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PROGRAM/放送作品
キング・コング(2005)[特別版]
怪獣映画の古典的名作を、『ロード・オブ・ザ・リング』の監督とCGスタジオが現代の特撮技術でリメイク!
ピーター・ジャクソン監督が、『ロード・オブ・ザ・リング』でゴラムの動きを担当した動態模写の匠にコングを演じさせCGで描き上げる、究極の「キング・コング」。ナオミ・ワッツら人気キャストにも注目!
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COLUMN/コラム2023.05.12
Jホラー世界へ!リメイク作品『ザ・リング』が成功した理由
時は2001年。「ドリームワークス・ピクチャーズ」のプロデューサーで共同代表者のウォルター・F・パークスとローリー・マクドナルドに、部下の社員から電話が入った「あんなに怖い映画はこれまで観たことがない。すぐに見るべきだ」 部下の勢いに気圧され、パークスとマクドナルドは予定をキャンセル。“ビデオ”でその作品を観ると、言われた通りにふたりとも恐怖に震え、すっかり魅了されてしまった。そして、そのリメイク版を製作することを決めたという。「ドリームワークス」が、1998年の日本の大ヒットホラー『リング』のリメイク権を買ったことは、本邦では大きなニュースとして伝えられた。94年に設立されたこの映画会社が、世界一のヒットメーカーであるスティーヴン・スピルバーグ監督を擁し、当時は新たなる“ハリウッドメジャー”の座を窺う存在と言われていたことも、その背景にはあったと思われる。 しかし一方で、この“吉報”に懐疑的な向きも少なくなかった。ハリウッドのスタジオが他国のヒット作をリメイクする権利を押さえても、実際には映画化に動かずじまいとなるケースは、山のようにある。増してや日本映画をリメイクした成功例となると、『七人の侍』(54)を翻案した『荒野の七人』(60)など、ごく僅かしか聞かない。 ところが翌2002年の11月には、『リング』のリメイク作品である『ザ・リング』が、早くも日本で公開される運びとなった。2週ほど先に公開されたアメリカでの“大ヒット”という、センセーショナルな話題を伴って。 この成功の主因は、プロデューサーを務めたパークスとマクドナルドの製作姿勢にあったと思われる。彼らはオリジナル版初見の際に自らが感じた“恐怖”を至極大切にして、このリメイク版を作り上げたのだ。 ***** シアトルの新聞記者レイチェル(演:ナオミ・ワッツ)は、変死した姪のケイティの死因を探ることとなる。 ケイティは死の1週間前、山小屋に出掛けていた。そこで一緒だった仲間3人も、彼女と同様に命を落としていた事実が判明。健康な4人の若者が、同日の同時刻に謎の死を遂げていたのだ。 レイチェルはケイティの同級生から、あるビデオテープに関する、こんな噂を聞く。「そのビデオを観た者は、7日後に死ぬ」 レイチェルは4人が泊まった山小屋で、そのビデオテープらしきものを発見。再生すると、血の波紋、鏡に映る女、梯子、馬の死体、燃え上がる木が次々と映し出される。そして、最後に映った井戸がノイズで消えると、背後の電話が鳴り響いた。 受話器を取ると、不気味な女の声で、「7日後…」と告げられる。 死んだ4人の若者がそうであったように、その日からレイチェルをカメラで撮ると、顔が醜く歪んで写るようになる。彼女は別れた夫ノア(演:マーティン・ヘンダーソン)に相談。ノアは当初、彼女の言うことを信じなかったが、やはりビデオを見た自分にも、同じ現象が振りかかってきたため、協力して「呪いのビデオ」の正体を追い始める。 ビデオに映っていたものや人物の正体を探る中、更に恐ろしいことが起こる。レイチェルの息子エイダン(演:デイヴィッド・ドーフマン)までもが、ビデオを再生。「死の呪い」に罹ってしまったのだ。 果たしてレイチェルは謎を解き、自分と元夫、そして息子に迫りくる死を避けることができるのか? ***** 本作『ザ・リング』では、原作として2作品がクレジットされる。鈴木光司の「リング」と、中田秀夫の『リング』だ。前者は鈴木が著し、1991年に出版された小説。後者は中田監督による、その映画化作品を指す。 鈴木の原作小説では、高校生の姪とその同級生の死の謎を追っている内に、「呪いのビデオ」を見てしまう主人公は、雑誌記者の浅川という男性。そしてその協力者となるのは、浅川の高校の同級生で、大学講師の高山竜司。30代の男性が2人で、ビデオの謎を追っていく。 浅川には、妻と1歳6か月になる女児がいる。そしてこの2人が誤って「呪いのビデオ」を見てしまう。 そのため浅川は、自分のみならず、愛する家族を何とか救おうと必死になる。そしてある意味、人倫にもとる行為に走っていく…。 この辺り、スティーヴン・キングの「ペット・セマタリー」(1989年と2019年に映画化された『ペット・セメタリー』の原作)などからの影響も感じる。この作品を執筆中は“主夫”でもあったという鈴木光司は、意識的に“父性愛”の物語を紡いだのだ。 鈴木の「リング」は、まずは95年にTVドラマ化された。私は未見なので詳細には触れられないが、比較的原作に忠実に作られた作品だったと言われる。 そして98年、中田秀夫監督による映画化作品が公開。こちらは「呪いのビデオ」の設定などは生かしながら、かなりの改変を施している。 代表的な変更点を挙げる。まずはキャラクター。映画化作品では浅川を、TV局の女性ディレクターに変えた。そして高山は、その元夫という設定。この元夫婦の調査行の合間に、誤って「呪いのビデオ」を見てしまうのは、浅川が引き取って女手一つで育てている、小学生の一人息子・陽一である。 因みに高山は超能力の持ち主であり、息子である陽一も、その能力を引き継いでいる描写がある。 これらは、『リング』の脚本家である高橋洋が、監督と相談しながら行った変更。当初から95分という上映時間が課せられていたため、複雑な因果関係を整理。鈴木こだわりの“父性愛”を、観客にも伝わり易いであろう、“母性愛”へとシフトチェンジした。 そしてこの設定は、ヒロインの元夫が超能力の持ち主という部分はカットしながらも、そのままリメイク版『ザ・リング』へと引き継がれる。 『リング』と言えば、この作品の内容を詳しく知らない者でも、その名を知っているのが、“貞子”であろう。「呪いのビデオ」は、山村貞子という、念じるだけで他者を殺害できるほどの、強大な超能力の持ち主の“怨念”によって生まれた。その設定は、原作からそのまま、映画化作品に引き継がれたものである。 しかしながら、すでに死者である貞子が、生きている人間をいかにして殺害するのか?原作と映画では、大きく違っている。 その違いを表すのに、まずは原作から一部抜粋する。高山竜司が「呪いのビデオ」を見てちょうど1週間後に、死に至る局面だ。 *** 「ヤベエ、やって来やがった……」 …渾然一体となった音の群れが、ふわふわと人魂のように揺れ出したのだ。現実感が遠のいていく……、 胸は早鐘を打った。何者かの手が胸の中にまで伸び、ぎゅっと心臓を摑まれたような気分であった。背骨がキリキリと痛んだ。首筋に冷たい感触があり、竜司は驚いて椅子から立ち上がりかけたが、胸から背中にかけての激しい痛みに襲われていて床に倒れ込んだ。 *** そして高山は鏡の中に、~頬は黄ばみ、干乾びてゴウゴウとひび割れ、次々と抜け落ちる毛髪の隙間には褐色のかさぶたが散在している~百年先の自分の姿を見て、遂には絶命してしまう。即ち高山は、「貞子の呪い」という概念に襲われて、命を落とす。 これをこのまま、映像にする手もあっただろうか?しかし映画化作品では、「貞子の呪い」を、極めて具体的な形を持ったものへと改変した。高橋洋による、シナリオの抜粋をする。 *** TVにあのビデオが、最後の井戸の場面が映っていた。激しく画面が乱れ、幾度も砂嵐が走りながら、井戸からズルズルはい上がる女の姿が見える。シャーッ……と音が高まってゆく。女はゆっくりとこちらに近づいて来る。 恐怖にすくみながらも、電話に向かおうとすると、女はブラウン管からズルズルとこちらの世界にはみ出してきた。まるであの世に通じる窓を乗り越えるように。 廊下へ逃れた竜司に女が迫って来る。首を捩れたように垂らし、時折ひきつるように振りながら、ズルリズルリと足を引きずる……、人間の動きではない。そして間近に迫り、顔を上げたのだ。髪の間から何も見ていない狂人のような眼が覗いた。竜司は断末魔の声と共に白い光に呑まれた。 *** 貞子ははっきり、“幽霊”として現れる。そして高山に襲いかかり、呪い殺してしまうのである。 リメイク版の『ザ・リング』では、貞子に当たるのは、サマラという少女。孤児であったサマラは引き取られた先で、義父母ら周囲に災厄をもたらす存在として描かれる。生前の貞子のような、超能力者ではない。印象としては、『オーメン』(76)に登場する“悪魔の子”ダミアンのような、邪悪な存在といった体だ。 そんなサマラだが、クライマックスでは、ほぼオリジナルと同じ形で、幽霊として実体化。TVのブラウン管から這いずりだして、高山ならぬノアの命を奪ってしまうのである。『ザ・リング』の監督を務めたゴア・ヴァービンスキーは、リメイクに当たって最も気を付けたのは、「…オリジナルを台無しにしないこと…」だったと語っている。そして、「…インパクトの強いところは、全部残すようにした…」という。 4,800万ドルの製作費で作られた『ザ・リング』は、全米で1億3,000万㌦、全世界では2億5,000万㌦近い興行収入を上げる大ヒット。いわゆる“Jホラー”が、世界に通用する証左となった。 余談であるが、「ドリームワークス」が、『リング』のリメイク権を買って、日本側に払ったのは、100万㌦。『リング』の製作費は1億5,000万円だったので、これだけでほぼペイしてしまう計算となる。 とはいえ、『ザ・リング』の売り上げを考えると、100万㌦などは微々たるもの。ところが契約の関係で、いくらアメリカで大当たりしても、日本側のプロデューサーや監督、脚本家には、ほとんど実入りはなかったという。 オリジナルのプロデューサーの1人、一瀬隆重はそれを教訓に、やはり“Jホラー”の『呪怨』をハリウッドリメイクする際には、成功報酬型の契約を結び、自らも参画。見事に大ヒットとなったこのリメイク作品の、純利益の3分の1という報酬を手にすることに、成功した。 さて日本の映画界では、『リング』第1作から四半世紀経っても、手を変え品を変え、未だにシリーズ…というか、貞子が登場するホラー作品が作り続けられている。それはもはや、鈴木光司の原作からは遠く離れたものとなっている。 ハリウッドでも、『ザ・リング』はシリーズ化。日本版とは違った独自の展開を見せる、『ザ・リング2』(2005)『ザ・リング リバース』(17)が製作されている。 ウィルスは形を変えて、生き残りを図るという。映画界に於ける“リング・ウィルス”も、また然りである。■ 『ザ・リング』TM & © 2002 DREAMWORKS LLC.
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PROGRAM/放送作品
ザ・リング2 完全版
海を越えた“呪いのビデオ”の恐怖が再び…『リング』の中田秀夫監督が贈るハリウッド・リメイク版の続編
大ヒットJホラー『リング』の中田秀夫監督が、同作のリメイク版の続編でメガホンを握ってハリウッドデビュー。前作から半年後を舞台にした完全オリジナルストーリーで、親子愛を軸に新たな恐怖を描き出す。
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COLUMN/コラム2016.03.20
男たちのシネマ愛⑤愛すべき、極私的偏愛映画たち(5)
飯森:次にお話したいのがオーストラリア映画の「ラスト・ウェディング」(注62)。これがですね、断言しましょう、映画でメシ喰ってる僕にとってこれが生涯ベストの映画です!そこに迷いはありません。ただ、他人に薦めづらい映画でもあるんです。どういうことかというと、例えるならば美術館で最高に感動できる絵画に出会ってしまったような感じなんです。絵画の感動を他人に伝えるのって映画を薦めるより難しいじゃないですか。100%印象だけの問題で、理屈で説明できないから。とはいえ、僕の人生にとっては決定的に重要な意味を持つ映画なんです。例えば、いま僕は海の目の前に住んでいます。常に海を感じて生きていたいと考えている人間なんですが、それは完全にこの映画の影響です。 なかざわ:確かに舞台となる島は美しいですよね。 飯森:でも美しい島や海を舞台にした映画なんて他にも沢山あるじゃないですか。なぜ他の映画じゃなくて、この映画にそこまでライフスタイルを決められるほどの影響を受けたのかは、自分でもよく分からないんです。映画のストーリー自体もシンプルすぎるぐらいですし。 なかざわ:なんというか、「ラスト・ウェディング」というタイトルの映画なら十中八九こういう話になるだろうなっていう映画ですよね。 飯森:十中八九これだけはやめとこうという話でもある(笑)。いくらなんでもベタすぎるだろう、恥ずかしいと。韓流ドラマのベタさすら上回っているかもしれない。これはネタバレでもなんでもないので言っちゃいますけど、主人公のカップルがとあるリゾート地みたいな島で結婚式を挙げようとする。すぐにでも挙げなきゃって感じなんですが、というのも、このカップルの女性が不治の病で余命幾ばくもないんですよね。ベタでしょう(笑)?で、旦那は最高のウエディングにしようと奔走し、友人のカップル2組がそれを応援しようと力を貸す。その中に無名時代のナオミ・ワッツ(注63)がいるんですけど、そんな感じでみんなが頑張って準備をして、最高に素敵な結婚式を挙げて、最後にヒロインは安らかに死ぬわけです。もう、おまえ本気か?ってくらいベっタベタでしょ(笑)? なかざわ:見ている方が照れくさくなるくらいですよね。 飯森:これは、生涯ベストなのになかなか魅力を説明しづらい作品なので、ちょっと趣向を変えてお話させていただきたいと思います。今回の企画とは全く関係のない、うちで放送するわけでもない作品なんですが、昔「デッドリー・フレンド」(注64)という映画がありましたよね。 なかざわ:ウェス・クレイヴン(注65)監督の作品ですね。 飯森:ストーリーを言うと、高校生で「キテレツ大百科」みたいな発明少年が、引っ越した先の隣家に住んでいる感じの良いみよちゃん的美少女と仲良くなって惚れてしまう。ところが、その美少女はアル中のオヤジからDVを受けていて、そのせいで死んじゃうんですね。で、キテレツは可愛くて親切なみよちゃんの死を悲しんで、よし!僕の発明で甦らせてあげよう!ってことで、彼女の死体を病院の霊安室から盗んできて脳にICチップを埋め込むんです。すると、彼女はロボットダンスみたいな分かりやすい動きをしながら生き返っちゃう(笑)。生き返ったと言うより、喋れませんし明瞭な意思もなさそうだから、ゾンビ兼ロボットです。キテレツは彼女を自宅の屋根裏に匿ってあげる。男子高校生ならよからぬことを考えそうなものですけど、彼はあんまりにも童貞すぎるために「これからは僕がうちの屋根裏で守って幸せにしてあげるよ」って、あくまで純情なんです。ただし、あまり後先のことまでは考えておりません。 なかざわ:そのうち腐ってくるでしょうしね。死体なんだから(笑)。 飯森:もって数日(笑)。ところがですよ、このロボっ娘が暴走し始めちゃう。喋れはしないのだけど、自分が虐待されていたという記憶の断片は残っていて、加害者である実父に復讐するんです。脳にICチップを埋め込まれただけなのに何故か馬鹿力にまでなっちゃって、オヤジを簡単にブチ殺しちゃう。ついでに、近所のガミガミおばさんの頭もグシャリと潰しちゃう。こりゃまずいことになったと慌てたキテレツは、彼女のICチップを取り除こうとするんだけれど、ロボっ娘は意識はないのに、これも記憶の断片が残っているからなのか、キテレツのことを慕っているという感情の名残りをロボット・ジェスチャーで表すんですよ。見ていて「不憫よのう…」って感じなんです。そんな不憫な不憫なロボっ娘を強制終了させねばならないのか!?そして、終了するにしても相手が怪力過ぎてなかなか止められない…というお話で、要は救いがたいバカ映画ですよ。フォローのしようがない。しかし、中学の頃にこれを木曜洋画劇場で見た僕が、どんだけ泣いたか(笑)!あなたのハートには何が残りましたかって、結局これが残りました。僕も中1で女子になんか興味もなくて童貞すぎて純情で、いきなりこれでしたから、この、薄幸・夭折の美少女を生き返らせて“完全なる飼育”状態で所有して守る、というプロットに激しく焦がれましてね。中学校から帰ったら毎日3倍録画したVHSで見て、もう泣けて泣けて、どれだけ泣いたか分からない。 なかざわ:でも、あの映画を思春期とかに見て泣けたっていう人、意外と多いですよ。 飯森:エエエっ、そうなんですか!? 僕だけかと思ってました。そんな大した映画だったのかよ(笑)。いま見たら一滴だって泣けなんかしませんよ。ただあれこそが、他者にちゃんと向き合える精神年齢にまだ達していない中学生には、理想の男女関係のあり方だった。女子は女子で交友関係があって社会と繋がっている。だから、俺のことをほっといて友達とどっかに遊びに行っちゃう自由、さらには、他の男子に関心を持つ自由、俺を振る自由、つまり彼女には彼女の自由意志があるんだ。いくら付き合ってても2人の人生には重なる部分もあるけど重ならない部分もある。どこで何しているか全部は分からないし、何を考えているかも全ては分からない。自分とは別個の人格を持った人間なんだ、という大人の現実から全力で目をそらしている映画なんですよ。中1でその残酷な真理は理解できませんから逆に良かったんですね。ロボっ娘は喋りもしないし意志も無い。そんなもんはいらん!と。童貞は異性が怖いですから、その状態なら安心だと。一方的に従順で自我の無い女子を自分の庇護下に置いて世間との接触を一切絶たせ、それに対して飽くなき愛情を惜しげなく注ぐ、という、少年の幼稚な夢を描いている映画です。それと、僕はロボっ娘役のクリスティ・スワンソンにも当時憧れまして、人生で最初に夢中になった異性のスターだったんですけど、この歳になって見ると、可愛いは可愛いんですが、さして特徴のない無個性なブロンド美女に過ぎないんです。ただ、中学ぐらいの頃ってまだ馬鹿だから、面喰いで顔が全てじゃないですか。顔が正攻法で一番良い異性にクラスの全員が憧れているという状態。人生経験や教養が無さすぎて自分流の美学が無いから、そこしか異性の評価基準が無い。そういう年頃の時には魅力的に映った女優さんですけど、今だと別にそこも引きにならない。今見ると率直に言って大した映画じゃありません。というか、いかがなものかな映画なんです。でもね、僕みたいな商売をしていると、映画に優劣って付けたくないんですよ。もしも今の大人になった僕が、こんなしょうもない幼稚な映画は放送しないよと言って却下したとして、13歳の僕みたいな視聴者がいたらどうするんだと。だから、極力いろいろな映画を優劣つけないでお届けする、映画に貴賎なし、ってのが正しい姿勢なんだろうと思って仕事をしています。「ラスト・ウェディング」もそうでね、僕にとっては生涯ベストですけれど、恐らく少数派だろうと思いますよ。もし優劣をつけるような編成マンがいたら、こんなベタな映画はないだろうと言って放送しないかもしれない。でも、そういうことはやっちゃダメ!その映画がクソなのか生涯ベストなのかは、あくまでも見る人次第ですから。 なかざわ:それは仰るとおりだと思いますよ。 飯森:少なくともザ・シネマではそうです。問題発言になるかもしれませんけど、全部の放送作品を「これは良い映画だから見てくださいね」という推薦のスタンスでやってはいない。一本でも多くの映画をひたすら放送だけはしますから、それが良い映画なのか悪い映画なのかは、あなたが決めてくださいと。うちのチャンネルのコピーをこの春から変えるんです。「生涯ベストの映画が、今日見つかる。」というものに。見つかるか見つからないかはあなた次第。そういうものだと思っています。 なかざわ:確かに、例えば「風と共に去りぬ」は映画史上永遠不滅の傑作だと言われていますけれど、みんながみんな感動するわけじゃないですからね。スカーレット・オハラ(注66)の、あの自己中なキャラがどうしても受け付けないっていう人もいるだろうし。感じ方は人それぞれです。 飯森:僕は今の仕事に就く前に雑誌の編集者だったんですけれど、ネガティブなことは書くなと編集長から徹底的に教育されましてね。SNS全盛の今、いわゆるオールドメディアは良いことしか言わないじゃないか、信用ならん、と批判されるようになって、確かにそれは一理あるかもしれませんが、僕自身は仮にネガティブな感想を個人的には持ったとしても、ネガティブな風には映画を紹介したくないんですよ。もし今の僕が「デッドリー・フレンド」についてネガティブな事を書いて、それを読んで見ないことにした人がいたとします。あるいは、僕の価値判断で放送しないことにする。しかし、もしかすると視聴者の中には「デッドリー・フレンド」を見たら号泣する童貞の中学生がいるかもしれないんです。そのチャンスを僕が潰してしまうことになる。あるいは逆に、僕以外の編成マンが「ラスト・ウェディング」を「何この恥ずかしい映画」と言って放送しなかったとして、客に僕みたいな人がいたらどう責任とる気だと。そんな恐れ多い、傲慢な話はない。お前は何様だと。 なかざわ:ただ、自分の率直な考えや意見を批評で述べることで、同じような感性を持つ人にとっての参考や指針にはなりますよね。 飯森:批評は別ですよ。ケチョンケチョンの酷評ってそれ自体が痛快で面白いコンテンツですしね。でも、それは評論家の仕事です。映画チャンネルや雑誌の映画紹介ページのような、出会うチャンスを提供するべきメディアが、これは良い、これはダメって取捨選択するのは望ましくないと思うんです。ということで、なんだか、放送する「ラスト・ウェディング」のことはほとんど語らずに、一切放送しない無関係な映画の話で話し込んじゃいましたけど、「ラスト・ウェディング」も、僕と全く同じような感性の人が見ればおそらく心を動かされると思うんです。しかも今回、過去に出ていたVHSよりも圧倒的に良い画質で見ることができるなんて!自分のためにやっているとしか思えない! なかざわ:今回はそういう趣旨の企画ですからね(笑)。 飯森:オーストラリアの権利元さんが自腹でHDテレシネをしてくださったんですよ。これは本当に嬉しかった!絵が綺麗という一点で生涯ベストにまでして、この映画の風景を日常において再現しようと努力しているほど、絵画的な意味で憧れている映画ですからね。そんな作品が、僕が個人的に好きってことがキッカケで、初めてHDテープが作られることになった。これからは世界中でソフト化されたりテレビ放送される時にこのニューマスターのHDテープが貸し出され、世界の人々が綺麗な画質で見ることになるんです。ただし、万人受けするかどうかは分かりません。かなり怪しい(笑)。 注62:1997年制作、オーストラリア映画。グレーム・ラティガン監督、ジャック・トンプソン主演。注63:1968年生まれ、イギリスの女優。少女時代に家族でオーストラリアへ移住。代表作は「マルホランド・ドライブ」(’01)、「キング・コング」(’05)、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」など。注64:1986年制作、アメリカ映画。ウェス・クレイヴン監督、マシュー・ラボート主演。注65:1939年生まれ、アメリカの映画監督。代表作は「エルム街の悪夢」(’84)、「スクリーム」(’96)など。2015年死去。注66:「風と共に去りぬ」の主人公。意志が強くて気位が高いため、自己中心的な言動を取りがちなお嬢様。 次ページ >> ビザと美徳 『愛すれど心さびしく』TM & © Warner Bros. Entertainment Inc. 『マジック・クリスチャン』COPYRIGHT © 2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED. 『ラスト・ウェディング』©2016 by Silver Turtle Films. All rights reserved. 『ビザと美徳』©1997 Cedar Grove Productions. 『暗い日曜日』LICENSED BY Global Screen GmbH 2016, ALL RIGHTS RESERVED
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PROGRAM/放送作品
ザ・リング
[PG-12]“呪いのビデオ”の恐怖が海を渡る…傑作Jホラー『リング』をハリウッド・リメイク
1998年の大ヒットJホラー『リング』をハリウッドでリメイク。オリジナル版の設定と展開だけでなく、日本的な湿った恐怖感も忠実に再現されている。呪いのビデオの謎の解明に挑む女性をナオミ・ワッツが好演。
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PROGRAM/放送作品
(吹)ザ・リング2 完全版
海を越えた“呪いのビデオ”の恐怖が再び…『リング』の中田秀夫監督が贈るハリウッド・リメイク版の続編
大ヒットJホラー『リング』の中田秀夫監督が、同作のリメイク版の続編でメガホンを握ってハリウッドデビュー。前作から半年後を舞台にした完全オリジナルストーリーで、親子愛を軸に新たな恐怖を描き出す。
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PROGRAM/放送作品
(吹)ザ・リング
[PG-12]“呪いのビデオ”の恐怖が海を渡る…傑作Jホラー『リング』をハリウッド・リメイク
1998年の大ヒットJホラー『リング』をハリウッドでリメイク。オリジナル版の設定と展開だけでなく、日本的な湿った恐怖感も忠実に再現されている。呪いのビデオの謎の解明に挑む女性をナオミ・ワッツが好演。
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PROGRAM/放送作品
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
[PG12]2014年度アカデミー作品賞受賞。再起にかける落ち目俳優の奮闘を、驚異の長回し撮影で描く
かつてバットマン風アメコミヒーロー映画で人気を博し今は落ち目の俳優を、マイケル・キートンが自虐的に演じ、その再起を目指す悪戦苦闘をブラックに描く。撮影監督ルベツキによる驚異の長回し撮影も刮目に値する。
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PROGRAM/放送作品
インポッシブル
大津波によって引き裂かれた家族──再会をあきらめない親子の絆と愛情を感動的に描いた実話ドラマ
2004年12月26日に発生したスマトラ島沖地震による津波で被災したイギリス人一家の実話を映画化。壮絶な津波の衝撃だけでなく、被災した親子の絆が胸を打つ。トム・ホランドが主人公の息子役で映画デビュー。
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PROGRAM/放送作品
キング・コング【特別版】(2005)
怪獣映画の古典的名作を、『ロード・オブ・ザ・リング』の監督とCGスタジオが現代の特撮技術でリメイク!
ピーター・ジャクソン監督が、『ロード・オブ・ザ・リング』でゴラムの動きを担当した動態模写の匠にコングを演じさせCGで描き上げる、究極の「キング・コング」。ナオミ・ワッツら人気キャストにも注目!