トーナメント一回戦最後の試合は、元祖肉体派アクションスターのシルヴェスター・スタローンと、ヨーロッパ最強の中量級キックボクサーとして鳴り物入りでハリウッドに進出し、90年代に一時代を築いたジャン=クロード・ヴァン・ダムの対戦という注目の一戦。

ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン区で生まれ育ったスタローンは、アメリカで最も危険な地域と称され、日中からマフィアやギャングが跋扈するヘルズ・キッチンで少年時代を過ごしてきた。両親の離婚を機に不良としての才能を一気に開花させたスタローンは、小学校から高校までの間に14の学校から放校処分となった札付きの荒くれ者。出生時にアル中の医師により顔の左側の神経を傷つけられたため、崩れた容姿によって受けるいじめから脱却するために始めたボクシングは、地獄のような地域で生き延びるための武器となった。また、俳優としてブレイク後も身体を鍛え続け、『ランボー』シリーズでは徒手格闘術までを身に着け、俳優とは思えない戦闘能力を持つ男となっている。

対するヴァン・ダムは、裕福な家庭に育ちながら、身体を鍛えるために始めた松涛館空手で18歳にして黒帯を取得。10代の頃からヨーロッパ各地の空手・キックボクシングの大会を荒らしまわっている。その後、アメリカのフロリダで行われた世界空手選手権を経て、1980年には全欧プロ空手選手権ミドル級王座を獲得している強豪キックボクサー、という経歴を持つ本格派。

スタローンは、『エクスペンダブルズ』で直接出演交渉して以来の仲となる、元PRIDE・UFCのヘビー級王者であるアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラをセコンドに帯同。またヴァン・ダムは、ノゲイラのライバルで、ヴァン・ダムとは昔から親交のある世界最強のヘビー級MMA選手エメリヤーエンコ・ヒョードルと、『ユニバーサル・ソルジャー』シリーズで競演している元UFCヘビー級王者のアンドレイ・アルロフスキーを、セコンドとして帯同している。
レフェリーのルール説明の間、ボクシング出身のスタローンとキックボクシング出身のヴァン・ダムのにらみ合いに、観客もヒートアップ!異様な雰囲気の中、試合開始のゴングが鳴った!

蹴り技を持たないスタローンは、キックボクサーとして輝かしい経歴を誇るヴァン・ダムの蹴り技を警戒し、早々に距離を詰めて近距離での打ち合いを挑む格好で試合がスタート。
空手の経験のあるヴァン・ダムも応戦するが、『ランボー』などの特殊部隊映画でCQC(クローズ・クォーター・コンバット:近接格闘術)も学んだスタローンは、組み技も積極的に使って決定打をもらわない。さらに、ボクシング仕込みのショートレンジのフックやアッパーで、ヴァン・ダムはフラフラの状態にされてしまう。何とか1ラウンドを堪えることが出来たヴァン・ダムだったが、ここではヘビー級とミドル級というウェイトの違いも大きなハンデとなってしまった形だ。

インターヴァルの間、ヒョードルから何かのアドバイスをもらい、大きく頷くヴァン・ダム。ヒョードルは氷のような微笑を浮かべている。
果たして、2ラウンドはどのような作戦で来るのか?

2ラウンド、距離を詰めるスタローンに対して、ヴァン・ダムの強烈なローキック一閃。遠距離でのハイキックのような大技を警戒していたスタローンは、このローキックをモロに食らってしまう。「あのヴァン・ダムがローキックのような地味な技を使うとは……!」とスタローンが思ったときには遅かった。ヴァン・ダムはローキックを次々と放ち、下半身への攻撃など受けたことのないスタローンは、一気に失速。腿は赤く腫れ上がり、ついに立ち上がれなくなってしまったスタローンを見て、レフェリーが試合を止めた。

勝利者インタビューでは、「インターヴァル中、ヒョードルから、これまで大作での一発逆転ばかり狙って失敗した自分の人生を振り返させられ、地味だが効果のあるローキックで戦うことを決めた」と涙ながらに語ったヴァン・ダム。手に汗握るまさに“クリフハンガー”なシーソーゲームに敗れたスタローンは、笑みを浮かべて「今度は『エクスペンダブルズ2』に出てくれよ!」と、見せ場の少なさから一作目への出演を断ったヴァン・ダムに、再度出演をオファーするも、ヴァン・ダムは「オレが主役じゃないなら……」と、まだ一発逆転に未練がタラタラであることを露呈してしまった。

以上の結果通り、一回戦・第三試合はジャン=クロード・ヴァン・ダムが勝利し、準決勝に進むことに。

次戦、準決勝・第一試合は、9月12日(月)21:00-23:00/23:00-25:00
チャック・ノリス『野獣捜査線』  VS  スティーヴン・セガール『暴走特急』

 2作目「暴走特急」の本編終了後に、こちらのブログにて試合レビューを公開!作品鑑賞と合わせてお楽しみください!!