ひたすら真面目に生き、妻と子供を深く愛する男。貧しいけれど家族がいれば幸せ。そんな好人物がとんでもない悲劇に見舞われるという、おそろしい物語。
ヘンリー・フォンダ演じるマニーはプロのミュージシャン。華やかなナイトクラブに勤め、金持ちのお客相手に演奏をする日々だが、ひがんだり欲を出したりせず、愛する妻と子供がいる生活に幸せを感じている。ある日、妻ローズの歯の痛みを治す為にまとまった金が必要になり借り入れの為に訪れた保険会社の受付で悲劇が!先日保険会社に入った強盗に顔が似ていた、それだけの事で警察から事情聴取を受ける事に…
特筆すべきは、妻ローズを演じるヴェラ・マイルズの演技。繊細で優しすぎる為、ふってわいた災難を受け入れられず自分を責める形で精神のバランスを崩し始める様子は、本筋のサスペンス要素以上にハラハラさせられます。冒頭、自分の監督作に出演する事の多いヒッチコックがいつになく深刻な面持ちで登場します。「これは実際にあった物語である」。冤罪とはかくも簡単に起こり得るものだと。それはいつも簡単に人の人生を崩壊させると。時代考証を差し引いても実に恐ろしいのであります。

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