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PROGRAM/放送作品
プラチナ・シネマ トーク<5月総集編>
ザ・シネマの週間イチオシ作品枠、土曜字幕・日曜吹き替え夜9時「プラチナ・シネマ」の解説番組総集編
映画ソムリエの東紗友美が、毎週、著名な有名映画ライターや評論家を迎えて送る、イチオシ枠「プラチナ・シネマ」直前の映画解説ミニ番組。その5分番組をまとめた月間総集編。
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COLUMN/コラム2017.04.02
【本邦初公開】東西冷戦下のモスクワで育まれるイデオロギーを超えた男女のささやかな愛。当時のロシアを知る映画ライターが作品の魅力と知られざるソ連の素顔に迫る!〜『ペトロフカの娘』〜04月27日(木)深夜ほか
出演はゴールディ・ホーンにハル・ホルブルック、アンソニー・ホプキンス。そして監督は、以前にここでもご紹介した切ない系青春映画の傑作『愛すれど心さびしく』(’68)の名匠ロバート・エリス・ミラー。この顔ぶれにして、なぜか今まで日本では劇場未公開。それどころかテレビ放送やソフト発売すらされていなかった幻の作品が、この『ペトロフカの娘』(’74)である。 ペトロフカとは、ロシアのモスクワ中心部にある大通りのこと。ネタバレになりかねないので深くは言及しないが、ここには名前の由来となったヴィソコ・ペトロフスキー修道院やロシアン・バレエの殿堂ボリショイ劇場、そして権力の象徴たるモスクワ警察署が存在し、今では高級ブランドのブティックが軒を連ねるショッピングストリートだ。 実は筆者、このペトロフカ通りから徒歩で15分くらいの場所に住んでいた。時は’68年~’72年、そして’78年~’83年。大手マスコミのジャーナリストだった父親がモスクワ特派員として2度に渡って赴任し、家族ともども暮らしていたのだ。当時はまだ東西冷戦の真っ只中。ソビエト連邦はブレジネフ書記長の政権下にあった。そんな鉄のカーテンの向こう側を知る人間として、本作はいろいろな意味で興味深い映画だ。 ストーリーは東西の壁に阻まれた男女の悲恋ドラマである。主人公は米国新聞社のモスクワ特派員ジョー(ハル・ホルブルック)。妻に先立たれたばかりの彼は、現地の友人コスチャ(アンソニー・ホプキンス)を介してオクチャブリーナ(ゴールディ・ホーン)というロシア人女性と知り合う。自由奔放にして天真爛漫。口を開けば歯に衣着せぬ物言いだが、やたらと尾ひれや背びれを付けるので、何が本当で何が嘘なのかよく分からない。仕事もなければモスクワの居住許可証もないが、政府高官をはじめとする男たちの間を渡り歩いて逞しく生きている。ゴールディ・ホーンのコケティッシュでキュートな不思議ちゃんキャラがなんとも魅力的だ。 ちなみに、オクチャブリーナとはロシア語の10月、オクチャーブリ(Октя́брь)に由来する名前。10月といえばソビエト政権樹立のきっかけとなった十月革命。それゆえ、男ならオクチャーブリン、女ならオクチャブリーナと名付ける親がソビエト時代は多かった。ただし、ロシア語ではアクセントのないOをアと発音するので、厳密に言うと10月はアクチャーブリ、ヒロインの名はアクチャブリーナと発音すべきなのだが、本作ではセリフも字幕も英語読みとなっている。 で、そんなオクチャブリーナに振り回されつつも、いつしか強く惹かれていくジョー。当局の目をかいくぐっての異文化交流がやがて恋愛へと発展していくわけだが、しかしそんな2人の間に厳格なソビエトの社会体制が立ちはだかる…という筋書きだ。 原作は1971年に出版された同名小説。著者のジョージ・ファイファーは本来ノンフィクション作家で、ソビエト時代のロシアに関する著書も数多い。本人が実際にどれだけ現地へ足を運んだことがあるのかは定かでないが、ある程度の正確な知識や情報を持っていたであろうことは、この映画版を見れば想像に難くない。とはいえ、原作と映画は基本的に別物と考えるのが妥当だと思うので、ここではあくまでも映画版に焦点を絞って話を進めていこう。 まず、本作に登場するモスクワの風景や街並みが明らかに本物と違うのは仕方あるまい。なにしろ、ソビエト体制の矛盾に斬り込んだ内容なので、当時のモスクワでの撮影は絶対に不可能だ。選ばれたロケ地はオーストリアのウィーン。マット合成で赤の広場を背景に差し込むなどの工夫は凝らされているものの、建築様式の違いなどは見た目に明らかだ。それよりも筆者が少なからず違和感を覚えたのは、主人公ジョーとロシア人コスチャの友人関係である。当時のソビエトで外国人と現地人が交流することは別に違法ではなかったものの、現実には限界があったと言えよう。特に現地人にとってはリスクが高い。なぜなら、万が一の時にスパイの嫌疑をかけられる可能性が生じるからだ。特に主人公ジョーのようなジャーナリストには、KGBの尾行が付くことも十分に考えられる。筆者の父親も日頃から尾行は意識していたようだし、実際に自宅アパートの電話は常時盗聴され、通りを挟んだ向かい側のアパートからも部屋が監視されていた。本作の場合、当時の社会状況や主人公の職業を考えると、現地人のアパートへ気軽にふらりと立ち寄る彼の行動は軽率だ。 なので、西側から来た外国人が日常的に付き合う現地人となると、仕事の一環を兼ねての政府関係者か、もしくは当局から派遣された外国人専用のメイドや秘書(人材派遣センターはKGBの管轄で、彼らは派遣先で見聞きしたことを報告していた)などにおのずと限られてしまう。と考えると、ジョーとコスチャの親密な友人関係は、決してあり得ないとは言わないまでも、あまり現実的ではない。 その一方で、オクチャブリーナがジョーの住む外国人専用アパートを訪れる際、塀を乗り越えて裏口から侵入するというのは結構リアルな描写だ。当時、モスクワ市内には外国人専用アパートが何か所もあり、その正門にはミリツィアと呼ばれる武装した民警兵士が常駐していた。居住者はもちろん顔パスだが、現地人はそこで許可証をチェックされる。なので、オクチャブリーナのように一見すると無茶な手段も仕方ないのだ。 ちなみに、筆者の父親にも現地民間人の友人はいた。その方は日本語が話せたので、電話連絡は全て日本語で。自宅へ招くときは疑われないよう、外国人の泊まる高級ホテルで落ち合い、父の運転する自家用車で正門からアパートへと直接入った。さすがに外国人ナンバーの車まではミリツィアもチェックしないからだ。そういう意味では、意外と緩いところもあったのである。 実際、当時のソビエトの市民生活は、外から想像するよりも遥かにのんびり平穏だった。もちろん、日本ではあり得ないような制約は多かったし、言論や移動の自由も全くないし、文化的にはだいぶ遅れているし、生活レベルも高いとは言えなかったものの、その一方でモスクワ市内に点在するルイノックと呼ばれる市場では新鮮な肉や野菜が沢山揃っていたし、有能でも無能でも誰もが平等に一定の給料を貰えるし、不祥事さえ起こさなければ仕事をクビになることもない。とりあえず体制に盾ついたりせず、贅沢を望んだりしなければ、それなりに楽しく生活できたのだ。建前上は民主主義国家として市場経済の導入された現在のロシアで、ソビエト時代を懐かしむ声が多い理由はそこにある。 そうやって振り返ると、本作で描かれるモスクワの市民生活はけっこう正しい。とはいえ、ちょっと時代的に古くも感じる。例えば本作ではジャズが当局から禁止されていて公衆の面前で演奏することが出来ないとされているが、しかしそれは’50年代までのこと。’60年代以降は大規模なジャズ・フェスティバルも各地で開かれていたし、当局の認可するジャズクラブも存在した。’75年にソロ・デビューした女性歌手アーラ・プガチョワはジャズやロック、R&Bなどを積極的に取り入れてロシアの国民的大スターとなったし、彼女に多くのヒット曲を提供したラトヴィア出身の作曲家レイモンズ・パウルスは’60年代から活躍するジャズ・ミュージシャンだった。’70年代には西側の流行音楽も数年遅れで入っており、例えば’74年にはTレックスのレコードも正規版でリリースされている。なので、本作は『ニノチカ』(’39)の時代辺りでストップしたソビエト観の基に成り立っているとも言えよう。 その一方で、本作は当時の多くのハリウッド映画に登場したような、体制側に洗脳されたロボットのような人間、死んだような目でクスリとも笑わない陰鬱な人間としてではなく、アメリカ人と何ら変わることない等身大の人間として、ロシア人を描いている点は特筆に値する。実際に昔からロシア人は陽気で大らかで人懐っこい人が多かった。劇中に出てくる政府高官のように、お堅い役人でもいったん仕事を離れると気さくだったりする。その点はまさにその通り!といった感じだ。 ちなみに、劇中では役人や警察への賄賂としてアメリカ製のタバコが使われているが、他にもいろいろと賄賂に有効なものはあった。筆者の父親がよく使っていたのは日本航空の水着カレンダー。あとは、ひっくり返すと女性の水着が消えてヌードになるボールペンも効果抜群だったので、西側へ旅行した際にはまとめ買いしてきたものだった。やはり世の東西を問わず人間はスケベなのだ。 モスクワ市民のささやかな日々の営みを、時に瑞々しく、時に爽やかに、そして時に切なく描くロバート・エリス・ミラーの演出も素晴らしい。ラストへ向けての抒情感溢れる哀しみなどは、まさしく彼の真骨頂。そういえば、先述した筆者の父親の友人は、とある事件を起こして当局に逮捕されてしまった。実は生活の足しにと現地通貨のルーブルを、うちの両親がこっそりドル紙幣に両替してあげていたのだが、どうやら彼はそれを闇市で転売していたらしく、KGBのおとり捜査に引っかかってしまったのだ。その煽りでうちの父親はスパイ容疑の濡れ衣を着せられ、共産党機関紙プラウダでも報じられた。たまたま本社から帰国の辞令が出ていたので、我が家に関しては大事に至らなかったのだが、父の友人は強制労働送りになったはずだ。あの日、彼の奥さんが泣いて取り乱しながら我が家に電話をかけてきた。ほっそりとした華奢な体に憂いのある瞳の、とても美しい女性だった。筆者は息子さんとも仲が良かった。あの一家は今どうしているだろうか。本作の哀しいラストを見ながら、ふと思い出してしまった。■ © 1974 by Universal Pictures. All Rights Reserved.
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PROGRAM/放送作品
プラチナ・シネマ トーク 5月
ザ・シネマの週間イチオシ作品枠、土曜字幕・日曜吹き替え夜9時からの「プラチナ・シネマ」の直前解説番組
映画ソムリエの東紗友美が、毎週、著名な有名映画ライターや評論家を迎えて送る、イチオシ枠「プラチナ・シネマ」直前の映画解説ミニ番組。週末のお休み前のひととき、最高の映画鑑賞時間の幕が上がるのはここから!
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COLUMN/コラム2013.10.01
「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイドその1
年に一度の映画界最大の式典といえばアカデミー賞授賞式。その年最高の映画が決まるとともに、その時を代表するセレブ達のトップが決まる授賞式でもある祭典でもある。そこで注目したいのは、そのときどきを刻む衣装。授賞式当日のセレブ達のきらびやかなドレスもそうだけど、最優秀衣装デザイン賞を受賞した作品は、有名デザイナーがデザインした衣装がズラリ。 たとえば、古くは1956年の『泥棒成金』は、『ローマの休日』などの衣装デザインを担当したハリウッド映画衣裳デザインの第一人者であったイデス・ヘッドが担当(彼女は衣装デザイン賞を8回も受賞している)。衣装をポイントにして映画を観ると、その時代のトレンドや、描かれた時代の再解釈、そしてデザイナーの本気が見えてくる。 忘れられないのが、1977年の大ヒット作『サタデー・ナイト・フィーバー』のような作品。この映画で出てきた衣装は70年代アメリカの若者達のトレンドが浮き彫りになったことでも知られる。これは当時の流行のメインではなく、サブカルチャーの中で流行ったものだけど、それが後にメインになり、そして廃れ、また近年のヒップホップシーンにおいて再解釈されていることを考えると、その影響力は計り知れないことがわかるだろう。 同様の作品としては2006年のノミネート作『ドリームガールズ』も60年代アメリカのR&B界のファッションシーンが映し出されているが、これまた流行は一巡して、今観ても新しい衣装に見えるから不思議。また、時代ものの映画はストーリーもさることながら、コスプレならではの華麗な衣装から観た方が、よほど親しみやすいというもの。 オリビア・ハッセー・ブームを巻き起こした1968年の受賞作『ロミオとジュリエット』なんて、衣装の魅力がジュリエットの可憐な美しさを引き立ててるし、2010年のノミネート作『英国王のスピーチ』も今ほどオープンではなかった戦前の英国王室の荘厳さを、宮殿や社交界のシーンで実感できる。 そういった中でも特筆すべきは、石岡瑛子にオスカーをもたらした1992年の『ドラキュラ』は必見作。以後の彼女が手がけた「ザ・セル」やこちらもアカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされた「白雪姫と鏡の女王」にも観られる、西洋のゴシック様式と日本の着物や甲冑からモチーフを得たデザインの原点ともいえる衣装の数々が目にできるのだから。 そして忘れてはならないのは、有名デザイナーたちによる衣装! 今年リメイク版が公開された1974年の受賞作『華麗なるギャツビー』は、ラルフ・ローレンが衣装デザインを担当。1920年代アメリカン上流社会を舞台にしたこの作品は、いかに上流社会の人々の優雅さを表現するかで、我々がよく知るラルフ・ローレンが貢献していたというだけで、興味がわくところ(ちなみにリメイク版はブルックス・ブラザーズとプラダが担当した)。 有名デザイナーが担当してオスカーを得た作品でいえば、当時既にファッション界のカリスマであったエマニュエル・ウンガロが担当した1980年の『グロリア』あたりもチェックを。 また、受賞こそ逃したが、元グッチ、イヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターで現代ファッション界を代表するトム・フォードが監督と衣装デザインを担当した2009年の『シングルマン』は、ファッション・デザイナーのセンスで描かれた映画だけに、おしゃれ好きの人のマスト・リスト。「これが衣装デザイン賞を逃すなんて、どうかしてるよアカデミー! だって、トム・フォードだよ?」と、授賞式当時は現地マスコミの間でもヤジが飛んだほど。彼が常に提案しているトラッドとセクシーの見事な融合を、一編の映像にまとめた希有な作品だ。映画に詳しくない人も、たくさんは観ていないという人も、衣装から観ると映画、そしてアカデミー賞が楽しく見えてくる。ちょっと視点を変えてみてはいかが?■ ■ ■【特集「映画はファッションの教科書!」を3倍楽しむための必読ガイド】は最終回「デザイナー編」へと続きます。次回の更新は10月16日を予定しております。最終回も、ファッションのプロである田口淑子さんに引き続き、映画とファッションの「深い関係」を解説していただきます。乞うご期待下さい!そして、10月特集「映画はファッションの教科書!」は10/17(木)-20(日) 【再放送】 10/28(月)-31(木)の日程で 下記11作品でお送りします! ドラキュラ(1992)ロミオとジュリエット(1968)陽のあたる場所英国王のスピーチグロリア(1980)華麗なるギャツビー(1974)ドリームガールズサタデー・ナイト・フィーバーラブソングができるまでシングルマン泥棒成金 ぜひ映画本編でも、数々のファッションをお楽しみ下さいませ!■
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PROGRAM/放送作品
プラチナ・シネマ トーク 4月
ザ・シネマの週間イチオシ作品枠、土曜字幕・日曜吹き替え夜9時からの「プラチナ・シネマ」の直前解説番組
映画ソムリエの東紗友美が、毎週、著名な有名映画ライターや評論家を迎えて送る、イチオシ枠「プラチナ・シネマ」直前の映画解説ミニ番組。週末のお休み前のひととき、最高の映画鑑賞時間の幕が上がるのはここから!
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COLUMN/コラム2012.03.01
映画の中のニューヨーク
■映画を彩る街・ニューヨーク もしもアカデミー賞にロケーション部門があったら、ニューヨークの街はノミネートのほとんどを独占してしまうことだろう。それだけたくさんの映画の舞台となり、魅力的な姿を映し出して来たニューヨーク。この街のあの場所が描かれて来た舞台裏を知ると、映画の中のニューヨークをより楽しめるようになる。いわゆるニューヨークと呼ばれるエリアは、マンハッタン島を中心に合計5つの区域で成り立っている。中心にあるマンハッタン島と隣のブルックリンには3本の橋が渡っており、最も南に位置し、最も美しいと言われ数々の映画でも描かれてきたのがブルックリン橋(2)。 アメリカで屈指のコメディ俳優、ベン・スティラーが監督した『僕たちのアナ・バナナ』ではマンハッタンから見て橋の向こう側、ダンボ地区にあるブルックリン・ブリッジ・パーク(3)がロケ地として使われている。映画同様、このあたりからはマンハッタンの美しい摩天楼を眺めることができるため、昼夜問わず多くのカップルや観光客が訪れる。 また、『10日間で男を上手にフル方法』にはスタッテン・アイランド(4)へ行くシーンがあるが、マンハッタンからスタッテン・アイランドへは無料のフェリーでしか渡ることができず、ブルックリンとスタッテン・アイランドを渡すペラザノナローズ・ブリッジ(5)が結んでいる。 タクシーで去っていくケイト・ハドソンをマシュー・マコノヒーが走って追いかけるラストシーンはブルックリン橋の上。通常、徒歩や自転車は車道の上にある橋を渡るのだが……。 5月に放送する『セックス・アンド・ザ・シティ』でも、仲違いしたミランダとスティーブがこの橋の上で夫婦としてやり直すことを誓う感動的なシーンが繰り広げられる。 ■マンハッタン内に星の数だけあるホテル群も、映画の舞台として大事な役目を担っている。 例えば『ホーム・アローン2』のザ・プラザ(6)、イーサン・ホーク監督の、タイトルもそのままの『チェルシー・ホテル』(7)など単なるロケ地以上の存在感を示すものも。 その中で、最も多く映画の舞台に使われたホテルのひとつは、間違いなくウォルドルフ=アストリア・ホテル(8)だろう。 ミッドタウン東側のグランド・セントラル駅に近いこの高級ホテルには、そうそうたる人物が宿泊していたとしても有名。マリリン・モンローやフランクリン・D・ルーズベルト大統領、昭和天皇や吉田茂も宿泊者リストに名を連ね、『Jエドガー』(クリント・イーストウッド監督)で映画化されたハーバート・フーヴァーはウォルドルフ=アストリアに居住していたことがある。 いまでもこのホテルでは映画関連の記者会見や取材場所として使われることが多く、ジャンケットと呼ばれる映画のプレスデーが開催される週末には、黒塗りのリムジンがホテル正面玄関に横付けされ、スターたちがホテル入りする。 マンハッタン内でプレスデーが行なわれるホテルは限られており、ウォルドルフ=アストリアで張っていればスターに会える確立も高そうだ。 そういった外交や映画界とのつながりが深いためか、このホテルは映画の中にもたびたび登場する。 フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザーPART II』でも使われているが、これは実在したマフィアたちがウォルドルフ=アストリアを定宿にしていたという逸話からきているのだろう。 主演のエディ・マーフィ自身もよくこのホテルに宿泊していたことから『星の王子ニューヨークへ行く』でもアキーム王子が泊まるホテルとして登場する。『メイド・イン・マンハッタン』ではジェニファー・ロペスがメイドとして働くホテルに、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』ではアル・パチーノ演じる盲目の軍人が宿泊、そして『ウディ・アレンの重罪と軽罪』の舞台にもなった。 そのウディ・アレンは彼が住むアッパーイーストにある高級ホテル、カーライル(9)のバーにて彼が映画の撮影をしていない秋~春にかけて毎週月曜日クラリネットを吹いているので、彼を間近で見るチャンスかも。 ■ ニューヨークの真ん中に位置する巨大な公園、セントラル・パーク(10)も映画の舞台としていろいろな顔を見せて来た。 ここで撮影された映画は数知れず、セントラル・パークのすぐ南に位置するザ・プラザが舞台の『ホーム・アローン2』(6)、公園の西側にある自然史博物館(11)が舞台の『ナイト・ミュージアム』(余談だが、主演のベン・スティラーは子供の頃、この博物館のすぐ近くに住んでいたそうだ)、そして紅葉のセントラル・パークの美しい景色が見られる『オータム・イン・ニューヨーク』など。 『僕たちのアナ・バナナ』でエドワード・ノートンにジェナ・エルフマンが「ニューヨークがこんなに美しいなんて」と言うシーンで、セントラル・パーク内の池にかかるボウ・ブリッジが使われている。ラスト、3人が仲良く歩くシーンはセントラル・パーク東側にあるメトロポリタン美術館(12)の屋上にある彫刻ガーデンだ。 そして、ちょうどセントラル・パークを挟んだ西側の72丁目に位置するのが高級アパートメント、ダコタ・ハウス(13)。この高級アパートの名を世界中に広めたのは1980年12月8日に起きたジョン・レノン銃撃事件だろう。 ジョン亡き後、彼が住んでいた部屋から眺めることができる場所にストロベリー・フィールズのモニュメントが作られた。いまでもこのアパートに住むオノ・ヨーコによって建てられた慰霊の地には多くのファンが訪れ「イマジン」を口ずさんでいる。 ダコタ・ハウスは映画の舞台としても多くの作品に登場しており、ロマン・ポランスキーの『ローズマリーの赤ちゃん』ではミア・ファロー演じるローズマリーと夫(ジョン・カサヴェテス)が引っ越してくるアパートとして、『バニラ・スカイ』ではトム・クルーズが住むアパートとして登場している。 また、同じくニューヨークの高級住宅地を舞台にした『パニック・ルーム』も瀟酒なタウンハウスが舞台となっている。地価の高いニューヨーク、特にマンハッタン内では高層アパートではなく低層のタウンハウスに住むことができるのは限られた極一部の富裕層のみ。こういった家に住む人々の身に起きる奇怪な出来事……というのが「○○○は見た」的な興味を掻き立てる要因のひとつになっているのかもしれない。 ■ ブルックリン橋、高級ホテル、セントラル・パーク、高級アパートメント、そのどれもがニューヨークらしく、ここにしかない情景として映画を物語るのに重要な役割を担っている。 同じロケ地でも全く違った見え方がする映画を見比べてみるのもおもしろい。いつかニューヨークを旅したときに、映画の中で観た景色が思い浮かぶというのも、映画と現実がリンクする素敵な経験となるだろう。■
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PROGRAM/放送作品
プラチナ・シネマ トーク<4月総集編>
ザ・シネマの週間イチオシ作品枠、土曜字幕・日曜吹き替え夜9時「プラチナ・シネマ」の解説番組総集編
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プラチナ・シネマ トーク 3月
ザ・シネマの週間イチオシ作品枠、土曜字幕・日曜吹き替え夜9時からの「プラチナ・シネマ」の直前解説番組
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