ザ・シネマ キャロル
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COLUMN/コラム2016.11.29
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2016年12月】キャロル
1990年『グローリー』でアカデミー賞助演男優賞を受賞し、その後主演男優賞に2度ノミネートされ“もっともアカデミー主演男優賞に近い黒人俳優”としてその日を期待されていたデンゼル・ワシントンが、ついに2001年に受賞を果たしたのが本作『トレーニング デイ』。今や善、悪、そのどちらでもないグレーな役など、さまざまな人物を演じられる実力派名俳優ですが、公開当時は軍人や弁護士といった正義感あふれる真面目なイメージが強かった彼が、本作ではそれらのキャラクターからは想像できない、キャリア初の悪役(しかも超こわい悪徳刑事)を演じたというのが最大の見所でした。2017年公開、名作西部劇『荒野の七人』のリメイク『マグニフィセント・セブン』の公開が待ち遠しいですね!主演デンゼル・ワシントンの名声を確固たるものにした『トレーニング・デイ』を、ザ・シネマでどうぞお楽しみに。 COPYRIGHT © 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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COLUMN/コラム2016.10.13
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2016年11月】キャロル
80年代~ウォール街でウルフ(狼)と呼ばれた実在の人物ジョーダン・ベルフォートの回顧録『ウォール街狂乱日記』を映画化。若くして巨万の富を築いた証券マンの栄光と転落をレオナルド・ディカプリオ&マーティン・スコセッシ監督が5度目のタッグで描く。あらすじはというと・・・学歴もコネもない22歳の青年ジョーダン・ベルフォートは、お金持ちになりたい!という夢を抱きウォール街で株式ブローカーとして働き出します。ところが働き始めてすぐに「ブラックマンデー」と呼ばれる大恐慌が起きて会社は倒産。そこでジョーダンは仲間を集めて証券会社を設立し、巧みな話術を活かしたセールストークと詐欺まがいの株取引で大金を稼ぐようになります。会社を大企業に成長させて自らも億万長者となったジョーダンは、ドラッグとセックスまみれの豪遊生活に明け暮れる・・・。結局、派手にいろいろやりすぎて警察から目を付けられ、投資詐欺で逮捕され服役するのですが・・・その顛末を描いたお話です。(ちなみに出所した彼は、自伝(この映画の原作)を書いたり、セールストークの講演会とか開いたりして現在も大儲けしているそうです。さっすが~!なのか?!)本作は、まぁ、つまるところ酒を浴びまくりドラッグをキメまくり人を騙しまくってカネを儲けまくるという、よくぞ映像にしたものだと思うほど、とにかくクレイジーな映画なのです。(っていうかこれが実話だってことに驚愕!!)それに加えてディカプリオが、ロウソク垂らしてアヒアヒする全裸SMプレイで完全ドMになったり、ドラッグが効き過ぎて涎ダラダラ状態で床を這いつくばったり・・・レオ様ってば、これはいくらなんでもやりすぎでしょ(それほどアカデミー賞欲しいのね?)・・・と思わずにはいられない史上最大級の崩れっぷりが、本当に、スゴイ。そしてこのクレイジーすぎる暴れっぷりラリっぷりは、実在のジョーダン・ベルフォート本人から「実際はこうだった」とアドバイスをもらって再現したもので、本当にぜーんぶ実際に起こった話だっていうんだから、驚きを通り超して呆れてしまいます!!とにかく百聞は一見にしかず。マーティン・スコセッシ監督が「彼は何でも出来る」と絶賛した、レオナルド・ディカプリオの超スゴ演技を11月のザ・シネマで是非ご覧ください!! COPYRIGHT © 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
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COLUMN/コラム2016.09.20
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2016年10月】キャロル
アカデミー作品、監督、主演男優、主演女優各賞に輝いたラブコメの古典的名作。 家出した富豪令嬢エリーと、彼女の特ダネを狙う新聞記者のピーターが、いつの間にか恋に落ちてしまうというお話。 現代のわたしたちに馴染みの“胸キュン”的ラブコメの典型を、80年以上も前にフランク・キャプラ監督が本作品で完成させていることに驚かされます。 あらすじは・・・ 富豪令嬢エリーは父親に黙って婚約。怒った父の監視を潜り抜け脱走、単身フィアンセのもとを目指す。彼女が乗った夜行バスにたまたま乗り合わせたのが、新聞記者のピーター。彼は富豪が娘を見つけるため出した新聞広告で、隣の女性がエリーその人であると知り、特ダネ記事を書くため素知らぬフリをしながらバスで一緒に旅を続ける。だが、旅の途中、2人は予期せず恋に落ちてしまった! ・・・というお話。 見ているこっちはエリーとピーターが両思いであることが分かっているのに、なかなかくっつかない二人。それどころか、度重なるすれちがいで相手の気持ちにすらなかなか気付かない・・・。 ああ運命のいたずらって。 神様のいじわる! 昔の映画って(今旬の映画と比べると)ゆ~っくり話が進むけれど、不思議なことに本作は軽快なテンポでぐいぐい引き込まれてしまう。しかも、お決まりのハッピーエンドは分かっているのに、それでも二人の行く末が気になって結局最後まで見てしまうという巧みな展開ときた。 『或る夜の出来事』は、さすがラブコメの原点と言われる作品だけあって、全ての胸キュン要素が凝縮されています。ああ皆さま、どうかクラシック映画を敬遠するなかれ。未見の方には、是非一度ご覧いただきたい。 今まで「白黒映画のラブロマンスなんてどうせ(ベタで奥手でつまらない)・・・」と思っていて、本当にごめんなさい!! Copyright © 1934, renewed 1962 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2016.07.25
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2016年8月】キャロル
8月のザ・シネマは、『ハリー・ポッター』4作一挙放送!毎週土日に1作品ずつ放送します。 今、巷ではハリー・ポッター旋風が巻き起こっていることをご存知の方は多いはず。2017年に第1作目『ハリー・ポッターと賢者の石』刊行から20周年という節目を向える同シリーズは、今年から既に盛り上がりを見せています。7月にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンで大人気の『ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター』がオープン3周年を向え、さらにシリーズ続編となる新作『ハリー・ポッターと呪われた子』が本国イギリスで刊行、舞台化もされ20周年イヤーに向けて上演開始。またさらに11月には『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が劇場公開。2011年のシリーズ完結からひと段落して、2016年のいま、いよいよハリー・ポッターは第2のフェーズへと動き始めています! 「実は第2作目までしか観てないんだよね・・・」という方は(たいがい皆さんそう仰います)、是非この機会に大人向けダーク・ファンタジーとしてのハリーポッターを体験してみて。 「実はいまだに観たことがないんだよね・・・」という方も(大丈夫!たくさんいます)、子供向けといって侮れないサスペンス満載の巧みなストーリーを味わって。また言わずとしれた数々の名優たちが、いつもと違う姿で熱演するのも楽しんで。 「なんで今ハリポタなの?」なんて思ったならばアナタは既に乗り遅れてる!さあ危機感を持って(汗)、ザ・シネマでハリポタシリーズ4作を観ましょう!基礎を学びしっかりと準備して、記念すべき節目を共に迎えようではありませんか。 TM & © 2001 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.TM & © 2002 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.TM & © 2004 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.TM & © 2005 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.
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COLUMN/コラム2016.05.28
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2016年6月】キャロル
あらすじ:とある悪党一味の強盗現場を目撃してしまった牧場主ダン。他人事に首を突っ込む余裕などない彼でしたが、家族を守るためにどうしてもお金が必要だったので、200ドルの報奨金を目当てに一味の首領ジョン・ウェイドをユマにある牢獄まで護送する危険な役目を買って出ます。ところが、ダンは首領のジョンから「逃がしてくれたら1万ドルやる」と高額な話を持ちかけられます。ユマ行きの汽車が到着するのは3時間後の3時10分。ダンの心はお金と正義の間で揺れ動くのですが、やがて汽車が到着し・・・というお話。 主人公の牧場主ダンを演じるのは名作『シェーン』で父親を演じたヴァン・ヘフリン。カネのためだけに動いていた無愛想な男が、最後は正義のために決死の覚悟で任務を遂行する―・・・。移り行く心理の絶妙な表現や、迫真に迫る演技には思わず手に汗を握ってしまいます。 そして首領ジョン・ウェイドを演じた、当時ハリウッドで絶頂期を迎えていたグレン・フォードのカッコ良さといったらもう!最初の登場シーンから「何か違う」オーラをビンビンに放っていて、白黒の画面がどうしてこれほどまでに華やぐのでしょう。まるで吸い込まれてしまいそうなブルーの瞳に(色は妄想です)、一瞬で恋に落ちてしまいそうになります。悪党なのに!ダメなのに!でもどうにも止まらない! さてそんな二人が何度も何度も駆け引きを繰り広げ、最後に行き着いた結末とは―? 汽車が到着するまでの限られた時間の中で繰り広げられるサスペンスフルな心理戦、スリル満点の銃撃戦、そして最後に一撃喰らわされる驚きの結末。男気溢れる骨太なドラマを、日曜10時<シネマ・ウェスタン>で是非お楽しみ下さい。 Copyright © 1957, renewed 1985 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2016.04.10
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2016年4月】キャロル
南北戦争直前のアメリカ南部。黒人奴隷のジャンゴは、賞金稼ぎシュルツの助けで奴隷から解放され、二人で組み金を稼ぐようになる。やがてジャンゴの生き別れた妻が冷酷な大農園主キャンディに売られたことを突き止め、妻を救い出すため二人は身分を偽りキャンディの屋敷に乗り込む・・・というお話。 いや~、ジャンゴの銃さばきがマージでカッコイイ。西部劇の醍醐味である勧善懲悪が実に明快に描かれており、最後の銃撃シーンの爽快感ったらありゃしません。 一方で、これまでのアメリカ映画では決して描かれなかった奴隷虐待がリアルに描かれます。卵を割ってしまっただけなのに皮膚がえぐられ骨が見えるまでムチで打ったり。逃亡未遂の奴隷を犬に食わせて殺したり。奴隷同士を死ぬまで戦わせたり。全裸で灼熱の中に一週間も放置したり。・・・アメリカでは200年もの間、毎日がこうだったのかと思うと身震いさえしてきます。 深みをもたらしているのは間違いなく本役でアカデミー賞助演男優賞を受賞したクリストフ・ヴァルツですが、極めつけはやはりレオナルド・ディカプリオ。圧倒的な存在感で、彼が醸しだす陽気さと無邪気さが、あの異様な緊張感と残酷さを一層際立たせているのです。 アイ・ラブ・西部劇!マカロニ・ウエスタンへの溢れんばかりの愛を詰め込み、痛快すぎる勧善懲悪作品でありながら、差別社会に対する超本気の怒りをミックスさせた、まるで新ジャンルといえる未体験エンタテインメントに仕上げているのはタランティーノ監督の手腕ならでは。 ジャンゴ~ジャンゴ~~♪のメロディと、爽快感と、不快感がミックスされて延々と頭の中に残る、何とも強烈なエンタメ作品です。未見の方は是非!そして2度目、3度目の方も是非、4月のザ・シネマでご堪能下さい! © 2012 Visiona Romantica, Inc. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2016.01.26
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2016年2月】キャロル
舞台は1920年代のニューヨーク。レッド・ニコルズはコルネット奏者として大成功を収め、愛する妻と可愛い娘とともに順風満帆な人生を送っていました。しかしその矢先に娘が難病にかかってしまい、音楽をやめる決断をします。地元で再就職し、家族に寄り添いながら愛に溢れる日々を送るレッドでしたが、やはり音楽への未練を断ち切れず・・・。 「仕事か、家族か」。誰しも一度はぶつかるであろうこの問題は、1920年代当時でも普遍的なテーマだったんですね。レッドは娘のために生きがいだった音楽を手放しますが、かつてレッドのバンドメンバーだったグレン・ミラーは、国を代表する音楽家になった後でさえも、夢よりも実体のある幸せを掴んだレッドの方が羨ましいと言います。 本作を通して感じることは、このテーマに正解はないということ。意地やプライドに邪魔されながらも、周囲の助けを借りながら、何事にも一生懸命取り組むことが大事なんだなぁと前向きな気持ちにさせてくれる一品です。2月のザ・シネマで是非ご覧下さい。 TM, ® & © 2015 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2015.11.10
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2015年12月】
ご存知『ダーティハリー』の爆発的人気でアクション・スターの名をモノにしたイーストウッドですが、その『ダーティハリー』シリーズがいよいよ3作目に突入したその翌年に公開されたのが本作『ガントレット』。いわずもがな、アクション・スターとして脂が乗りまくったギンギラギンのイーストウッドが拝められます。 物語はというと・・・とある事件の証人ガス(ソンドラ・ロック)を刑務所から裁判所まで護送する任務に就いたはぐれ刑事ショックリー(イーストウッド)。「命を狙われている」と身の危険を激しく訴えるガスを初めのうちは信じないショックリーだったが、護送中なぜか身内である警察官に銃撃されまくり、命スレスレの窮地に陥ってしまう。次第に犯人を突き止めたショックリーは、常識破りの手段をつかって護送任務を完遂しようと決死の強行作戦に打って出る!というお話。 イーストウッド十八番の痛快アクションと言うにふさわしく、全編通して繰り広げられる激しい銃撃シーンやヘリコプターとのチェイスシーンは必見。特に、前代未聞の銃弾攻撃を浴びせられる最後の銃撃シーンが最大の見所!!と、ここまではいかにもアクション映画な感じで書きましたが、本編をよく見るとショックリー(イーストウッド)はほとんど丸腰でひたすら逃げ回っているだけ。実はあんまり強くなくて、ちょっぴり情けないヒーローだということに気づきます。前述の最後の銃撃シーンも、実は一方的にヤラレているだけで撃ち返してはいないんですねー。 余談ですが、ショックリーとガスは護送という名のロードトリップを共に過ごす中で次第にと心(と体)を通わせるわけですが、、、撮影当時イーストウッドとソンドラ・ロックが実生活においても恋人同士だったことを考えると、本気でラブラブな感じ出ちゃってるよね?いつも無骨なイーストウッドだけど、若干ほっこりしちゃってるよね??とミーハーな気持ちになってしまいます。『ダーティハリー4』などイーストウッド作品に度々ヒロインとして出演しているソンドラですが、悩殺ボディなわけでも超演技派なわけでもなく。きっとスクリーンでは計り知れない人柄の良さがあったのでしょう・・・(と勝手に思っている)。 (話を戻して、)丸腰刑事が一方的に攻撃されまくるという一風変わったアクションに加え、反発しあう男女が次第に恋に落ちていくという王道アメリカン・ラブコメディの要素を盛り込んだ、痛快アクションラブコメ(何だそれ)。このあたりはイーストウッド監督ならでは?の隠れた見所なのであります!『ダーティハリー』に次ぐ人気を誇る、はぐれ刑事の痛快アクション!是非11月のザ・シネマでお楽しみ下さい!! © Warner Bros. Entertainment Inc.
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COLUMN/コラム2015.09.29
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2015年10月】キャロル
『ペリカン文書』、『依頼人』のベストセラー作家ジョン・グリシャムの処女作を映画化。人種差別問題の絡んだ事件を通して正義を問う法廷ドラマ。サミュエル・L・ジャクソン、ケヴィン・スペイシーら実力派俳優に囲まれながらも、当時まだ若手だったマシュー・マコノヒーが負けず劣らずその実力を発揮。本作が出世作となり、一躍スターダムに躍り出た。近年“演技派”としてめざましい活躍のマシューだが、本作を観るとやっぱり彼は昔から実力演技派だったのだなと思わざるを得ない。特に最後のスピーチ!あれは演技じゃなく、マジでマシューの言葉なんじゃないかとさえ思わせるほど心揺さぶられる。今キャストを見てみるとその豪華な顔ぶれに驚くのだが、ドナルド・サザーランド、クリス・クーパーらの名バイプレイも見逃せない!ぜひ10月のザ・シネマでご覧ください。 © 1996 Warner Brothers Productions, Ltd. and Regency Entertainment (USA), Inc. in the U.S. only. © 1996 Warner Brothers Productions, Ltd. and Monarchy Enterprises S.a.r.l. All rights reserved.
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COLUMN/コラム2015.07.17
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2015年8月】キャロル
「ロード・オブ・ザ・リング」のヴィゴ・モーテンセン主演、ナチス政権下の葛藤を描くヒューマンドラマ。 ベルリンの大学で教鞭をとるジョンは、ノイローゼ気味の妻に代わって家事と二人の子供たちの育児、そして母の介護に追われる日々。精神科医であり親友であるユダヤ人のモーリスと過ごす時間が唯一の息抜きだった。これといった主張も特徴もなく無難に生きてきたジョンだったが、昔書いた小説をヒトラーに気に入られたことをきっかけにナチ党に入党。そのことに愕然とするモーリスとの関係に亀裂が入る一方で、ジョンは教え子で愛人だったアンと再婚したり、出世し教授になったりと、これまでになく順調な人生を歩み始める。ナチ党のユダヤ人迫害が増していることを日々肌で感じているモーリスは決死の思いでジョンに助けを求めるのだが、ジョンは事態を深刻に受け止めず、自力で何とかしろと突き放す。数年後、いよいよ戦況が激化するなか強制収容所の実態を知ったジョンは、音信不通となったモーリスの行方を追うのだが・・・。 この映画は、ナチスを批判する勇者でもユダヤ人を救うヒーローでもない、自分の安全のために無難な選択をして時代に流されていく、真面目で誠実な一般市民の姿を描いています。どうしてユダヤ人の親友がいるのにナチ党に入ったの?なぜ親友を助けてあげようとしなかったの?と、ジョンのとった行動は理解しがたく、ただ流されていく姿に共感できないと感じる人は私を含め多いでしょう。しかし、「もしもジョンが自分だったら・・・?」そう置きかえると矛盾を感じてしまうところがこの映画を“面白くなく”しており、実はミソなのではないかと思うのです。「入党すれば昇進できて生活が安定する。それに社会的地位も上がる」「最近はユダヤ人への風当たりが強い。でも(モーリスは)裕福だし何とかなるだろう」と考えたジョンや、「これだけ沢山の人が支持している人気の政党なのだから大丈夫に決まってるじゃない」と深く考えない若者アン。ナチスの黎明期では、迫害の現実や変貌を遂げようとしている一国の未来の姿に恐怖するのは一部の有識者のみで、大半の一般市民がジョンやアンと同じだったのではないでしょうか。今の日本に置き換えると、そう他人事にも思えません。ちょっと痛いところ突かれた感じが、この映画を“面白くない”と感じさせる後味の悪さであり、本当の面白さのような気がするのです。 © 2007 Good Films Ltd.