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COLUMN/コラム2025.03.06
現代の巨匠イーストウッドが、実在の英雄を通して捉えた“イラク戦争”『アメリカン・スナイパー』
クリス・カイル、1974年生まれのテキサス州出身。8歳の時に、初めての銃を父親からプレゼントされて、ハンティングを行った。 カウボーイに憧れて育ち、ロデオに勤しんだが、やがて軍入りを希望。ケニアとタンザニアのアメリカ大使館が、国際テロ組織アルカーイダが関与する自爆テロで攻撃されるなど、祖国が外敵から攻撃されていることに触発されて、アメリカ海軍の特殊部隊“ネイビー・シールズ”を志願した。 2003年にイラク戦争が始まると、09年に除隊するまで4回、イラクへ派遣された。そこでは主に“スナイパ-”として活躍し、166人の敵を射殺。これは米軍の公式記録として、最多と言われる。 味方からは「レジェンド〜伝説の狙撃手」と賞賛されたカイルは、イラクの反政府武装勢力からは、「ラマディの悪魔」と恐れられ憎悪された。そしてその首には、賞金が掛けられた。 4度ものイラク行きは、カイルの心身を蝕み、精神科医からPTSDの診断を受けた。カイルは民間軍事支援会社を起こし、それと同時に、自分と同じような境遇に居る帰還兵たちのサポートに取り組んだ。彼らを救うことが、自分自身の癒やしにもなると考えたのである。 兵士は銃に愛着があるため、それがセラピーになる場合がある。カイルは帰還兵に同行して牧場に行き、射撃を行ったり、話を聞いたりした…。 こうした歩みをカイル本人が、スコット・マクイーウェン、ジム・デフェリスと共に著した“自伝”は、2012年に出版。100万部を超えるベストセラーとなった。 脚本家のジェイソン・ホールは、カイルの人生に注目。2010年にテキサス州へと訪ねた。 その後カイルと話し合いながら、脚本の執筆を進めた。彼が自伝を書いているのも、そのプロセスで知ったが、結果的にそれが原作にもなった。 ホールは、俳優のブラッドリー・クーパーに、映画化話を持ち込む。クーパーは、『ハングオーバー』シリーズ(2009〜13)でブレイク。『世界にひとつのプレイブック』(12)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、まさに“旬“を迎えていた。 クーパーはこの企画の権利を、ワーナー・ブラザースと共に購入。映画化のプロジェクトがスタートした。 当初はクーパーの初監督作として検討されたが、いきなりこの題材では、荷が重い。続いて『世界にひとつのプレイブック』や『アメリカン・ハッスル』(13)でクーパーと組んだデヴィッド・O・ラッセルが候補になるが、これも実現しなかった。 その後、スティーブン・スピルバーグが監督することとなった。当初積極的にこの企画に取り組んだスピルバーグだったが、シナリオ作りが難航すると、降板。 そこで登場するのが、現代ハリウッドの巨匠クリント・イーストウッド!一説には、スピルバーグが後任を依頼するため連絡を取ったという話があるが、イーストウッド本人は、「おれはスピルバーグの後始末屋と思われているけど、それは偶然だ」などと発言しているので、真偽のほどは不明である。 イーストウッドによると、依頼が来た時は他の映画の撮影中。仕事とは関係なく、本作の原作を読んでいるところだった。 カイルは父親から、「人間には三種類ある。羊と狼と番犬だ。お前は番犬になれ」と言われて、育った。そのため、羊のような人々を狼から守ることこそ、自分の使命だと考えていた。 それが延いては、家族と一緒にいたいという気持ちと、戦友を助けたいという気持ちの板挟みになっていく。この葛藤はドラマチックで、映画になると、イーストウッドは思った。 まずは「脚本を読ませてくれ」と返答。その際依頼者から、プロデューサーと主演を兼ねるクーパーが、「ぜひクリントに監督をお願いしたい」と言ってると聞いて、話が決まったという。 クーパーは幼少の頃から、いつか仕事をしてみたいと思っていた俳優が、2人いた。それは、ロバート・デ・ニーロとクリント・イーストウッドだった。 デ・ニーロとの共演は、『世界にひとつのプレイブック』で実現した。イーストウッドについては、『父親たちの星条旗』(06)以降、いつも彼の監督作のオーディションに応募してきた。本作で遂に、夢が叶うこととなったのである。 こうして、本作にとってはクーパー曰く、「完璧な監督」を得ることとなった。実は、この物語の主人公であるクリス・カイル自身も、もし映画化するなら、「イーストウッドに監督してもらいたい」と、希望していたという。 イーストウッドが監督に決まった頃、ジェイソン・ホールは脚本を一旦完成。クーパーら製作陣に、渡した。 その翌日=2013年2月2日、クリス・カイルが、殺害された。犯人は、イラク派遣でPTSDとなった、元兵士の男。カイルは男の母親から頼まれて、救いの手を差し伸べた。ところが、セラピーとして連れ出した射撃練習場で、その男に銃撃され、命を落としてしまったのである。 クーパーもイーストウッドも、まだカイルと、会っていなかった。対面する機会は、永遠に失われた。 脚本に加え、製作総指揮も務めることになっていたジェイソン・ホールは、葬儀後にカイルの妻タヤと、何時間も電話で話をした。タヤは言った。「もし映画を作るなら、正しく作ってほしい」 イーストウッドが監督に就いたことと、この衝撃的な事件が重なって、映画化の方向性は決まり、脚本は変更となった。焦点となるのは、PTSD。戦場で次々と人を殺している内に、カイルが壊れていく姿が、描かれることとなった。 イラクへの派遣で、カイルの最初の標的となるのは、自爆テロをしようとした、母親とその幼い息子。原作のカイルは、母親の方だけを射殺するが、実際は母子ともに、撃っていた。 原作に書かなかったのは、子どもを殺すのは、読者に理解されないだろうと、カイルが考えたからだった。しかしイーストウッドは、それではダメだと、本作で子どもを狙撃する描写を入れた。 後にカイルには、再び子どもに照準を合わさなければならない局面が訪れる。その際、イラク人たちを「野蛮人」と呼び、狙撃を繰り返してきたような男にも、激しい内的葛藤が起こる。そして彼が、実はトラウマを抱えていたことが、詳らかになる。 もう一つ、原作との大きな相違点として挙げられるのが、敵方の凄腕スナイパー、ムスタファ。原作では一行程度しか出てこない存在だったが、イーストウッドは彼を、カイルのライバルに設定。その上で、その妻子まで登場させる。 即ち、ムスタファもカイルと同様に、「仲間を守るために戦う父親」ということである。この辺り、太平洋戦争に於ける激戦“硫黄島の戦い”を題材に、アメリカ兵たちの物語『父親たちの星条旗』(06)と、それを迎え撃つ日本兵たちを描いた『硫黄島からの手紙』(06)を続けて監督した、イーストウッドならではの演出と言えるだろう。 ブラッドリー・クーパーは、カイルになり切るために、肉体改造を行った。クーパーとカイルは、ほぼ同じ身長・年齢で、靴のサイズまで同じだったが、クーパーが84㌔ほどだったのに対し、筋肉質のクリスは105㌔と、体重が大きく違ったのである。 そのためクーパーは、成人男性が1日に必要なカロリーの約4倍である、8,000キロカロリーを毎日摂取。1日5食に加え、エネルギー補給のために、パワーバーやサプリメント飲料などを取り入れる生活を送った。 筋肉質に仕上げるため、数か月の間は、朝5時に起床して、約4時間のトレーニングを実施。それで20㌔近くの増量に成功した。 撮影に入っても、体重を落とさないための努力が続く。いつも手にチョコバーを握り、食べ物を口に押し込んだり、シェイクを飲んだり。撮影最終日にクーパーが、「助かった、これでもう食べなくて済む!」と呟くのを、イーストウッドは耳にしたという。 役作りは、もちろん増量だけではない。“ネイビー・シールズ”と共に、本物さながらの家宅捜査や、実弾での訓練などを行った。細かい部分では、クリス・カイルが実際に聴いていた音楽のプレイリストをかけ、常時リスニングしていたという。 こうした粉骨砕身の努力が実り、クーパーのカイルは、その家族や友人らが驚くほど、“激似”に仕上がった。 カイルの妻タヤ役に決まったのは、シエラ・ミラー。イーストウッド作品は、撮影前の練習期間がほとんどなくて、リハーサルもしない。クーパーは撮影までに、タヤ役のシエナ・ミラーとスカイプで何度か話して、夕食を1度一緒に食べた。その時彼女は妊娠していたが、それが2人の絆を深めることにも繋がったという。 クーパーとミラーはタヤ本人から、夫が戦地に居た時に2人の間で交わしたEメールをすべて見せてもらった。ミラーは目を通すと思わず、口に出してしまった。「すごい、あなたは彼のことを本当に愛していたのね」 これにより、カイル夫妻のリアルな夫婦関係を演じるためのベースができた。そのため撮影が終わって数週間、ミラーは役から抜け出すのに、本当に悲しい気持ちになってしまったという。 撮影は、2014年3月から初夏に掛けて行われた。戦争で荒廃したイラクでの撮影は難しかったため、代わりのロケ地となったのは、モロッコ。クーパーはじめ“ネイビー・シールズ”を演じる面々は、アメリカ国内で撮影して毎日自宅に帰るよりも、共に過ごす時間がずっと長くなったため、本物の“戦友”のようになったという。 その他のシーンは、カリフォルニアのオープンセットやスタジオを利用して、撮影された。 イラクの戦場に居るカイルと、テキサスに居るタヤが電話で会話するシーン。クーパーとミラーはお互いの演技のために、電話を通じて本当に喋っていた。 妊娠しているタヤが病院から出て来て、携帯電話でカイルに、「男の子よ」と言った後のシーンは、ミラーにとっては、それまでの俳優人生の中で、最も「大変だった」。喜びを伝える電話の向こう側から、銃声が響き渡る。それは愛する夫が、死の危険に曝されているということ…。 脚本のジェイソン・ホールの言う、「兵士の妻や家族たちにとって、戦争とは、リビングルームでの体験だった」ということが、最も象徴的に表わされたシーンだった。 因みにミラーが、演技する時に複雑に考えすぎていると、イーストウッドは、「ただ言ってみればいい」とだけ、彼女に囁いた。ミラーにとっては、「最高のレッスン」になったという。 脚本には、カイルが運命の日に、銃弾に倒れてしまうシーンも存在した。しかし遺族にとってはあまりにもショッキングな出来事であるため、最終的にカットされることになった。 完成した本作を観て、カイルの妻タヤは、「…私の夫を生き返らせてくれた。私は、夫と2時間半を過ごした」と、泣きながら感想を述べた。 本作はアメリカでは、賞レースに参加するため、2014年12月25日に限定公開。明けて15年1月16日に拡大公開となった。 世界興収で5億4,742万ドルを超えるメガヒットとなり、イーストウッド監督作品史上、最大の興行収入を上げた。 その内容を巡っては、保守派とリベラル派との間で「戦争賛美か否か」の大論争が起こった。イラク戦争を正当化しようとする映画だという批判に対してイーストウッドは、「個人的に私はイラク戦争には賛成できなかった」と、以前からの主張を繰り返した。 そして「これは戦争を賛美する映画ではない。むしろ終わりのない戦争に多くの人が従事しいのちすら失う姿を描いているという意味では、反戦映画とも言える」と発言している。 この作品のエンドクレジットでは、クリス・カイルの実際の葬儀の模様を映し出した後、後半部分はまったくの“無音”になる。そこにイーストウッドの、“イラク戦争”そして出征した“兵士たち”への想いが、滲み出ている。■ 『アメリカン・スナイパー』© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and Ratpac-Dune Entertainment LLC
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NEWS/ニュース2026.02.12
※応募規約※ 【映画『ウィキッド 永遠の約束』3月6日(金)公開記念】 Xフォロー&リポストキャンペーン
映画『ウィキッド 永遠の約束』3月6日(金)公開記念 Xフォロー&リポストキャンペーン ◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇ 洋画専門チャンネル ザ・シネマでは、 3/6(金) 映画『ウィキッド 永遠の約束』公開(配給:東宝東和)を記念して、『バービー』『サウンド・オブ・ミュージック』『オズの魔法使』ほか歴代ミュージカル映画の大ヒット作を5作お届け!さらに公開を記念して、映画『ウィキッド 永遠の約束』ムビチケカード(2枚組)が、3組6名様に当たるプレゼントキャンペーンを開催! ◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇ ▼▼応募規約▼▼ ■キャンペーン名映画『ウィキッド 永遠の約束』3月6日(金)公開記念Xフォロー&リポストキャンペーン ■キャンペーン説明Xアカウント【ザ・シネマ公式X(旧twitter)アカウント(@thecinema_ch)】とをフォローし、ザ・シネマ公式X(旧twitter)アカウント(@thecinema_ch)に投稿された【該当ポスト】をキャンペーン期間内にリポストしていただいた方の中から、抽選で映画『ウィキッド 永遠の約束』ムビチケ(2枚組)を3組6名様にプレゼント!■キャンペーン期間2026年2月12日(木)12:00〜2月23日(月祝)23:59 ●応募条件STEP1:ザ・シネマ公式X @thecinema_ch をフォロー STEP2:Xの投稿をリポストザ・シネマ公式X@thecinema_chの該当ポストをリポストしよう!引用リポストで本作への期待コメントを投稿すると当選確率アップ!URL:https://x.com/thecinema_ch/status/2021781313116618962STEP3:当選者様へザ・シネマ公式X @thecinema_chよりDMでご連絡キャンペーン終了後に抽選を行い、抽選で当たった3名様にザ・シネマ公式アカウントよりDMでご連絡しプレゼント進呈! ■参加資格・条件・X(旧Twitter)アカウントをお持ちであること。・X(旧Twitter)アカウント「@thecinema_ch」をフォローしていること。※「キャンペーン対象ポスト」をリポストする前に対象のXアカウントをフォローしてください。リポスト後のフォローの場合、当選時のダイレクトメッセージが届かないため、当選権利が無効となります。※15歳以下は保護者の方がご参加ください。※ご参加はX(旧Twitter)からのみとなります。郵送によるご参加は受け付けておりません。※X(旧Twitter)アカウントをお持ちでない方は、X(旧Twitter)サイト(https://twitter.com)にてアカウントを取得してください。※ご参加は、日本国内にお住まいの方に限らせていただきます。※AXN株式会社の社員並びに関係者は応募できません。 ■抽選・当選発表について・ご参加いただいた方の中から、厳正なる抽選の上、当選者を決定いたします。当選者へは、後日X(旧Twitter)のダイレクトメッセージにてご連絡いたします。・ダイレクトメッセージ受信から2日以内にご返答いただけない場合は、当選を辞退されたものとさせていただきます。・当選された方へのご連絡は2月24日(火)以降を予定しております。以下の場合、ご参加は無効となりますのでご注意ください。・キャンペーン期間中および当選通知までに対象の2つののX(旧Twitter)アカウントのフォローをはずしている場合・参加リポストを削除されていた場合・アカウントを非公開にされている場合・アカウントを変更されている場合・X(旧Twitter)を退会されていた場合・リポスト内に指定のハッシュタグがない場合※抽選は、ザ・シネマキャンペーン事務局が行います。※当選や抽選の基準についてはお答えできませんのでご了承ください。※同時期に開催されている他のキャンペーンとは重複して当選できない場合があります。※期間中、何回投稿いただても当選はお1人様1回限りになります。 ■その他の注意事項本キャンペーンに参加される方は、必ず以下をお読みいただき、ご同意の上でご参加ください。ご参加いただいた方は、本規約に同意いただいたものとさせていただきます。・本キャペーンの当選に関して、本キャンペーン運営事務局からご連絡をさせていただく場合がございます。・適切な運用を行うために運営事務局が必要と判断した場合に限り、本キャンペーンの参加条件変更などの対応をとることができるものとさせていただきます。・通信機器、通信回線、X(旧Twitter)のシステム障害、瑕疵等により本キャンペーンの提供が中断もしくは遅延し、または誤送信もしくは欠陥が生じた場合の参加者が被った損害について、AXN株式会社はその責任を負わないものとします。・サイトの利用、利用停止もしくは利用が不能になったことによる損害(X等、各種Webサービスのサーバダウン等による損害も含みます。)について、AXN株式会社はその責任を負わないものとします。・X(旧Twitter)のルールとポリシーに反する不正なアカウント(架空のアカウント取得、他者へのなりすまし、複数のアカウントの所持など)を利用して参加があった場合、運営事務局の判断により当該アカウントからの参加を無効とさせていただく場合がございます。・参加者は、ユーザーアカウント(X ID)を管理する責任を負うものとします。・参加者が、有償無償を問わず、ユーザーアカウント(X ID)を第三者に譲渡・貸与・質入れし、または利用することを禁じます。・当選のご連絡を受けた場合であっても、本規約にご了承頂けない場合や本規約の規定に違反する場合などは、当選を無効とする場合がございます。・キャンペーン内容は予告なく変更させていただく場合がございます。・ 当選の権利の譲渡、他の賞品への変更はできません。・ インターネット接続料及び通信料はお客様のご負担となります。■個人情報の取り扱いについて当選されたお客様からご提供いただいた個人情報は、賞品の発送などに利用します。その他の利用目的については弊社「個人情報の取り扱いについて」の個人情報保護方針に記載しておりますので、こちらからご覧ください。■主催AXN株式会社■運営事務局ザ・シネマ キャンペーン事務局ザ・シネマ カスタマーセンターナビダイヤル:0570-006-543 または 03-6630-6298営業時間:午前10:00~午後8:00(年中無休) ■劇場新作情報 映画『ウィキッド 永遠の約束』 3月6日(金) より全国ロードショー CASTシンシア・エリヴォ アリアナ・グランデジョナサン・ベイリー イーサン・スレイター ボーウェン・ヤン マリッサ・ボーディwith ミシェル・ヨー and ジェフ・ゴールドブラム 日本語吹替版キャスト高畑充希、清水美依紗、海宝直人、田村芽実、入野自由、kemio、ゆりやんレトリィバァ、塩田朋子、大塚芳忠、ほか STAFF監督:ジョン・M・チュウ『クレイジー・リッチ!』 『イン・ザ・ハイツ』原作:ミュージカル劇「ウィキッド」〈作詞・作曲:スティーヴン・シュワルツ 脚本:ウィニー・ホルツマン〉 / グレゴリー・マグワイアの原作小説に基づく脚本:ウィニー・ホルツマン and ウィニー・ホルツマン&デイナ・フォックス製作:マーク・プラット『ラ・ラ・ランド』 『リトル・マーメイド』 デイヴィッド・ストーン「ウィキッド」製作総指揮:スティーヴン・シュワルツ、デヴィッド・ニックセイ、ジャレッド・ルボフ、ウィニー・ホルツマン、デイナ・フォックス 配給:東宝東和 公式サイト:https://wicked-movie.jp/ 公式X:@wickedmovieJP公式Instagram:universal_eiga 公式TikTok:universal_eiga 公式Facebook:universal.eiga © Universal Studios. All Rights Reserved. ■ザ・シネマ放送情報 特集【3.6『ウィキッド 永遠の約束』公開記念】ワンダフル・ミュージカル シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ主演の映画『ウィキッド ふたりの魔女』の続編『ウィキッド 永遠の約束』が、3月6日(金)全国公開!これに合わせて映画『ウィキッド』にも関連する名作『オズの魔法使』『ウィズ』をはじめ、女性が活躍するミュージカル映画を特集! https://www.thecinema.jp/tag/744 《放送作品情報》 『バービー(2023)』 放送日:3月07日(土) 21:00~ ほか『バーレスク』 放送日:3月07日(土) 23:05~ ほか『オズの魔法使』 放送日:3月06日(金) 23:10~ ほか『ウィズ』 放送日:3月07日(土) 深夜 01:15~ ほか『サウンド・オブ・ミュージック』 放送日:3月05日(木) 21:00~ ほか
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COLUMN/コラム2023.07.27
“生身の戦い”に勝るものなし『レイジング・ファイア』
◆香港アクションの旗手ベニー・チャン最後の作品 正義感に燃えるチョン警部(ドニー・イェン)は、何年も追っていた凶悪犯ウォンによる麻薬取引現場への踏み込み捜査を直前に外され、代わりに向かった捜査員らが何者かによって殺害、麻薬も奪われてしまう。そして容疑者として浮かび上がったのは、チョンに恨みを抱く元警官のンゴウ(ニコラス・ツェー)だった……。 2021年公開の香港・中国合作によるアクション映画『レイジング・ファイア』は、かつては同じ警察組織で正義を全うしようとした二人の男が、善と悪とに立場をたがえ、怒りの拳を交える対立を描いた、身を切るような悲壮さに満ちた復讐劇だ。 本作はもともとメキシコの麻薬カルテルと香港警察との対立を描いたストーリーを映画化する予定で、撮影もおこなったが、製作費が莫大となって企画がペンディング状態に陥った。そんな窮状を見かねたドニー・イェンが監督のベニー・チャンを励まし、映画は軌道修正されて『レイジング・ファイア』として完成をみたのである。 だが残念なことに、ベニー・チャンは映画が公開される前年の8月に上咽頭がんのため亡くなり、作品の興行的成功を見届けることはできなかった。『香港国際警察/NEW POLICE STORY』(2004)を筆頭とするジャッキー・チェンとの一連のアクション作品や、ラリー・コーエン原案の携帯スリラー『セルラー』(2004)のリメイク『コネクテッド』(2008)など、堅実な職人ぶりで幅広い層のファンを得ていただけに、早逝を惜しむ声は多かった。そんなベニーの形見のような作品として、本作は忘れがたい印象を放つものとなったのである。 特に監督と同い年だったドニーの落胆は大きく、「ベニーの死は、人生には多くの悲しみを目撃しないといけないことや、手放さなければならないことがあるのを悟らせる。私は今も彼の笑顔を感じて、自分のもとを去っていったような気がしないんだ」と語っている。テレビドラマ『クンフー・マスター 洪熙官』(1994)や、『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972)のテレビ版リメイク『精武門』(1995)で仕事を共にし、以来、違う道程で同時代を走ってきた仲間への、惜しみない賞賛を含んだ別れのメッセージだ。 ◆善と悪とに袂を分つ、かっての同志 二人の警察官が袂を分かち、戦い合うという設定は、ハリウッド映画では定番ともいえるエモーショナルなものだ。たとえばコンピュータハッカーたちの決別と対立をテーマにした『スニーカーズ』(1992年 監督/フィル・アルデン・ロビンソン)や、秘密任務の犠牲となった部隊が国家に復讐をなそうとする『ザ・ロック』(1996年 監督/マイケル・ベイ)などが、その代表格といえるだろう。最近だと、キャプテン・アメリカとアイアンマンが正義行動の行方をめぐって対立する『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年 監督/ジョー&アンソニー・ルッソ)が、この条件に合致するものとして記憶に新しい。 このようなテンプレートはアクションを際立たせ、特に顕著なのは映画のクライマックスで展開される、市街地での白昼の銃撃戦だろう。同シークエンスはマイケル・マン監督によるクライムアクション『ヒート』(95)を彷彿とさせるもので、発砲が始まると同時にかの名作を連想した人は少なくないだろう。奇しくも『ヒート』がアル・パチーノとロバート・デ・ニーロという二大俳優の顔合わせで耳目をさらったように、ドニーとニコラスの15年ぶりの共演も、これになぞらえることができる。 ドニー・イェンとニコラス・ツェーの共演は、香港の伝統的アクションコミックを映画化した『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』(2006)以来となる。単に同じ作品に出演したというだけならば、二人には2007年公開の『孫文の義士団』(監督/テディ・チャン)があるが、本作では二人が同じフレームに収まり、そして彼にアクション指導をしたという、密接なコラボレーションを果たしているのだ。 そして『レイジング・ファイア』は『ヒート』の反復などではなく、さらにそこから先を大胆に攻め込んでいる。それが最後の、ドニーとニコラスが教会で繰り広げる格闘シーンだ。 片や両手にバタフライナイフ、片やスティックを手にした凶器戦から、ステゴロ(素手喧嘩)のバトルへとなだれ込んでいくこの展開にこそ、本作の価値と独自性を実感することができるのだ。そしてかつての盟友どうしが拳を交える、悲壮なクライマックスを繰り広げていくのである。 ドニーがディレクションしたアクションは、持てる力をすべて振り絞って出したようなハイレベルなもので、谷垣健治を筆頭に、ドニーのスタイルを映画に落とし込むことのできる優秀なスタントコーディネーターが配された。その成果は2022年の香港フィルムアワードの最優秀アクション・コレオグラフィー賞(電影金像奨 最佳動作設計)を受賞したことで明白だろう。 ◆ドニー・イェンを体現する劇中のキャラクター なにより筆者はこの最終バトルに、かって『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』のインタビューでドニー・イェンが放った、以下の発言を思い出さずにはおれない。 「このジャンルはワイヤーワークやCGの発達によって、年を追うごとに見せ場の演出がエスカレートしていく。なので、それが常に新鮮であるのはとても難しいんだ。だからこそ、生身の戦いやファイター同士の精神こそが、いつの時代にも新鮮さを保つんだよ」 まさにその言葉を体現するかのような、ドニーとニコラスの一騎打ち。そこにドニー・イェンの役者哲学の実践を見たように感じられてならない。“生身の戦い”に勝る普遍性などあろうか、と——。 なにより、ドニーのアクションに対する真摯で実直な姿勢は、そのまま劇中、聞き取り調査の席で警視監に正義への理念を吐露する、チョン警部にぴったりと重なるのである。 「(警察は)命を懸けて全うする仕事なのか? と若い警官たちは思うだろう。だがいつしか、プライドを持って奮闘することになる。危険を顧みず、犠牲をも恐れない。そして(自分たちがなすべきは)仕事を減らすことではなく、より良い仕事をすることだと考えるのだ」 腐敗した警官組織の中で正しさを維持しようとする主人公の言行は、アクションスターとしてのドニーの哲学に重なっていく。市場の拡大と共に映画のスケールも巨大化したアジア映画において、こうした基本をまっとうするドニー・イェンの姿に、映画においてもっとも重要な不変の魂を感じるのである。 ちなみに本作の最初のバージョンは、ランニングタイムが約3時間におよぶ「ディレクターズ・カット版」が編集で調整され、このバージョンはそれをさらにタイトにまとめたものとなる。カットの影響としては、ニコラス・ツェーの役が本来もっと邪悪な存在だったものが、ややソフトになったとのこと。いつか完全版が公開される日を待ちたい。■ 『レイジング・ファイア』© 2021 Emperor Film Production Company Limited Tencent Pictures Culture Media Company Limited Super Bullet Pictures Limited ALL RIGHTS RESERVED
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COLUMN/コラム2014.06.21
ハリウッド暗黒史に語り継がれるふたつの怪事件 ― その虚飾にまみれた倒錯と悲哀の世界
ブラック・ダリア事件は、20世紀のアメリカ犯罪史上最もセンセーショナルな未解決事件のひとつである。1947年1月15日の午前10時半、ロサンゼルスの空き地を通りかかった主婦が発見した女性の死体は、胴体がふたつに切断されていた。さらに血と内臓を抜かれたうえに性器が切除され、口が左右の耳元まで裂かれたその死体はさながらグロテスクなアートのようで、ネクロフィリアらの性的倒錯者による犯行が疑われた。被害者の名はエリザベス・ショート。ハリウッド女優としての成功を夢見て、マサチューセッツ州から上京してきた22歳の美しい白人女性だった。ロス市警は前例のない大がかりな捜査態勢を敷き、何人もの容疑者が捜査線上に浮かんだが、事件は迷宮入りしてしまう。 マスコミが熾烈な取材合戦を繰り広げ、被害者エリザベスを悪夢のようなメロドラマのヒロインに見立てて報じたこの事件は、ブラック・ダリアというネーミングもキャッチーだった。事件の前年に公開されたレイモンド・チャンドラー脚本のスリラー映画『青い戦慄』の原題が『The Blue Dahlia』であり、生前のエリザベスが黒い服を好んだことからブラック・ダリアと命名されたのだ。殺人の手口といい、被害者のプロフィールといい、そのあまりにも異様な残虐性と悲劇性を知れば知るほど、否応なく闇の中の真相への好奇心をかき立てられてしまう。そんな特別な魔力を秘めた怪事件である。 ブライアン・デ・パルマ監督が手がけた2006年作品『ブラック・ダリア』は、ジェームズ・エルロイの“暗黒のL.A.4部作”の一作目となった同名犯罪小説の映画化だ。エルロイとブラック・ダリア事件の間には数奇な因縁がある。エルロイは事件発生の翌年にあたる1948年にロサンゼルスに生まれたが、10歳の時に母親を何者かに惨殺されてしまう。しかもその事件は迷宮入りし、やがてどす黒い犯罪の世界に引きつけられたエルロイは、非業の死を遂げた自らの母親の残像をエリザベス・ショートにだぶらせていく。こうしてブラック・ダリア事件は“アメリカ文学の狂犬”と呼ばれる異端的作家の原点となった。そんなエルロイの個人的なトラウマや執着が反映された小説に基づく『ブラック・ダリア』は、事件の全貌を徹頭徹尾リアルに再現することを試みたノンフィクション的志向の作品ではなく、あくまで“事実を背景にしたフィクション”なのである。 かくして完成した『ブラック・ダリア』は、デ・パルマ監督のもとにヴィルモス・ジグモンド(撮影)、ダンテ・フェレッティ(美術)、マーク・アイシャム(音楽)らの一流スタッフと、ジョシュ・ハートネット、アーロン・エッカート、スカーレット・ヨハンソン、ヒラリー・スワンクらの豪華キャストが集った堂々たるハリウッド大作だというのに、興行的にも批評的にも失敗作と見なされた。その要因はいくつか考えられるが、筆者が思うにまず脚色のミスが挙げられる。エルロイの長大な原作小説から多くの要素を削ってプロットをスリム化したにもかかわらず、出来上がった映画は極めてストーリーが錯綜してのみ込みづらい。エルロイ流の濃密な心理描写&暴力描写が際立つ小説では、複数のエピソードがいつしか絡み合い、ひとつの真実へと到達する構成が圧倒的なカタルシスを生んだが、たかだが2時間の映画でそれを成し遂げるのは容易ではない。そもそもデ・パルマという監督は職人的なストーリーテラーではなく、根っからのヴィジュアリストである。大勢の登場人物の入り組んだ相関関係を描くには不向きなタイプで、ドラマの焦点がぼけてしまった感は否めない。 それ以上に大問題なのはマデリンというファムファタールを演じるヒラリー・スワンクが、どこからどう見てもミスキャストとしか思えないことだ。マデリンが惨殺されたエリザベス・ショートに“瓜ふたつの美女”という設定は、この物語において絶対に押さえておかねばならない重大ポイントだというのに、“男前”のスワンクはお世辞にも主人公の警官バッキー・ブライカート(ジョシュ・ハートネット)をひと目で魅了するほどの美貌の持ち主とは言いがたい。おまけにエリザベス役のミア・カーシュナーとは似ても似つかぬ貌立ちであり、二重の意味で不可解な配役となった。エリザベスの可憐さや愛に飢えた哀しみを表現したカーシュナーの好演が光るぶん、なぜカーシュナーにひとり2役でエリザベスとマデリンを演じさせなかったのかと惜しまれる。そうすれば“死んだはずの美女へのオブセッション”を主題にしたヒッチコックの『めまい』の信奉者であるデ・パルマの創作意欲も、大いに刺激されたであろうに。こうも観る者に困惑を強いるスワンクの役どころ、逆にぜひとも注目していただきたい。 とはいえフィルムノワールには“混乱”が付きものであり、それがいびつな魅惑にも転化しうるジャンルだけに、上記のネガティブなポイントも踏まえたうえで本作を楽しみたい。とりわけ“ミスター・ファイアー”の異名で鳴らす熱血警官リー・ブランチャード(アーロン・エッカート)と“ミスター・アイス”ことブライカートの出会いから、エリザベスの死体が発見されるまでのハイテンポな導入部がすばらしい。この警官コンビが犯罪者のアジトを張り込む姿を映し出すカメラが緩やかにビルの屋上を越え、エリザベスの死体発見者の主婦を捉えていくダイナミックなクレーンショット! その後もブランチャードが2人の殺し屋に襲撃されるシークエンスなど、デ・パルマ印の“影”や“階段”に彩られ、長回しとスローモーションを駆使したスリリングな場面が少なくない。『ファントム・オブ・パラダイス』の怪優ウィリアム・フィンレイと、『ハリー・ポッター』シリーズのレギュラー女優フィオナ・ショウが終盤に見せつける狂気の形相も圧巻のひと言。そしてデ・パルマといえば『キャリー』『殺しのドレス』から近作『パッション』に至るまで“衝撃のラスト”が十八番だが、本作のラストには“アメリカ犯罪史上最も有名な死体”たるエリザベスの切断死体を活用している。そのサプライズ演出にギョッとさせられるか、ニヤリとするか、ぜひお見逃しなく。 ブラック・ダリア事件から12年後の1959年6月16日、TVシリーズ「スーパーマン」の主演俳優としてお茶の間のヒーローとなったジョージ・リーヴスが自宅で突然の死を遂げた。拳銃による自殺説が有力とされているこの事件を題材にした『ハリウッドランド』は、架空のキャラクターである私立探偵ルイス・シモの調査を通して、リーヴスが死に至るまでの軌跡を忠実に再現したという触れ込みの実録ドラマだ。ハードボイルド・ミステリーの形をとっているが、知られざる“衝撃の真実”が見どころではない。カメラワークや色調共にクラシック・スタイルの端正な映像で語られるのは、スーパーマンのイメージが強すぎて映画界では大成せず、人知れず苦悩を深めていった男の悲劇。当時のハリウッドはテレビの普及などによってスタジオ・システムが揺らぎつつあったが、まだTVドラマは二流役者の仕事と見なされていた。 何より驚かされるのは、リーヴス役のベン・アフレックにまったくスター俳優らしいオーラのようなものが感じられないことだ。リーヴスはスタジオ重役の妻(ダイアン・レイン)との不倫に耽ったり、それなりに華やかな俳優人生を送ったようだが、アフレックの瞳や表情には生彩がなく、動きもやけに鈍い。白黒テレビの時代ゆえに、青と赤ならぬくすんだ灰色のタイツ&マントに身を包んで「スーパーマン」の撮影をこなすシーンなどは、目も当てられないほど痛々しい。本作が製作された2006年はアフレックのキャリアが停滞していた時期で、それがオーラの欠如となって表れたのか、それとも確固たる役作りによるものだったのか、今となっては不明である。いずれにせよアフレックの悲哀漂う演技は、破滅へと向かうリーヴスのキャラクターに見事にはまり、ヴェネチア国際映画祭男優賞受賞、ゴールデン・グローブ助演男優賞ノミネートという栄誉をたぐり寄せた。そしてこの翌年、アフレックはミステリーノワールの秀作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』で監督デビューを果たし、のちに『アルゴ』でアカデミー作品賞を受賞。飛躍的な復活を遂げたのだった。 また本作は、エイドリアン・ブロディ演じる探偵シモのキャラクターの負け犬っぷりも強烈だ。妻子と別れ、どん詰まりの日々を送るシモは、金目当てで請け負ったリーヴスの死の調査に深入りするうちに、この孤独なスーパーマン俳優にシンパシーを抱くようになる。すなわちこれは一見対照的な世界に身を置きながらも、本質的に同じ悩みを持つ男たちの魂が共鳴する物語なのだ。この映画には『ブラック・ダリア』のような過激なヌードやバイオレンスもなく、本格的なスリラーや謎解きを期待する人は肩すかしを食らうだろう。しかしある程度の人生経験を積み、ふと“もうひとつの人生”を夢想したりする40代以上の視聴者の心には、ちょっぴり切なく響くドラマに仕上がっているのではあるまいか。 1940~1950年代の混沌としたムードや風俗を今に甦らせた『ブラック・ダリア』『ハリウッドランド』には、現代劇では醸し出せない優雅さと禍々しさがせめぎ合っている。夢という名の虚飾と欲望にまみれた奇々怪々なふたつの事件。それらを生み落としたハリウッドの得体の知れない闇には、まだまだ映画化の題材がいくつも転がっていそうである。■ ©2006 EQUITY PICTURES MEDIENFONDS GmbH & Co.KG? And NU IMAGE ENTERTAINMENT GMBH
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COLUMN/コラム2024.09.04
下らなくてバカバカしいけど憎めない!今なお世界中(?)で愛されるキラートマト軍団の魅力に迫る!『アタック・オブ・ザ・キラートマト』
‘70年代のパロディ映画ブームが生んだ珍作 映画史上屈指の駄作として名高いZ級モンスター映画である。ある日突然、トマトが人間を襲い始めて全米がパニックに陥るというあまりにも下らないストーリー、アマチュアの自主制作映画とほぼ変わらないレベルの貧相で安っぽいビジュアル(なんと、予算はたったの10万ドル!)、見た目も演技力も素人丸出しの役者たちによるショボい芝居(実際にキャストの大半は素人の一般人)などなど、お世辞にも出来の良い映画とは言えないものの、しかしその屈託のないバカバカしさはなんだか妙に憎めないし、古き良き時代のモンスター映画にオマージュを捧げた頭の悪いギャグの数々も嫌いになれない。体に悪いと分かってはいても、ついつい手が出てしまうジャンク・フードみたいな映画。本作が今もなお、世界中でカルト的な人気を誇っている理由はそこにあると言えよう。 とある民家のキッチンで主婦が他殺体で発見され、捜査を担当する刑事たちは遺体に付着した赤い液体がトマトジュースだと知って困惑する。この日を境に、全米各地でトマトが罪のない人々を襲うという凄惨(?)な事件が多発。この異常事態を受け、ペンタゴンでは軍部が科学者を交えて対抗策「アンチ・トマト計画」を急ピッチで進める一方、ワシントンでは諜報部のトップ・エージェント、メイソン・ディクソン(デヴィッド・ミラー)や落下傘部隊出身のウィルバー・フィンレター(スティーブン・ピース)ら特殊部隊が、トマトたちの暴走を食い止めるために動き始める。 さらに、大統領の命を受けたホワイトハウス報道官ジム・リチャードソン(ジョージ・ウィルソン)も国民のパニックを防ぐべくプロパガンダ戦略を練り、政府の動きを察知した女性新聞記者ロイス・フェアチャイルド(シャロン・テイラー)がディクソンらの行動を追跡。だが、そうこうしているうちに狂暴化したトマトたちは巨大モンスターへと進化を遂げ、いよいよ軍が出動せねばならない事態となってしまう…! というのが大まかなあらすじ。古いB級特撮モンスター映画にありがちなプロットのパロディである。軍隊マーチ風の勇壮なサウンドに乗って「キラートマトが襲ってくる!キラートマトが襲ってくる!」と謳いあげるオープニングのテーマ曲からしてバカ丸出し(笑)。クレジットや本編の随所にサニー・ヴェール家具店なるショップの広告テロップ(昔のアメリカのテレビではこういうテロップCMが多かった)が流れたり、『北北西に進路を取れ』(’59)や『ジョーズ』(’75)など名作映画のパロディがあちこちで唐突にぶち込まれたり、そうかと思えば前触れもなく突然ミュージカルが始まったりする。この脈絡のなさときたら!あくまでも、ストーリーは映画としての体裁を整えるための建前みたいなもので、基本的には中学生レベルの下らない一発ギャグを適当に繋げているだけだ。 ちょうど’70年代当時は『ヤング・フランケンシュタイン』(’74)や『新サイコ』(’77)といったメル・ブルックス監督のウルトラ・ナンセンスなパロディ映画が大流行し、その人気に便乗して『名探偵登場』(’76)や『弾丸特急ジェット・バス』(’76)など似たようなパロディ映画が続々と登場した。本作も恐らくそのトレンドに乗って作られたと思うのだが、しかしどこまでも徹底した下らなさと意味のなさは、後のジム・エイブラハムズとザッカー兄弟による『フライングハイ!』(’80)シリーズや『トップ・シークレット』(’84)を先駆けていたとも言えよう。そこにはストーリーテリングの妙だとか、ユーモアに込められたメッセージだとかは一切なし。次から次へとバカバカしいギャグが繰り出されていくだけだ。そういう意味では、ケン・シャピロ監督の『ドムドム・ビジョン』(’74)とかジョン・ランディス監督の『ケンタッキー・フライド・ムービー』(’77)辺りと同列に語られるべき作品かもしれない。 元ネタになった日本映画とは…!? そんな本作を生み出したのは、監督・製作・脚本・編集を手掛けたジョン・デ・ベロ、製作・脚本・第二班撮影・出演(ウィルバー・フィンレター役)を兼ねるスティーブン・ピース、そして原案・脚本・助監督を務めたコンスタンチン・ディロンの3人である。彼らはいずれもカリフォルニア州のサンディエゴ出身で、高校時代から仲良しの映画仲間だった。これに大学で知り合ったマイケル・グラントが加わって4人組となった彼らは、学生映画集団「フォー・スクエア・プロダクションズ」を結成。この時期に『アタック・オブ・ザ・キラートマト』の原点となった自主制作映画を撮っている。それが8ミリフィルムで撮影された短編映画『Attack of the Killer Tomatoes』と『Gone with the Babusuland』の2本だ。 ある日突然、トマトが人間を襲い始めて全米が大パニックになるという基本プロットは長編版と全く同じで、なおかつソックリなシーンも多々あるのがオリジナル短編版『Attack of the Killer Tomatoes』。一方の『Gone with the Babusuland』は、FBIをもじった諜報機関FIA(連邦情報局)の捜査官マット・デリンジャー(まだ細くてイケメンだったデヴィッド・ミラー)と落下傘兵ウィルバー(当時も変わらずアクの強いスティーブン・ピース)の活躍を描いたジェームズ・ボンド風のスパイ・パロディ映画で、これが『アタック・オブ・ザ・キラートマト』におけるディクソン&フィンレターのコンビの元ネタとなったのである。 ちなみに、本編の冒頭テロップでヒッチコックの名作『鳥』(’63)に触れていることから、同作をヒントにした作品ではないかと思われがちだが、実はジョン・デ・ベロ監督らが高校時代にテレビで見た、とある日本の特撮モンスター映画が企画の元ネタになっているという。デ・ベロ監督が「素晴らしいくらい出来の悪い日本のホラー映画」と呼ぶその作品は、他でもない本多猪四郎監督による東宝特撮映画の名作『マタンゴ』(’63)!放射能に汚染されたキノコを食べてしまった人間が、世にも恐ろしいキノコ人間「マタンゴ」となって人間を襲うというお話だ。まあ、確かにプロット自体はバカバカしいかもしれないが、しかし極限状態に置かれた人間の怖さを徹底したリアリズムで描いた脚本の出来は素晴らしく、今ではカルト映画として世界中に熱狂的なファンがいる。 なので、なんだとぉ~!『マタンゴ』が出来の悪い映画とは何事だ!この不届き者め!と文句のひとつでも言いたくなるってもんだが、まあ、仕方あるまい。映画の感想は人それぞれである。しかも、テレビで見たということは、アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズが配給した英語吹替のトリミング&短縮版である。恐らく安っぽく見えてしまったのだろう。本作に登場する日本人科学者フジ・ノキタファ博士の声だけがアフレコで、なおかつ口の動きとセリフが全く合っていないというのは、かつてアメリカの深夜テレビ放送やドライブイン・シアターを賑わせた、日本製B級娯楽映画の英語吹替版の低クオリティを揶揄したジョークだ。 閑話休題。その『マタンゴ』よりも下らなくてバカバカしい映画を作ろう、ということで生まれたのが、野菜のトマトが人間を襲って食い殺すという珍妙なコンセプト。ただし『マタンゴ』と大きく違ったのは、そこに社会風刺や文明批判などのメッセージを込めるつもりなど、デ・ベロ監督たちには初めからこれっぽっちもなかったことであろう(笑)。 さて、大学を卒業後に「フォー・スクエア・プロダクションズ」を正式な会社とし、主に産業映画やスポーツ映画、テレビ・コマーシャルなどを作っていたデ・ベロ監督たち。その傍らで劇場用映画への進出を模索していた彼らは、大学時代に作った短編映画『Attack of the Killer Tomatoes』と『Gone with the Babusuland』の2本をひとつにまとめてリメイクすることを思いつく。それがこの『アタック・オブ・ザ・キラートマト』だったというわけだ。 劇中のヘリ墜落シーンは本物の事故だった! 友人・知人などから借金してかき集めた予算はたったの10万ドル。キャストやスタッフの大半は学生時代からの映画仲間や家族、親戚、隣人で固め、撮影も全て地元サンディエゴで行った。学生時代の短編版で特撮を担当したマイケル・グラントは、会社の「本業」であるCM制作などのために不参加。一応、客寄せのために有名人キャストも起用されたが、当時テレビの人気シットコム『The Bob Newhart Show』(‘72~’78・日本未放送)で全米に親しまれた喜劇俳優ジャック・ライリー(保安官役)と、映画『ポーキーズ』(’81)シリーズの校長先生役でも知られる名バイプレイヤー、エリック・クリスマス(ポーク上院議員役)の2人のみ。そのジャック・ライリーは「どうせ誰も見ない映画だから、小遣い稼ぎに出とけ」とエージェントから薦められて出演したらしいが、結果としてテレビのニュース番組で大々的に報じられることとなってしまった。どういうことかというと、撮影現場で彼の乗ったヘリコプターが墜落事故を起こしてしまったのだ。 そう、劇中に出てくるヘリコプターの墜落シーンは、なんと「演出」ではなく「ガチ」。本来はパトカーの横にヘリを着陸させるつもりだったが、タイミングを間違えたパイロットが慌てたせいで操縦を誤り、尾部ローターが地面に触れて墜落してしまったのである。乗っていたジャック・ライリーと報道官リチャードソン役のジョージ・ウィルソン、パイロットの3人は奇跡的に無事。この予想外の出来事に監督も撮影監督もビックリ仰天し、思わず撮影を止めてしまったのだが、しかし第2班カメラマンを務めていたスティーブン・ピースだけはカメラを回し続け、ヘリが墜落する様子もライリーたちが脱出する様子も撮影していた。当然、一歩間違えれば死者も出かねなかった事故はテレビのニュースで報道され、無事に生還したライリーは国民的人気トーク番組「トゥナイト・ショー」に招かれ、本来なら出たことを秘密にしておきたかった映画について話す羽目に(笑)。そして、そのライリーが「どうせなら事故映像を本編でそのまま使ったら面白いのでは?」と監督に助言したことから、劇中の迫力満点(?)なヘリ墜落シーンが出来上がったのである。 また、劇中で人気アイドル歌手ロニー・デズモンドの最新ヒット曲として紹介される挿入歌「思春期の恋」にも要注目。実在しない架空の歌手ロニー・デズモンドは、’70年代のアメリカで国民的な人気を誇っていたアイドル歌手ダニー・オズモンドが元ネタで、「思春期の恋」は当時量産されていたティーン向けバブルガム・ポップスを小バカにしたパロディだったという。で、その「思春期の恋」を実際に歌っている歌手としてクレジットされているフー・キャメロンは、当時地元サンディエゴの高校生だった少年マット・キャメロンの偽名。後にロックバンド、サウンドガーデンのドラマーとして高く評価され、さらに’98年以降はパール・ジャムのメンバーとしても活躍、ロックンロールの殿堂入りも果たした大物ミュージシャンである。 そういえば、後に有名になった人物はもう一人。海水浴に興じる若者たちがトマトに襲われる『ジョーズ』のパロディ・シーンで、ヨットに乗っている幼い少年にどこか見覚えがあると思ったら、後にテレビドラマ『ツイン・ピークス』(‘90~’91)のボビー役で有名になる俳優ダナ・アシュブルックだった。彼もまたサンディエゴの出身で、当時はまだ10歳の小学生。その後、テレビドラマのゲストを幾つもこなした彼は、『バタリアン2』(’88)や『ワックスワーク』(’88)などのB級ホラー映画でカルト的な人気を得ることになる。 劇場公開時は各メディアでケチョンケチョンに酷評され、興行的にも決して大成功とは言えなかったという本作。しかし『ロッキー・ホラー・ショー』(’75)との二本立て上映が全米各地で好評を博すなど、いつしか口コミで評判が広まっていき、やがてカルト映画として熱狂的なファンを獲得することになった。デ・ベロ監督らフォー・スクエア・プロダクションズの面々は、これを足掛かりとしてハリウッド進出を図り、人気コメディアンを多数起用したコメディ映画『大爆笑!ビール戦争/ぷっつんU.S.A.』(’86)を発表するも残念ながら失敗。一方、『アタック・オブ・ザ・キラートマト』は’86年に初めてビデオゲーム化され、さらにはジム・ヘンソン製作の人気テレビ・アニメ『Muppet Babies』(‘84~’91・日本未放送)にキラートマトが登場するなど、カルト映画としての評価と知名度はどんどん高まっていく。そこへ転がり込んだのが、ニューワールド・ピクチャーズによる続編映画のオファーだった。 当初からシリーズ化するつもりなど全くなかったというデ・ベロ監督たち。しかし、当時のハリウッドではB級ホラー映画のフランチャイズ化がブームで、ニューワールド・ピクチャーズも『クリープショー2/怨霊』(’87)や『ガバリン2 タイムトラぶラー』(’87)に続く続編物の企画を探しており、『アタック・オブ・ザ・キラートマト』に白羽の矢が立てられたのだ。提示された条件が良かったため引き受けたというデ・ベロ監督曰く、「なるべく出来の悪い映画を作ってくれと映画会社から指示されたのは、恐らくハリウッド映画の歴史上で僕らが初めてだろう」とのこと(笑)。かくして完成したジョージ・クルーニー主演(!)の第2弾『リターン・オブ・ザ・キラートマト』(’88)はスマッシュヒットを記録し、さらなる続編『キラートマト/決戦は金曜日』(’90)と『キラートマト 赤いトマトソースの伝説』(’91)も矢継ぎ早に登場。さらに、フィンレターの甥っ子チャドを主人公にしたテレビ・アニメ『Attack of the Killer Tomatoes』(‘90~’91・日本未放送)やコミック版(’08年出版)、ノベライズ版(’23年出版)も作られるなど、今なお根強い人気を誇っている。■ 『アタック・オブ・ザ・キラートマト』© 1978 KILLER TOMATO ENTERTAINMENT
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COLUMN/コラム2021.02.04
漂泊者ポランスキーの「呪われた映画」『ローズマリーの赤ちゃん』
本作『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)の原作小説は、アイラ・レヴィン(1929~2007)が、67年に発表。ベストセラーになった。 レヴィンは、物語に時事的な社会問題を織り込んでサスペンスを醸し出す、巧みなストーリーテラーとして評価が高かった作家である。72年に出版された「ステップフォードの妻たち」は、“ウーマン・リブ”の時代への男性の恐怖心をベースにしたもの。76年の「ブラジルから来た少年」では、ナチス・ドイツ残党の実在の医師メンゲレが、当時最新の“クローン”技術で、ヒトラーの復活を企てる。 そしてそれらに先立つ「ローズマリーの赤ちゃん」は、50年代末から60年代初めに起こった世界的な大事件から、着想を得ている。 ニューヨークに住む、ローズマリーとガイの若夫婦。ガイは俳優で、舞台やテレビCMなどに出演するも、今イチぱっとしない。 夫婦は歴史のあるアパート、ブラムフォードへと引っ越す。2人の中高年の友人ハッチは、過去に数々の事件が起こった場所だと懸念するが、夫婦は耳を貸さなかった。 入居して間もなくローズマリーは、隣室のカスタベット夫妻宅の居候だという、若い娘テリーと親しくなる。しかしその数日後、テリーは窓から身を投げ、自殺を遂げる。 その件がきっかけで、ローズマリーとガイは、テリーの面倒を見ていた隣室の老夫婦、ローマンとミニーと顔見知りになる。夕食に招かれるなどする内に、ガイは演劇に詳しいローマンと親しくなり、カスタベット家を頻繁に訪ねるようになる。 そして間もなく、ガイのライバルの俳優が突如失明。ガイに役が回るという、思いがけないチャンスが巡ってきた。 時を同じくしてガイは、子作りにも積極的になる。ローズマリーの排卵日、彼女はミニーから差し入れられたデザートを食べた後、目まいに襲われ、ベッドに臥せってしまう。 その夜ローズマリーは、夢を見る。ガイやカスタベットらが見守る中で、人間離れした者に犯されるという内容の悪夢であった。 翌朝起きると、彼女の身体のあちこちに、引っかき傷が出来ていた。ガイは、子作りのチャンスを逃したくなかったので、意識のないローズマリーを抱いたと説明をする。 エヴァンスが『反撥』に感心して、ポランスキーに監督をオファーしたことは、先に記した通りだ。『反撥』は、セックスへの恐怖心が昂じて、閉鎖空間で現実と妄想の区別がつかなくなって狂っていく、若い女性が主人公の作品である。 そんな作品を撮ったポランスキーこそ、「ローズマリー…」の映画化に正に打ってつけの人材と、エヴァンスは見込んだ。そしてポランスキーもまた、この題材に強く惹かれたというわけである。 ポランスキーは自分で注文をつけた通り、ほぼ「原作に忠実」な映画化を行った。そんな中ローズマリーが犯されるシーンで、LSDを服用したかのような、サイケな映像を用いて、現実とも妄想ともつかないように演出している辺り、当時の彼の才気が爆発している。 原作からの改変として、ポランスキーが挙げるのは、次の一点のみ。 「…私はラストを少し改変した。というのは、本の結末は少しばかり失望させるものだったからだ。あそこはちょっと長引きすぎると思う」。 これに関しては機会があったら、是非原作と映画版の違いを、自らの目で確かめて欲しい。 何はともかく、レヴィンの原作とポランスキー監督のマッチングは、大成功! ローズマリー役のミア・ファローのニューロティックな感じもピタリとハマった。映画は大ヒットを記録し、ポランスキーはアカデミー賞の脚色賞にもノミネートされる。 通常ならばこうした経緯を、「幸運な出会い」と表現するべきなのであろう。しかしこの作品に関しては、それ以上に他の形容をされる場合が多い。「呪われた映画」であると…。 後に原作者のレヴィンは、自分は“サタン”を信じないと発言。またポランスキーは、無神論者であることを明言している。それなのにこの作品とその成功は、作り手がつゆとも思わなかった、“悪魔”を呼び込んでしまったのである。 『ローズマリー…』の大成功により、ハリウッドの住人として認められたポランスキーは、映画公開の翌年=69年2月、ロサンゼルスに居を構える。それから半年経った8月9日朝、ポランスキー家のメイドが、5人の遺体を発見する。 殺害されていたのは、ポランスキーが『吸血鬼』で出会って結婚し、当時妊娠8カ月だった女優のシャロン・テートと、ポランスキー夫妻の関係者ら。ポランスキー本人は、次回作のシナリオ執筆のためロンドンに滞在しており、留守にしていた。 数か月後、凶行に及んだのは、チャールズ・マンソンが率いるカルト集団であることが判明。この犯行は無差別殺人の一環であり、ポランスキーの邸宅が狙われたのは、単なる偶然であった。 いずれにせよ、『ローズマリー…』が成功せず、ポランスキーがロスに居を移すことがなかったら…。若妻がカルト集団に惨殺されることも、なかったわけである。 因みに映画でローズマリーらが住むアパート、ブラムフォードの外観に使われたのは、ニューヨークのセントラルパーク前に在る、ダコタハウス。1980年12月8日、ここに住むジョン・レノンが、玄関前で撃たれて落命した、あのダコタハウスである。 これは、映画とは何ら関係のない事件である。しかしミア・ファローが、ビートルズのメンバーと共に、インドで瞑想の修行に臨んだ過去の印象などもあってか、『ローズマリー…』を「呪われた」と語る場合、不謹慎な言い方になるが、レノンの殺害が、その彩りになってしまっているのは、紛れもない事実と言える。『ローズマリーの赤ちゃん』TM, ® & © 2021 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2020.07.28
セックスと残酷描写満載で南部の醜い現実を叩きつけようとした“呪われた映画”
今回は『マンディンゴ』(75年)という凄まじい映画を紹介します。マンディンゴとは、南北戦争前のアメリカ南部で、白人たちが最高の黒人奴隷としていた種族というか“血統”です。 これはアメリカ映画史上最も強烈に奴隷制度を描いた映画です。公開当時には大ヒットしたんですが、映画評論家やマスコミから徹底的に叩かれ、DVDも長い間、発売されませんでした。それほど呪われた映画です。 映画は南部ルイジアナ州の“人間牧場”が舞台です。アメリカはずっと黒人奴隷を外国から輸入してたんですが、それが禁止されてから、奴隷をアメリカ国内で取引・売買するようになりました。そこでマクスウェル家の当主ウォーレン(ジェームズ・メイソン) は、黒人奴隷たちを交配して繁殖させ、出来た子供を売ることで莫大な利益を得ています。 また、奴隷の持ち主たちは黒人女性を愛人にしていましたが、彼らの奥さんには隠してませんでした。しかも、 奴隷との間に生まれた子も平気で奴隷 として売っていたんです。 なぜなら、南部の白人たちは、黒人制度を正当化するために“黒人には魂 がない”と信じていました。そうしないと、「すべての人は平等である」と書かれた聖書に反してしまうからです。南部の人は黒人を人間と思っていなかったので、普通の医者ではなく獣医にみせていました。 しかしマックスウェル家の息子ハモンド(ペリー・キング)はそれが間違っていることに気づいていきます。きっかけは 奴隷の黒人女性エレン(ブレンダ・サイクス)を愛したこと。それに、マ ンディンゴの若者、ミード(ケン・ノートン)と友情を結んだからなんです。しかし、白人の妻(スーザン・ジョージ) がミードの子を妊娠して......。 原作はベストセラーでした。でもハリウッドではだれも映画化しようとせず、イタリアの大プロデューサー、デ ィノ・デ・ラウレンティスが製作しま した。彼は製作するときに“仮想敵” を掲げていました。『風と共に去りぬ』(39年)です。南部の奴隷農園をロマンチックに美化した名作映画に、醜い現実を叩きつけようとしたのです。 この番組では巨匠たちの“黒歴史” 映画を積極的に紹介してるんですが、本作もその1本。監督はリチャード・ フライシャー。『海底二万哩』(54年)、『ドリトル先生不思議な旅』(67年)、『トラ・トラ・トラ!』(70年) などを作ってきた天才職人です。彼は、「今までの南部映画はヌルすぎる。俺はこの映画で真実を全部ぶちまける」と考え、セックスと残酷描写満載の『マンディンゴ』を撮り、世界中で大当たりしました。 でも、「アメリカの恥部をさらした」 と言われ、『マンディンゴ』は長い間、「なかったこと」にされてきましたが、 90年代、あのクエンティン・タラン ティーノが「『マンディンゴ』は傑作 だ!」と言ったことでDVDが発売され、再評価されました。 そしてタランティーノが『マンディンゴ』へのオマージュとして撮ったのが『ジャンゴ繋がれざる者』です。 というわけで南部の真実を描きすぎて呪われた傑作『マンディンゴ』、御覧ください! (談/町山智浩) MORE★INFO.●原作の『マンディンゴ』(1957年/河出書房)は、本国で450万部を超えるベストセラーで、1961年には舞台劇化もされている。農園から名前を取った原作の“ファルコンハースト”シリーズは全部で15作もある。●父ウォーレン役は最初チャールトン・ヘストンにオファーされたが断られ、英国人俳優ジェームズ・メイソンが演じた。彼は後年、「扶養手当を支払う ために映画に出ただけだ」とインタビューで語っている。●息子ハモンド役は、オファーされたボーとジェフのブリッジス兄弟、ティモシー・ボトムズ、ジャン・マイケル・ヴィンセントらに次々と断られ、ペリー・キングに。●シルヴェスター・スタローンがエキストラ出演している。●映画から15年後を描いた続編に『ドラム』(76年/監:スティーヴ・カーヴァー)がある。 (C) 1974 STUDIOCANAL
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NEWS/ニュース2026.02.12
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★スカパー!ご加入者様限定★ 【映画『ウィキッド 永遠の約束』3月6日(金)公開記念】プレゼントキャンペーン ◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇ 洋画専門チャンネル ザ・シネマでは、 3/6(金) 映画『 ウィキッド 永遠の約束』公開(配給:東宝東和)を記念して、『バービー』『サウンド・オブ・ミュージック』『オズの魔法使』ほか歴代ミュージカル映画の大ヒット作を5作お届け!さらに公開を記念して、スカパー!ご加入者様限定で映画『 ウィキッド 永遠の約束』グッズ5名様、『ウィキッド ふたりの魔女』グッズが4名様、合計9名様に当たるプレゼントキャンペーンを開催! ◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇ ■プレゼント賞品 映画『ウィキッド 永遠の約束』オリジナルノート… 2名様映画『ウィキッド 永遠の約束』エナメルキーチェーン… 3名様 映画『ウィキッド ふたりの魔女』グリンダのコンパクトミラー… 2名様映画『ウィキッド ふたりの魔女』シズ大学スウェット(大人用M)… 1名様映画『ウィキッド ふたりの魔女』リバーシブルニットキャップ… 1名様 ■応募期間 2026年2月18日(水)~3月31日(火)23:59 ご応募はこちら> ※スカパー!ワクワクプレゼントサイトへ遷移します※応募はスカパー!メンバーズへのログインが必要になります ■劇場新作情報 映画『ウィキッド 永遠の約束』 3月6日(金) より全国ロードショー CASTシンシア・エリヴォ アリアナ・グランデジョナサン・ベイリー イーサン・スレイター ボーウェン・ヤン マリッサ・ボーディwith ミシェル・ヨー and ジェフ・ゴールドブラム 日本語吹替版キャスト高畑充希、清水美依紗、海宝直人、田村芽実、入野自由、kemio、ゆりやんレトリィバァ、塩田朋子、大塚芳忠、ほか STAFF監督:ジョン・M・チュウ『クレイジー・リッチ!』 『イン・ザ・ハイツ』原作:ミュージカル劇「ウィキッド」〈作詞・作曲:スティーヴン・シュワルツ 脚本:ウィニー・ホルツマン〉 / グレゴリー・マグワイアの原作小説に基づく脚本:ウィニー・ホルツマン and ウィニー・ホルツマン&デイナ・フォックス製作:マーク・プラット『ラ・ラ・ランド』 『リトル・マーメイド』 デイヴィッド・ストーン「ウィキッド」製作総指揮:スティーヴン・シュワルツ、デヴィッド・ニックセイ、ジャレッド・ルボフ、ウィニー・ホルツマン、デイナ・フォックス 配給:東宝東和 公式サイト:https://wicked-movie.jp/ 公式X:@wickedmovieJP公式Instagram:universal_eiga 公式TikTok:universal_eiga 公式Facebook:universal.eiga © Universal Studios. All Rights Reserved. ■ザ・シネマ放送情報 特集【3.6『ウィキッド 永遠の約束』公開記念】ワンダフル・ミュージカル シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ主演のミュージカル映画第2作「ウィキッド 永遠の約束」が、日本では3月6日(金)全国公開!これに合わせて、「ウィキッド」と同じ世界を描いた名作「オズの魔法使」「ウィズ」をはじめ、女性が活躍するミュージカル映画を特集! https://www.thecinema.jp/tag/744 《放送作品情報》 『バービー(2023)』 放送日:3月07日(土) 21:00~ ほか『バーレスク』 放送日:3月07日(土) 23:05~ ほか『オズの魔法使』 放送日:3月06日(金) 23:10~ ほか『ウィズ』 放送日:3月07日(土) 深夜 01:15~ ほか『サウンド・オブ・ミュージック』 放送日:3月05日(木) 21:00~ ほか
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COLUMN/コラム2016.10.04
プレイバック80'sキョンシー大ブーム、それを踏まえた上で作られた、“本当に怖い”2013年版『キョンシー』
中国では、労働者が出稼ぎ先で死んだ場合、故郷で埋葬しないと家族が不運に見舞われると言われていた。そこで故郷まで死体を運搬するために、道教の道士が呪術で死体を歩かせたという伝承がある。また、強い恨みや妬みを持ったまま死んだ者は、死んでも死にきれずに生ける屍としてこの世をさまようことになる。中国では、こうした死してなお動き回る者をキョンシーと呼んだ。そしてキョンシーは人の生き血を求めて夜な夜な徘徊して人々に危害を加えるため(キョンシーに噛まれた者もまたキョンシーとなる)、法術を極めた道士たちはキョンシーハンターとして全国を旅していたという。 1978年、ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』が公開された。死者が甦った世界で繰り広げられる壮絶なサバイバル映画である本作は、低予算ホラー映画でありながら世界を席巻。世界で一大ゾンビブームを巻き起こした。その頃、香港で一人の映画人がアジア版『ゾンビ』の制作に着手している。武術指導家として名を成し、映画製作者としても俳優としても成功したサモ・ハン・キンポーである。 サモ・ハンは自身の得意とするカンフー映画とホラー映画、さらに当時香港で流行していた『Mr.BOO!』などのコメディ映画の融合を試みた作品『妖術秘伝 鬼打鬼』(80年)を世に送り出し、1980年の香港興行収入第3位となる爆発的な大ヒット作とした。香港映画史上初めて本格的にキョンシーが登場した本作は、香港でホラーアクション映画が大流行する嚆矢となったのだった。 続く『霊幻師弟/人嚇人』(83年)では、サモ・ハンの盟友で、ブルース・リーのスタントダブルを務めていたラム・チェンインを道士役として起用。前作『鬼打鬼』の倍以上の興行収入を上げる、大ヒット作となっている。さらに次の『霊幻百鬼 人嚇鬼』(84年)もスマッシュヒットを記録しており、後のキョンシー映画大ブームの礎として位置づけられるこの3作品が、後に“サモハン・ホラー3部作”とされている。 “サモハン・ホラー3部作”の成功を受けて、サモ・ハンはさらにパワーアップした作品の制作に着手。それがキョンシーを全世界に認知させることになる『霊幻道士』(85年)である。 それまで監督・主演を務めてきたサモ・ハンが、プロデューサーに退いたこの作品。3部作では多く登場する幽鬼の一部でしかなかったキョンシーを本格的にフィーチャーし、これまで以上の激しいアクション、洗練されたコメディ要素、ラブロマンス、ホラーと、映画に必要なあらゆる要素ぶち込んで融合させることに成功した本作は、香港で2,000万ドル以上を稼ぎ出すメガヒットとなり、さらに日本や台湾でも大ヒットを記録した。 『霊幻道士』のメガヒットによって、黄色い道袍に身を包んだ道士と、暖帽と補褂という清朝の官服を身に付けたキョンシーというセットは映画界に完全に定着。もち米、雌鶏の血を混ぜた墨汁、銭剣や桃の剣、まじない符といった対キョンシー兵器や、息を止めることでキョンシーから身を隠す方法など、キョンシー映画の“お約束”も本作で確立。これによって無数の亜流作品が登場するだけでなく、劇中のコメディリリーフとして多くの作品にキョンシーは頻繁に登場するようになっていく。 そして亜流キョンシー作品の決定版ともいうべき作品が、台湾で制作された『幽幻道士』シリーズ(86年~)である。『幽幻道士』シリーズは、『霊幻道士』で確立したキョンシー映画に“美少女道士”という萌え要素をプラス。美少女道士テンテンを演じたリュウ・ツーイー(現在はシャドウ・リュウという名で活動)の可憐な魅力も相まって、月曜ロードショーで放映されるや高視聴率を記録し、以降シリーズ化されていくことになる。また映画だけでなく、1988年には日本のTBSが出資してテレビシリーズとして『来来!キョンシーズ』も制作され、月刊コロコロコミックでは『ニイハオ!キョンシーくん』『霊幻キョンべえ』といったコミカライズもされるなど、キョンシーは各国以上に日本で定着していった(街中ではキョンシーのマネをする子供で溢れかえっていた)。 その頃本家『霊幻道士』では、キョンシー家族が現代社会で大暴れする『霊幻道士2 キョンシーの息子たち!』(86年)、スプラッター映画ブームに乗った『霊幻道士3 キョンシーの七不思議』(88年)、特に何も完結していない『霊幻道士 完結篇 最後の霊戦』(88年)と連続ヒットを記録。しかし『完結篇』をもってサモ・ハンは制作から退き、第5作である『霊幻道士5 ベビーキョンシー対空飛ぶドラキュラ!』(89年)以降はブームの終焉もあって失速。ラム・チェンイン演じる道士がアフリカで『ブッシュマン』(81年)のニカウさんと共にキョンシーと戦う『コイサンマン、キョンシーアフリカへ行く』(91年)といったインパクト抜群なエクスプロイテーション作品が登場するなど、1990年代前半にはキョンシー映画は完全に消費され尽していた。 キョンシー映画というジャンルの最大の弱点は、あまりにも完璧なオリジナル作品『霊幻道士』があったせいかもしれない。キョンシー映画というジャンルは、日本のバブル時代の終焉とほぼ時を同じくして消滅していったのだった(2012年に突然変異的に登場した川島海荷主演のテレビドラマ『好好!キョンシーガール~東京電視台戦記~』(12年)はあったが)。 しかし2013年、世のリブートブームに乗って、名作『霊幻道士』もついにリブートされる時がきた。『キョンシー』(13年)である。 落ち目となってしまった元スター俳優のチン・シュウホウは、幽霊が出現すると噂されるマンションに入居した。シュウホウの部屋には強力な幽魔が住み着いており、シュウホウはここで自殺を試みるが、マンションに住むの引退した道士ヤンによって助けられる。ある日、マンションの住人である老女ムイは、マンションに住む別の道士ガウに階段で事故死した夫を蘇らせるよう依頼し…。 本作のプロデュースは『呪怨』シリーズ(99年~)の監督・清水崇。本作の監督はミュージシャンのジュノ・マックで、初監督とは思えないスタイリッシュな演出を見せる。オリジナルの『霊幻道士』の大ファンであるマックは、本作制作にあたってあえてオリジナル成功の要因の一つであったコメディ要素を完全に排除。さらに清水の参画によってJホラーテイストが多く含まれ、“本当に怖いキョンシー映画”を実現している。 また本作には、オリジナルシリーズのメインキャストを多数起用。残念ながら『霊幻道士』でガオ道士役だったラム・チェンインと、二番弟子モン役だったリッキー・ホイは亡くなってしまったために出演は叶わなかったが、それでもなお『霊幻道士』ファンを歓喜させるキャスティングとなっている。 主人公のチン・シュウホウ役には、『霊幻道士』で道士の一番弟子サンコー役だったチン・シュウホウ。『霊幻道士4』の主人公ゴクウ道士役のアンソニー・チェンは道士ヤン役で、ツル道士役だったチャット・ファンは道士ガウ役で出演。中盤でアンソニー・チェンとチャット・ファンが共闘するシーンは、オールドファンにとっては感涙モノだ。さらに『霊幻道士3』のミン道士役だったリチャード・ンは、今回はアッと驚く役回りを演じているので注視してほしい(他にも旧作の出演者が出ているので要チェック)。 『キョンシー』は、不穏な空気がひたすら流れる序盤、これまでの作品とはレベルの違う禍々しいキョンシーが誕生する中盤、そしてマック監督のオリジナルへの愛情が炸裂する怒涛のクライマックスまで、一気に見せる新感覚ホラー映画なのである。■ © 2013 Kudos Films Limited. All Right Reserved.
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COLUMN/コラム2024.07.01
大ヒットホラー『X エックス』と『Pearl パール』の生みの親タイ・ウェストの魅力に迫る!
出世作は惜しくも日本未公開 『ヘレディタリー/継承』(’18)や『ミッドサマー』(’19)の製作会社A24が新たに放つホラー映画として、ここ日本でも話題となったタイ・ウェスト監督のスラッシャー映画『X エックス』(’22)と、その前日譚に当たるサイコホラー『Pearl パール』(’22)が、7月のザ・シネマにて一挙放送される。そこで今回は、アメリカでは高く評価されながらも日本ではまだ知名度の低いタイ・ウェスト監督の作家性を紐解きつつ、その代表作となった『X エックス』と『Pearl パール』の見どころをご紹介したい。 アメリカ東海岸はデラウェア州の商業都市ウィルミントンに生まれ、本人曰く「典型的な郊外の中流家庭」に育ったというタイ・ウェスト監督。1980年生まれの「ミレニアル世代」だが、しかし少年時代にレンタル・ビデオで見た’70~’80年代のホラー映画に影響を受けて映画監督を志すようになった。本人が最も好きな映画として度々挙げているのは、ピーター・メダック監督の『チェンジリング』(’80)にニコラス・ローグ監督の『赤い影』(’73)、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』(’80)にウィリアム・フリードキン監督の『エクソシスト』(’73)。なるほど、好みの傾向が分かろうというものですな。派手なショック演出よりも禍々しい雰囲気を重視し、ホラー要素よりも人間ドラマやテーマ性に比重が置かれ、じっくりと時間をかけて徐々に恐怖を盛り上げていく知的なホラー映画。それは、後のタイ・ウェスト監督作品にも共通する特徴と言えよう。 ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツで映画作りを学んだウェスト監督は、恩師ケリー・ライカート(!)に紹介されたニューヨーク・インディーズ界の鬼才ラリー・フェッセンデンのプロデュースで、自身初の商業用長編作品となるヴァンパイア映画『The Roost』(’05・日本未公開)を発表。これがテキサス州で毎年開催される映画と音楽の大規模見本市「サウス・バイ・サウスウェスト」で評判となり、さらにハリウッド大手のパラマウントからDVD発売されたことから、ウェスト監督はイーライ・ロス監督の大ヒット・ホラー『キャビン・フィーバー』(’03)の続編『キャビン・フィーバー2』(’09)の演出を任されることとなる。 ところが、作品の方向性を巡ってウェスト監督とプロデューサー陣が真っ向から対立。あえてブラック・コメディ路線を狙った監督だが、しかしプロデューサーたちはその意図を理解してくれなかったという。『キャビン・フィーバー2』の撮影自体は’07年4月にクランクアップしていたそうだが、しかし劇場公開まで2年以上もお蔵入りすることに。その間に、プロデューサー側はウェスト監督に無断で追加撮影と再編集を行っており、これに強い不満を持ったウェスト監督は「アラン・スミシー名義」の使用を要求したが、しかし当時まだ彼は全米監督協会の会員でなかったために使用許可が下りなかったという。すこぶる評判の悪い同作だが、実はこういう裏事情があったのだ。 そんなタイ・ウェスト監督の出世作となったのが、’80年代のスラッシャー映画ブームにオマージュを捧げた『The House of the Devil』(‘09年・日本未公開)。これは、筆者がウェスト監督の才能に注目するきっかけとなった作品でもある。舞台は「悪魔崇拝者が子供たちを誘拐・虐待している」という噂が全米に広まり、いわゆる「サタニック・パニック」と呼ばれる集団ヒステリーが巻き起こった’80年代前半のアメリカ北東部。アパートの家賃支払いに困った10代の女子大生が、やけに時給の高いベビーシッターのアルバイトに応募したところ、それは生贄を求める悪魔崇拝カルトの仕掛けた罠だった…というお話だ。 生まれて初めて独り暮らしをすることになった貧乏学生のヒロイン。そんな彼女の抱える不安や心細さが、いかにも怪しげな古い大豪邸で過ごすひとりぼっちのアルバイトの不安や心細さと絶妙にシンクロし、やがてその漠然とした恐怖が現実のものとなっていく。細やかなディテールの積み重ねで、徐々に恐怖を煽っていくストーリーは地味ながらも圧倒的な真実味がある。なによりも、まるで本当に’80年代に作られた映画のような雰囲気に驚かされた。撮影では16ミリフィルムを使用。セットや衣装はもちろんのこと、オープニング・クレジットのフォントデザインからエンディング・クレジットの表示形式、劇中のカメラワークからチープな音楽スコアまで、’80年代の低予算スラッシャー映画のクリシェを徹底して模倣することで、当時の空気感までリアルに再現してしまうウェスト監督の演出力に感心させられる。この見事な作品が、いまだ日本で見ることが出来ないというのは実に惜しい。 タイ・ウェストの描くホラー映画の真髄とは? ちなみに、ここで注目したいのが『The House of the Devil』で主人公の親友を演じたグレタ・ガーウィグと、同作で911オペレーターの声を担当したレナ・ダナムの存在だ。ダナムは次作『インキーパーズ』(’11)にも脇役で出演している。ご存知、どちらも現在のアメリカのインディペンデント映画界を代表する女性作家にして、’00年代初頭にインディーズ映画のメジャー化に対抗する形で派生したサブジャンル「マンブルコア」(これを映画運動と見る向きもある)の代表的なフィルムメーカーに数えられている人たちだ。 マンブルコアとは自主製作映画の原点に立ち返り、現代アメリカ社会の日常に根差した身近なテーマを、自然体の即興芝居やモゴモゴとした聞き取りにくいセリフ(=マンブルコアの語源)、シンプルかつ自由な演出などを駆使して描いた、ウルトラ低予算の私小説的な映画群のこと。そのルーツはジョン・カサヴェテスやウディ・アレン、ミケランジェロ・アントニオーニやエリック・ロメールに求められる。アメリカでは’00年代に一世を風靡したマンブルコアだが、しかし日本では多くの作品が未公開のため認知度はそれほど高くない。とりあえず、ガーウィグが主演したノア・バームバック監督の『フランシス・ハ』(’12)や、そのガーウィグが監督した『レディ・バード』(’17)辺りは、’10年代以降のいわゆる「ポスト・マンブルコア」の系譜に属する作品。レナ・ダナムのテレビシリーズ『GIRLS/ガールズ』(‘12~’17)もマンブルコアの影響下にあると言えよう。他にもアダム・ウィンガードやジョー・スワンバーグ、デュプラス兄弟にアーロン・カッツ、「マンブルコアのゴッドファーザー」と呼ばれるアンドリュー・ブジャルスキーなどがマンブルコアの重要な作家と言われているが、実はタイ・ウェストもその仲間だった。 まあ、よくよく考えてみれば学生時代の恩師からして、マンブルコアの作家たちと親和性の高そうな「アメリカン・インディーズの至宝」ケリー・ライカートである。ガーウィグやダナムがウェスト作品に関わったように、ウェスト監督もウィンガードやスワンバーグの作品に役者として出演。マンブルコアの作家たちは互いの交流が活発だ。そもそもウェスト監督の『The House of the Devil』や『インキーパーズ』、ウィンガード監督の『サプライズ』(’11)や『ザ・ゲスト』(’14)などはマンブルコアのホラー版とも見做され、マンブルコアならぬ「マンブルゴア(マンブルコア+ゴア)」という造語まで生まれた。そういう視点でウェスト監督作品を改めて見返すと、「自分をホラー映画監督だとは思っていない」という彼の言葉にも少なからず納得できるだろう。 「恐怖というのは日常の延長線上にあるもの」というタイ・ウェスト監督。そのうえで、自身が作っているのはホラー映画ではなく、「ホラー映画へと変化する普通の映画」だと述べている。そういえば彼は『エクソシスト』や『シャイニング』を評価する理由として、前者は「病気の娘を抱えた女性」を描いており、後者は「家族を憎むアル中男」を描いている、どちらも「まずはドラマが優先でホラーは2番目」であることを挙げていたが、確かに彼自身の作品もホラー要素と同じかそれ以上にドラマ要素が重視される。そこはホラー映画ファンの間でも賛否の分かれるところで、実際にウェスト監督自身は「ハードコアなホラー映画マニアは僕のことを嫌っている」と感じているそうだ。 さて、その『The House of the Devil』でスクリームフェストやサターン賞などのジャンル系賞レースを賑わせたウェスト監督は、続くお化け屋敷映画『インキーパーズ』が初めて興行収入100万ドルを超えるスマッシュヒットを記録。友人のウィンガードやスワンバーグも参加したオムニバス・ホラー『V/H/Sシンドローム』(’12)や『ABC・オブ・デス』(’12)にも短編作品を提供し、かの有名な人民寺院の集団自殺事件をモデルにした実録恐怖譚『サクラメント 死の楽園』(’13)も話題となったが、しかし「ホラー映画だけの監督と思われたくない」との理由から挑んだ西部劇『バレー・オブ・バイオレンス』(’16)がまさかの大コケ。なんと、興行収入6万ドル強という桁外れ(?)の大失敗作となってしまったのだ。 それっきり、暫く映画の世界から姿を消してしまったウェスト監督。その間、『ウェイワード・パインズ 出口のない街』シーズン2や『アウトキャスト』、『エクソシスト』に『チェンバース:邪悪なハート』などなど、ホラー系やミステリー系のテレビシリーズのエピソード監督として活躍。脚本の執筆から資金集め、予算のやり繰りから完成後のプロモーションまで監督自身が奔走せねばならないインディペンデント映画に対して、完全なる雇われ仕事のテレビシリーズは余計なストレスが少ないため、色々な意味で良い骨休めになったという。そうして長い充電期間を過ごしたタイ・ウェスト監督が、およそ6年ぶりに挑んだ映画復帰作が『X エックス』だった。 極めてアメリカ的なメンタリティが根底に流れる『X エックス』 舞台は1979年。有名になることを夢見るポルノ女優志望のストリッパー、マキシーン(ミア・ゴス)は、映画プロデューサーを自称する恋人ウェイン(マーティン・ヘンダーソン)やその仲間たちと共に、自主制作のハードコアポルノ映画を撮影するためにテキサスの田舎へと向かう。彼らが辿り着いた先は、ハワード(スティーブン・ユーレ)にパール(ミア・ゴス)という高齢の老夫婦が暮らす広大な農場。その一角に建つ古い納屋を借りた一行は、老夫婦に内緒でこっそりとポルノ映画の撮影を始めるのだが、しかしマキシーンだけは老女パールの怪しげな様子が気にかかる。 実は、若い頃はマキシーンと同じくスターになることを夢見ていたパール。しかし、夢を実行に移すだけの勇気が彼女にはなく、田舎の片隅で後悔と不満を抱えたまま年老いていたのだ。そして今、フレッシュな若者たちの出現がパールの歪んだ承認欲求を刺激し、彼女を狂気へと駆り立てていく…。 以前から「いつか一緒に仕事をしよう」と言いながら実現しなかったA24の重役ノア・サッコに、ダメもとで脚本を送ったところすんなり企画が通ってしまったというウェスト監督。トビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』(’74)から多大な影響を受けた作品であることは明白だが、それにしても’70年代のインディペンデント系ホラー映画の雰囲気が驚くほど忠実に再現されている。さすがはタイ・ウェスト監督。『The House of the Devil』と同じく、まるで実際に当時作られた映画みたいだ。ただし、今回は16ミリフィルムでの撮影は叶わなかった。’70~’80年代のインディーズ系ホラー映画の多くがそうだったように、当初は16ミリフィルムの使用を検討したというウェスト監督。しかし、本作が撮影されたのはコロナ禍のニュージーランド。通常よりもフィルムを現像するのに時間がかかるため、撮影期間中にラッシュを確認することが難しいことから断念、デジタルカメラで撮影せざるを得なかったという。 そんな本作でウェスト監督が描かんとしたのは、いわばアメリカ的な「起業家精神」。舞台となる’79年といえば、いわゆる「ポルノ黄金時代」の真っ只中である。今となっては信じられない話かもしれないが、当時は成人指定のハードコアポルノが映画市場を席巻し、中には『ディープ・スロート』(’72)や『ミス・ジョーンズの背徳』(’73)、『Debbie Does Dallas』(‘78・日本未公開)などのように、それこそメジャー映画並みの興行収入を稼ぐ作品まで登場、その『ディープ・スロート』の主演女優リンダ・ラヴレースや『グリーンドア』(’72)のマリリン・チェンバースなどはハリウッド・スターばりのセレブとなった。しかも、大半の作品は自主製作映画も同然のものばかり。つまり、無名の素人でも成功への足掛かりを掴むことが可能だったのだ。そんな一獲千金のチャンスを夢見てポルノ映画を撮影する、いわば「起業家精神」溢れるハングリーな若者たちを、田舎の片隅で叶わなかった若い頃の夢と満たされぬ欲望を抱えたまま年齢を重ね、静かに狂ってしまった老女パールがひとりまたひとりと殺していく不条理に、ある種の憐れみを込めた本作の恐怖の根源があると言えよう。 ちなみに、主人公をポルノ映画の撮影隊にした理由について、ウェスト監督は「ポルノとホラーは似ているから」と答えている。なるほど確かにその通り。どちらも低予算で作れるうえに、キャストやスタッフが無名でも客入りが期待できるため、他のジャンルに比べると極めて敷居が低い。特に’70年代当時は、それこそ本作に影響を与えた自主制作映画『悪魔のいけにえ』がメジャー級の大ヒットを記録し、そのおかげでトビー・フーパー監督もハリウッド入りしたように、ホラー映画はポルノ映画と同じく、映画界にコネのない人間がキャリアをスタートするに最適なジャンルだった。と同時に、その気軽さゆえ安易に量産されやすく、なおかつ金儲けのためにポルノなら本番シーン、ホラーならゴアシーンと刺激ばかりを追究するようになり、映画として大事なストーリー性や芸術性が蔑ろにされやすいという点でも似たものがあると言えよう。 ‘22年3月に全米公開され、興行収入1500万ドル超えというタイ・ウェスト監督のキャリアで最大のヒットを記録した『X エックス』。その半年後という異例のスピードで封切られたのが、若き日のパールを主人公にした前日譚『Pearl パール』である。 古き良きアメリカのダークサイドを浮き彫りにする『Pearl パール』 時は第一次世界大戦下の1918年。テキサスの田舎の農場に暮らす若い女性パール(ミア・ゴス)はハリウッド映画が大好きで、秘かに自分もスターとなることを夢見ている。しかし現実の彼女は保守的で厳格な母親(タンディ・ライト)に支配され、体の不自由な父親(マシュー・サンダーランド)の介護と農場の仕事に忙しく追われる毎日。そのうえ、若くして結婚した彼女は戦地へ出征した夫ハワード(アリステア・シーウェル)の帰りを待たねばならない。妻として娘として家庭に縛り付けられたパールに、自分の夢を追いかける自由などなかったのだ。 彼女の抑圧された願望や承認欲求を刺激するのが、街の小さな映画館のハンサムな若い映写技師(デヴィッド・コレンスウェット)。彼から「夢を追いかけるべきだ」と励まされるパールだが、しかし彼女にはそれだけの勇気も行動力もなかった。そんな折、義妹ミッツィ(エマ・ジェンキンス=プーロ)から軍隊慰問ショーのダンサーのオーディションがあると聞いたパール。この狭くて息苦しい田舎町から出ていく千載一遇のチャンスだ。ようやく人生に希望の光を見出した彼女は、親に内緒でミッツィと一緒にオーディションを受けることを決意。なにがなんでも合格して、スターになる夢を叶えたい。もはやそれしか考えられなくなったパールは、邪魔になる人間を次々と殺して狂気を暴走させていく…。 前作が’70年代のインディーズ系ホラー映画風だとすると、今回はハリウッド黄金期のテクニカラー映画風。中でも『オズの魔法使い』(’39)や’50年代のダグラス・サーク映画からの影響はかなり濃厚だ。当初はドイツ表現主義風のモノクロ映画にするという案もあったという。確かに、精神を病んだ人間の心象世界を表現するのにドイツ表現主義は適したスタイルだが、しかしパールの場合はちょっと病み方が違う。華やかな映画スターに憧れる彼女の心象世界は、むしろカラフルで煌びやかで狂気に満ちたものと考える方がしっくりとくる。ウェスト監督が言うところの「歪んだディズニー映画」だ。そこで落ちついたのが、ハリウッド黄金期のテクニカラー映画風スタイル。まだ映画がモノクロ&サイレントだった1910年代という時代設定からはズレるが、まあ、同時代を舞台にした『武器よさらば』(’57)とか『マイ・フェア・レディ』(‘64)みたいなものと受け止めればよかろう。 もともと『X エックス』の製作がスタートした当初は、シリーズ化の企画などなかったというウェスト監督。しかし以前に『サクラメント 死の楽園』で、撮影のために何もないところから建てた新興宗教コミュニティの巨大セットを取り壊した際に「勿体ない」と感じた彼は、今回もテキサスに見立ててニュージーランドに建てた農場のセットを、映画一本だけで取り壊してしまうのは惜しいと考え、同じセットを使ってもう一本映画を撮ろうと考えたという。そこで思いついたのが、殺人鬼の老婆パールがなぜサイコパスと化したか?を描く前日譚だったというわけだ。 脚本の執筆にはパール役のミア・ゴスも参加。たったの2週間で書き上げたそうで、『X エックス』の撮影が始まる前には既に『Pearl パール』の脚本も完成していたという。おかげで、後者のネタを前者に忍び込ませることも出来た。例えば、『X エックス』でパールは「ブロンドが嫌い」だと呟くが、その理由は続編『Pearl パール』で詳らかにされる。ほぼ同時に作られたからこそ可能になった仕掛けだ。実際、『X エックス』のクランクアップから3週間後に『Pearl パール』の撮影は始まっている。 浮かび上がるのは保守的な田舎の伝統的な家父長制にがんじがらめとなり、女というだけで人生の選択肢を狭められてしまったヒロイン、パールの痛みと哀しみだ。一見したところ平和で長閑な日常の裏で抑圧され、少しずつ狂気を醸成させていくパール。古き良き理想のアメリカが、誰のどんな犠牲の上に成り立っていたのか分かろうというものだろう。演じるミア・ゴスは、「もしパールが別の時代に生まれていて、もっと理解のある両親に恵まれていたら、あんな殺人鬼にはなっていなかったと思う」と語っているが、確かにその通りかもしれない。いわば、周りの環境が彼女をモンスターにしてしまったようなもの。だからこそ、本作は恐ろしくも哀しく切ないのだ。 そうそう、主演女優のミア・ゴスについても触れねばならないだろう。ラース・フォン・トリアーの『ニンフォマニアック』(’13)でデビューした頃から、そのクセの強い個性と大胆不敵な芝居が映画ファンの間で評判となりながら、しかし決定打と呼べるような代表作になかなか恵まれなかったゴス。この『X エックス』と『Pearl パール』の2作品で初の単独主演を果たし、ようやく女優としてブレイクすることとなった。「ミアが引き受けてくれなければ(『X エックス』も『Pearl パール』も)作ることはなかっただろう」というウェスト監督だが、なるほどマキシーン役もパール役も彼女以外に考えられないほどハマっている。ミア・ゴスなしではシリーズの成功もなかったはずだ。 なお、『X エックス』の後日譚に当たるトリロジー最終章『MaXXXine』(‘24・日本公開未定)もすでに完成しており、去る’24年6月24日にロサンゼルスのチャイニーズ・シアターでプレミア上映が行われたばかり。今回は1985年のロサンゼルスが舞台で、夢を叶えて有名なポルノ・スターとなったマキシーン(ミア・ゴス)が、一般作へのステップアップに挑む一方で謎の連続殺人鬼に命を狙われる。ウェスト監督曰く、ポール・シュレイダー監督の『ハードコアの夜』(’79)やゲイリー・シャーマン監督の『ザ・モンスター』(’82)、さらにはジェームズ・キャメロン監督の『ターミネーター』(’84)やイタリアのジャッロ映画などに影響を受けたとのこと。共演陣もエリザベス・デビッキにケヴィン・ベーコン、ミシェル・モナハン、リリー・コリンズ、ジャンカルロ・エスポジトなどシリーズ中で最も豪華だ。’80年代キッズの映画マニアとしては期待度満点!日本公開の時期はまだ未定だが、とりあえずトリロジーの最終章をしっかりと見届けるためにも、ぜひこの機会にザ・シネマで『X エックス』と『Pearl パール』を楽しんでおいて頂きたい。■ 『X エックス』© 2022 Over The Hill Pictures LLC All Rights Reserved. 『Pearl パール』© 2022 ORIGIN PICTURE SHOW LLC. 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