1970年代に一斉を風靡した、『ゴッドファーザー』(1972年)『ゴッドファーザー PART II』(1974年)のジェームズ・カーンと、『ロング・グッドバイ』(1973年)のエリオット・グールドの主演作だ。監督は、本作ののちにベット・ミドラー主演の『ローズ』(1979年)、ヘンリー・フォンダ&キャサリン・ヘプバーン主演の『黄昏』(1981年)、ベット・ミドラー&ジェームズ・カーン主演の『フォー・ザ・ボーイズ』(1991年)を撮る名匠マーク・ライデルだ。

 サウンドトラックがすばらしい出来で、『ロッキー』のタイア・シャイアの旦那さん、デヴィッド・シャイアが担当。撮影監督はアメリカン・ニューシネマを代表するカメラマン、『イージー・ライダー』(1969年)や『ペーパー・ムーン』(1973年)や『未知との遭遇』(1977年)のラズロ・コヴァクスだ。脚本がよく練られていて、『マホガニー物語』(1975年)のジョン・バイラムと、『フリービーとビーン/大乱戦』(1974年)のロバート・カウフマンだ。

 主人公は2人の売れないヴォードヴィリアン、ハリー(ジェームズ・カーン)とウォルター(エリオット・グールド)で、1892年、マサチューセッツ州のコンコード刑務所に2人が護送されてきた。そこで、金庫破りの名人アダム・ワース(マイクル・ケイン)の奴隷同然の召使いにさせられる。ワースは豪華な特別室におさまり、刑務所長、看守を顎で使っている。彼は腹心のチャトワースが持って来たマサチューセッツ州ローウェルの銀行になる金庫の青写真をカーテンの裏に貼って研究を始める。

 その頃ニューヨークの左系新聞の記者リサ・チェストナット(ダイアン・キートン)が刑務所の取材に訪れた。ハリーはこっそり青写真をリサの助手のカメラで撮ったのだが、マグネシウムの火がカーテンに引火して銀行の見取り図の青写真は燃えてしまった。怒ったワースは看守に命じて2人を石材場の重労働に追いやる。ハリーがその石切場からニトログリセリンを持ち出し、2人は刑務所の門を破って逃走する。

 ニューヨークに着き、その新聞社で青写真を撮ったネガを入手。だが、出所してきた強盗のプロ、ワースに見つかって見取り図は取り上げられる。

 現像した写真を前に、リサはワースに対抗して金庫破りをすることになる。ただし金は社会正義のために使うことを提案する。その計画にスタッフも賛成し、一同はローウェルに向かって、銀行の上の部屋からトンネルを掘り始める。ところが隣の部屋へ銀行の頭取ルーファス・クリスプ(チャールズ・ダーニング)が女を連れこんでいた。頭取がいてはトンネルが掘れないので、リサは頭取に巧みに近寄り翌日の夜、2人でオペレッタを見に行く。そのオペレッタの主演がワースの恋人グロリア・フォンテーン(レスリー・アン・ウォーレン)なのに気が付いたリサが楽屋を探ると、やはりワース一味がいた。

 彼らは劇場の地下室から銀行までトンネルを掘り、次の日のショーが終ったら金庫破りを決行する計画だと判明する。

 リサたちは何とか先手を打って、劇場に忍びこみ、ショーの途中に金庫を開けようとする。だが、なかなか金庫は開かず、ショーは終りそうになる。ヴォードヴィリアンのハリーとウォルターが衣裳をつけて舞台に加わる。オペレッタは、めちゃくちゃになるがそれまで退屈であくびを噛み殺していた観客に大いに受ける。

 見事に大金を盗み出したリサ、ハリー、ウォルターらはニューヨークに戻った。そこで彼らと再会したワースは、いさぎよく敗北を認めるのだった。

 コーエン兄弟の監督作品『オー!ブラザー』にも通じる、すこぶる軽快な強奪ものである。銀行強盗をゲーム感覚で描いた犯罪アクションで、キャストの顔ぶれだけでもおもしろさは約束されている。何よりも楽しいのは、『探偵<スルース>』(1972年)のマイクル・ケイン、『狼たちの午後』(1975年)のチャールズ・ダーニング、『アニー・ホール』(1977年)のダイアン・キートン、『チューズ・ミー』(1982年)のレスリー・アン・ウォーレン、『イナゴの日』(1975年)のデニス・デューガン、『ロッキー』(1976年)のバート・ヤングら、1970年代を彩った「名脇役たち」が多数出演していること。ソニー・コルレオーネでトップ俳優となった能天気なジェームズ・カーンが、若かりし頃のダイアン・キートンに手助けされるというお楽しみもある。

 ある意味で、サクセスストーリーだと解釈できる。そのギャグが緻密に計算されてシチュエーションコメディなので、何回観ても飽きないのだ。

 本作は1988年ぐらいにビデオソフトになったが、シネマスコープサイズの作品をTVサイズにトリミングしたため、大団円の最高におもしろいシーンが左端で起こっていてカットされるという憂き目にあっている。その意味で、今回の放送はもしかしたら、これがマトモなかたちで観られる最後かもしれず、1970年代のコメディ映画ファンにとって、これほど喜ばしいものはない。■

© 1976, renewed 2004 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.