検索結果
-
PROGRAM/放送作品
エンド・オブ・ウォッチ
[PG12]死と隣り合わせな犯罪多発地区で、市警コンビの危険な日常をリアルに描くポリス・アクション
ギャング同士の抗争が絶えない実在の重犯罪多発地区を舞台に、『スーサイド・スクワッド』のデヴィッド・エアー監督が市警コンビの危険な捜査をリアルに描く。現場の緊迫感を醸し出すPOV形式の映像も秀逸。
-
COLUMN/コラム2022.02.03
シリアルキラーの脳内世界をポップに描いたシュールなブラック・コメディ『ハッピーボイス・キラー』
監督は傑作『ペルセポリス』のマルジャン・サトラピ シリアルキラーの深層心理へと観客を誘い、その目から見える世界をポップ&ユーモラスに描いたシュールなブラック・コメディ。フリッツ・ラング監督の『M』(’31)を筆頭に、アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』(’60)からファティ・アキン監督の『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』(’19)に至るまで、シリアルキラーを主人公にした映画は古今東西少なくないものの、しかし精神を病んでしまった連続殺人鬼の人間的な内側にこれほど寄り添った作品はなかなか珍しいかもしれない。 演出を手掛けたのはイラン出身のマルジャン・サトラピ。そう、あの傑作アニメ『ペルセポリス』(’07)で有名な女性監督である。近代化と経済成長に沸く’70年代のイランに育ち、裕福でリベラルな両親から西欧的な教育を受けたサトラピだったが、しかし10歳の時にイスラム教の伝統的な価値観への回帰を目指すイラン革命が勃発。それまで比較的自由だった女性の権利も著しく抑圧されてしまう。娘の将来を案じた両親によってヨーロッパへ送り出された彼女は、フランスの美術学校でイラストレーションを学んだ後、パリを拠点にバンドデシネ(フランスの漫画)作家として活動するように。そんな彼女が、自らの少女時代をモデルに描いた漫画が『ペルセポリス』だった。アメリカをはじめ世界中でベストセラーとなった同作を、サトラピ自身が監督したアニメ版『ペルセポリス』もカンヌ国際映画祭で審査員賞を獲得し、アカデミー賞の長編アニメ部門にもノミネート。以降、バンドデシネ作家としてだけでなく映画監督としてもコンスタントに作品を発表した彼女にとって、初めてアメリカ資本で撮った英語作品がこの『ハッピーボイス・キラー』(’14)だった。 舞台はアメリカ北東部の寂れた田舎町ミルトン。地元のバスタブ工場で働く男性ジェリー(ライアン・レイノルズ)は、一見したところごく普通の明るくて爽やかな好青年なのだが、しかし実は少年時代の悲惨なトラウマが原因で長いこと心の病を患っていた。裁判所の命令によって精神科医ウォーレン博士(ジャッキー・ウィーヴァー)の監督下に置かれた彼は、廃墟となったボーリング場の2階に部屋を借り、社会人としての自立を目指していたのである。 そんな彼の同居人が愛犬ボスコと愛猫Mr.ウィスカーズ。仕事から帰ったジェリーを出迎えた彼らは、なんと人間の言葉でペラペラとしゃべり始める。というのも、ジェリーはウォーレン博士から処方された薬を飲まず、言ってみれば常にナチュラルハイの状態だったのだ。いつも妙に明るくて元気でテンションが高いのも、普段から薬を服用していないため。確かに薬を飲めば精神は安定するものの、しかし冷静になって見えてくる現実世界は孤独で殺伐としていて寂しい。それをどうしても受け入れがたいジェリーは、動物たちとおしゃべりできるパステルカラーに彩られたキラキラな自分だけの世界に居心地の良さを見出していたのだ。 ある日、職場で年に1度のパーティが開かれることとなり、その準備を手伝うことになったジェリーは、経理部に勤めるイギリス人女性フィオナ(ジェマ・アータートン)に一目惚れしてしまう。まるで初めて恋をした少年のように浮足立ち、困惑するフィオナに猛アタックするジェリー。はた目から見ればちょっとヤバい人だが、もちろん本人にその自覚は全くない。それどころか、遠回しに断ろうとするフィオナの言葉もまるで耳に入らず、一方的にデートの約束を取り付けてしまう。しかし、その日は経理部の女子会。悪い人じゃないかもしれないけど、あまり気乗りしないなあ…ということで、フィオナはジェリーとのデートをすっぽかしてしまう。 女子会を終えて帰ろうとしたフィオナだが、肝心の車が故障して動かない。困っていたところへ通りがかったのがジェリーの車だった。少々気まずいけれど仕方ない。ジェリーに家まで送ってもらうことにしたフィオナだったが、しかしその途中で飛び出してきた鹿と車が衝突。「この痛みから解放してくれ…」という鹿の声が聞こえたジェリーは、取り出したナイフで鹿の喉を掻っ切る。周囲に飛び散る鮮血。パニックを起こしたフィオナは近くの森へと逃げ、それを追いかけたジェリーはうっかり転倒して彼女を刺し殺してしまう。慌てて自宅へ戻ったジェリーに「警察へ通報するべきだ」と諭す愛犬ボスコ、反対に隠蔽しろと囁く愛猫Mr.ウィスカーズ。フィオナの遺体を回収してバラバラにしたジェリーは、生首だけを冷蔵庫の中に保存する。すると、今度はフィオナの生首がしゃべり出し、「ひとりじゃ寂しい」と懇願。かくして、ジェリーはフィオナの生首友達を集めるため、経理部のリサ(アナ・ケンドリック)やアリソン(エラ・スミス)を次々と手にかけていく…。 ライアン・レイノルズの起用も大正解! なんとも奇想天外かつブッ飛んだ映画である。’50年代風のレトロでカラフルでクリーンな田舎町、人間の言葉を喋るキュートな動物たち、思わず胸を躍らせる軽やかな音楽。まるでスタンリー・ドーネン監督のMGMミュージカル映画のようであり、はたまたヒュー・ロフティング原作の『ドリトル先生不思議な旅』(’67)のようでもある。だが、それはあくまでも精神病を患った主人公ジェリーの目から見える虚構の世界。ひとたび精神安定薬を服用して落ち着くと、明るくて整理整頓された小ぎれいな部屋は暗くて薄汚いゴミ屋敷へ、愛犬や愛猫は人間の言葉など理解しない普通のペットへ、おしゃべりな生首も腐敗臭が漂う腐乱死体へと戻ってしまう。この日常と非日常の極端な対比を、様々な映像スタイルを用いながら織り交ぜることで、現実と空想が複雑に交錯したジェリーの心象世界を鮮やかに再現していく。さすがはコミック作家出身のサトラピ監督らしい、的確で洗練されたビジュアルセンスだ。 脚本を書いたのは『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』や『堕ちた弁護士-ニック・フォーリンー』、『オルタード・カーボン』など、テレビの犯罪ドラマやミステリードラマで知られる脚本家マイケル・R・ペリー。とある番組で監修を務めるFBI行動分析官と知り合ったペリーは、「連続殺人犯の行動が不明瞭だった場合はどうするのか?」と素朴な疑問を投げかけたところ、「犯人が見ている世界を映画のように想像する」との答えが帰って来たという。ぜひその映画を見てみたい!と思ったのが、この脚本を執筆するきっかけだったそうだ。 2009年には映画化されていない優れた脚本を評価する「ブラックリスト」の年次リストに選ばれた本作。同じ年には『ソーシャル・ネットワーク』(’10)や『英国王のスピーチ』(’10)、『ウォール・ストリート』(’10)などもランキングされたが、しかし本作はなかなか映画化が決まらなかった。その理由は、一歩間違えると不謹慎になりかねない題材にあったようだ。なにしろ、シリアルキラーや血生臭い殺人をポップなノリで軽妙洒脱に描くわけだから。実際、オファーを受けたサトラピ監督も最初に脚本を読んでビックリし、主人公ジェリーに観客が共感を抱くにはどうすればいいのか悩んだという。 そこで監督が撮った手段が、ジェリーを子供のまま成長が止まった青年として最後まで愛らしく描くこと。幼い頃に乱暴な父親から虐待を受け、母親の自殺を幇助したことで心に深い傷を負った彼は、そこから大人になることを拒否してしまったのだ。だからこそ厳しい現実世界に向き合うことが出来ず、キラキラとしたバラ色の空想世界に逃避している。いつまでも無邪気で無垢な少年なのだ。だが、そんな彼の中には善と悪が常に拮抗し、しゃべる動物や生首を通して自分自身に語りかける。ジェリー自身は善き人間として社会に溶け込みたい。だから滑稽なくらい一生懸命に明るく振る舞い、仕事に恋愛に前向きに取り組んでいくわけだが、しかし見えている世界が違うために現実とのズレが生じ、やがて苦悩と葛藤の中で内なる悪魔が囁きかけていく。可笑しくもやがて恐ろしく哀しきかな。シリアルキラーを単なる異常なサイコパスとしてではなく、あなたも私も人生の歯車が狂えばそう成り得る平凡な人間として描いているところは白眉だ。 『ブレアウィッチ・プロジェクト』が怖すぎて、冒頭6分で脱落したというくらいホラー映画が苦手だというサトラピ監督。まるでウェス・アンダーソンがサイコパスの頭の中を解析したような本作の演出には、むしろ適任だったかもしれない。それでも、人殺しは忌避すべき邪悪なものとして、決して美化することなく描いている。内臓や肉片を小分けにしたタッパーの山などはゾッとする光景だ。そこは映画自体の根幹的なモラル意識に関わるポイントだけあって、やはり有耶無耶にはできないだろう。あくまでも犯罪は犯罪として絶対的な悪としつつ、そのうえでシリアルキラーの脳内世界を不条理なファンタジーとして描くことで、狂気へと追い込まれていく人間の痛みと悲哀を浮き彫りにする。主要キャラが勢揃いするミュージカル仕立てのエンディングがまた妙に切ない。 また、ジェリー役にライアン・レイノルズを起用したことも大正解だった。どこか初心な少年の面影を残すチャーミングなオール・アメリカンボーイ。中でもコメディは最も得意とするジャンルだ。そんなイメージを逆手にとって、不器用で無邪気で愛らしい青年ジェリーがふとした瞬間に垣間見せるゾッとするような狂気までをも見事に演じている。これはキャスティングの勝利であろう。ライアン本人も本作に深い思い入れがあるようで、自身の最も好きな出演作のひとつに『ハッピーボイス・キラー』を挙げている。ちなみに、愛犬ボスコと愛猫Mr.ウィスカーズはもちろんのこと、蝶々や鹿、さらには靴下で作ったウサギのぬいぐるみの声も、実は全てライアンが吹き替えている。そりゃそうだ。いずれも主人公ジェリーの心の声だもの。ジェリー役を演じるライアンが声を当てるのは当然と言えば当然だろう。 ‘14年のサンダンス映画祭で初お披露目されたものの、配給会社ライオンズゲートが興行的に見込めないと判断したためなのか、アメリカでは大都市のみの限定公開、それ以外はビデオ・オン・デマンドで配信されるにとどまった作品。確かに取り扱い要注意な内容ゆえに賛否は分かれるかもしれないが、しかしシリアルキラー物の変化球として非常にユニークな切り口の映画であることは間違いない。■ 『ハッピーボイス・キラー』© 2014 SERIAL KILLER, LLC. ALL RIGHTS RESERVED
-
PROGRAM/放送作品
マイレージ、マイライフ
リストラ宣告人に人生の転機が!現代人の人間関係を問うジョージ・クルーニー主演の哀歓ドラマ
名匠アイヴァン・ライトマンの息子ジェイソンが父譲りのユーモアセンスを発揮。リストラや“おひとり様生活”という現代的テーマをシニカルに斬る。人とつながる喜びに目覚める主人公をジョージ・クルーニーが好演。
-
COLUMN/コラム2017.02.26
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2017年3月】うず潮
エンド・オブ・ウォッチ【EOW】 とは、警察官に義務づけられた業務日誌の最後に記入する言葉だそう。EOW=「見回り終了」を意味し、また、二度と見ることができない「殉職」も意味する警察内の隠語 2016年に話題をさらった『スーサイド・スクワッド』、ブラピ主演の戦争映画『フューリー』の監督、デヴィッド・エアーが放つ市警コンビの危険な日常をリアルに描くポリス・アクション!デヴィッド・エアーは舞台となった犯罪多発地区サウス・セントラルで若かりし頃を過ごした経験を活かし、現場の臨場感と緊張感を漂わせながら、死と隣り合わせな警察官たちの悩みや絆を再現。 『ナイトクローラー』で怪演ぶりが注目されたジェイク・ギレンホールが主演、警官の心情を見事に演じ、その相棒役に『フューリー』で戦車操縦士を演じたマイケル・ペーニャが好演。 ジェイク・ギレンホール&マイケル・ペーニャの市警コンビがパトロール中に、一軒家に潜む数十人の不法入国者を発見。それをきっかけに巨大麻薬カルテルから目をつけられ、2人の抹殺命令がギャングたちに下る。彼らと2人が繰り広げる息を飲む銃撃戦シーンは見事の一言。ロス市警の制服警官たちが過ごす日常を疑似体験できる1本。是非ご覧ください! © 2012 SOLE PRODUCTIONS, LLC AND HEDGE FUND FILM PARTNERS, LLC
-
PROGRAM/放送作品
ハッピーボイス・キラー
[PG12]『デッドプール』のライアン・レイノルズが殺人鬼に。凄惨な事件をポップに描くサイコスリラー
『ペルセポリス』のイラン出身女性監督マルジャン・サトラピの実写映画第2作。持ち前のポップな映像センスでサイコスリラーをコミカルに彩る。妄想と現実の狭間で葛藤する殺人鬼をライアン・レイノルズが好演。
-
COLUMN/コラム2016.05.16
ハッピー・クリスマス
シカゴ。映画監督のジェフの家に、恋人と別れた妹ジェニーが転がり込んできた。「子どもの世話で忙しいこの家に住まれても、トラブルを生むだけなんじゃないの?」ジェフの妻ケリーのそうした不安は的中する。ジェニーは、パーティーで泥酔したり、ベビーシッター兼ハッパの売人のケヴィンと恋愛関係になったりと問題を起こし続ける。彼女に対して怒るケリーだったが、小説家の夢を中断して子育てを押しつけられている立場を同情されたことで、人間関係に変化が生じていく …。 『ピッチ・パーフェクト』シリーズ(12年〜)や『イントゥ・ザ・ウッズ』(14年)といった大ヒット作によってハリウッドのトップスターとなったアナ・ケンドリック。そんな彼女の出演作にしては、2014年の『ハッピー・クリスマス』はあまりに地味な映画である。彼女が演じているのは無職のトラブル ・メイカーだし、ジェフを演じているのは監督のジョー・スワンバーグ本人。子役は彼の実の長男だし撮影はロケばかり。セットを組まれて撮影したものは何ひとつないのだ。 ひょっとすると騙されて出演したのか?いや、そんなことはない。アナはスワンバーグの前作『ドリンキング・バディーズ 飲み友以上、恋人未満の甘い方程式』(13年)にも出演しており、彼女はやる気満々で本作に出演したのだ。理由は、スワンバーグが新しいアメリカ映画のムーヴメントのキー・パーソンだからだ。 ここで時計を9年前に巻き戻してみよう。スワンバーグは『ハンナだけど、生きていく!』(07年)というインディ映画を発表している。出演もしているアンドリュー・バジャルスキー、ライ・ルッソ=ヤング、そしてマーク・デュプラスらとスワンバーグは、ゼロ年代初頭から始まっていた映画ムーヴメント<マンブルコア>の担い手だった。 マンブルコア作品の特徴は、自主製作に近い環境下で経済面でも恋愛面でも恵まれていない自分の冴えない日常をビデオ撮りで描くという、地味にもほどがあるものだった。出演者は監督仲間ばかりでプロの俳優なんて殆どいなかった。メディアから<マンブルコア>なんて呼ばれるようになったのは、皆セリフをモゴモゴ言っていた(mumble)からだ。 映画学校を卒業したのはいいけど、シリーズ物の超大作ばかり製作するようになったハリウッドで仕事出来る可能性なんてゼロ。マンブルコア作品は、若者たちの小さな嘆き声であり、そこには明るい未来のヴィジョンなんて一切漂っていなかった。 だが『ハンナだけど、生きていく!』に出演したひとりの女子が、そんな現状を打開するきっかけを与えることになった。スワンバーグの前作『LOL』に端役で出演したことをきっかけに本作で主演と共同脚本を務めたグレタ・ガーウィグである。 大学を卒業したばかりで、美貌と才能を兼ね備えた彼女は、スワンバーグの次作『Nights and Weekends』(08年)では共同監督も務め(この時期ふたりは交際していたという話もある)、『ハンナ』で共演したマーク・デュプラスとその兄ジェイが監督した『Baghead』(08年)にも出演するなど、マンブルコアのミューズとして大活躍、運動をネクスト・レベルに持ち上げた。 こうした地下ムーヴメントに反応したのが、『彼女と僕のいた場所』(95年)でデビューし、『イカとクジラ』(05年)をはじめとする一連の半自伝作で知られていた映画監督ノア・バームバックだった。ウェス・アンダーソン作品の共同脚本家としてハリウッドでも評価を得ていた彼は、マンブルコアの作家たちを地上に引き上げようと、スワンバーグの『Alexander the Last』(09年)をプロデュース。遂にはマンブルコアのテイストを取り入れた作品を自ら監督しようと決意する。 それが『人生は最悪だ!』(10年)だった。コメディ界のスーパースター、ベン・スティラーが主演したこの作品には、相手役としてグレタ・ガーウィグが抜擢された。そして本作の撮影をきっかけにバームバックとガーウィグは恋に落ち、ふたりは『フランシス・ハ』(12年)『Mistress America 』(15年)といったコラボ作を作り続けている。 『人生は最悪だ!』に俳優として出演していたマーク・デュプラスも、兄のジェイと『僕の大切な人と、そのクソガキ』(10年)でメジャー進出を果たした。その後も監督業の傍ら、二人は俳優としても活躍(マークの代表作は『タミー Tammy』(14年)、ジェイの代表作はドラマ『トランスペアレント』(14年〜)だろう)、また兄弟でプロデュースして、マークが出演もした『彼女はパートタイムトラベラー』 (12年)は大評判を呼び、監督のコリン・トレヴォロウが『ジュラシック・ワールド』(15年)の監督に抜擢されるきっかけも作るなど、ふたりはエンタメ界で確固たる地位を築いている。 そんなかつての仲間たちから出遅れたかに見えたスワンバーグが、初めてまともな製作環境で撮ったのが『ドリンキング・バディーズ』だった。映画は絶賛を博し、クエンティン・タランティーノはその年のベスト10の一本にこの映画を選んでいる。シカゴの地ビール工場で働く男女の微妙な関係を描いたこの作品は、美人女優オリヴィア・ワイルドが主演していることもあってパッと見は「月9ドラマ」みたいな感じなのだけど、実はセリフが全て出演者による即興という前衛的な作りがされている。相手役は『New Girl / ダサかわ女子と三銃士』(11年〜)の人気者ジェイク・ジョンソンだが、彼は『彼女はパートタイムトラベラー』にも出演しており、マンブルコアのノリというものを理解している俳優なのだろう。 そんなジョンソンの恋人役を演じていたのがアナ・ケンドリックだった。彼女が『ハッピー・クリスマス』に出演したのも、即興演技の楽しさにヤミツキになったからに違いない。その『ハッピー・クリスマス』最大の見所も、アナとケリー役のメラニー・リンスキー、そしてレナ・ダナムの三人が即興で繰り広げる<官能小説のネタ出し会議>のシーンだ。 テレビドラマ『GIRLS/ガールズ』(12年〜)の製作・監督・脚本・主演の4役で多忙を極めるレナが本作の脇役で顔を出しているのには理由がある。彼女の出世作であるインディ映画『Tiny Furniture』(10年)はマンブルコアの影響下のもとで作られた作品だったからだ。『ハッピー・クリスマス』への出演は彼女なりの恩返しなのかもしれない。 一方でレナとグレタ・ガーウィグは長年の友人であり、『GIRLS/ガールズ』でレナが見出したアダム・ドライヴァーは『フランシス・ハ』とまもなく日本公開されるバームバックの監督作『ヤング・アダルト・ニューヨーク』にも出演している。 後者でアダムが演じているのは若く貧乏なアーティストだ。ベン・スティラー演じる主人公のドキュメンタリー監督は、社会的な評価を気にしない彼に感化されてツルむようになるが、やがて痛いしっぺ返しを食らうことになる。自らインディペンデントな立場を選んだスティラーと、成功への道があらかじめ閉ざされていたアダムは所詮異なる世代だったことが明らかになるのだ。 スティラーが再び主人公を演じていること、アマンダ・セイフライド扮するアダムの恋人役に当初グレタ・ガーウィグがキャスティングされていたことを考えると、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』はバームバックがマンブルコアの作家たちと親しく交流していた時代をベースにしているに違いない。するとアダムのキャラのモデルはジョー・スワンバーグということになるのだが …。 COPYRIGHT © 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
-
PROGRAM/放送作品
シンプル・フェイバー
[PG12]女たちの秘密と欲望が危険に交わる…アナ・ケンドリック&ブレイク・ライヴリー競演ミステリー
『ゴーストバスターズ』などパワフルな女性たちを描くポール・フェイグ監督がベストセラー小説を映画化。対照的なママ友2人の間に生まれる友情や嫉妬をポップに描き、その陰に潜む秘密をスリリングに映し出す。
-
COLUMN/コラム2012.12.22
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2012年1月】山田
他人とのしがらみを避けるリストラ宣告人に人生の転機が訪れる…。現代人の人間関係を温かくシニカルに問う哀歓ドラマ。名匠アイヴァン・ライトマンの息子ジェイソンが父譲りのユーモア・センスを遺憾なく発揮する本作において、主演のジョージ・クルーニーはまさにはまり役!スーツ姿はバチっとキマり、世界の航空会社のキャビンクルー御用達ブランドtravelpro社製スーツケースを颯爽と転がす姿は、超絶ナイスミドル。企業の人件費削減の流れに伴うリストラの増加や、最近のネット社会からポイントカード依存症まで。複雑な現代社会を生き抜く皆様にとっておきの、“主人公がこれまでの生き方を見つめ直す系ムービー”! Copyright © 2012 DW STUDIOS L.L.C. and COLD SPRING PICTURES. All Rights Reserved.
-
PROGRAM/放送作品
バッド・バディ!私とカレの暗殺デート
ようやく出会った理想の男性は殺し屋だった!!ラブとアクションがポップでスリリングに交錯する!
コメディ映画の名手ジョン・ランディスの息子である脚本家マックス・ランディスが、ロマンスと危険なスリルを絶妙なユーモアで融合。殺し屋の才能に目覚めるヒロイン役アナ・ケンドリックのアクションも鮮やか。
-
NEWS/ニュース2010.03.26
長塚京三さんが語る俳優ジョージ・クルーニーとは、あるいは試写会担当者の雑感
去る3月10日(水)新宿明治安田生命ホールにて、視聴者の皆様をご招待したザ・シネマ主催による新作映画『マイレージ、マイライフ』特別試写会を実施しました!150組300名様ご招待のところ、ナントそのウン十倍の応募数!たくさんのご応募、本当にありがとうございました!今回残念ながら抽選に漏れた方も次の機会にも是非ご応募下さい!さて当日。普段視聴者の方々と直接お会いする事が少ない我々ザ・シネマ編成部員も、この日は貴重な機会としてほぼフルメンバーでスタンバイ!タイトな時間で諸々準備を終えて予定通り18時開場。お客様をお迎えする事が出来ました。いよいよ本番スタート! 今回の試写会では映画上映前のスペシャルイベントとして、長塚京三さんのトークショーを実施。既にご存知の通り、長塚さんは現在ザ・シネマで毎週土曜朝10時からクラシック映画の名作をおおくりする「赤坂シネマ座」で、名作の魅力を紹介するオリジナル解説番組「シネマの中へ 長塚京三 映画の話」のナビゲーター。言わば“ライブ版シネマの中へ”開催です!長塚さんも視聴者の方々に直接お話出来る事に大変喜ばれていて、いつもの番組の雰囲気よりフランクな感じで語り始めました。観客の皆様に純粋な気持ちで映画を楽しんで欲しいと、本作の内容については語らなかった長塚さん。ただし本作主演のジョージ・クルーニーについては「何をやってもブレない。自分自身を笑えるスマートさがある。」と述べ、「平均的なアメリカの明るさを持っているから、彼の映画ならどの作品でも付き合える」と絶賛されました!また、長塚さん自身の“映画体験”についても言及。「3歳ぐらいから父に連れられて映画館に通った。学生の時は家から弁当を持って映画館をハシゴしていました。学校にはほとんど行かず1年に400本近く観てました」という程の映画好きだったそう。 さらには、俳優である自分の師匠も、映画の中のポール・ニューマンやヘンリー・フォンダとのこと。そして一番好きな映画として、ポール・ニューマン主演の『暴力脱獄』(1967年)を上げられていました。映画『マイレージ、マイライフ』は、アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した『JUNO/ジュノ』(2007年)のジェイソン・ライトマン監督最新作。敏腕リストラ宣告人の人生の転機を描く人間ドラマで、ゴールデングローブ賞最優秀脚本賞など60冠以上を獲得した話題作。ただいま全国公開中です!これに合わせてザ・シネマでは、ジョージ・クルーニー主演のサスペンス・アクション大作『ピースメーカー』を4月10日(土)に放送!こちらも是非ご覧下さい!!■ TM & (c) 2009 DREAMWORKS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.