バイオレンス描写と物語、どちらもにもサム・ペキンパー監督の世界観満載の『ワイルド・バンチ』の戦争映画版。第二次世界大戦末期の東部戦線で、敗戦濃厚なドイツ軍が、攻め込むソ連軍相手に抵抗する最前線が舞台。とにかく、登場人物は薄汚れた男ばかり。イケメンなし。だが、生き様がしびれるほどカッコイイ。仲間への責任感に満ち、器用な生き方ができず、負け戦とわかっていても自分の生き方を貫き通す主人公シュタイナーを演じるジェームズ・コバーンが、セリフではなく俳優としての存在感そのもので、この映画を成立させてしまいました。彼と対立する貴族出身の勲章をもらうことしか頭にない上官シュトランスキー役を演じたマクシミリアン・シェルもイヤな奴度100%の名演。だけど、こちらは演技だと思うので、こんな憎まれ役の中にも、憎みきれない姑息な人間の弱さを具現化させたシェルも別の意味ですごいです。「暴力」が代名詞になっているサム・ペキンパーですが、この作品を見終わった時に残ったのは、戦争の虚しさ、人間の狂気でした。魂がカッコイイ男たちの、暴力や戦争へのカタルシスなど微塵もない、これは反戦映画です。

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