写真/studio louise
今回もまた、だいぶ簡単な手抜き料理で、毎度失礼します。グリッツです。
これ、法廷コメディ映画『いとこのビニー』に、ものすごく印象的に登場する食い物でして、これも最初に映画を見た直後、日本では食べれない珍しいものなので興味持ち、例によってすぐに作って試しに食べてみたのでした。
感動するほと美味いというたぐいの、華のある食べ物では決してないのですが、失敗のしようがない簡単さと、主材料であるコーン粉というのが賞味期限が存在しない(近頃はやりのWikiコピペ引用「アメリカ合衆国で一般的な、鉄で挽いた黄色いコーンミールは、殻や胚芽がほぼ完全に取り除かれている。冷たく乾燥が保たれた場所では、ほぼ無期限に貯蔵できる。」)ということで、作り方を覚えておけば超役立ちます。食パンを買い忘れたとか、気づいたらパンにカビてて食えないじゃん!という場合、朝食のピンチヒッターとしてうってつけ。最悪、コーン粉とチキンスープの素とバターだけあれば作れます。普通バターは冷蔵庫にあるでしょうから、コーン粉とチキンスープの素だけ常備しとけばいいのです。
と、食べ物のことに深入りする前に、まずはいつも通り『いとこのビニー』のあらすじから。これは自分で放送作品情報も書いたんで、コピペで済ませますね。どうも他人に書いてもらったのだとイチから自分流に書き直したくなっちゃうんだが、これならコピペで済むわ。
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法廷経験ゼロのペーパー弁護士が保守的ド田舎でとんだ初陣!マリサ・トメイがいきなりアカデミー助演女優賞
[解説]
南部の田舎に放り込まれた都会のアホ弁護士役ジョー・ペシのトボけた妙味と、ヤンキー気質全開のその彼女役マリサ・トメイのハスッパな魅力で、喜劇監督ジョナサン・リンのキャリア中でもひときわ輝く法廷コメディ。
[ストーリー]
南部旅行中の大学生2人組が強盗殺人で逮捕されるが、実は冤罪。だが状況証拠はあまりに不利。うち1人のいとこのビニーがNYで弁護士をしているというので助けを求めると、ボディコンを着た安い彼女を伴い駆けつけてくれた。任せてみると、どうも変だ。実はこれが初法廷!しかも都会育ちのため南部の田舎にまるで馴染めず、法廷では保守的な判事を毎回怒らせ毎回法廷侮辱罪で自分も拘留される始末。本当に任せて大丈夫なのか!?
とにかく、マリサ・トメイの萌えヤンキー女っぷりと、ジョー・ペシのトボけまくりが、それぞれ立ちまくっていて最高に良く、その2人がバカっプルということで文字通りマリアージュ効果を生んでいる傑作コメディなのです。ドラマ6:コメディ4ぐらいのサジ加減になっておりますので、ハイテンションなバカ騒ぎがツルベ打ちで突発する純度100%のアメリカン・コメディはどうも苦手で…ついてくの大変で…という人でも安心な作品です(俺は好物だが)。
ジョー・ぺシの手のやり場にご注目!あらやだ素敵なカップル♥
で、南部にやって来たNYのこのバカっプル、朝食を食いに田舎のダイナーに入る展開になります。そこのメニューには「ブレックファスト」「ランチ」「ディナー」と3種類だけしか載っておらず、ブレックファストは$1.99と激安(他も$5でお釣りがくる値段)。選択の余地なくそれをオーダーしてみると、まずコックの黒人のおっさんは、ラードがバケツいっぱい詰まった「ラードばけつ」からオタマでラードを山盛りすくい取り、雑に鉄板に叩きつけます。それを見たビニーは思わず顔をしかめて「コレステロールは気にしないのかい?」と苦言を呈しますが、コックはおかまいなしに料理し続け、BIGプレートによそりつけます。
くだんの「ラードばけつ」がコチラ。こういうのですら、カッコいいんだよな、アメリカン・デザインって。
朝からボリュームたっぷり、かりかりベーコン2〜3枚+サニーサイドアップ2卵分+、そして、問題のグリッツが大盛りによそってあります。上にバターを頂いている。
いや、美味そうじゃん!!!!!! こんな朝食むしろ最高じゃんよ!? しかしビニーは「こいつは何だ!?」と怪訝そうに尋ねる。マリサ・トメイも気味悪そうに眺めます。
一体全体なにが不満なんだ!まぁジョー・ペシにしてもマリサ・トメイにしてもイタリア系ニューヨーカー役だから、毎朝良いコラッツィオーネ食ってんのかもしれないけどさあ。
で、「こいつは何だ!?」と難詰されたコックのおっさん、「グリッツさ」と答える。「聞いたことあるけど見たのは初めてだよ」とビニー。そして、マリサ・トメイに食ってみろと勧め、「あんたが先に食べてよ!」とお互い押し付け合う。
ビニー、いよいよ意を決して食べる前に、なおも「何なんだい?」と重ねて質問。「コーンさ、ひきわりトウモロコシ」との確答を得ても、「ひきわり…」とつぶやき、不審げにニオイを嗅ぎ回したりして、さらに「料理法は?」と往生際わるく質問。「15分くらい煮てからバターを混ぜるんだ」と、コックは頭を振り振り呆れたよというジェスチャーで答えます。そこで再度マリサ・トメイから急かさて、いよいよ年貢の納め時、フォークの先っちょで小指の先ほどの量すくってさも不味そうに食べるビニーであります。
ほんと、何が不満なんだよお前ら!大の大人が好き嫌いはみっともないと思います。えー、普通に全然美味いです。確かに朝食にぴったり。これとベーコンとサニーサイドアップがあれば、まさに完璧な朝食ですわ!この映画的には、ビニーのアウェー感、南部の異文化圏ムードを出したかったから、こんな描き方にした、ということなのでしょうが、グリッツに罪はありません。とんだ迷惑です。
このグリッツ、様々なバリエーションが存在し、アレンジがきく食べ物です。まず、この映画の中では「お湯で煮る」と説明されていますが、それだと味気ないのでチキンスープストックで煮る方法もあるようです。チキンスープストックはアメリカ料理で多用されますが、日本ではチキンスープの素(チキンコンソメ)からチキンスープを作ることで、簡単に代用できます。
ワタクシは、生クリームと牛乳で煮てミルキーに仕上げるバージョンが好き。あとスイートコーンも1缶入れます。となると、もちろん子供も好物です。
それと、「ひきわりコーン」、普通は日本語だとひきわりとは言わずに「コーン粉」と言い、カタカナで「コーンミール(中挽き)」とか「コーングリッツ(粗挽き)」とも呼びますが、これには、黄色と白があります。この映画の中では白いコーン粉を使っているのでグリッツも白くて、見た目はどっちかって言うとマッシュポテトのような感じに見えますが、ワタクシはたまたま家にあったのがイエローコーンミールだったので、黄色で作りました。
では、以下、作り方にいってみましょう。
【グリッツの材料(2人分)】
・コーン粉(中挽きのコーンミールか粗挽きのコーングリッツ)×1カップ
・生クリーム×1
・バター×大さじ1
・スイートコーン×お好みの分量
※以下は写真ないけど
・牛乳(分量は様子を見ながら。でも、絶対要る!)
・塩×適当に
【グリッツの作り方】
① 生クリーム全量投入。
② コーン粉全量投入。
③ バター大さじ1投入。
④ スイートコーン×お好みの分量投入。
⑤ 塩で味を整え、お粥状のユルさになるくらい、牛乳を様子を見つつ投入。あとは15〜20分煮込むだけ。
これが料理と言えるのか!? マジですいません、簡単すぎて。
ただ、以下の点だけは要注意です。なので、けっこう鍋から目が離せません。
【注意事項】煮ているうちに水分をコーン粉が吸って膨らみ、お粥状だったものがどんどんとボテボテした半固形状に変化していきます。滑らかさをキープしたいなら随時牛乳を追加投入して液状を維持してください。ただし、個々人のお好み次第でボテボテ固形状のグリッツを好む、その方がお粥みたいなんじゃなくて食事としてちゃんとしてて良い、という人もアメリカでもいるそうなので、お粥状にするかスポンジケーキ状にするかは、牛乳で調節してお好みで調整してください。
こちらは牛乳の量を減らしボテボテ状に仕上げた場合。これ+サニーサイドアップでも付ければ、朝食としては過不足なく十分でしょ?そんなことより、このフォーク&ナイフを見てくれ。DDRこと旧ドイツ民主共和国製で、すぐに曲がり熱伝導が良すぎて困るチープな作り。小学校時代の先割れスプーンのようにアルミの不快な味を感じる粗末なシロモノだが、カトラリーの中で一番気に入ってる自慢の品だ。旧東側の風情がたまらん。
【実食】
美味い、とは思います。が、やっぱベーコンとかは欲しいですね。やっぱり食パンの代わりにはなるけど、エッグとか何だとかの+αは絶対要りますわな、これには。でも、月に何度か、週に一度ぐらいか、トーストではなくこんなグリッツで朝食を、なんて、ちょっと憧れのレッドネックに近づけたみたいで、良くないですか?
最後に。この映画、これ以外にも、食い物のシーンがけっこう多くて、ジョー・ペシとマリサ・トメイのバカっプルが2人していろいろご当地B級グルメを食うのですが、その連れだった姿が微笑ましくて、美味そうで、良いムードなんですなぁ。ジョナサン・リン監督の感性ですかね。不味く撮る必要があったグリッツですら、美味そうに撮れちゃってますから、逆に問題なんですが。
他ですと、土けむり舞う街道沿いのBBQ屋で、茹でコーンとベイクドビーンズ?BBQソースにスペアリブ?のランチ食ってたりね。ドリンクはもちろん赤Cokeで決まり。Cokeって、子供がおやつ食う時に飲むジュースみたいなイメージありますが、南部の料理とはめっちゃ合いますから。ほら、マックとだって相性いいじゃないですか。南部料理とはもっと合いますよ、そのために発明された飲み物なんで。
この中古タイヤ屋の隣のボロ小屋がBBQ屋。店先にオープンテーブルがあり、そこでスペアリブ?的なものを食ってて、これまた美味そう。
それともう一箇所、終盤の、バカっプルがケンカになっちゃう、クライマックス直前の超重要シーンの舞台もまたダイナーなんですが、ここではジョー・ペシが、おそらくプルドポーク・サンドイッチとコールスローとコーヒーでランチを食ってます。プルドポーク!これも、日本だとBubby'sとか行かないと滅多に食えませんが、美味いんですよねこれが!ワタクシも最低月一でBubby'sアークカラヤン広場店で食う習慣があります。おっ、そろそろ桜だな。春遠からじ。
とにかく、大傑作コメディにして、マリサ・トメイの安いヤンキー女のガラッパチ度50:けな気さ50の絶妙なキュートさ&悪趣味ファッションセンスにメロメロに萌えたおされ、なおかつ食い道楽な観点からも眼福の、大きく振りかぶって全力で推薦したいような映画です。ウチの今後の放送回でぜひご視聴ください。で、簡単なのでグリッツも作ってみてください。ベーコン忘れずに!■
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