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COLUMN/コラム2019.08.30
50歳のオードリー主演作は、 “妖精”への鎮魂歌⁉︎ 『華麗なる相続人』
「永遠の妖精」と呼ばれ、世界中の映画ファンを魅了した女優、オードリー・ヘップバーン(1929~93)。日本での人気も非常に高く、彼女のフルネームをもじった、「驚きコッペパン」などというダジャレを、多くの人々が日常的に口にしていたほどだ。 彼女が絶大なる人気を集めていたのは、『ローマの休日』(53)から『暗くなるまで待って』(67)まで、次々と名作・話題作に出演していた50~60年代に限った話ではない。『暗くなるまで…』以降は映画出演が途切れ、70年代には2本の作品にしか出演していないにも拘わらず、洋画雑誌の人気投票では、その時どきの旬の若手女優などと、常にTOPの座を競っていた。 この頃が、TVの「洋画劇場」の全盛時だったことも、大きかったと思われる。70年代後半に中坊だった我々は、『ローマの休日』『尼僧物語』(59)『マイフェアレディ』(64)『おしゃれ泥棒』(66)等々、池田昌子さんの吹替えで、ゴールデンタイムに頻繁にオンエアされるオードリー主演作にブラウン管で触れ、彼女の可憐な容姿と立ち居振る舞いに釘付けとなったものだ。 新作の製作・公開がなくとも…、いや失礼な言い方になるが、逆に新作のリリースがない分、“妖精”の魅力全開の頃の若い彼女こそが、我々にとって「リアルタイム」のオードリーであった。これこそ正に、一旦フィルムに焼き付けられた姿は年を取らない、“映画女優”のアドバンテージとも言える。 とはいえ、もちろん現実のオードリーは、齢を重ねる。彼女が40代後半になって、9年振りに銀幕復帰した『ロビンとマリアン』(76)が公開された際は、「オードリーも老けた」という声が上がると同時に、「年齢相応の輝きを放っている」という評価もされた。題材が、かの義賊ロビン・フッドと恋人マリアンの、「その後」の物語であったことや、相手役が、ジェームズ・ボンドを降りて老け役に挑むようになったショーン・コネリーだったことなども、プラスに作用したのであろう。人気投票の順位も、相変わらず高止まりであった。 そしてそれから更に3年、オードリーが50歳の時に公開されたのが、本作『華麗なる相続人』である。1979年という製作年を鑑みると、彼女の主演作として、正に万全の布陣で製作された作品だった。 原作は、シドニー・シェルダンが77年に発表した小説「血族」。シェルダンは70年代中盤から90年代まで、発表する作品のほとんどが“ベストセラー”となった、当代の流行作家であった。 多彩な人物が登場する彼の小説世界は、話の展開が早く先が読めないことが、人気を呼んでいた。ハリウッドで映画化された作品は、本作と『真夜中の向う側』(77)ぐらいだったが、TVドラマとしてシリーズ化された作品は、数多い。余談になるが、吉田栄作主演の「もう誰も愛さない」(91)など、90年代初頭に日本でブームになった、フジテレビの“ジェットコースタードラマ”は、明らかにシェルダンの小説及びアメリカでのそのドラマ化作品から、影響を受けていたものと思われる。 本作の監督を務めたのは、テレンス・ヤング。初期『007』シリーズの立役者として知られるヤングだが、オードリーとは浅からぬ縁がある。 第2次世界大戦中の大半を、オードリーはオランダのアルンヘルムで過ごし、終戦後はその郊外に在る傷病兵や退役軍人のための施設「王立廃兵院」で、ボランティアとして働いた。一方ヤングは、イギリス軍戦車部隊長として、アルンヘルム近郊で砲撃の指揮を執っており、その「廃兵院」で手当てをしてもらったこともあったという。 同じ場所で戦争を生き延びたという事実が、2人を結び付けて友情を育てたと言われる。それに加えて大きかったのは、ヤングが監督し、オードリーが長いブランクに入る直前に主演した、『暗くなるまで待って』という作品の成果であろう。 ブロードウェイでヒットした戯曲を映画化したこの作品で、オードリーは、悪漢に狙われる盲目の人妻を演じた。その役作りは高く評価され、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。 ヤングも70年代前半に受けたインタビューで、「(自作の中で好きなのは)いま作っている仕事をのぞいては『暗くなるまで待って』でしょうか。あれは、大衆的に大ヒットした映画であると同時に、世界中の映画人たちから、ほめてもらえた作品でした…」と語っている。ウィリアム・ワイラー、アルフレッド・ヒッチコック、ジョン・フォード、デヴィッド・リーン、ジョン・フランケンハイマー、ジャン=ピエール・メルヴィル、フェデリコ・フェリーニ等々、錚々たる面々から絶賛され、ヤングにとっては、『007』の監督というイメージから脱け出すきっかけとなった作品だった。 そもそもオードリーが、そのフィルモグラフィーで複数の作品で組んだ監督は、4人しか居ない。ウィリアム・ワイラー、スタンリー・ドーネン、ビリー・ワイルダー、そしてテレンス・ヤング。彼女からヤングへの信頼が厚かったことが、『暗くなるまで…』から12年の歳月を経ての、『華麗なる相続人』での再タッグに繋がったわけである。 本作は実に国際色豊かな、オールスターキャストとなっている。イギリスからジェームズ・メイスン、フランスからモーリス・ロネとロミー・シュナイダー、ドイツからゲルト・フレーベ、ギリシャからイレーネ・パパス、エジプトからオマー・シャリフといった具合に。ある者はヤングのかつての監督作に出演した縁から、またある者は、オードリーと共演出来ることが決め手となって、この作品に参集した。 『華麗なる相続人』の物語は、大製薬会社の社長が登山中に、事故を装って殺害されたことから幕開けとなる。その巨額の財産を相続した、社長の一人娘エリザベスを演じるのが、オードリーである。 彼女にも殺人者の手が迫るわけだが、容疑者となるのが、件の国際的キャストが演じる、ヒロインの血縁者たち。それぞれが犯行の動機を持ち、そしてその内の誰かが、真犯人であるという趣向だ。 こうした物語が、まるで欧米デラックス・ツアーのようなロケ地を巡りながら展開する。アメリカ・ニューヨークから、ロンドン、パリ、ローマ、地中海のサルジニア島、スイスアルプスまで、世界各地で撮影が行われた。 加えて見ものなのが、オードリーが身に纏う、華麗なるジバンシィ・ファッション。『麗しのサブリナ』(54)『パリの恋人』(57)『ティファニーで朝食を』(61)などの作品で、オードリーとは切っても切り離せない関係であったファッションデザイナーのユベール・ド・ジバンシィが、この作品でも彼女のために8点のドレスを提供している。 さてこれだけお膳立てを揃えた、“妖精”オードリー待望の、3年振りの最新主演作。いざ公開の段になってみると、批評家、一般観客双方から、見事にそっぽを向かれる結果となった。 はっきり言えば、色々と“無理”があったのだ…。 先にも記したが、シドニー・シェルダンの小説は、そのほとんどが映画化はされていない。膨大なキャラクターが登場し入り組んだ人間関係を展開する、その作品世界は、TVの連続ドラマには適しても、2時間前後でまとめ上げなければならない映画には、基本的に不向きなのである。 それ故映画化に当たっては、脚本の段階で換骨奪胎を目指すぐらい、相当な割愛と整理、再構成が必要になる。しかし本作の場合、良く言えばシェルダン原作持ち前の“ジェットコースター”のような展開で見せるが、悪く言えば、かなり粗雑なダイジェストとなってしまっている。この辺りテレンス・ヤングの腕をもってしても、如何ともし難い脚本だったのだろうか? 何よりも一番の“無理”は、オードリー主演に合わせて改変された、ヒロインの年齢設定。劇中で、殺された父親の歳が、64歳だったことが示されるが、誰もがその時点で「!?」となる。実年齢50歳のオードリー演じるエリザベスは、一体何歳という設定なのか?そもそも原作では、ヒロインは20代半ばだったのに…。 当初はジャクリーン・ビセットなど、当時30代の人気女優を主演に想定して、進められていた企画だった。しかしオードリーの起用によって、ヒロインは「年齢不詳」になってしまったのだ。この辺り資料によっては、オードリーの主演を喜んだ原作者のシェルダンが、主人公の年齢を「35歳」に変えたとも記述されている。 「年齢不詳」にしても「35歳」にしても、何だかな~という思いは、否めない。今回本作を再見してみて、近年の吉永小百合主演作品を鑑賞する際に抱くものと、同じような感慨を抱いた。前作の『ロビンとマリアン』では、せっかく年齢相応の役どころで評価されたのに、このあたり“女優”の性(さが)とでも言うべきなのか? 因みに本作は、製作当時2度目の結婚生活が暗礁に乗り上げていたオードリーには、新たなロマンスをもたらしたとも言われている。劇中でオードリーの相手役を務めるベン・ギャザラとは、“不倫”の関係だったという。オードリーとギャザラは本作の後すぐに、ピーター・ボグダノヴィッチ監督の『ニューヨークの恋人たち』(81/日本未公開)で再共演している。 …というわけで、オードリーを主演に、当時の大ベストセラーを国際的オールスターキャストで映画化した、『華麗なる相続人』。その楽しみ方を最後に提示して、〆とした。 有名ロケ地や豪華キャストを捉えた、名手フレディ・フランシスの美しい撮影、ジバンシィがデザインした艶やかな衣装などを、エンニオ・モリコーネの流麗な音楽をBGMに、まずは堪能する。その上で作品の展開に関しては、家族や友人などと“ツッコミ”を入れながら観るのが、モアベターな鑑賞法と言えるだろう。 また何だかんだ言っても、世界の映画史に燦然と輝く、“妖精”の1979年の姿を目の当たりにするだけでも、上映時間の116分を割く価値は十分にあると、私は考える。■
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COLUMN/コラム2016.07.09
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2016年8月】にしこ
サスペンスの王様、アルフレッド・ヒッチコックのごく初期の初期の作品。もちろん期待に応えます!スピーディーな展開で最後までハラハラさせるサスペンスです。 19世紀末のロンドン。火曜の夜にブロンド女性が殺されるという連続殺人事件が発生。ロンドンの街は恐怖のどん底に!下宿屋を営む夫婦にもキュートなブロンドの一人娘デイジーがおり、夫婦は気をもんでいたがデイジーに思いを寄せる男、刑事のジョーは彼女の両親に「自分がいるから大丈夫」アピール。ある日、マントに身を包んだ不気味な男が部屋を貸してほしいと夫婦が営む下宿を尋ねてくる。夫婦は怪しく思いながらも彼に部屋を貸すが、彼が火曜の夜に家を抜け出していくのを不審に思い始める。さらに一人娘のデイジーがその男と段々親密になってきて…!! ぎーやぁーーーーー!!! という感じでして、70分強の作品なのですがこれが最後まで犯人がわからずひやひやします。さらに言うとこの作品、サイレントなんです!!最低限のセリフと本当に最低限の状況描写だけがテロップでたまーに出てくるだけで、あとは全て画作りで観客に内容を理解させ、さらにハラハラまでさせるんですから、「ヒッチコック、鬼やべぇ」のひとことです。 下宿人がいかに怪しげな男かを演出する為に、いろんな飛び小道具でサスペンスフルに仕立てているのもお見逃しなく。監督自身が観客を怖がらせようと楽しんで作ったのが感じられる素敵な1本です。
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COLUMN/コラム2015.05.01
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2015年5月】にしこ
ひたすら真面目に生き、妻と子供を深く愛する男。貧しいけれど家族がいれば幸せ。そんな好人物がとんでもない悲劇に見舞われるという、おそろしい物語。ヘンリー・フォンダ演じるマニーはプロのミュージシャン。華やかなナイトクラブに勤め、金持ちのお客相手に演奏をする日々だが、ひがんだり欲を出したりせず、愛する妻と子供がいる生活に幸せを感じている。ある日、妻ローズの歯の痛みを治す為にまとまった金が必要になり借り入れの為に訪れた保険会社の受付で悲劇が!先日保険会社に入った強盗に顔が似ていた、それだけの事で警察から事情聴取を受ける事に…特筆すべきは、妻ローズを演じるヴェラ・マイルズの演技。繊細で優しすぎる為、ふってわいた災難を受け入れられず自分を責める形で精神のバランスを崩し始める様子は、本筋のサスペンス要素以上にハラハラさせられます。冒頭、自分の監督作に出演する事の多いヒッチコックがいつになく深刻な面持ちで登場します。「これは実際にあった物語である」。冤罪とはかくも簡単に起こり得るものだと。それはいつも簡単に人の人生を崩壊させると。時代考証を差し引いても実に恐ろしいのであります。 TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.
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COLUMN/コラム2013.10.18
「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイド最終回【デザイナー編】
長年モードの世界に身を置かれ、その歴史を見てこられた田口淑子さんに再び解説して頂きます。映画本編の華麗なるファッションの世界のエッセンスがちりばめられた必読ガイドです!! ■ライフスタイルを提案するラルフ・ローレン ラルフ・ローレンのメンズコレクションはミラノで開催されていた。「アルマーニ」や「グッチ」、際立つラグジュアリーブランドが多いミラノメンズの中でも、ラルフ・ローレンの演出は異色だった。門扉をくぐったところからすでに会場の演出は始まっていて、日常とは違う空間が出現する。玄関まで点々とキャンドルが灯され、前庭には布製のソファが点在。黒服のギャルソンが、銀のトレーでウエルカムシャンパンをサービスしてくれる。部屋の壁にはいくつもの肖像写真が飾られ、いたるところが花でいっぱい。客席の椅子も、カーテンも、全てがニューイングランドスタイル。「ギャッツビーの邸宅ようだ」と、私と同じ感想をもった、取材するジャーナリストはきっと多かったことと思う。 「華麗なるギャッツビー」はジャズエイジのアメリカ、ロングアイランドが舞台。女たちのドレスは、ラッフルやフレアのある典型的なフェミニンタイプ。シフォンやデシンの薄い布地にはビーズやフリンジがあしらわれ、キャップ型ヘッドドレス、オーストリッチのストール、シームのある絹のストッキングと、どれもが装飾的でデカダンなスタイルだ。 そしてギャツビーの衣裳はラルフ・ローレンがデザインしている。この映画を観る時は、三つ揃いのスーツの、衿のVゾーンに注目してほしい。シャツ、ネクタイ、ジャケット、三つのアイテムの色の配分とデイテールの遊び心の表現が、着る人によって微妙な違いを見せているのだ。この時代のスーツは今も古くなっていないどころか、アメリカントラッドのお手本の最高峰として、おしゃれ好きな男たちにとっては必見の、永遠の映画なのである。ジュエリーはカルティエが担当した。今年、ミウッチャ・プラダがレディス、ブルックス ブラザーズがメンズ、ジュエリーをティファニーが担当したリメーク版が公開されて話題になった。2つの作品を比較してみると、映画の制作年度である1974年当時と2012年の、それぞれの時代性が、‘20年代のファッションに、複層的に投影されているのがわかってきて興味深い。 ■アートとモードを融合させた石岡瑛子 「ドラキュラ」は石岡瑛子が衣装と美術を担当。冒頭の15世紀、まだ吸血鬼になる前のトランシルバニアの王ドラキュラが戦で装着する甲冑は、流線型の造形が未来的。衣裳というよりはもはやアート作品と言えるだろう。やがて舞台は400年後、19世紀末のロンドンに移る。ウイノナ・ライダー演ずる、ドラキュラが恋したミナのドレスは、いかにも貞淑な良家の子女風の控えめな色とデザイン。男たちの服装も時代考証にほぼ忠実に、フロックコートやシルクハットを再現している。石岡瑛子ならではのアート性を遺憾なく発揮したのが、ミナの友人ルーシーの「死のウエディングドレス」だ。純白のレースの、エリザベスカラーと、長くトレーンを引くヘッドドレスのボリューム感が息をのむほど美しく、「ドラキュラ」が1992年度のアカデミー賞、衣裳デザイン賞を受賞したのも大いにうなづける。 ■女優の衣装を革新した人、イデス・ヘッド 「泥棒成金」のグレース・ケリーの衣装デザインはイデス・ヘッド。彼女は「裏窓」以来の、ヒッチコックのお気に入りで常連スタッフ。オードリー・ヘプバーンの「ローマの休日」や、サブリナパンツが今も若い女性の定番ボトムスになっている、「麗しのサブリナ」の衣裳も彼女の手による。グレース・ケリーのクールビューティを最大限に引き出す、ゴテゴテと飾り立てない衣裳のシンプルさは、当時革命的だったろうと思う。イデスの写真を見ると、もし彼女が今生きていたらコムデギャルソンやヨウジヤマモトの前衛的なクリエーションに共感したに違いないと思わせる、知的で職人的な雰囲気の人だ。 ■トム・フォードの完璧な美学 トム・フォードの初監督作品、「シングルマン」。トムの経歴をたどると、1990年「グッチ」のデザイナーに就任。どちらかというとコンサバティブなハイクラスのマダム御用達だったブランドを、一躍世界のラグジュアリーファッションの筆頭ブランドに変革した立役者だ。その後、自分のブランド「トム・フォード」を設立し、ビジネスの規模を拡大するのが第一のテーマではなく、トム自身の美学のもと、真のラグジュアリーとは何かを追求し続けている。 「シングルマン」でコリン・ファース演ずる大学教授ジョージの隙のないワードローブ。スーツ、シャツ、ナイトガウン。アクセサリーでは、左手小指の指輪、靴、ブリーフケース、眼鏡。全てがトム・フォードならでは完成度だ。トムが自分のブランドで目指していることは、この映画で彼が表現したかったこととぴったりと重なっている。ジョージが着る何気ない白いシャツが、なぜこれほど存在感を持ち、ジョージの個性を表現し、視覚的な美しさを讃えているのか、その答えを映画を見ながら一考してみていただきたい。「シングルマン」はここ数年の映画の中で、最もファッション性が高く表現された作品と言えるだろう。 ■ ■ ■ 【特集「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイド】 10月特集「映画はファッションの教科書!」は10/17(木)-20(日) 【再放送】 10/28(月)-31(木)の日程で 下記11作品でお送りします! ドラキュラ(1992)ロミオとジュリエット(1968)陽のあたる場所英国王のスピーチグロリア(1980)華麗なるギャツビー(1974)ドリームガールズサタデー・ナイト・フィーバーラブソングができるまでシングルマン泥棒成金 コラムで予習、映画本編で答え合わせ!!映画を教科書にして、ご自身の着こなしに取り入れてみてはいかがでしょうか?■
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COLUMN/コラム2013.10.01
「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイドその1
年に一度の映画界最大の式典といえばアカデミー賞授賞式。その年最高の映画が決まるとともに、その時を代表するセレブ達のトップが決まる授賞式でもある祭典でもある。そこで注目したいのは、そのときどきを刻む衣装。授賞式当日のセレブ達のきらびやかなドレスもそうだけど、最優秀衣装デザイン賞を受賞した作品は、有名デザイナーがデザインした衣装がズラリ。 たとえば、古くは1956年の『泥棒成金』は、『ローマの休日』などの衣装デザインを担当したハリウッド映画衣裳デザインの第一人者であったイデス・ヘッドが担当(彼女は衣装デザイン賞を8回も受賞している)。衣装をポイントにして映画を観ると、その時代のトレンドや、描かれた時代の再解釈、そしてデザイナーの本気が見えてくる。 忘れられないのが、1977年の大ヒット作『サタデー・ナイト・フィーバー』のような作品。この映画で出てきた衣装は70年代アメリカの若者達のトレンドが浮き彫りになったことでも知られる。これは当時の流行のメインではなく、サブカルチャーの中で流行ったものだけど、それが後にメインになり、そして廃れ、また近年のヒップホップシーンにおいて再解釈されていることを考えると、その影響力は計り知れないことがわかるだろう。 同様の作品としては2006年のノミネート作『ドリームガールズ』も60年代アメリカのR&B界のファッションシーンが映し出されているが、これまた流行は一巡して、今観ても新しい衣装に見えるから不思議。また、時代ものの映画はストーリーもさることながら、コスプレならではの華麗な衣装から観た方が、よほど親しみやすいというもの。 オリビア・ハッセー・ブームを巻き起こした1968年の受賞作『ロミオとジュリエット』なんて、衣装の魅力がジュリエットの可憐な美しさを引き立ててるし、2010年のノミネート作『英国王のスピーチ』も今ほどオープンではなかった戦前の英国王室の荘厳さを、宮殿や社交界のシーンで実感できる。 そういった中でも特筆すべきは、石岡瑛子にオスカーをもたらした1992年の『ドラキュラ』は必見作。以後の彼女が手がけた「ザ・セル」やこちらもアカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされた「白雪姫と鏡の女王」にも観られる、西洋のゴシック様式と日本の着物や甲冑からモチーフを得たデザインの原点ともいえる衣装の数々が目にできるのだから。 そして忘れてはならないのは、有名デザイナーたちによる衣装! 今年リメイク版が公開された1974年の受賞作『華麗なるギャツビー』は、ラルフ・ローレンが衣装デザインを担当。1920年代アメリカン上流社会を舞台にしたこの作品は、いかに上流社会の人々の優雅さを表現するかで、我々がよく知るラルフ・ローレンが貢献していたというだけで、興味がわくところ(ちなみにリメイク版はブルックス・ブラザーズとプラダが担当した)。 有名デザイナーが担当してオスカーを得た作品でいえば、当時既にファッション界のカリスマであったエマニュエル・ウンガロが担当した1980年の『グロリア』あたりもチェックを。 また、受賞こそ逃したが、元グッチ、イヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターで現代ファッション界を代表するトム・フォードが監督と衣装デザインを担当した2009年の『シングルマン』は、ファッション・デザイナーのセンスで描かれた映画だけに、おしゃれ好きの人のマスト・リスト。「これが衣装デザイン賞を逃すなんて、どうかしてるよアカデミー! だって、トム・フォードだよ?」と、授賞式当時は現地マスコミの間でもヤジが飛んだほど。彼が常に提案しているトラッドとセクシーの見事な融合を、一編の映像にまとめた希有な作品だ。映画に詳しくない人も、たくさんは観ていないという人も、衣装から観ると映画、そしてアカデミー賞が楽しく見えてくる。ちょっと視点を変えてみてはいかが?■ ■ ■【特集「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイド】は最終回「デザイナー編」へと続きます。次回の更新は10月16日を予定しております。最終回も、ファッションのプロである田口淑子さんに引き続き、映画とファッションの「深い関係」を解説していただきます。乞うご期待下さい!そして、10月特集「映画はファッションの教科書!」は10/17(木)-20(日) 【再放送】 10/28(月)-31(木)の日程で 下記11作品でお送りします! ドラキュラ(1992)ロミオとジュリエット(1968)陽のあたる場所英国王のスピーチグロリア(1980)華麗なるギャツビー(1974)ドリームガールズサタデー・ナイト・フィーバーラブソングができるまでシングルマン泥棒成金 ぜひ映画本編でも、数々のファッションをお楽しみ下さいませ!■
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COLUMN/コラム2012.04.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年5月】銀輪次郎
冒頭オープニングのテーマ曲から強烈。何だかこれからとんでもないことが起こるのではないかと思わせる荒々しいバイオリンの旋律に、手のひらがじわっと汗ばんでくるのは気のせいでしょうか。それはさておき、物語は会社のお金を横領したOLのマリオンがベイツ・モーテルに滞在することから始まります。かの有名なシャワーシーンもこのモーテルでの出来事。随所に光るヒッチコックの映像と音楽の演出手腕に、文字通りびっくりさせられる作品です。ヒッチコック恒例のカメオ出演は作品冒頭、マリオンが事務所に戻ってくるシーン。窓越しに一瞬登場しますので、こちらもお見逃しなく! © 1960 Shamley Productions, Inc. Renewed 1988 by Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.