■10月6日『都会のアリス』

ヴィム・ヴェンダース監督が初期に発表したロードムービー3部作の第1作。9歳の少女をNYからアムステルダムに送り届けることになったドイツ人青年の物語だ。 人生の迷い道にさまよい込んだ青年と、生意気な少女が織りなすあてどない旅路。16ミリの白黒フィルムに焼きつけられた虚ろな風景が、得も言われぬ詩情を醸し出す。 主演はヴェンダース作品の常連俳優R・フォーグラーと「緋文字」の子役Y・ロットレンダー。複雑にして豊かな余韻を残す、ラスト・シーンの空撮が実にすばらしい。

 

■10月13日『アメリカの友人』

ヴィム・ヴェンダース監督がデニス・ホッパーを主演に迎えて撮ったサスペンス・ロマン。パトリシア・ハイスミスの“トム・リプリー”シリーズの一編が原作である。 画商を装い、ヨーロッパで贋作を売りさばく詐欺師リプリー。彼はひょんなことから出会ったヨナタンという病身の額縁職人を、裏社会の殺しの仕事に巻き込んでいく。犯罪劇に初挑戦したヴェンダースが、孤独な男たちの魂の共鳴をスリリングかつ切なく描出。彼が敬愛するニコラス・レイ、ダニエル・シュミットが脇役で出演している。

 

10月20日『あの頃ペニー・レインと』

キャメロン・クロウ監督の自伝的な青春映画で、アカデミー脚本賞に輝いた代表作。15歳にしてロック・ライターの道を歩み出した少年の夢のような日々を映し出す。著名雑誌からの依頼で、新進バンドのツアー密着取材を行う主人公ウィリアム。彼を魅了するグルーピーの美少女を、ケイト・ハドソンが眩しいほどキュートに演じる。70年代ロックに彩られた甘酸っぱくもビターな映像世界。音楽業界の内幕ものとしても興味深く、主人公の母親役フランシス・マクドーマンドらの好演も味わい深い。

 

10月27日『パフューム ある人殺しの物語』

ドイツの鬼才トム・ティクヴァが、P・ジュースキントのベストセラー小説を映画化。18世紀パリの魚市場で生まれ、並外れた嗅覚を授かった青年の数奇な運命を描く。ある美少女の体臭の虜になった主人公が、禁断の香水を創造するために、罪の意識すらなく猟奇殺人を繰り返していく。その異様なストーリー展開から目が離せない。主人公が女性の肉体から“香り”を抽出するシーンを始め、美醜入り混じるビジュアルのインパクトは圧巻。そしてクライマックスには誰もが目を疑う衝撃的な光景が!

 

『都会のアリス』© 1973 Reverse Angle Library GmbH 『アメリカの友人』© 1977 REVERSE ANGLE LIBRARY GMBH 『あの頃ペニー・レインと』Copyright © 2000 DreamWorks Films L.L.C. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. 『パフューム ある人殺しの物語』© 2005 Constantin Film GmbH