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映画史上最も壮大な三部作最終章、『ゴッドファーザーPART III』

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 というわけで、最後に残ったのが『ゴッドファーザーPARTⅢ』である。正直な話、豪勢で芳醇な第1部や、渋くて反射神経の鋭い第2部に比べると、第3部はあきらかに見劣りする。撮影や編集の密度は前2作よりも低いし、俳優たちの演技もキメのこまやかさが足りず、以前のように客を酔わせてくれない。
 私はずっと不思議だった。コッポラはなぜ、この第3部を撮ったのだろう。すでに完結していてもおかしくなかった話を、第2部から16年も経った時期に、なぜ蒸し返さなければならなかったのか。
 はっきりいって、答はわからない。

 ただ、『ゴッドファーザーPARTⅢ』には捨てがたい美点がひとつある。それは、コルレオーネ家に流れる血の呪いを容赦なく描き出したことだ。思えば、ヴィトもマイケルも、過去から逃れられない存在だった。コルレオーネ家の血を引いた、というそれだけの理由で彼らは苦しみ、苦しみから遠ざかる術を見つけ出すことができなかった。

 たぶんコッポラは、この点を確認しておきたかったにちがいない。ソニーの私生児ヴィンセント(アンディ・ガルシア)に大きな役を振った理由はそこにあるし、彼の姿を見るたび、われわれは第1部で暴虐の限りを尽くし、最も悲惨な最期を遂げなければならなかったソニーの存在を想起する。そう、ソニーは、コルレオーネ家の鬼っ子であると同時に、コルレオーネ家の血筋を最も正統的に受け継ぐ存在だった。この事実を思い出させてくれるだけでも、『ゴッドファーザーPARTⅢ』には価値がある。もう見なくてもいい、とつぶやきつつ、私はやはりこの映画を見直すことになりそうだ。

芝山幹郎
48年金沢市生まれ。東京大学仏文科卒。映画やスポーツに関する評論のほか、翻訳家としても活躍。著書に「映画は待ってくれる」「映画は遊んでくれる」「映画一日一本」「アメリカ映画風雲録」「アメリカ野球主義」「大リーグ二階席」、訳書にキャサリン・ヘプバーン「Me―キャサリン・ヘプバーン自伝」、スティーヴン・キング「ニードフル・シングス」「不眠症」などがある。
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