『レザボア・ドッグス』の脚本が俳優ハーベイ・カイテルに見初められ、同作で監督デビュー。
以降数々の映画を世に送り出し、強烈なバイオレンス描写や緻密な脚本で
世界中の映画ファンを魅了するクエンティン・タランティーノ監督。
レンタルビデオ屋に勤務して膨大な数の映画を鑑賞していたタランティーノ監督の
ビデオコレクションをイメージして、ザ・シネマでは二カ月にわたって彼の監督作に加え、
監督作に影響を与えた映画などから幅広くセレクトして特集します。
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12/24(金)15:15~
『イングロリアス・バスターズ』公開時(2009年)に選出したタランティーノお気に入り映画20本の中の1本。
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12/20(月)10:30~
マカロニ・ウェスタンとブラックスプロイテーションが融合した『ジャンゴ 繋がれざる者』の元ネタ。
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12/22(水)14:30~
ホラー+SF。タランティーノ自身が上映ラインナップを選ぶ「クエンティン・タランティーノ映画祭」選出の1本。
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12/23(木)14:30~
タランティーノが信奉するジャン=リュック・ゴダールの代表作。だらだらとした会話はまさにタランティーノ節。
関連作品気狂いピエロ
12/23(木)10:30~ -
12/21(火)10:15~
群像劇の名手アルトマン監督もタランティーノの大のお気に入り。70年代LAに蘇った探偵マーロウは、まさにタランティーノ的。
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12/20(月)12:30~
サスペンス映画の巨匠ヒッチコックはタランティーノにとっても神様。オールタイムベストである『ミッドナイト・クロス』のブライアン・デ・パルマ監督が“ヒッチコックの後継者”であることも納得。
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12/21(火)12:30~
35ミリフィルムを所有するほどの偏愛作。あまりに好きすぎて『~怒りのデス・ロード』を観るのをためらったとか。
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1/12(水)24:15~
実は『~挽歌』シリーズとは無関係な独立作品。アメリカ公開されたことでタランティーノの目に留まり、ジョン・ウー監督やチョウ・ユンファの米国進出のきっかけとなった。
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1/13(木)23:30~
言わずと知れた『キル・ビル』の元ネタ。ユマ・サーマンのバイクスーツは色だけではなく、履いているオニツカタイガーのスニーカーも再現!
関連作品ドラゴン怒りの鉄拳
1/11(火)25:00~ -
1/11(火)21:00~
『ジャッキー・ブラウン』でのカメラワークや『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のサイモン&ガーファンクルなど、本作からの引用多数あり。
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1/12(水)21:00~
ベトナムで捕虜になったクリストファー・ウォーケンはケツの穴に金時計を入れて『パルプ・フィクション』で再登場(嘘)
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1/13(木)21:00~
こちらも『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の予習必見作! 劇中にも登場するロマン・ポランスキー監督による傑作ホラーはタランティーノもお気に入り。
タランティーノ:映画を愛し、映画に愛される男
ハリウッド一の映画マニアは誰? と訊ねてみたら、おそらく「我こそは!」と無数に手が挙がるはずだ。しかし映画ファンの間でアンケートを取ったら、間違いなく最も票を集めるのはクエンティン・タランティーノだろう。
タランティーノは1992年の監督デビュー作『レザボア・ドッグス』で脚光を浴び、続く『パルプ・フィクション』(94)ではカンヌ国際映画祭のパルムドールとアカデミー賞脚本賞を獲得。しかもデビュー前に書いた『トゥルー・ロマンス』(93)と『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(94)の脚本は、当時の第一線の監督だったトニー・スコットとオリヴァー・ストーンによって映画化された。90年代前半のタランティーノはまさに映画業界に躍り出た再注目のスターだったのだ。
とはいえ、天才監督にも当然ながら下積み時代があった。とりわけ伝説化しているのが、ロサンゼルス南部のマンハッタンビーチにあったレンタルビデオ店「ビデオアーカイブス」だ。80年代半ばから90年代始めまで、ビデオアーカイブスはロサンゼルスの映画オタクのたまり場であり、タランティーノは名物店員だった。百科事典的な映画の知識を持ち、誰も見向きもしないような大好きな映画について熱弁を振るい、当時は色物扱いされていた香港映画やブラックエクスプロイテーション映画を特集する棚を作ったりもした。
ビデオアーカイブスは店というよりも筋金入りの映画好きの集団であり、この時代につるんでいた店員仲間のロジャー・エイヴァリーは、後に映画監督、脚本家としてデビューし、『パルプ・フィクション』ではタランティーノと一緒にアカデミー脚本賞を受賞することになる。
タランティーノの作品は、これまでに観てきた大好きな映画への(時にはパクリと言っていいほどストレートな)オマージュに溢れている。例えばデビュー作の『レザボア・ドッグス』は、リンゴ・ラム監督、チョウ・ユンファ主演の香港ノワール『友は風の彼方に』(87)が元ネタになっていることはよく知られている。潜入捜査官と強盗団のメンバーとの友情や、クライマックスのシチュエーションなど、ほとんどリメイクだという人もいるくらいに共通点が多い。
『トゥルー・ロマンス』のオープニングで、主人公のクラレンス(クリスチャン・スレーター)は千葉真一主演の『激突!殺人拳』(74)シリーズのオールナイト上映を観ている。千葉真一はタランティーノのお気に入りで、ビデオアーカイブス時代は仲間たちと集まって、千葉真一主演の時代劇ドラマ「影の軍団 服部半蔵」を観まくっていたという。『パルプ・フィクション』でサミュエル・L・ジャクソンが演じたギャングが人を殺す前に長々と口上を述べるのは、「影の軍団」の影響だとタランティーノも名言している。さらに『キル・ビルVol.1』では、タランティーノは千葉真一を自分の映画に出演させるという夢を叶えるのだ。
タランティーノがこよなく愛する映画監督のひとりに、セルジオ・レオーネがいる。レオーネといえば1960年代に『荒野の用心棒』(64)、『夕陽のガンマン』(65)、『続・夕陽のガンマン』(66)の"ドル箱三部作”でマカロニウエスタンという新しい潮流を作り出したイタリア人監督。従来のお行儀のいいハリウッド西部劇ではなく、善悪の境界線が曖昧で、バイオレンス描写もたっぷりのマカロニウエスタンはタランティーノに多大な影響を与えており、『続・夕陽のガンマン』を好きなマカロニウエスタンの第一位に挙げたこともある。
タランティーノのマカロニ好きは『続・荒野の用心棒』(66)の原題「ジャンゴ」と主題歌をそのまま使った『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)を作ったことからも明らかだが、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)も明らかにセルジオ・レオーネに影響されている。レオーネには『ウエスタン』(68、 原題は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ウエスト』)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)という監督作があり、尊敬するレオーネにあやかってタイトルを付けているのだ。
今回の特集ではフランスのヌーヴェルヴァーグを牽引した巨匠ジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』(60)が放送されるが、タランティーノはゴダールにも並々ならぬ思いがある。前述のエイヴァリーとはビデオアーカイブス時代から、ヌーヴェルヴァーグならゴダールかフランソワ・トリュフォーかで論争を繰り広げており、自身の映画会社をゴダールの『はなればなれ』(64)の原題にちなんで「A Band Apart」と命名している。
『はなればなれ』から話を広げると、NYインディーズの名監督ハル・ハートリーもゴダールを信奉し、『シンプルメン』(92)に『はなればなれ』へのオマージュとしてダンスシーンを入れているが、タランティーノは自分より3年早くデビューしたハートリーの『トラスト・ミー』(90)を気に入り、ハートリーに会った時には「俺は『トラスト・ミー』を40回観た!」と話しかけてきたという。タランティーノが過去の巨匠やB級映画に精通しているだけでなく、同世代の作家もチェックし、夢中になっていたことを示すエピソードだ。とにかく映画愛が常に溢れ出している人なのである。
タランティーノの活動は映画作りだけに留まらない。1995年から1999年まではローリング・サンダー・ピクチャーズという配給会社を運営し(社名はこれまた大好きな映画『ローリング・サンダー』(77)からいただいた)、北野武監督の『ソナチネ』(93)やウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』(94)を全米の観客に紹介していた。商業的な目算はともかく、自分が気に入った映画を多くの人に観て欲しいという情熱の為せる技だった。
また、2007年には売却寸前だったロサンゼルスの映画館ニュー・ビバリー・シネマを買い取り、2014年からは上映作品の選定も自ら手がけるようになった。ニュー・ビバリー・シネマはアメリカでも珍しい35mmフィルム専門の劇場として、古今の映画のフィルム上映を続けている。タランティーノと同様にポール・トーマス・アンダーソンもフィルムへの愛着が強く、ニュー・ビバリー・シネマではタランティーノやアンダーソンの近作のフィルム上映も行っている。まさに映画オタクの“夢の劇場”と言っていい。
前述の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』もまた、タランティーノの夢が詰まった映画である。物語の舞台は1969年のハリウッドで、タランティーノが憧れた当時のセレブたちが大勢登場する。今回放送される『ブルース・リー/死亡遊戯』(78)のブルース・リーは、カンフースターになる以前にハリウッドで武術指導をしていたのだが、タランティーノは劇中にブルース・リーを登場させて、ブラッド・ピット演じるスタントマンのクリフと対決させているのだ。
また、タランティーノは放送作の一本である『ローズマリーの赤ちゃん』(68)の監督ロマン・ポランスキーも、レオナルド・ディカプリオ扮するテレビスターの隣人として登場させている。虚実入り乱れるストーリーを展開させながら、タランティーノは“夢のハリウッド”をスクリーンに出現させてみせたのだ。リスペクトする監督やスターを、自らのビジョンに基づいた架空のハリウッドの登場人物にしているのだから、映画オタクとしてこれほど贅沢な遊びもない。
今回の特集のラインナップをチェックしながら『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観れば、タランティーノがスクリーンに焼き付けたかった“夢のハリウッド”がより鮮明に浮かび上がるはず。古典もカルトもなんでもあり16本の映画を通して、天才タランティーノの頭の中を覗いてみて欲しい。
1971年生まれ。映像編集スタジオを経て映画ライターに。
雑誌、新聞、ウェブ等で映画記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」では代表を務める。
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