6月1日『ロリータ』

ロリータ・コンプレックスの語源となったナボコフの小説を映画化。巨匠S・キューブリックが『スパルタカス』と『博士の異常な愛情?』の間に発表した異色恋愛劇だ。 中年の文学者が下宿先の未亡人の娘ロリータに心奪われ、人生を狂わされていく。物語は原作に忠実だが、ヒロインの年齢設定などが変更され、モノクロで撮影された。 規制が厳しかった時代の作品ゆえに性描写は一切なく、犯罪映画風の冒頭に続いて、人間のエゴをえぐる破滅的なドラマが展開。脇役P・セラーズの怪演も見逃せない。

 

6月8日『砂漠でサーモン・フィッシング』

中東イエメンの砂漠に川を造り、鮭釣りができるようにしたい。大富豪からそんな壮大なプロジェクトの実現を依頼された、英国人水産学者の奮闘を描くコメディである。 原作はポール・トーディの小説『イエメンで鮭釣りを』。イメージアップをもくろむ英国政府の思惑も絡む物語はシニカルなユーモア満載で、恋愛映画としても楽しめる。 堅物の学者に扮したE・マクレガーと、投資コンサルタント役のE・ブラントの機知に富んだ掛け合いが魅力的。夢や理想といったテーマを爽やかに謳い上げた珠玉作だ。

 

6月15日『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』

『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』の俊英E・ライトが放ったラブ・コメディ。理想の女の子と交際するため、彼女の元カレ7人と対決する青年の物語だ。 ポップカルチャーから多大な影響を受けた監督の漫画やロックへの偏愛が爆発。主人公が次々と出現する元カレとのバトルを突破していく展開は、まさにゲームのよう! 凝った視覚効果や編集テクを駆使し、ファミコンのチープな電子音まで導入。マニアックな小ネタとギャグも詰め込んだ映像世界は、これぞ究極のオタクワールドである。

 

6月22日『パーフェクト・センス』

人間の嗅覚や聴覚といった五感が順次失われていく奇病が世界中で蔓延。そのさなかに恋に落ちたシェフのマイケルと感染症学者スーザンの身体も異変に見舞われていく。 CGによるディザスター描写に依存せず、人類存亡の危機を描いた英国製の終末映画。五感の喪失という現象が一般市民の日常を混乱に陥れる過程をリアルに映し出す。 世界が静寂と暗闇に覆われていく悲劇的な物語が問いかけるのは、愛と希望というテーマ。他者を“感じる”ことの尊さを感動的に映像化したラブストーリーでもある。

 

『ロリータ』TM & © Warner Bros. Entertainment Inc. 『砂漠でサーモン・フィッシング』©2011 Yemen Distributions LTD. BBC and The British Film Institute All Rights Reserved. 『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』©2010 Universal Studios. All Rights Reserved. 『パーフェクト・センス』© Sigma Films Limited/Zentropa Entertainments5 ApS/Subotica Ltd/BBC 2010