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次々登場する新鮮な傑作、そして新たな次元へ ギャングの刹那的な生き様を描く、スコセッシの『グッドフェローズ』

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 それから16年――。
 偶然だったのか、それとも満を持していたのか、すぐれたギャング映画がくつわを並べて登場する。マーティン・スコセッシの『グッドフェローズ』(1990)、コーエン兄弟の『ミラーズ・クロッシング』(1990)、そしてコッポラの『ゴッドファーザーPARTⅢ』(1990)。
『グッドフェローズ』を初めて見たとき、私は度胆を抜かれた。なにしろ速い。そして精気が横溢している。ヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)という実在のギャングの告白をもとにして作られた映画なのだが、彼自身の告白というより、ヘンリーを主人公にした長篇詩を読んでいるような気分がしてくるのだ。

 ヘンリーは「ギャングになりたかった少年」である。アイルランド系とイタリア系の血が混じった彼は、子供のころ、貧しい家の窓から外を眺めていた。
 視線の先にはギャングがいた。ギャングたちは派手な車を乗り回し、駐車違反をしても切符を切られない。豪華な女を連れ歩き、夜遅くまでどんちゃん騒ぎをしても、周囲の人間はだれも警察に通報しない。
 あんなギャングに自分もなりたい。
 憧れを抱き、自身に誓いを立てたヘンリーは、その世界に足を踏み入れていく。やがて彼は成人する。

 1960年代前半、ヘンリーは恋人のカレン(ロレイン・ブラッコ)を連れて〈コパカバーナ〉の通用口から店のなかへ入っていく。行列は無視だ。警備員にチップを渡し、ヘンリーとカレンは曲がりくねった通路を抜けて、最高のテーブルに着く。撮影は長まわしのワンショット。感心したようなカレンの顔を見て、ヘンリーは鼻をうごめかせる。
 そんな得意満面も長くはつづかない。ヘンリーと行動をともにしていたジミー(ロバート・デ・ニーロ)やトミー(ジョー・ペッシ)の足場もしだいにぐらついてくる。つまりは、短い絶頂期と長くつづく下り坂だ。

 スコセッシは、昂揚と悔恨が分かちがたく結びついたギャングの30年間を、華麗な連続技で描いていく。技は観客を巻き込む。事情がわからぬまま、あれよあれよという間にヘンリーに惹かれていくカレンと同様、観客も『グッドフェローズ』の渦に巻き込まれる。みごとなダイナミズムだ。プロットに頼らず、ストーリーと言動だけで、組織犯罪の世界に生きるほかない獣たちの姿が鮮烈に描き出されている。これはたぶん、スコセッシの最高傑作と言い切ってもよいのではないか。

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