人揃いの出演者の中でも最も観客の目を引いたのは、一番ヨゴレなメーガンを演じたメリッサ・マッカーシーだろう。それまでも『ギルモア・ガールズ』(00?07年)や『サマンサ Who?』(07?09年)といったテレビ・コメディの脇役として知られていたものの、まさか洗面室のシンクに跨って、苦痛に顔を歪めて便意と戦う!なんてギャグをやってのける人だとは誰も思わなかったはず。本作における爆発的な演技によってアカデミー助演女優賞にノミネートされた彼女は、特別出演したアパトー監督作『40歳からの家族ケーカク』(12年)や『ハングオーバー!!! 最後の反省会』(13年)でもシーンを一気にさらう怪演を披露。また当初は男の設定で脚本が書かれていたにも関わらず「男同士じゃありきたりだ」とのジェイソン・ベイトマンのアイディアによって、急遽彼の相棒役を務めることになったダブル主演作『泥棒は幸せのはじまり』(13年)は大ヒット。彼女が映画館に客を呼べるスターであることを証明した。 こうしたメリッサのスター化に伴って、監督ポール・フェイグとのコンビがレギュラー化した。サンドラ・ブロックと組んだ刑事コメディ『デンジャラス・バディ』(13年)、ジェイソン・ステイサムやジュード・ロウといった大スターを従えて主演を張ったスパイ・コメディ『SPY』(15年)は連続大ヒットを記録。後者ではローズ・バーンとのリユニオンを果たしている。 こうした作品によって一躍コメディ界のヒットメイカーとなったフェイグのもとに『ゴーストバスターズ』リメイク版の監督がオファーされたのは昨年のことだ。ビル・マーレイやダン・エイクロイド、ハロルド・ライミスといった80年代を代表する才能が集結していた傑作コメディを現代に蘇らせるには、一体どんなメンツが必要なのだろうか? 考えた末にポール・フェイグが声をかけた相手はクリステン・ウィグ、メリッサ・マッカーシー、そしてレベル・ウィルソンだった。ちなみに他のキャストは「サタデー・ナイト・ライブ」の現レギュラーであるケイト・マッキノンとレスリー・ジョーンズ、セシリー・ストロングといった面々。そう、全員女性なのだ。 このキャスティングはハリウッド中に大きな話題と物議を呼んだ。しかしフェイグは「面白いコメディアンを集めたら、たまたま女性ばかりだっただけだよ」と全く気にしていないようだ。映画は現在撮影中で来年夏に公開予定である。フェイグは決して奇をてらったわけではなく、このキャスティングに圧倒的な自信を持っているはず。それは、この『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』を観れば明らかだろう。 Artwork © 2012 Universal Studios. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2015.10.30
バチェロレッテ -あの子が結婚するなんて!
ニューヨーク。リッチで美人のレーガンはある日、高校時代の同級生ベッキーから衝撃的な告白を受ける。「あたしプロポーズされたの!」 高校時代は学園の女王として君臨していた自分が、ボーイフレンドから結婚の話が一向に出てこなくてイライラしているというのに、なんでデブでブタ顔の彼女が先に結婚するの? 激しい動揺と傷ついたプライドを隠しながら、ベッキーのブライズメイズ(花嫁介添人)の代表として式の準備を進めるレーガンのもとに、かつての女王グループ仲間であるジェナとケイティが駆けつけた。 過去の栄光とうってかわって今では冴えない毎日を送る彼女たちは、結婚式前夜のバチェロレッテ・パーティー(独身さよならパーティ)で鬱憤が爆発。調子に乗りすぎてベッキーのウェディングドレスをビリビリに破ってしまう。はたしてレーガンたちは朝までにドレスを修理することが出来るのだろうか? 試練と狂乱の一夜が始まった! 『バチェロレッテ -あの子が結婚するなんて!』は女子の、女子による、女子のためのブラック・コメディである。原作である戯曲を書いたのは女性劇作家のレスリー・ヘッドランド。1981年生まれの彼女はティッシュ・スクール(ニューヨーク大学の芸術科)卒業後にワインスタイン・カンパニーの総帥ハーヴェイ・ワインスタインのアシスタントをしながら、キリスト教の「七つの大罪」をモチーフにしたコメディ戯曲を次々とオフ・ブロードウェイで上演。『バチェロレッテ』は「暴食」をモチーフにしたシリーズの一編だったが、コメディ界のスーパースター、ウィル・フェレルと彼の相棒の映画監督アダム・マッケイの目にとまって映画化が決定。ふたりのプロデュースのもと、ヘッドランドはいきなり映画監督兼脚本家としてデビューすることになったのだった。 セックス、ドラッグ何でもありのギャグと、プライドとトラウマが交錯するダイアローグの面白さは、さすがフェレルとマッケイが認めたクオリティ。かつ女子にしか書けない細やかさに満ちている。初演出でありながらカット割りが上手いことにも驚かされる。観客に見せるべきものが何なのかを本能的に掴んでいるのだろう。ヘッドランドは、今夏にやはりフェレルとマッケイのプロデュースで、ジェイソン・セダイキスとアリソン・ブリーが主演した監督第二作『Sleeping with Other People』の公開が決まっており、その活動には今後も要チェックだ。 舞台版では自ら出演もしていたヘッドランドだが、『バチェロレッテ』の映画化に際しては同世代の女優たちに演技を委ねている。そのキャスティングが絶妙だ。 まずメイン・キャラであるレーガンを演じているのはキルスティン・ダンスト。彼女の出演が決まった時点で、本作の成功は約束されたといっていい。というのも、キルスティンは、ティーンムービーに出演していた十代の頃、学園女王役を当たり役にしていたからだ。 ざっと思い出してみるだけでも、ジョー・ダンテのカルト作『スモール・ソルジャーズ』(99)、ウォーターゲート事件の裏側を描いた『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』(99)、ソフィア・コッポラの長編デビュー作『ヴァージン・スーサイズ』(99)、そして大ヒットしたチアリーディング・スポ根モノ『チアーズ!』(00)といった作品で彼女は学園女王を演じている。サム・ライミが監督した『スパイダーマン』三部作(02?07)で彼女が主人公のピーターにとって憧れの存在であるメアリー・ジェーンを演じていたのは、すでに学園女王のパブリック・イメージを得ていたからだ。 こうした作品でキルスティンが扮していた学園女王は、オタクやボンクラにも優しい女神のような性格だったけど、『バチェロレッテ』の彼女は正反対。あんなスウィートだった子がアラサーになったら、ささくれだった性格の女子に変貌してしまっているのだから、キルスティンを昔から知る観客はそのギャップに笑うしかない。そして笑うと同時に、時間の残酷な経過を否応なしに確認させられるのだ。こんな役を敢えて受けて立ったキルスティンの度量の大きさには拍手するしかない。 三人の中では一番普通人に近いジェナを演じているのがリジー・キャプランという配役にもうなずいてしまう。ジェームズ・フランコ、セス・ローゲン、ジェイソン・シーゲルといった未来のスター俳優を輩出した伝説的なテレビ学園ドラマ『フリークス学園』(99?00)でデビューを飾った彼女が初めて注目されたのは、やはり学園コメディの『ミーン・ガールズ』(04)だった。 そこでのリジーは、リンジー・ローハン扮する主人公の友人役で登場。アフリカから転校してきた何も知らないリンジーに学園女王軍団(演じているのは当時全く無名だったレイチェル・マクアダムスとアマンダ・セイフライド!)の打倒を吹き込むクセモノを快演していた。 その後、『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)や『トゥルーブラッド』(08)といった作品に出演した彼女は本作をステップに、実在した性科学のパイオニアたちを描いた実録ドラマ『Masters of Sex』(13?)でブレイク。コメディでありながら国際問題を巻き起こした問題作『The Intereview』(14)ではフランコやローゲンとリユニオンを果たしている。 三人組の中で最もイッちゃっているケイティを演じているのは、オーストラリア出身のアイラ・フィッシャーだ。『ウエディング・クラッシャーズ』(05)での奔放な上院議員令嬢や、『お買いもの中毒な私!』(09)でのショッピング依存症の女子といった特殊なキャラほどイキイキする彼女は、実生活ではサーシャ・バロン=コーエン夫人である。なるほどコメディ・センスがハンパないわけだ。本作後も『華麗なるギャツビー』(13)や『グランド・イリュージョン』(13)などでその特異なセンスを見せつけている。 そんな美女トリオを出し抜いて最初に結婚するベッキーを演じているのが、レベル・ウィルソンであることにも注目したい。フィッシャーと同じくオーストラリア出身の彼女は、コメディエンヌとして母国で人気を獲得したあとにハリウッドに進出。その第一作『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン 』 (11)でクリステン・ウィグ扮する主人公のルームメイト役を好演して注目され、本作への出演となった。 決して美人とはいえず、体格のハンディ(?)を抱えながらも、ポジティブ思考と積極性を武器に、お高く止まった三人よりも男に不自由していないように見える彼女が演じているからこそ、ベティはこれほど血の通ったキャラクターにはなったのだと思う。レベルはこの作品での肉食キャラを本作以降も貫き通して、『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』 (13)や『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』 (14)で活躍。先日、自慢の喉を聴かせた大ヒット作『ピッチ・パーフェクト』(12)がようやく日本公開されたばかりだ。現在アメリカで大ヒット中の続編『Pitch Perfect 2』 (15)も年末には日本公開が予定されており、今後もスクリーンで暴れまくる彼女の姿を楽しめそうだ。 つい最近までは「男優と比べて女優は悲惨な目に遭っても笑えないからコメディには向いていない」なんてことが語られてきた。でもそれが真っ赤な嘘であることが『バチェロレッテ』を観れば分かるはず。紛うことない美女たちがバカをやりまくり、悲惨な一夜を体験する本作は、そういう意味ではコメディの新しい地平を切り開いた作品なのだ。 ©2012 Strategic Motion Ventures LLC
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COLUMN/コラム2015.10.27
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2015年11月】うず潮
ジャン=リュック・ゴダールなど巨匠たちが監督した6話形式のちょいエロ・オムニバス。原始・中世・近代・未来の時代ごとに生きる娼婦たちの姿を、コミカルに描いたクスッと笑える1本。ジャンヌ・モローやラクエル・ウェルチなど豪華女優陣のキュートな演技にも引き込まれ、時代時代合わせて登場するオシャレな衣装や小物も見どころです!男女問わず、ぜひ見てほしい作品です。 オープニングを飾る第1話は、原始時代を舞台にブロンドのミシェール・メルシェがラムちゃんばりの衣装で男を誘惑。第2話は、ローマ時代。エルザ・マルティネリがセクシーで豪華なドレスで夫の皇帝シーザーを健気に誘惑。第3話は、フランス中世時代。ジャンヌ・モローが強気な娼婦役に。セクシーなドレスに加え、男女の騙し合いも見どころ。第4話は、産業革命時代。ラクエル・ウェルチがグラマラスな体と恋の駆け引きで玉の輿を狙う娼婦役で男を虜に。第5話は、1960年代。ナディア・グレイが車で流す娼婦役に。60年代のファッションや当時の車のデザインがキュート!第6話は、監督・脚本にジャン=リュック・ゴダール。当時妻だったアンナ・カリーナを起用し、近未来の不思議な愛のカタチを描く。 ザ・シネマでは、世界のアートフィルムやカルト・ムービーを紹介するレギュラー枠【シネマ・ソムリエ】で本作を放送中! © 1967 Gaumont (France, Rizzoli Film (Italie), Riato Film Preben Philipsen GmbH (Allemagne)