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PROGRAM/放送作品
ストーリー・オブ・フィルム 第15回:映画の未来
映画史に隠された壮大な物語を、当時の映像や関係者へのインタビューなど全15話で辿るドキュメンタリー
9.11を境に変わっていった21世紀の映画を追う。『華氏911』『ボーン・スプレマシー』『アバター』『インセプション』などを通して、これまでの映画史、そして映画の未来を考えていく。
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NEWS/ニュース2019.09.27
10月特集:「狼よさらば」シリーズ一挙放送 朝までブロンソン を記念し ブロンソンズ(みうらじゅん、田口トモロヲ)による番宣&オーディオコメンタリー放送決定!!インタビュー全文掲載!!
\10/4(金)は朝までブロンソン/ 「狼よさらば」シリーズ一挙放送!! ●『狼よさらば』21:00~22:45 © 1974, renewed 2002 StudioCanal Image. All Rights Reserved. チャールズ・ブロンソンが、犯罪被害者遺族にして、街の悪党どもを殺しまくる闇のヴィジランテ(自警団)ポール・カージーに扮した「デス・ウィッシュ」シリーズの第1作目。●『ロサンゼルス』22:45~深夜 00:30 © 1982 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved チャールズ・ブロンソン主演『狼よさらば』の8年ぶりとなる続編。前作からさらに過激になったバイオレンス描写や処刑人ブロンソンの凄みが圧巻。レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが初めて映画音楽を担当。●『スーパー・マグナム』深夜 00:30 ~02:15 © 1985 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved 警察が悪党を殺らないならオレが殺る!というヴィジランテ映画の原点『狼よさらば』シリーズ。当初の“法と正義の間のジレンマ”というテーマを卒業し、この第3弾は悪党を倒しまくる痛快アクション映画へと進化した。●『バトルガンM-16』深夜 02:15 ~04:00 © 1987 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved チャールズ・ブロンソン主演『デス・ウィッシュ』シリーズ第4弾。処刑人ポール・カージーの武器がロケットランチャー付のM16自動小銃にパワーアップし、麻薬組織の悪党たちに容赦ない復讐バイオレンスを見舞う。●『DEATHWISH/キング・オブ・リベンジ』深夜 04:00 ~06:00 © 1993 DEATH WISH 5 PRODUCTIONS, LTD.. All Rights Reserved 70歳を超え俳優業を引退していたチャールズ・ブロンソンが、代表作『デス・ウィッシュ』シリーズに自ら幕を降ろすため復帰。銃撃戦以外の多様な処刑方法を魅せ、さらに粋な名セリフでシリーズを締めくくる。 放送詳細はこちら⇒https://www.thecinema.jp/tag/102 ★ブロンソンズ オフィシャルインタビュー 【ブロンソンズを結成してから20年以上。しかし二人でブロンソン作品のオーディオコメンタリーを行うのは初のことだそう。】 みうらじゅん(以下みうら):初めてというか、コメンタリールームにオヤジ二人が閉じ込められて一緒に映画を観るなんてことはそうそうないですからね(笑)。そういう意味では初めてだったと言えますね。田口トモロヲ(以下田口):非常にまれな体験をさせていただきました。ただやっていることはいつもブロンソンズ内で行われているブロンソン会議と同じですからね。みうら:未来に向かっての会議の一環だと思うんですけど。今まで会議はしこたまやりましたからね。どうしたらブロンソンが雑誌の表紙になるかとか。そういう大きなお世話なことまで考えていたんで。この収録の後も二人で飲みに行こうと思ってるんですけど、きっと同じ話が続くだけなんです(笑)。なんならブロンソンズの初CDを出した1995年から話の内容は何にも変わっていないし。トモロヲさんとは、ブロンソンの話をずっとしているだけなんですよ。ただブロンソンは2003年にお亡くなりになったので。そこからは新作がないんで、同じ話しかしていないんです。田口:もうループですよね。味が出なくなるまで噛み続けているんですけど、でも噛めば噛むほどブロンソンは新鮮になってくるんですよ。だから今日も新鮮でしたね。【そんな二人が好きなブロンソン作品とは? やはり甲乙つけがたい?】田口:いや、生前からかなり明確に甲乙はつけてますね(笑)。みうら:ブロンソンの作品は明確なんですよ。名作、そうでもない作品とハッキリしています(笑)。田口:でもやっぱり絶頂期の「狼の挽歌」と「狼よさらば」あたりじゃないですかね。ヴィジランテという、自警団ものの元祖なので、そこは映画史的 に押えてももいいんじゃないかなと思いますが。 みうら:「狼よさらば」はブルース・ウィリス主演で最近リメイクもされていますからね。そこは基本ですよね。田口:ブロンソン学校に入りたいならそこは外せないですよ。みうら:入りたくない人は「チャトズ・ランド」までを見る必要は一切ありませんから(笑)。田口:必要ないですね。だからカッコいいんですよ。みうら:このチームをやってから、初期の名作だけでなく、80年代90年代のアクション一筋なブロンソン作品も面白いと気付いた具合です。田口:50過ぎてまだアクションをやっているということがグッとくるんですよね。みうら:今回放送する「デス・ウィッシュ」シリーズの最後となる「DEATH WISH/キング・オブ・リベンジ」では70を超えていますからねブロンソン。そこを含めて男気と呼んでいるわけです。田口:本当にブレがない。みうら:チャールズ・ブレンセンだよね。田口:ブレンセンって原型がもう分からないね(笑)。【そんな二人が考えるブロンソンの魅力とは?】 田口:顔ですね、あの顔はやっぱり革命ですよね。顔を見ているだけで充足しちゃいます。みうら:もはやブロンソンの“顔力映画”ですからね。あんな超人顔されてる人って今、いないですからね。田口:人類の原点に近いと言ってもいい。みうら:ですね(笑)。僕らも初ブロンソンはだいぶ戸惑いましたから。田口:価値観が転換したからね。それがカッコいいんだという。みうら:「さらば友よ」という映画で、当時、世界一男前と言われていたアラン・ドロンと共演したんですけど。最後の最後、ブチャムクレが食うんだよね。ブチャムクレの方が断然カッコいい!あの時代に価値観が変わったんですよ。田口:それをブロンソン業界では「ブロンソン革命」と呼んでいるんです。【ブロンソン未経験の人にメッセージを】みうら:まずはブロンソン未経験は羨ましいですね、もはや。知らないことはすごいことなんで。僕らは一番多感な時期に、マンダムのコマーシャルとかで日本でも大ブレイクしていて、知っていましたからね。ああいう顔力のある方が天下を取っていた時代を知らない人がどう感じるのか、逆に知りたいですね。田口:今だと顔面放送禁止みたいな状態の人がポンと主役で出てるっていうことのすごさというか、時代の許容力というか。革命的な時代だったんですよね。ブロンソンの顔も誰もやったことがないから。みうら:確実に70年代に新しい価値観が生まれたんですよ。でもそれからまた今は元に戻って、イケメンの時代になったじゃないですか。でもブロンソンの前もハリウッドはイケメンだったから。ブロンソンが革命を起こしたことになります。田口:夢がありますよね。それでブロンソンを掘っていったら、「常に愛妻と共演する」とか、映画を私物化していることが分かって。これは面白い人物だなと言いながら、また酒が進むんです。みうら:そんな話を、そのままオーディオコメンタリーしてますから。もう忘れたかのように同じ話ね。田口:ループオンです。キープオンのさらに上をいくループオンの状態に入りましたね。みうら:しかも老化もあるから、いつも初めて聞いたように盛り上がるんですよ(笑)。“老いるショック”もしめたもんなんです。田口:何回観ても新鮮ですからね。みうら:だからまずはオーディオコメンタリー付きで観て欲しいんですよね。そこから入られるのも良いかと。オーディオコメンタリーで言ってたことは、ちょっと違った見方のブロンソン入門ですから。田口:映画って自由に観ていいんだっていうことを発見すると思います。だから妄想なんですよね。データじゃなくて、思い込みで語っているので。そういうことをキャッチしていただければと思います。--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------<ブロンソンズ プロフィール>ともに文化系であるみうらじゅんと田口トモロヲが、チャールズ・ブロンソンの男気に憧れて結成したユニット。雑誌『STUDIO VOICE』に人生相談コーナー「ブロンソンに聞け」を連載し、1995年にはこれをまとめた単行本『ブロンソンならこう言うね』を刊行。同年、マンダムのCMソングとして有名なジェリー・ウォレスの『男の世界』をカバーしたシングル『マンダム 男の世界』を発表した。1997年には、アルバム『スーパーマグナム』を発表している。2017年、『POPEYE』連載の「ブロンソンに聞けRETURNS」を『男気の作法』として刊行。現在『Tarzan』に移動し、峯田和伸(銀杏BOYS)をメンバーに加え連載中。
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PROGRAM/放送作品
ストーリー・オブ・フィルム 第14回:デジタル時代の幕開け
映画史に隠された壮大な物語を、当時の映像や関係者へのインタビューなど全15話で辿るドキュメンタリー
1990年代、デジタル技術の本格的な導入によって生まれたエポックメイキングな作品を紹介する。『ジュラシック・パーク』『タイタニック』など、CGを用いて新しい映画の世界を作ろうとした作り手達を特集。
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NEWS/ニュース2019.08.07
関根勤さん、声優・宮内敦士さん、とり・みきさん登壇!『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ザ・シネマ新録吹き替え版の制作・放送記念!イベント上映のレポート&インタビュー到着!
関根勤さん、声優・宮内敦士さん、とり・みきさん登壇!「(吹)マッドマックス 怒りのデス・ロード[ザ・シネマ新録版]」の制作・放送にあわせ、イベント上映を実施! 吹き替え放送にこだわりのある洋画専門CSチャンネル「ザ・シネマ」は、 『(吹)マッドマックス 怒りのデス・ロード[ザ・シネマ新録版] 』(8月12日(月・休)、24日(土)に放送)の制作・放送を記念して8月4日にイベント上映を敢行。本作の上映とトークイベントを第1部・第2部で約200名の方にお楽しみいただきました。第1部では通常上映を実施し、トークイベントにはオーダーメイドのバトルスーツに身を包んだ大の「マッドマックス」ファンであるタレントの関根勤さん、吹き替えに造詣が深い漫画家のとり・みきさんが登壇し、マクラウドの白石さんに司会を担当いただきました。第2部では絶叫上映を実施。タンバリンやクラッカーが鳴り響いた上映終了直後、熱気あふれる会場内に突如、ザ・シネマ新録吹き替え版で主役のマックス役の吹き替えを担当した声優・宮内敦士さんが「俺の名前はマックス」という劇中の名セリフとともにサプライズ登場。会場からは「V8!」コールが鳴り響き、大きな歓声に包まれました。 8/4(日)本作のイベント上映後にご来場の方にインタビュー!熱い感想コメントをいただきました!(8/9更新) < 関根勤さん・宮内さんインタビュー! >■自前のバトルスーツで登場した関根勤さんコメント!「僕はマックスが好きなんですよ 」 「マッドマックス」の最新作を見た時はビックリしましたね。お金もかかっているし、スケールアップもしている。主演のトム・ハーディもカッコ良かったですね。ジョージ・ミラー監督がこの映画を撮った時は70歳近くだったんですよね。それくらいの年齢の人が作る映画じゃないですよ。他の監督だったら、途中で犬を救ったり、少年を救ったりするようなシーンを入れてしまいがちですが、この監督はそれをしない。アクションだけで押し通しますからね。自分が監督をするという立場になって観てください。本当に大変です。そして主役としてキャスティングされたと思ってください。本当に過酷です。それを2時間で見事にパッケージングしている。これは芸術ですね。僕はマックスが好きなんですよ。今日の衣装のバトルスーツも3年前にこの映画を観たときに作ったものです。僕はブルース・リーや「ダーティハリー」の映画が好きなんで、このシリーズにもいっぺんにハマってしまいました。「マッドマックス」っていう名前もかっこいいですよね。■マックス吹き替え担当の宮内敦士さんコメント!「これぞ「マッドマックス」の世界観だということを目指しました」 「ザ・シネマ新録吹き替え版」の放送がはじまってから、役者仲間からも、役者じゃない知り合いからも良かったよという声を多くいただいて、良かったなと。僕に限らず、他の吹き替えを担当した役者さんたちも喜んでいると思います。「マッドマックス」というのはひとつの時代を作った作品で、僕も子どもの頃から観ている大好きな作品です。絶叫上映に実際に間近で触れるのは初めてなんですが、ファンの皆さんのこの世界観に没入していくパワーは本当にすごいなと思いました。今回の新録吹き替え版は、劇場版とはまた違う、これぞ「マッドマックス」の世界観だということを目指しました。トム・ハーディは、僕よりも年下なんですが、役者としても一流。いつも勉強しなきゃいけないなと気付かされることも多いですし、彼の吹き替えはとてもやりがいがあります。この中に入ることができて本当に光栄です。みんなが力を入れて吹き替えをしました。ぜひ見逃さないように。放送は録画も出来ますので、何回も見返していただけたらと思います。------------------------------------------------------------------------------------------------------<イベント上映レポート>■イベント上映の第1部通常上映のトークイベント! この日、関根さんが着用してきた衣装は、オーダーメイドのバトルスーツ。「僕は『マッドマックス』の大ファンだったんですよ」と語る関根さんは、「3年ほど前に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観て、どうしたらいいか分からないくらい興奮して。そうしたらライダースーツを作っているお店に『マッドマックス』バージョンがあると聞いて。すぐに行きました」と説明。かかった費用は、上下で38万円とのことですが、「フルオーダーで、一番いい革で作りました。まず採寸して、一カ月くらいで厚地の木綿で型ができるんです。それを着ながら、細かく『ここをどうしますか?』という風に全部調整して作るんで。僕にとっては適正価格。普通のライダージャケットでも20万とか25万は平気でしますからね」という関根さん。気になるご家族の反応については「何も言いません。妻はずっと軽い病気だと思っているんで」とコメントし、周囲を笑わせました。 マクラウドの白石さんも興奮を隠せないようで、「『マッドマックス』界隈では、関根さんがバトルスーツを作ったというのは2016年のビッグニュースだったんですよ。『関根さんはこっちの人だった!』と語ると、関根さんも「そうですよ! 79年からどっぷりですからね」と笑顔を見せます。「この衣装を着てイベントに出たかったので本当に良かったです」と続けました。 劇場公開時は字幕版で鑑賞したという関根さんですが、今回のザ・シネマ新録吹き替え版は「マックスの声が渋くて。トム・ハーディ本人の声と違和感がなかった。カッコ良かったですね」と感じたそう。さらに「吹き替え版を観て、字幕では分からなかったところが分かりました。イモータン・ジョーの長男が子どもみたいなしゃべりなんですよね。それがビックリして。英語だとそのニュアンスが伝わらないんですよ。だからこういうしゃべり方なんだなと思いました」という関根さんに、とりさんも「今回はザ・シネマ用に、劇場版とは違うバージョンの吹き替え版を撮り直したんですけど、劇場版の吹き替えの長男はあまり幼児っぽくなっていないんですよね」と解説。さらに白石さんが「劇場版ではプロレスラーの真壁刀義さんが吹き替えをされていたんですが、こちらは幼児っぽいというよりは粗野な感じというニュアンスだった。今回は意図的にキャラクターを強調したということがありますよね」と指摘します。「すばらしかったですね」 また、白石さんも「僭越ながら、今回、ザ・シネマの新録吹き替え版が新しく作られると話を聞いたときに、勝手に『ここの部分の吹き替え・字幕は違和感がありましたよ』リストを作って。ザ・シネマさんに勝手に送りつけたんです。それが反映されたかどうかは分かりませんが。でも台本を読んでみると、原語に忠実であろうと気を遣っていたなと感じました」と振り返りました。 とりさんは「ザ・シネマさんが放送用に別バージョンをつくること意義深いことだと思っています。これからもその機会が増えるように皆さんも応援していただけたらと思います」そして関根さんも「『マッドマックス 怒りのデスロード』は何回みても同じ感動をいたしまして、ぼくは6回ほど見たのですが、まだこんな所があったんだと思えるので、何回も見ていただいてプラス年に1回はみていただきたいなと。その年の年齢年齢で感じるものが違うと思うのですよ。熟成されてきた自分の人生でこういうことをジョージさん(ジョージ・ミラー監督)は言いたかったんだとわかってくると思います。ぜひ、長く愛していただきたいと思います 」と締めた。------------------------------------------------------------------------------------------------------■イベント上映、第2部絶叫上映の トークイベント! そして第2部は絶叫上映を実施。上映終了直後、熱気あふれる会場内に突如、ザ・シネマ新録吹き替え版の主役マックスの吹き替え担当した宮内敦士さんが「俺の名前はマックス」という劇中の名セリフとともにサプライズ登場。会場からは「V8!」コールが鳴り響き、大きな歓声に包まれました。この日の衣装は白石さんが四年ほど前に制作したものだとのことで、「白石さんより本格的な衣装をお借りしました。皆さん(のテンション)に追いつけるように頑張ります」とあいさつ。 これまでもトム・ハーディの吹き替えを幾度となく行ってきた宮内さん。「作品によってコロコロ変わるカメレオン俳優。影もあるし、存在感もある。なりきり方というか、いれこみ方が違う。それでいてすごくナチュラルな、いい役者だなと思うので。そのなりきり感を声だけで表現できるのかなとは思っていました」と語ると、さらに「台本と画面と見比べてみて、なぜこんな芝居をしているのか、という分析から入るんですが、裏に何かあるんじゃないかと思ってしまう。だからひとつだけの芝居でなく、いろんなものを用意していないと彼の芝居の吹き替えは出来ない。だから収録の時は、いろんなものを用意したつもりですけど、もう少しできたんじゃないかなと思う部分もあります。彼はそういう役者ですね」としみじみ。 その言葉を受けてとりさんは「吹き替え声優は必ずしも声が似ている必要はないのですが、宮内さんは非常に声が似ている。そしてお芝居もきちんと理解されているんだと思う」と称賛。さらに「下手するとトム・ハーディより宮内さんの声の方が低いんじゃないかと思う時もあった。普通、外国の俳優に日本人が声をあてる時って、なかなかそこまで低くなることはない」と続けると、会場からは大きな拍手が。それに対して「若い時は出来なかった役。声がかれてきて。ガラガラいうようになってきて出来るようになった。雰囲気が合ってきたのかもしれない。この年になって出来る役であり、役者さんなのかもしれませんね。とはいえ彼は僕より10歳くらい年下なんですけどね」と笑う宮内さんでした。 今回の日本語吹き替え版の演出は、数々の洋画の日本語吹き替え版のほか、スタジオジブリ作品などのアニメ作品なども手がける音響監督の木村絵里子さんが担当しています。「ご縁から言うと、20年くらい前に吹き替えの仕事を始めた時に『ハリーポッター』で、ちょっとした役をいただいたんです。でもそれが全然出来なくて。『持ち帰ってください』と言われて帰されたんです。それで日をあらためて収録に行ったんですが、それでも悩んで。自分では変わっていないなと思ったんですけど、オッケーをいただきました。僕は半べそをかきながら、もう縁もないかなと思ったんですが、それからもちょこちょこと使っていただいて。僕のいいところを拾っていただけた。そういうご縁があるんです」と語る宮内さんは、「演出力は役者の上をいっていますからね。ひとつのシーンでも、こうじゃないかと言われると、ハッと気付かされることが多くて。そこから何テイクもやって現場で作り直していく。やはり自分を預けることができる演出家さんだなと、今回、改めて感じましたね」と付け加えました。 そんな宮内さんに『マッドマックス』への思いを尋ねると、「僕は物心ついた時から『マッドマックス』で育ちました。小学生くらいの頃に、ファーストの世界観を見た時に、本当に驚いたんです。だからそんなシリーズに声をあてて、その中に入ることができるなんて夢にも思いませんでしたね」と晴れやかな顔。そして最後に「『マッドマックス』の続きもあるという話もありますが、その時にまたトム・ハーディの声を吹き替えられたらと思います」と決意を語ると、会場からの喝采を集めました。 イベント上映:8月4日実施。運営協力:V8japan様/マクラウド様(「マッドマックス・コンベンション2019」11月開催)多大なるご協力いただき誠にありがとうございました!------------------------------------------------------------------------------------------------------ ■番組情報 『(吹)マッドマックス 怒りのデス・ロード[ザ・シネマ新録版]』 ザ・シネマ新録吹き替え版の一部動画を公開中! 放送日:8月12日(月・休) 06:30 ~/ 23:00~/8月24日(土)12:30~/23:00~[R15+] 暴力と狂気に支配された終末世界──30年ぶりとなる「マッドマックス」シリーズ最新作特設サイトはコチラ※随時、更新中!お見逃しなく!番組情報 ■Twitter感想キャンペーン実施中! 熱い感想おまちしております!8/25まで実施!当選者にはTwitterのDMでご連絡いたします。
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PROGRAM/放送作品
ストーリー・オブ・フィルム 第13回:フィルム時代の終焉
映画史に隠された壮大な物語を、当時の映像や関係者へのインタビューなど全15話で辿るドキュメンタリー
1990年代に活躍した世界の映画作家について触れる。映画製作を見直したイランのアッバス・キアロスタミ、そして大胆な切り口で日本カルト映画の象徴となった塚本晋也に話を聞いていく。
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COLUMN/コラム2019.04.02
アメリカの現実を投影したディストピア世界を描く低予算B級ホラー・アクション・シリーズ
‘13年の夏、アメリカで一本の低予算ホラー・アクション映画が予想外の大ヒットを記録する。タイトルは『パージ』。バジェット300万ドルに対して、公開週末の興行収入はナンバー・ワンの2500万ドル。最終的な世界興収は8900万ドル以上に達した。以降もシリーズ化されて人気を博し、スピンオフ的なテレビシリーズまで作られることに。B級ホラー映画を得意とする制作会社ブラムハウス・プロダクションにとって、『パラノーマル・アクティビティ』(’09)や『インシディアス』(’10)に続く看板シリーズとなった。 シリーズ全作に共通する基本設定は下記の通りである。 経済悪化や犯罪率の上昇などで社会が混乱した近未来のアメリカ。この機に乗じて政権を掌握した「新しい建国の父」なる政治組織が全体主義的な統治支配を行い、大衆の不満の捌け口としてパージ(粛正)法を施行する。これは年に一度、3月21日の夜7時から翌朝7時までの12時間だけ、殺人や強盗、レイプなどの凶悪犯罪を合法化するというもの。その間、警察も病院も消防署も一切機能しない。ただし、政府要人などランク10以上の特権階級はパージの対象外で、もし彼らに危害を加えたら重罰に処せられる。よって、広範囲に被害が及ぶ可能性のある爆弾や細菌兵器などの使用は不可。このパージ法によって失業率は1%にまで低下し、犯罪率も過去最低を更新。かくして、アメリカは暴力のほぼ存在しない平和で安定した社会を実現した…というわけだ。 「人間はもともと暴力的な生き物。内なる攻撃性を解き放つことで、国民の精神を健全化する」というのがパージ法の目的なのだが、しかしそれはあくまでも表向きの大義名分に過ぎない。アメリカ政府の本当の狙いは、富裕層による富の独占と国民の分断だ。パージへの参加・不参加は個人の自由。参加者はおのおの武器を手にして殺人や略奪などの「狩り」に出かけ、不参加者は屋内に立て籠もって朝が来るのを待つ。おのずと武器やセキュリティシステム、各種保険などの必需品が毎年飛ぶように売れ、特定の企業や業界が莫大な利益を上げ、権力者たちも多額の政治献金によって懐が潤うことになる。 その一方で、十分な武器やセキュリティを確保できない中流以下の庶民は当然ながら命の危険に晒される確率が高く、中でも無防備にならざるを得ない貧困層は格好のターゲットにされる。ではなぜ民衆はパージ法反対のために立ち上がらないのか?これは、今回残念ながらザ・シネマでは放送されないシリーズ第3弾『パージ:大統領令』(’16)で明らかにされるのだが、実は「新しい建国の父」のバックに保守系キリスト教団体が付いており、「宗教」と「愛国」を盾にしたプロパガンダで国民を洗脳し抑圧している。それゆえ、ナチ政権下のドイツの如く、反政府レジスタンスは表立った活動ができないのだ。いずれにせよ、一般の庶民同志に殺し合いをさせて支配層への不満をガス抜きし、ついでに貧困層の人口を減らすことで社会福祉予算を大幅に削減できる。まさに一石二鳥のシステムと言えるだろう。 さながら、21世紀アメリカの現実を投影したかのようなディストピア。監督・脚本を手掛けたのは『交渉人』(’98)や『アサルト13 要塞警察』(’05)などアクション映画の脚本家として知られるジェームズ・デモナコだ。1作目の初稿を書き上げた当初、彼は周囲から「こんな反米的な内容の暴力映画、絶対に受けるはずがない」と猛反対されたという。自身も本シリーズを「反米的」と認める監督は、しかし「僕は自分の国を愛している。でも今の我々は狂っている」と1作目公開当時のインタビューで告白している。 「ウォールストリートを占拠せよ」の抗議運動によって不公平な富の再分配や経済格差の拡大が大きな社会問題となり、バージニア工科大学やサンディフック小学校など全米各地で発生する銃乱射事件の頻度が増す一方だった1作目公開時のアメリカ。もともと銃規制賛成派でリベラル寄りのデモナコ監督は、そんなアメリカ社会の在り方に強い憤りを覚えていた。また、’05年にハリケーン・カトリーナが米南東部を襲った際の、アメリカ政府のあまりに杜撰で不十分な対応にも怒りを禁じえなかったという。そうした権力や社会への不信感が『パージ』シリーズ制作の原動力になっているようだ。 第一弾『パージ』の舞台は富裕層が暮らす高級住宅街。主人公はセキュリティ会社のエリート・セールスマン一家。言ってみれば、パージ法の恩恵に与って財を成した搾取側の人々だ。最新のセキュリティシステムを完備した大豪邸に暮らす彼らにとって、パージの夜の虐殺も略奪も対岸の火事。自分たちには直接関係がないものと高をくくっているのだが、しかしふとした出来事から暴力集団の家宅侵入を許してしまい、絶体絶命の危機に陥ることとなる。 さらに本作では、富裕層の中にもあるヒエラルキーに着目し、高級住宅街における隣近所の格差に由来する憎悪と嫉妬を浮き彫りにしていく。いったんパージ法のような権力の理不尽を許してしまえば、たとえ支配者側についていても身の安全は保障できないし、いつ自分たちが弱者へ転落して犠牲を強いられることになるかも分からない。「今がよければ」「自分さえよければ」という浅はかで利己的な考え方は、いずれブーメランとなって我が身に返ってくる。暴力と憎悪の蔓延する世界では、誰もがそれと無関係ではいられないのだ。 続く第2弾『パージ:アナーキー』では、舞台が貧困層の人々が暮らす下町へと移り、パージの晩に逃げ場を失った貧しい男女5人のサバイバルが描かれる。1作目の主人公が白人一家であったのに対し、こちらは白人・黒人・ヒスパニックの多人種構成(母娘役のカーメン・イジョゴとゾーイ・ソウルは肌の色が薄いもののアフリカ系)。あくまでもテーマの焦点は人種問題ではなく階級問題なのだが、しかしデモナコ監督自身も「結果的に人種と階級は切り離せない」と語るように、貧困層になればなるほど人種的マイノリティが増えることは避けられない。 ウォルター・ヒル監督の『ウォリアーズ』(’79)からインスピレーションを得たという『パージ:アナーキー』。お互いに助け合いながら、獲物を探すパージャー(パージ参加者)たちがうごめく真夜中のスラム街を駆け抜ける主人公たち。そんな彼らが中盤で武装集団に拉致され、とある場所へと連れていかれる。そこは、なんと白人富裕層たちが人間狩りを楽しむ狩猟場だった…! というわけで、あからさまに分かりやすい超格差社会のメタファーに、少なからず苦笑いさせられることは否めないが、この下世話なくらいにベタな社会風刺こそが『パージ』シリーズの醍醐味でもある。そもそも、シリーズの基本姿勢は低予算のエクスプロイテーション映画。デモナコ監督は古いハリウッドB級娯楽映画の伝統に倣ったと語っている。かつて、ドン・シーゲルやサミュエル・フラーといった職人監督たちは、生活のためと割り切って低予算B級映画の仕事を引き受けたわけだが、実のところ西部劇やアクション活劇といった純然たる娯楽映画を撮りつつ、その中に政治的なメッセージや社会的なテーマを盛り込むことが少なくなかった。『パージ』シリーズもその延長線上に存在するというわけだ。 映画とは時代を映す鏡でもある。「願わくは、(『パージ』シリーズが)『ソイレント・グリーン』のように、まるで荒唐無稽な話だと受け止められるような社会であって欲しい。それが理想だけれども、悲しいことに現実はそうでない」とも語っているデモナコ監督。その後も、まるでトランプ大統領の出現を予感したかのような第3弾『パージ:大統領令』(2020年大統領選へ向けたトランプ陣営のスローガン「Keep America Great(米国を偉大なままに)」まで登場する)、パージ法の始まりを描いた前日譚『パージ:エクスペリメント』(‘18・’19年6月に日本公開予定)と続き、より人間ドラマにフォーカスしたテレビシリーズ『パージ』(’18~)も登場。監督は公開時期未定の次回作映画でシリーズに終止符を打つと公言しているが、果たしてそれまでにアメリカ社会はどのような変化を遂げているのだろうか。■ ▼放送情報はコチラから。 『パージ』 (2013年公開) 『パージ:アナーキー』 (2014年公開) 『パージ:大統領令』(2016年公開) ▼関連情報 映画『パージ:エクスペリメント』6/14公開記念、 ザ・シネマで6/5(水)、6/14(金)、6/29(土)に 「パージ」シリーズ一挙放送!プレゼントキャンペーンも実施!
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PROGRAM/放送作品
ストーリー・オブ・フィルム 第12回:世界の映画製作と抗議
映画史に隠された壮大な物語を、当時の映像や関係者へのインタビューなど全15話で辿るドキュメンタリー
1980年代、勇気ある映画製作者たちが権力に対して、いかに真実を訴えたかに迫る。中国、ソ連、ポーランドなど世界各国の巨匠たちが行った“抗議”の映画製作にフォーカスする。
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COLUMN/コラム2019.03.08
麻薬ではなく資金の流れを追え!米法執行史上最も成功した潜入捜査「Cチェイス作戦」を描く『潜入者』
2019年現在、アメリカにおける麻薬戦争とは主に対メキシコのそれを意味するが、しかしかつてのアメリカにとって麻薬戦争の最大の敵はコロンビアにあった。もともと中南米からアメリカへの麻薬供給源はメキシコだったものの、現地政府の麻薬撲滅作戦が功を奏して生産量が激減したことから、’70年代にコロンビアの麻薬組織が台頭。その中でも圧倒的な勢力を誇ったのが、一時は世界7番目の大富豪にまで上りつめた帝王パブロ・エスコバルが君臨する中南米最大の麻薬組織メデジン・カルテルだった。 そのメデジン・カルテルの資金洗浄網の実態を暴き出し、麻薬帝国崩壊のきっかけを作った潜入捜査の実話を描いた映画『潜入者』。冒頭のテロップで、同カルテルが’80年代にアメリカへ密輸した麻薬が1週間あたり4億ドルに相当する15トンもあったこと、その大半がフロリダ南部から持ち込まれたことが記されているが、実際に当時のフロリダは麻薬の大量流入で治安が著しく悪化し、マイアミはニューヨークやロサンゼルスと並ぶ全米最大(というより最悪)の犯罪都市となっていた。まさしく、ドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』や映画『スカーフェイス』の世界だ。 主人公は実在のアメリカ関税局捜査官ロバート・メイザー(ブライアン・クランストン)。舞台は1985年のフロリダ州タンパ。日本人にはピンと来ない人も多いかもしれないが、タンパにはフロリダ州最大規模の貿易港があり、対南米の輸出入において重要な窓口となる。おのずと麻薬カルテルの活動拠点ともなるわけで、地元関税局に勤めるメイザーはメデジン・カルテルの壊滅を目指して日夜奮闘していたわけだ。 しかし、潜入捜査で捕まえるのは末端の密売人など小物ばかり。とてもじゃないが、今のやり方ではパブロ・エスコバルやドン・チェピのような組織のトップを狙うことは出来ない。そこで彼が考えついた作戦は、麻薬そのものを追うのではなく資金の流れを追うこと。なぜなら、組織が麻薬取引で得た違法な現金は、必ずどこかで洗浄するはずだからである。 名付けて「Cチェイス作戦」。Cは現金=キャッシュ(Cash)のC。「現金を追う」からCチェイスというわけだ。後に「アメリカの法執行史上最も成功した潜入捜査のひとつ」と呼ばれることになる作戦だが、そのあらましは意外とシンプル。資金洗浄の闇商売を請け負う悪徳ビジネスマンに扮したメイザーが、おたくの仕事も引き受けまっせ!と組織に接触してその輪の中へと深く潜入し、幹部との信頼関係を築いて違法な資金の流れを掴むのである。 とはいえ、もちろん作戦計画のディテールには細心の注意が必要。少しでも矛盾が生じれば相手に正体がバレてしまい、自分はおろか同僚や家族の命まで危険にさらすことになる。劇中では触れられていないものの、もともとメイザーは大学時代に連邦税の執行・徴収を担当する内国歳入庁(IRS)の情報局でアルバイトをしていた経験があり、その頃から潜入捜査のノウハウを学んできたという筋金入りのプロだ。しかしそんな彼でも、この「Cチェイス作戦」は長年のキャリアで最も困難な捜査のひとつだったという。 なにしろ、相手は全米はおろか世界中に情報網を持つ巨大な麻薬カルテル。潜入捜査に当局の影がチラついてはいけない。例えば、偽りの身分で銀行口座ひとつ作るにしても、関税局に任せず自分自身で直接銀行へ出向いて手続きをすることが肝心。なぜなら、あらゆるところに組織のスパイや協力者がいるため、その気になれば簡単に調べがついてしまうからだ。もちろん、当局の監視が付けばすぐに見破られる。なので、少なくとも相手と接触している間は味方のバックアップは期待できない。まさに、孤立無援の状態で臨まねばならないのである。 さらに言えば、潜入捜査官は俳優ではない。要するに完全な別人を演じることは出来ないのだ。あくまでも捜査官本人のプロフィールを土台とし、そこに脚色を加えることで他人のふりをするのが潜入捜査の基本だと、メイザーはインタビューで語っている。この「Cチェイス作戦」の場合だと、彼は自分と同じイタリア系で年齢も近く、イニシャルが同じなのでサインを間違えずに済むボブ(=ロバート)・ムセラという実在した故人のアイデンティティを拝借し、同僚のエミール・アブレウ(ジョン・レグイザモ)や元囚人の協力者ドミニク(ジョセフ・ギルガン)の助言を得ながら、裏ビジネスを含む多角経営で巨万の富を得た成金ビジネスマンという架空のキャラクターを作り上げていったのだ。 裏社会の人間らしい仕草や言葉遣いを駆使してボブ・ムセラになりきるメイザー。しかし根本的な人間性までは変えられない。それゆえ、カルテル関係者との接待の場で女性をあてがわれるという想定外の事態に直面した彼は、つい「自分には婚約者がいるから浮気は出来ない」とキャラ設定にない発言をしてしまう。愛妻家の良き家庭人である彼は、たとえ職務とはいえ妻を裏切ることは出来なかったからだ。結果的に、婚約者役の女性捜査官キャシー(ダイアン・クルーガー)をミッションの心強いパートナーとして得ることが出来たのは幸いだったのだが。 ちなみに、ボブ・ムセラという架空のキャラを演出するために、メイザーは巨大なオフィスや豪華な邸宅、ロールス・ロイスやジャガーなどの高級車にプライベート・ジェットなどを用意した。ただ、その全てを関税局の予算でまかなうことは不可能だったため、劇中で描かれているように裕福な知人からオフィスなどは借り受けたそうだ。また、映画ではあっという間に潜入捜査が始まったような印象を受けるが、実際は半年以上をかけて綿密に下準備を行ったという。そもそも、この「Cチェイス作戦」自体が5年の歳月をかけて遂行されたものだった。 このように、潜入捜査の巧妙な作戦テクニックと駆け引きのスリルに目を奪われる本作。世界78か国に支店を持つ大手銀行BCCI(国際商業信用銀行)が思いがけず餌に食いつき、彼らが裏社会の資金洗浄に大きく関わっていたことが明るみになっていく過程なども実に面白い。「私たちの言っている意味、お分かりですよね?」などと、遠回しに取引を持ち掛けてくる辺りのやり取りはなんとも絶妙で、メイザーならずとも「うおっ!棚ボタで大物が引っ掛かりやがった!」と内心小躍りしてしまうこと必至だ。しかし、それに輪をかけて引き込まれるのは、犯罪の世界に身を沈めていかねばならない当事者の心理描写である。 潜入捜査のプロとはいっても一介の国家公務員。普段の平凡で平和な日常とはまるで異質な、暴力とドラッグとセックスにまみれた裏社会に身を置かねばならなくなるわけだから、その精神的なストレスは我々素人の想像を絶するものがある。任務の合間に妻子の待つ我が家へ戻ったメイザーが感じる、二重生活者ならではの虚無感や焦燥感は生々しい。しかも、演じているのがブライアン・クランストン。おのずと、平凡なダメ亭主と麻薬王の二つの仮面を持つドラマ『ブレイキング・バッド』の主人公ウォルターとイメージが重なって説得力が増す。これぞキャスティングの妙である。 そして、麻薬カルテルの輪の中に深く潜入することで、メイザーやキャシーはターゲットである犯罪者たちに感情移入していくことになる。これこそが本作最大のハイライトと言えるだろう。ある一面では確かに彼ら(カルテル幹部)は非道な悪人だが、しかし同時に良き夫や良き父親など善人の側面も持ち合わせている。仕事が麻薬密売や殺人などの犯罪行為ということを除けば、ある意味で普通のビジネスマンとあまり変わりないのだ。そんな彼らを巧みに騙して心を開かせ、その信頼と友情を利用して罠にはめ、最終的には逮捕しようというのだから、少なからず良心の呵責を覚えてしまうのは致し方ないだろう。 それもまた仕事の一部だというメイザーは、潜入捜査官には「白と黒」、「イエスとノー」の区別がハッキリとしたメンタリティの持ち主が向いているとインタビューで語っている。つまり、グレーゾーン的な思考にとらわれることなく、目的を成し遂げるために何が正しくて何が間違っているのかを明確かつ瞬時に判断できる「割り切り力」が必要とされるわけだ。なにしろ、金や女の誘惑も多い世界に身を投じるのだから、ブレることなく職務を全うするためには割り切るしかないのだろう。それだけに、クライマックスの一斉検挙は痛快であると同時に一抹のほろ苦さも漂うのだ。 なお、劇中ではメイザーがメデジン・カルテルの運び屋だったバリー・シール(マイケル・パレ)と接触するが、これは映画化に際して加えられたドラマチックなフィクション。また、冒頭で潜入捜査中のメイザーの胸に仕掛けられた盗聴器が焼けてしまうシーンも、原作本では言及されていない。 かくして、メデジン・カルテルの資金洗浄網を暴いて大物幹部を検挙し、大手銀行BCCIの悪事をも白日のもとにさらした「Cチェイス作戦」。その後、コロンビアの麻薬カルテルは衰退の道をたどることになるわけだが、しかし現在も麻薬戦争は場所や形を変えて継続しており、あえてどことは言わないが、たびたびニュースで報じられている通り犯罪組織の資金洗浄に加担する銀行も後を絶たない。それはまるで、終わりなき戦いのようだ。■ ©2016 Infiltrator Films Limited
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PROGRAM/放送作品
ストーリー・オブ・フィルム 第11回:大衆文化の革新
映画史に隠された壮大な物語を、当時の映像や関係者へのインタビューなど全15話で辿るドキュメンタリー
1970年代に起こった大衆文化の革新とアジア映画の本流について描く。香港映画は、“カンフー”の登場で大きな変化を見せていく。『マトリックス』武術指導のユエン・ウーピンが、自身の映画などについて語る。
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COLUMN/コラム2019.03.05
〜『ファンタズム』シリーズ〜 ザ・シネマでの全シリーズ連日放送は、熱心なファンにしか許されない40年の時を超えた恐怖と冒険と感動を味わえるチャンス!
『エルム街の悪夢』シリーズや『13日の金曜日』シリーズに比べるといささか地味だが、それでもなおカルト映画として世界中で根強い人気を誇る『ファンタズム』シリーズ。30万ドルの低予算で製作された記念すべき第1弾『ファンタズム』(’79)は、『悪魔のいけにえ』(’74)や『ハロウィン』(’78)といったインディペンデント系ホラーがメジャー級の大ヒットを飛ばす’70年代の時流に乗って、興行収入1100万ドルを超える大成功を収めた。とはいえ、その後40年近くの長きに渡って続編が作られることになろうとは、監督のドン・コスカレリ自身も想像していなかったに違いない。 もともと地元カリフォルニアのロングビーチで学生映画を撮っていたコスカレリ監督は、映画仲間クレイグ・ミッチェルとのコンビで、平凡な若者とその弟の悩み多きままならぬ青春を描いた『誰よりも素敵なジム』(’75)で劇場用映画デビューを果たす。撮影当時のコスカレリはまだ18歳。製作費はミッチェルとそれぞれの両親から借金した。なかなか買い手が見つからなかったものの、コスカレリの父親の知人だったロサンゼルス・タイムズの映画批評家チャールズ・チャンプリンがラフカット版を見てユニバーサルに推薦し、素人が撮った自主製作映画にも関わらずメジャー公開されるという幸運に恵まれる。 続いて、12歳の少年たちの平凡だがキラキラとした日常を鮮やかに切り取った青春映画の佳作『ボーイズ・ボーイズ/ケニーと仲間たち』(’76)を20世紀フォックスの配給で発表したコスカレリ監督は、少年時代から大好きだったというホラー映画の製作に着手する。前2作が高い評価のわりに興行成績が奮わず、ホラー映画ならば当たりが狙えるという目算もあったという。それが父親や知人からの借金で自主制作した低予算映画『ファンタズム』だった。 舞台はアメリカのどこにでもある風光明媚な田舎町。異次元からやって来た邪悪な葬儀屋トールマン(アンガス・スクリム)が、町の住民を次々と殺してはドワーフ型のゾンビに変えていく。いちはやく異変に気付いた13歳の少年マイク(マイケル・ボールドウィン)は、年の離れた兄ジョディ(ビル・ソーンベリー)やその親友レジー(レジー・バニスター)と共に、トールマンを倒すべく果敢に立ち向かっていくこととなる。 コスカレリ監督自身が見た悪夢を映像化したという本作。夢と現実が錯綜する摩訶不思議なストーリーに明確な説明はない。そのシュールリアリスティックな語り口はルイス・ブニュエルやジャン・コクトーを彷彿とさせ、ショッキングでスタイリッシュなイメージの羅列はダリオ・アルジェントの影響も如実に伺わせるが、しかし作品全体を覆うジューヴァナイルなセンチメンタリズムは、それまでのコスカレリ監督作品の確かな延長線上にあるものと言えよう。 『ボーイズ・ボーイズ/ケニーと仲間たち』と同じく10代前半の少年の目を通して世界を見つめる本作では、『誰よりも素敵なジム』の大学生ジムが父親の虐待から幼い弟ケリーを守ろうとしたように、ミュージシャン志望の若者ジョディが邪悪な大人トールマンの魔手から年の離れた弟マイクを守ろうとする。ジョディとマイクは両親を交通事故で失ったばかりだが、両親からネグレクトされたジムとケリーもまた親がいないも同然の孤独な兄弟だった。ある意味、『誰よりも素敵なジム』と『ボーイズ・ボーイズ~』、そしてこの『ファンタズム』は、精神的な部分で連なる三部作の様相を呈しているとも考えられるだろう。 そのうえで本作は、ストーリーなきストーリーに主人公マイクの揺れ動く複雑な心情を投影する。愛する両親を一度に失い、唯一の肉親である兄ジョディもまた、町を出てひとり立ちしようとしている。思春期の多感な少年が人生で初めて直面する喪失感、このまま一人ぼっちになってしまうのではないかという不安感、そしてまだ子供であるがゆえの無力感。それらをひとまとめにした象徴が、得体の知れない悪魔トールマンなのである。 誰もが少なからず身に覚えのある、成長期の漠然とした不安や恐怖を想起させる。それこそが、どちらかというと難解な内容でありながらも、多くのファンが『ファンタズム』に魅了される最大の理由であろう。しかし、その後の続編はちょっとばかり違った方向へと舵を切る。 大手ユニバーサルの出資で製作された第2弾『ファンタズムⅡ』(’88)は、’80年代当時のホラー映画ブームを意識した純然たるエンターテインメント作品に仕上がった。なぜなら、ユニバーサルがそれを求めたからである。 ストーリーは逞しい青年に成長したマイク(ジェームズ・レグロス)と相棒レジー(レジー・バニスター)が宿敵トールマン(アンガス・スクリム)を倒さんと各地を巡るロードムービーへと変貌し、『エルム街の悪夢』のフレディばりに神出鬼没なトールマンや前作でも強烈な印象を残した空飛ぶ殺人銀球「シルバー・スフィア」のパワーアップした恐怖が強調され、大量の火薬を使った爆破シーンやガン・アクションがふんだんに盛り込まれた。マーク・ショストロムがデザインし、弟子のロバート・カーツマンやグレッグ・ニコテロが造形した派手な特殊メイクの数々も見どころだ。 まあ、確かに続編とはいえ半ば別物のような作品だが、しかしここではヒロイック・ファンタジー『ミラクルマスター/七つの大冒険』(’82)でも披露した、コスカレリ監督の娯楽映画職人としての実力が遺憾なく発揮されている。もちろん賛否はあるだろう。ユニバーサルの要求で、マイク役を当時売り出し中の若手イケメン俳優ジェームズ・レグロスに変更させられたことも残念だ。それ以外にもスタジオからの横やりは多く、コスカレリ監督としては少なからず不満も残ったという。しかしそれでもなお、シリーズ中では最も単純明快なB級ホラー映画として十分に楽しめる。 続く『ファンタズムⅢ』(’94)でもそのエンタメ路線は引き継がれるが、製作元がメジャーからインディペンデントへと戻ったこともあり、コスカレリ監督の好きなように作られているという印象だ。なによりも、マイク役に1作目のマイケル・ボールドウィンが復活したこと、ビル・ソーンベリー演じる兄ジョディも再登板したことの効果は大きい。本作からシリーズ随一の愛されキャラ、レジー(レジー・バニスター)が実質的な主人公となり、旅の途中で出会った女戦士ロッキー(グロリア・リン・ヘンリー)や「ホームアローン」少年ティム、そして今やシルバー・スフィアと化したジョディがタッグを組み、トールマン(アンガス・スクリム)に狙われるマイクを救おうとする。 過去作で散りばめられた謎の真相を本作で明かすことを試みたというコスカレリ監督。その言葉通り、トールマンの目的やドワーフたちの正体、シルバー・スフィアの仕組みなどが解明され、いわば「ファンタズム・ワールド」の全体像がおぼろげながらも見えてくる。といっても、みなまでを詳細に語らず観客に想像の余地を残すところはコスカレリ監督ならではと言えよう。夢と現実の交錯するシュールな語り口も、原点回帰を如実に実感させて嬉しい。 しかしながら、真の意味で『ファンタズム』の原点に戻ったのは、次の『ファンタズムⅣ』(’98)である。トールマン(アンガス・スクリム)にさらわれたマイク(マイケル・ボールドウィン)を救うべく、レジー(レジー・バニスター)とスフィア化した兄ジョディ(ビル・ソーンベリー)が行方を追うわけだが、ここでは第1作目の未公開フィルムをフラッシュバクとして効果的に多用することで、失われた時間や過ぎ去った思い出に対する深い郷愁と万感の想いが浮き彫りにされていく。さらに、かつては善人だったトールマンの意外な過去を描くことで、必ずしも思い通りにはならない人生や運命の悲哀が強調されるのだ。 かつて13歳の美少年だったマイクもすっかり大人。レジーやジョディに至っては立派な中年だ。みんなもはや決して若くはない。静かに忍び寄る老いを前にした彼らの後悔と不安、そして来るべき苦難の道など想像もしなかった平和な過去へのノスタルジーが、トールマンとの終わりなき戦いの日々を通して描かれていく。30年前の幼きマイクと若きレジーの、まるで波乱の未来を予感したような複雑な表情で幕を閉じるクライマックスは、1作目から追いかけてきたファンならば涙なしに見ることは出来ないだろう。これは、『ファンタズム』と共に大人へと成長してきた大勢のファンへ対する、コスカレリ監督からの真心のこもったラブレターである。 そして、それから18年の歳月が経ち、老境にさしかかったコスカレリ監督が自らの「死生観」を投影した作品が『ファンタズムⅤ ザ・ファイナル』(’15)である。ここで彼は初めてレジー(レジー・バニスター)を単独の主人公に据える。もちろんマイク(マイケル・ボールドウィン)やジョディ(ビル・ソーンベリー)、トールマン(アンガス・スクリム)も登場するし、1作目のラヴェンダーの女(キャシー・レスターの美魔女ぶりに驚嘆!)や3作目のロッキー(グロリア・リン・ヘンリー)も再登板。しかし、物語はあくまでも年老いたレジーの視点から語られていく。 相変わらずトールマンを倒してマイクを救うための旅を続けていたレジー。しかし、ハッと目を覚ますとそこは病院で、自分が痴呆症と診断されて入院していることをマイクに告げられる。トールマンとの戦いも何もかも、彼がマイクに語って聞かせた妄想だという。しかし再び目を閉じると、トールマンによって崩壊した世界の真っただ中で、レジーはマイクと共に武器を手にして戦っている。どれが夢でどれが現実なのか全くわからない。その混沌を通して、限りある人間の生命と肉体の儚さ、それでもなお前へ進むことを諦めない精神の不滅が描かれるのだ。 病床に臥したレジーをマイクとジョディが囲むシーンはまさに胸アツ。1作目と同じキャストが演じているからこその、人生と時間の重みをまざまざと感じさせる。ここまで来ると熱心なファン以外は完全に置いてけぼりなのだが、もちろんそれで全く構わない。むしろこの感動を味わえるのは、1作目から熱心に追いかけてきたファンのみに許された特権であり、そういう自己完結したガラパゴス的な映画があってもいいと思うのだ。 この『ファンタズムⅤ ザ・ファイナル』を最後に、トールマン役のアンガス・スクリムが急逝。正真正銘のファイナルとなった。振り返れば、アンガスはコスカレリ監督のデビュー作『誰よりも素敵なジム』(ロリー・ガイ名義で出演)以来の付き合い。レジー役のレジナルド・バニスターもそうだ。マイク役のマイケル・ボールドウィンは『ボーイズ・ボーイズ/ケニーと仲間たち』からの常連。ジョディ役のビル・ソーンベリーだけは『ファンタズム』1作目が初参加だったが、それでもなお40年近く付き合ってきたことになる。『ファンタズム』シリーズはドン・コスカレル監督のみならず、その仲間たちにとってもライフワークだった。その時を超えた恐怖と冒険と感動を、ザ・シネマの全シリーズ連日放送で味わえるのは誠に贅沢だと言えよう。◼︎ © 1988 Starway International, Inc.