11月3日『パリ、テキサス』

カンヌ国際映画祭パルムドールに輝くヴィム・ヴェンダース監督のロードムービー。記憶を失い、アメリカ西部をさまよう男を主人公にした家族の断絶と再生の物語だ。放浪の主人公が目ざしていたのは、劇中には登場しないテキサス州パリという実在の町。主人公の孤独を表す荒野の風景、ライ・クーダーの哀愁のギター音楽が心に残る。主人公と息子の微笑ましい交流シーンに加え、観る者の目を奪うのは妻役のナスターシャ・キンスキー。マジックミラーを用いたクライマックスは忘れえぬ名場面である。

 

■11月10日『ベルリン・天使の詩』

『パリ、テキサス』と並ぶ名匠ヴィム・ヴェンダースの代表作。東西冷戦末期のベルリンを舞台に、下界の営みを見つめる天使たちの姿を描いたファンタジーである。人間界への憧れを抱く天使ダミエルの心の移り変わりに沿って、白黒からカラーへ移行していく夢幻的な映像美。フランスの名手アンリ・アルカンによる撮影が絶品だ。天使とサーカスの舞姫との愛のドラマに宿ったロマンティシズムも本作の魅力。『刑事コロンボ』でおなじみのピーター・フォークの味わい深い助演もお見逃しなく!

 

■11月17日『マリリンとアインシュタイン』

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マリリン・モンローなど1950年代のアメリカを象徴する4人の歴史的な有名人を模したキャラクターが登場。彼女らの人生が交錯する架空の一夜を映画化した異色作だ。ホテルの一室を舞台にしたシュールなディスカッション劇。『赤い影』などの映像派の鬼才ニコラス・ローグらしい視覚的ギミックやファンタジーがアクセントを添える。アインシュタイン博士を翻弄するモンロー役はローグ監督の夫人テレサ・ラッセル。“無意味”という原題にふさわしいラスト・シーンの大爆発スペクタクルに息をのむ。
 

■11月24日『ローズ・イン・タイランド』

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テリー・ギリアム版「不思議の国のアリス」というべきファンタジー。ジャンキーの父親の突然死によって、草原の一軒家に取り残された少女の悪夢的な冒険を映し出す。頭だけのバービー人形、草原の下に出現する海など、ギリアム監督ならではの美しくもグロテスクなイメージが噴出。少女の空想が現実をのみ込んでいく、そのスリル!ギリアムの少女愛を感じさせる小さなヒロイン役は「サイレントヒル」のジョデル・フェルランド。朽ち果てゆく死体に扮したジェフ・ブリッジスの怪演も見逃せない。

 

『パリ、テキサス』© 1984 REVERSE ANGLE LIBRARY GMBH, ARGOS FILMS S.A. and CHRIS SIEVERNICH, PRO-JECT FILMPRODUKTION IM FILMVERLAG DER AUTOREN GMBH & CO. KG 『ベルリン・天使の詩』© 1987 REVERSE ANGLE LIBRARY GMBH and ARGOS FILMS S.A. 『マリリンとアインシュタイン』COPYRIGHT © MCML XXX? ZENITH PRODUCTIONS LIMITED ALL RIGHTS RESERVED 『ローズ・イン・タイドランド』©2005 Recorded Picture Company and  Capri Tideland Inc.