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COLUMN/コラム2025.12.25
騎士道精神の不都合な真実と家父長制の理不尽を描く巨匠リドリー・スコットの傑作歴史ドラマ『最後の決闘裁判』
中世ヨーロッパに存在した「決闘裁判」 今となっては俄かに信じ難い話かもしれないが、かつて中世のヨーロッパには「決闘裁判」なるものが存在した。証人や証拠が足りないために通常の裁判では解決困難な告訴事件の判定を、原告と被告による生死を賭けた決闘に委ねようというのだ。もちろん、統治者のお墨付きを得た正式な裁判である。その背景にあったのは、「真実を知っているのは神だけであり、神は必ずや正しい者に味方をする」というキリスト教の概念だ。なので、決闘の勝敗=神の審判。勝てば正義と栄誉と神の祝福を得られるが、しかし負けた方はたとえ一命を取りとめても死罪は免れない。冷静に考えれば、なんとも理不尽な裁判システムである。それゆえ、中世後期になるとカトリック教会やフランス国王、神聖ローマ皇帝が相次いで決闘裁判を否定し、14世紀以降はほとんど姿を消すことになる。 フランスで最後に決闘裁判が行われたのは1386年12月29日のこと。由緒正しい名家出身の騎士ジャン・ド・カルージュの妻マルグリットが、夫の旧友にして領主の覚えめでたい家臣ジャック・ル・グリに強姦されたと訴えたのである。予てよりル・グリの分不相応な出世に腹を立てていたカルージュは、なんとしてでも彼に罪を償わせようと告訴するも、ル・グリ本人は頑なに否定しており、なおかつ決定的な証拠も証人にも事欠く。そのうえ、領主のピエール伯爵がル・グリの味方に付いていた。通常の裁判では勝ち目がない。そこでカルージュはフランス国王シャルル6世に直訴し、当時すでに形骸化していた決闘裁判の実施を願い出たのだ。果たして、名家の貴婦人は本当に凌辱されたのか、それとも単なる虚偽なのか。そのセンセーショナルな事件の性質とも相まって、当時のフランスで一大スキャンダルになったという「最後の決闘裁判」を映画化した作品が、巨匠リドリー・スコットの手掛けた歴史ミステリー『最後の決闘裁判』(’21)である。 14世紀フランスで実際に起きたレイプ事件、その真相とは…? 決闘裁判へと至るまでのあらましを、ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)と妻マルグリット(ジュディ・カマー)、ジャック・ル・グリ(アダム・ドライヴァー)という当事者たち3人の、それぞれの視点から多角的に描いていく本作。つまり、バージョンは3つだが基本的な物語はひとつだ。まずは、その土台となる物語の流れを振り返ってみよう。 イングランドとの百年戦争(1337年~1453年)の真っ只中にあったフランス王国。リモージュの戦い(1370年)でお互いに助け合った貴族ジャン・ド・カルージュとジャック・ル・グリは、ル・グリがカルージュの息子の名付け親になるほど親しい間柄だった。祖父の代からベレン要塞の長官を務める由緒正しい名門一族出身のカルージュと、地位も名誉もない家柄ゆえ一度は聖職に就こうと考えたル・グリ。しかし恵まれた生い立ちのカルージュは妻子を病のため相次いで失い、そのうえ折からの凶作が原因で財政もひっ迫してしまう。反対に新たな領主・ピエール伯爵(ベン・アフレック)に気に入られたル・グリは宮廷内で順調に出世。このままでは自らの立場が危ういと考えたカルージュは、コタンタン半島への出征に参加して武勲を立て、若くて聡明で美しい貴族の娘マルグリットと再婚する。 マルグリットの父親ロベール・ド・ティボヴィル(ナサニエル・パーカー)は、かつてイングランド側についたことのある裏切り者。それゆえ、フランス国王に絶対的な忠誠を誓った誇り高き従騎士カルージュと娘の結婚は汚名を削ぐにうってつけだ。反対にカルージュにとっても、莫大な持参金が付いてくる裕福なマルグリットは理想の結婚相手だった。ところが、その持参金に含まれているはずだった土地の一部が、以前に借金のかたとしてピエール伯爵に取り上げられ、あろうことかル・グリに褒美として与えられていたことを知ったカルージュは激怒し、母親ニコル(ハリエット・ウォルター)の忠告にも耳を貸さず土地を取り戻すためピエール伯爵に対して訴訟を起こす。だが、相手はフランス国王とも親戚関係にある領主。当然ながらカルージュは敗訴してしまい、以前から折り合いの悪かったピエール伯爵との関係はさらに悪化、親友だったル・グリとも疎遠になってしまう。 1382年にカルージュの父親が亡くなると、ピエール伯爵の指名でル・グリがベレム長官に就任。憤慨したカルージュは再びピエール伯爵を訴えるも、またもや敗訴してしまった。1384年にカルージュの友人クレスパン(マートン・チョーカシュ)に息子が誕生。妻マルグリットを伴って祝宴に駆け付けたカルージュは、そこで再会したル・グリと友情を確かめ合ったことで両者の緊張関係は解消。さらに、彼はスコットランド遠征でナイトの称号を授かり、マルグリットと共に母親ニコルが暮らすカポメスニルの城を訪れる。 それは1386年1月18日。カルージュが遠征の給金を受け取るためパリへ向かい、義母ニコルも所用のため召使たちを連れて外出、マルグリットがひとりで留守番をしていたところへ、従僕ルヴェルを伴ったル・グリがカポメスニルの城へやって来る。クレスパンの祝宴で初めて会って以来、マルグリットに横恋慕していたル・グリは、カルージュの留守を狙って彼女に会おうと考えたのである。知り合いゆえル・グリを城の中へ入れたマルグリット。そんな彼女をル・グリは無理やり強姦する。当時の貴族社会では名誉と面子が何よりも重要。女性が性暴力被害に遭っても口をつぐむのが常だったが、しかし泣き寝入りを拒んだマルグリットは帰宅した夫に事実を告白。だが、十分な証拠もなければ有力な証人もいないことから、カルージュは決闘裁判を求めて動き始める…。 3つの異なる視点から浮かび上がる男たちのエゴと踏みにじられる女性の尊厳 以上が、決闘裁判へと至る客観的な流れだ。第1章ではジャン・ド・カルージュの目から見た真実、第2章ではジャック・ル・グリの目から見た真実、そして第3章ではマルグリットの目から見た真実が描かれ、いずれも事の次第は上記の通りで一緒なのだが、しかし視点が変わることで細部のニュアンスにも変化が生じ、結果として受ける印象が大きく異なってくる。例えば、カルージュ自身の目から見た本人は、真面目で高潔で曲がったことの嫌いな正義の人。若くて美しい妻マルグリットを心より愛し、なかなか後継ぎを授からないことを気に病む彼女を慰める寛大な夫でもある。反対にル・グリは出世のためなら恩を仇で返すような人物。これがそのル・グリの視点となると、カルージュは頑固で嫉妬深くて冗談の通じない愚か者の堅物。騎士たちの間でも人望のない嫌われ者であり、そんな彼を必死で擁護したにも関わらず逆恨みされるル・グリは遊び人だが友情に厚い好人物である。そう、お互いに相手に対する印象と自己認識がまるっきり正反対なのだ。 さらに、マルグリットの視点に移るとカルージュは愛妻家を自負する身勝手で自己中な偽善者、ル・グリは自身の優れた容姿を鼻にかけた軽薄なナルシストにしか過ぎない。それゆえ、マルグリットに横恋慕したル・グリは彼女もまた自分に気があると勝手に勘違いし、それこそ「嫌よ嫌よも好きのうち」のノリでマルグリットをレイプする。人妻の貴婦人ゆえ嫌がるフリをしただけ、本当は彼女だって俺を求めていたはずだと。そして、妻が凌辱されたことを知って激怒したカルージュは、貶められたマルグリットの名誉のためと称して決闘裁判へ挑むわけだが、しかし自分が負ければ妻であるマルグリットも偽証罪で生きたまま火あぶりの刑になることを彼女に隠していた。妻の不名誉を自身の名誉挽回に利用しようとしただけだったとも言えよう。結局のところ、どちらの男性もマルグリットを大切にしているつもりで全く大切にしていない。それどころか、彼らが決闘裁判に挑んだ最大の動機は自らの名誉や自尊心や虚栄心であり、被害者であるマルグリットの存在はすっかり置き去りにされてしまうのだ。 原作は2004年に出版されたカリフォルニア大学教授エリック・ジェイガーのノンフィクション本「決闘裁判 世界を変えた法廷スキャンダル」。600年を経た今もなお真相が不明瞭であり、歴史研究者の間でも諸説ある「最後の決闘」の顛末を、ジェイガーは10年間に渡って詳細にリサーチ。当時の記録文書や年代記ばかりか、財産証明書や建築設計図、古地図などに至るまで、文字通りありとあらゆる歴史的な記録をくまなく調査し、最も真実に近いと思われる仮説を導き出したという。これを読んで映画化しようと考えたのがマット・デイモン。本作は『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』以来となるマット・デイモン&ベン・アフレックの共同脚本作品であり、2人は製作総指揮と出演も兼ねている。 ◆『最後の決闘裁判』撮影中のリドリー・スコット(中央) デイモンが当初より監督に想定し、実際にオファーしたのがリドリー・スコット。なにしろ、デビュー作『デュエリスト/決闘者』(’77)からしてヨーロッパ貴族の決闘ものだったし、アカデミー賞作品賞に輝く『グラディエーター』(’00)や『キングダム・オブ・ヘブン』(’05)、『エクソダス:神と王』(’14)など歴史劇は彼が最も得意とするジャンルのひとつである。しかも、『エイリアン』(’79)や『G.I.ジェーン』(’97)など強い女性を描くことにも定評があり、なおかつ『テルマ&ルイーズ』(’91)を筆頭としてフェミニスト的な視点を持つ作品も少なくない。中世ヨーロッパの封建社会にあって、男性の所有物として扱われた女性の痛みや悲しみや怒りに寄り添った本作の監督として、確かに彼ほど適した人物は他にいないかもしれない。 さらに、デイモンとアフレックは3人目の脚本家として『ある女流作家の罪と罰』(’18)で全米脚本家組合賞などに輝いたニコール・ホロフセナーを起用。黒澤明監督の『羅生門』(’50)をヒントに三つの視点から脚本が構成され、3人の脚本家がそれぞれカルージュ、ル・グリ、マルグリットの視点を担当したのだそうだ。なるほど確かに、男性と女性では普段から見えている世界が違う。女性であるホロフセナーがマルグリットの目に映る真実を描くことは、そういう意味で極めて理に適っていると言えよう。物語の焦点となるのは「誰の言うことが信用されるのか」ということ。そこを軸にして権力と財力がものをいう封建社会の不公平な構造が詳らかにされ、真実よりも名誉や建前が尊重される騎士道精神の不都合な真実が暴かれ、女性の尊厳と人権がないがしろにされる家父長制の理不尽が糾弾される。そして、そうした悪しき伝統の痕跡が、少なからず現代社会にも残っていることに観客は気付かされるはずだ。■ 『最後の決闘裁判』(C) 2021 20th Century Studios. All rights reserved.
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COLUMN/コラム2025.12.22
“完全主義”映画作家が引き起こした、 ハリウッド史上最大級の災禍!? 『天国の門』
1981年10月31日…今はもう、44年前のこと。 東京・銀座に在った、シネラマ・スクリーンと最先端の音響システム、美麗な客席やロビーを誇る、1,000席超の映画館「テアトル東京」が、その歴史に幕を下ろした。その最後の夜、オールナイトのイベントで上映されたのが、マイケル・チミノ監督作品2本。『ディア・ハンター』(1978)、そして本作『天国の門』(80)だった。 巨艦劇場の最期に立ち会った私は、当時としては恐らく日本一の上映環境で、本作を鑑賞した。元は3時間半以上あった作品を、2時間半弱にまとめたダイジェスト感こそ否めなかったが、重厚且つ丹念に演出されたその画面は、このような巨大スクリーンで観ることこそふさわしいと感じた。 そして思った。なぜこの作品はアメリカで、「映画災害」とまで言われる惨禍を引き起こしたのだろうか?と。 ***** 1870年アメリカ東部、ハーバード大学の卒業式。ジム(演;クリス・クリストファーソン)と親友のビリー(演;ジョン・ハート)は、将来の希望に満ちて、この名門大学を巣立った。 20年後、ジムは西部ワイオミング州ジョンソン郡の保安官になっていた。当地には、東ヨーロッパから貧しい移民たちが押し寄せ、大牧場主たちとの間に、トラブルが発生していた。 富裕層である大牧場主たちは、WSGA=ワイオミング家畜飼育業者協会を結成。生活に困窮し、時には牛泥棒などを働く移民に対し、殺し屋のネイト(演;クリストファー・ウォーケン)を差し向けるなど、迫害を続けた。 そして遂には、WSGA会長のキャントンが、移民の入植者125名をリスト化。彼らを殺害する計画をぶち上げる。 WSGAの会員となっていたビリーは、無気力に酒浸りの日々を送っていたが、「殺害リスト」の件に驚愕。久々に再会したジムに、この恐るべき企てを告げる。 ジムの恋人は、売春宿を営むフランス人女性のエラ(演;イザベル・ユペール)。彼女はジムを愛すると同時に、殺し屋のネイトのことも、愛していた。 移民たちの憩いの場となる巨大なローラースケート・リンク「天国の門」で、ジムは秘かに入手した「殺害リスト」を読み上げる。移民たちの間に、動揺が広がる。 そして、キャントンに雇われた“殺し”の実行部隊が、ジョンソン郡へと迫る。 ジム、エラ、そして虐殺への加担を拒んだネイト。彼ら3人、そしてジョンソン郡の人々の運命は? ***** 1890年前後、ワイオミング州ジョンソン郡で実際に起こった事件をモチーフに、マイケル・チミノが脚本を書き始めたのは、1970年代のはじめ頃。当初のタイトルは事件の呼称そのままに、「Johnson County War=ジョンソン郡戦争」だった。 大牧場主たちが既得権を盾に、土地や家畜、水の権利などで、競合相手となった入植者たちを、迫害したという構図と、それが血で血を洗う抗争に発展したというのは、史実の通り。しかしその入植者たちが、主に東ヨーロッパからの移民たちだったというのは、事実ではない。 主要な登場人物たちは、「ジョンソン郡戦争」に関わった、実在の人物名を使用。しかしその出自や半生などは、チミノの創作であった。 チミノは、幾つかの映画会社に接触。映画化の道を模索したが、まだ新進の脚本家に過ぎなかった彼のプロジェクトに、GOサインを出す映画会社は、簡単には現れなかった。 潮目が変わったのは、チミノがクリント・イーストウッドによって、彼の主演作『サンダーボルト』(74)の監督に抜擢され、ヒットを飛ばした辺りから。続いての監督作で、ベトナム戦争に出征した、ロシア移民の若者たちの悲劇を描いた『ディア・ハンター』が評判になった頃に、ユナイテッド・アーティスツから、映画化のGOサインが出た。 1979年4月9日、「第51回アカデミー賞」で『ディア・ハンター』は、作品賞や監督賞をはじめ、最多5部門でオスカーに輝く。この作品の監督にしてプロデューサーの1人だったチミノには、2本のオスカー像が授与された。 まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったチミノは、その1週後=4月16日にモンタナ州で、本作『天国の門』の撮影を開始する。再びオスカーを狙って、その年の12月の公開を目指すことになっていた。 準備段階のチミノは、ロケ地を自分で探す。その考え方は、こうだ。撮影する場所を熟知して初めて、思い通りの演出ができる。撮影に臨む場所こそが、自分のするべきことを教えてくれるというのである。 そんなチミノは撮影前に、絵コンテなどを描くことはない。「…あらかじめ全部絵に描いていたら、わざわざ映画を撮る必要などない」のである。 チミノは、アメリカ中西部やカナダをロケハンし、今まで誰も見たことがない風景を、探し求めた。そして決まったメインの撮影地は、モンタナ州北西部のカリスベルにグレイシャー国立公園、アイダホ州ウォーレス。 物語的には、歴史的事実を大胆に改変したチミノだったが、19世紀末のアメリカ西部を描く上での“リアリズム”に関しては、こだわりにこだわった。当時西部で撮影された写真や新聞などを参照。セットの建造には、半年掛けたという。 カリスベルには、1890年当時のホテルや、ローラースケート場「天国の門」などの巨大セット。グレイシャー国立公園内には、架空の町スィートウォーター。ウォーレスには、1892年ワイオミング州キャスパの、6ブロックに及ぶメインストリートの街並みを、それぞれ造り上げた。 こだわりは、建物の外観や屋内に止まらない。主要登場人物のみならず、端役が羽織る衣裳の一着一着にまで及んだ。 撮影を担当したのは、ヴィルモス・ジグモンド。スティーヴン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』(76)でアカデミー賞を受賞した名カメラマンで、チミノとは、『ディア・ハンター』に続くコラボだった。ジグモンドは本作について、「それまで一度も経験してなかったようなやり方で映画の全体的雰囲気を作り出すというチャンスに恵まれました」と語っている。 この時代に生きていたら、どんなことを普通に目にしたか?当時はストーブから、本当に煙が出ていた。そこで屋内の撮影では、常にスモークを焚いて、時代色を出すことにした。 古い絵画や写真に見られるような、陽光が輝きながら、窓辺の煙を貫くというイメージ。それを現実のものとするためには、現場を煙で満たす必要がある。屋内の撮影では常に、煙を焚くスタッフが身を隠していた。 こうして作り上げた屋内シーンのトーンに、屋外も合わす必要がある。鮮明な画面になることを避けるために、砂ぼこりを立たせることにした。そのため、20万㌧に及ぶ、砂塵用の土が用意された。 準備万端整えての、クランクインの筈だった。しかしこのように“完全主義”の監督が、自分のイメージに固執しての撮影で、何が起こったか? 本番のテイクが、20回から30回に及ぶのは、当たり前。主演のクリストファーソンのあるシーンでは、50回以上もテイクを重ねた。そんなこんなで、撮影6日目にして、すでに5日分の遅れが生じたという。 街を行き交うのは、1,000人以上のエキストラに、80~90組の馬。そして、ごく僅かな出番しかないのに、19世紀末の蒸気機関車が、5つの州を跨いで運び込まれた。 1ヶ月半後。本来は撮影終了の筈だったが、撮れていたのは、予定の半分。そして製作費の1,160万㌦は、尽きてしまった。 ローラースケート場の「天国の門」には、お抱え楽団が居るという設定。そのために、何人かのプロミュージシャンが呼ばれた。彼らは3週間の拘束の筈だったが、撮影が遅れに遅れ、気付くと滞在期間は、半年間に及んだという。 クランクアップは、撮影開始から1年近く経った、80年の3月。この時点で当初の予算の3倍、3,600万㌦が費やされていた。 製作のユナイテッド・アーティスツは、撮影中何度も、チミノの首をすげ替えることを検討したという。しかしオスカー監督を手放すことには、躊躇せざるを得なかった。 ポスト・プロダクション。撮影された、220時間分のフィルムの編集作業。チミノは編集が終わるまで、スタジオの重役たちに、フィルムを見せることはなかった。 80年6月2日。チミノが開陳したのは、5時間25分バージョンだった。完成版は、「これより15分ほど長くなる予定」としたが、会社側がそれを拒絶した。 チミノは再編集に取り掛かり、3時間39分バージョンが完成。11月19日、ニューヨークでプレミア上映の日を迎えた。 高揚した気持ちを抑えながら、会場の最後部に立ったチミノは、上映開始から1時間経つと、「これは、まずい!」と感じ始めていた。 プレミアに立ち会った、主演のクリストファーソンのホテルに、翌朝チミノから電話が掛かってきた。不安を訴えるチミノに、「気にし過ぎだよ」と思ったクリストファーソンだったが、ルームサービスに持ってきてもらった新聞を開くと、監督の予感は当たっていた。 「ニューヨークタイムズ」に掲載されていたのは、映画評論家ヴィンセント・キャンビーによる、これ以上にない酷評。 「『天国の門』は、あまりにも完全な失敗作であるため、チミノ氏が『ディア・ハンター』の成功を再び得るために、魂を悪魔に売り渡したものと疑われる」「『ディア・ハンター』のはじめの結婚式シーンが長すぎると感じた方、『天国の門』となると、とてもあんなもんじゃないですゾ」 堰を切ったように、観客からも評論家からも総スカンを喰らった形となった。19日から予定されていた一般公開は、ニューヨーク以外の都市では、中止。そしてニューヨークでも、1週間でフィルムは引き上げられた。 それからチミノは週7日、1日18時間編集室に籠ることに。友人のフランシス・コッポラやスティーヴン・スピルバーグのアドバイスも貰いながら、1時間以上尺を詰めた、2時間29分バージョンが、翌81年の春に仕上がった。 それを4月に公開したものの、焼け石に水。2週間で打ち切りとなった。再編集まで含めて、最終的な製作費は4,400万㌦まで膨らんだが、上がった収益は、アメリカ全体で348万4,331㌦。製作費の10分の1にも達しなかった。 タイトルに引っ掛けて、“チミノズ・ゲート”などとも言われたこの災禍によって、ユナイテッド・アーティスツは経営危機に陥る。そして遂には買収され、60年以上に及ぶその歴史に、ピリオドを打つこととなる。 それにしても本作は、なぜここまで悪罵されるに至ったのだろうか?一つは、当時のハリウッドを席捲していた、コッポラやスピルバーグ、ジョージ・ルーカスらの贅沢な映画作り=ブロックバスターに疑問や不満を感じていた層にとって、巨額を投じたチミノ作品が、格好の餌食とされてしまったこと。 いま一つは、「大牧場経営者vs小牧場経営者」という「ジョンソン郡戦争」の史実を、チミノが、「移民vs大牧場主」という、“階級闘争”に改変したこと。貧しい移民が、支配階級の犠牲になっていく姿を描き、“アメリカン・ドリーム”の虚妄を暴いたことへの、反発があったと言われる。 いずれにしろ、前作でオスカーを得て、ハリウッドの新たな帝王の有力候補に躍り出ていたチミノの名声は、地に墜ちた。80年代前半、『天国の門』以前から彼が準備を進めていた幾つかの企画は、雲散霧消。捲土重来を期して新たに取り組んだ企画に関しても、『天国の門』の二の舞を避けたい各製作会社の判断で、製作中に解雇されるケースが相次いだ。 チミノに次いで、そのキャリアが大きく失速したのは、クリス・クリストファーソン。カントリー歌手として成功を収めた後、サム・ペキンパー作品やバーバラ・ストライサンドの相手役を務めた『スター誕生』(76)などで、A級作品の主役級となっていたのが、暗転した形となった。クリストファーソン自身は本作について、「私のベスト・アクティングだ」としているのだが。 彼以外の主要出演者、イザベル・ユペールは「私自身はいい映画だと感じた」、クリストファー・ウォーケンは「私にとって最も充実した仕事のひとつ」としているように、俳優陣から否定的な声が出なかったのは、チミノにとっては、僅かな救いであったろう。 チミノはその後、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(85)『シシリアン』(87)『逃亡者』(90)『心の指紋』(96)といった作品を監督するも、いずれも興行は不発。21世紀に入ってから手掛けたのは、「カンヌ国際映画祭」の60回記念として製作された、世界の著名監督34組によるオムニバス映画『それぞれのシネマ』(2007)の中の上映時間3分の一篇だけだった。 『天国の門』は2012年8月30日、「ヴェネツィア映画祭」で、3時間36分のデジタル修復版が上映された。このバージョンは、チミノの立会いの下で完成したものだが、会場には大喝采が沸き起こったという。続いて上映された「ニューヨーク映画祭」でも、観客は総立ち。チミノは万雷の拍手を以て、迎えられた。 32年前のニューヨークプレミアでは、「まずい!」と感じたチミノだったが、これらの機会に、当時とは真逆な観客の反応を目の辺りにして、ただ一言「不思議だ」と呟いたという。 『天国の門』虐殺の口火を切った「ニューヨークタイムズ」紙も、ヴィンセント・キャンビーの後継者である、映画評論家のマノーラ・ダーギスが、初公開以来の評価が「誤り」だったと明言。名誉回復が行われた。 日本初公開時=81年秋に、2時間29分版を「テアトル東京」の大スクリーンで鑑賞した私は、それから34年近く経った、2015年2月に、『天国の門』デジタル修復版の上映後トークに登壇することとなった。会場は「キネカ大森」。奇しくも「テアトル東京」と同じ映画会社が、運営する映画館だった。3時間半超の映画上映の後に、トークは何と2時間近くに及んだ。『天国の門』という作品、そしてマイケル・チミノという映画作家は、それほど語りしろがあるということに、相違ない。 マイケル・チミノはその翌年、2016年7月2日に、自宅で逝去。77歳だった。■ 『天国の門【デジタル修復完全版】』(C) 1981 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. 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COLUMN/コラム2025.12.12
『アビス』再考 — 技術と『アバター』に接続するキャメロン的哲学を探る
◆デジタル表現の起点と、その功績 1989年に公開された『アビス』は、映画技術史における革命として評価を得ている。『ジュラシック・パーク』(1993)や『トイ・ストーリー』(1995)がデジタル技術の飛躍点として語り継がれているいっぽう、そのベースをつくったのは『アビス』と断じて相違ない。なかでも液体形状を自在に変えることのできる“ウォーター・テンタクル”のショットは、当時としては信じがたいほど高度なCG表現であり、ILMが実写とデジタルをいかに融合させるかという課題に本格的に挑んだ瞬間でもあった。この表現は後の『ターミネーター2』(1991)のT-1000へと進化し、やがてハリウッドのビジュアル文化を根底から変えていく。 しかし技術革新はCGだけにとどまらない。作品制作のために建造された巨大水槽は、俳優たちを事実上、水中生活させるほど徹底しており、監督ジェームズ・キャメロンの掲げた「現場におけるリアルの追求」が極限の形で現れている。俳優たちはヘルメット越しに呼吸しながら、視界が制限され、光が散乱し、暗闇が支配する水中での演技を強いられた。その結果として生まれた映像は、セット撮影では得られない重層的なテクスチャを備えている。深海の圧迫感や浮遊粒子の微細な揺らぎは、VFXだけではとうてい補うことのできない、身体性のあるプラクティカルな臨場感をもたらしたのだ。 さらに特筆すべきは、キャメロンが技術のための技術ではなく、物語に奉仕する技術という姿勢を徹底させている点だ。高圧環境に酸素残量の減少、狭い潜水艇や暗闇、そして未知との遭遇といったシチュエーションは、いずれも緊張そのものが観客の感覚に直結する仕掛けとして設計されている。科学技術の描写も精密だが、キャラクターたちが置かれた極限状況を観客が“体験”できるように設計されているのだ。 こうして見ると『アビス』は2020年代の今日でも驚くほど古びていない。キャメロンが2022年に発表した『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』における最新の水中でのモーションキャプチャー技術は、『アビス』が築いた“水の映画作り”という礎石の延長線上にある。キャメロンにとって水はテーマ以上に、創作上不可欠な試練の舞台であり、物事の限界を拡大していくための実験場でもある。 そして何よりも本作は、映画技術がアナログからデジタルへと移行する過渡期に立ち会い、その流れを方向づけた作品である。キャメロンが後に生み出す『タイタニック』(1997)や『アバター』(2009)の圧倒的リアリティと普遍的なラブロマンスは、まさに本作によって開けた深海の扉から始まったのだ。 ◆深海が映し出す人間ドラマとテーマ 前述したように『アビス』は技術革新の映画として語られるが、その本質はあくまで人間ドラマにある。深海という閉鎖空間は、キャラクターの内面を物理的に圧縮し、矛盾・葛藤・恐怖をむき出しにする装置として機能している。こうした極限状況のドラマ運用はキャメロンの十八番だが、本作はその最初期にしてひときわ完成度が高い。一見すると軍事スリラーやSFとして構築されているが、物語の軸には「人間は恐怖の中でどう変容し、どう繋がり直すのか」という普遍的なテーマが置かれている。 特にバド(エド・ハリス)とリンジー(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)の関係性は、本作が他のSF作品と差別化される最大の要素だ。離婚間近で互いの信頼が揺らぐ中、二人は深海という極限環境で再び向き合わされる。相手に酸素を託す、冷水の中で心肺機能が停止した体を必死に蘇生する。これらの場面はサスペンス以上に、感情の再接続として機能している。深海の暗闇に反射するヘルメットライトが二人の表情を照らし出すたびに、互いへの感情がわずかに動き出す。その丁寧な積み上げは『タイタニック』や『アバター』に通じる、身体的な愛の描写の原型だ。 いっぽうで、物語の外側には冷戦末期の国際情勢が影を落としている。潜水艇内にある核弾頭をめぐる緊張、軍人たちの誤認と暴走、見えない敵への疑心は、いずれも1980年代後半の社会不安そのものだ。未知の知性体(NTI)へ向けられる恐怖と敵意は、人類が他者を理解する前に攻撃してしまう心理を象徴している。キャメロンはこの構図を単なる政治寓話とせず、未知を恐れることで自ら破滅へ向かうという人類の宿痾として描いている。これは後の『アバター』で全面化するテーマでもある。 深海という舞台そのものも非常に象徴的だ。光の届かない領域は潜在意識の暗部のように、キャラクターたちの恐れと欲望を増幅させる。圧力や孤立、静寂や時間感覚の喪失。こうした深海特有の要素がドラマを多層化し、観客に心理の深層を可視化させる。バドが深海へ単身降りていくクライマックスは、まさに自分自身の深淵と向き合う儀式的な瞬間だ。 『アビス』が今見ても強い共感性と緊張を持つのは、海洋SFという以上に、人間の物語として設計されているからだろう。深海の暗闇に浮かび上がる人間の感情のきらめき。それこそが本作の永続的な魅力なのだ。 ◆『アバター』経由後のキャメロン的哲学の核心 シリーズ最新作『アバター:ファイアー・アンド・アッシュ』の公開となった現在、『アビス』を観直すことには特別な意味がある。それはキャメロンの作家的関心がどのように発達し、どのように連続し、どこへ到達しつつあるのかを、最も鮮明に示してくれる基点が本作だからだ。深海の知性体と人類の邂逅という構図は、異種族同士の交流を描く『アバター』世界の原型であり、環境的存在と人類との調停というキャメロンの思想は、すでに本作で明確な形となってあらわれている。 まず注目するべきは、キャメロンの一貫した「環境との対話」というテーマだ。『アビス』に登場する未知の知性体(NTI)は、人類を敵視する存在ではなく、自然の代弁者として描かれる。彼らが作中で示す驚異的な力は、破壊ではなく警告であり、地上の核兵器に象徴される人類の自己破壊性を、鏡のように映し出す役割を担っている。これは『アバター』シリーズにおけるエイワの概念、つまり自然と生命の調和を象徴する統合的な意識の前身とも言える。 またキャメロン作品には常に「下降」のモチーフがある。『ターミネーター』の未来戦争の残骸、『エイリアン2』の巣窟、『タイタニック』の沈没船、そして『アバター』における精神的な深層への潜行など、どれも主人公が不可知な試練へと降りていくシチュエーションだ。『アビス』でバドが深海へ単身降りていくシーンは、キャメロンのこの美学が初めて正面から描かれた瞬間といえる。降下は死の象徴であると同時に再生の出発点であり、主人公が“自分を越える”ための通過儀礼でもある。バドは物理的な死を覚悟しながらも、他者への信頼と愛ゆえに深海へ進む。この構図は、キャメロンが後の作品でも繰り返す“自己犠牲による進化”という主題の中心に位置する。 物語構造にもキャメロン的特徴は色濃い。対立から協力へ、恐怖から理解へ、そして孤立から再接続へ。この流れは『ターミネーター2』から『タイタニック』、そして『アバター』と続くキャメロンの語りの根幹である。『アビス』はその最初の実験場でありながら、すでに驚くほど成熟した形でこの物語構造を達成している。特に、クライマックスで示される「人類への警告と赦し」という構図は、キャメロン作品の中でも最もストレートな希望表現であり、これが作品独自の余韻を生んでいる。 そして何より本作を再評価することは、キャメロンが描こうとする「人類の未来像」を理解するうえで不可欠だ。監督が不断に追い求めるのは、人間中心主義を越えた存在のあり方であり、その視座は深海の底からパンドラの世界へと連続している。水や光、未知との対話、環境との調停etc。これらはすべてキャメロン作品を貫くキーワードであり、そのすべてが『アビス』に集約されている。 こうして振り返ると『アビス』は、キャメロン映画世界の最初の震源地であり、後の巨大スケールの作品群を理解するうえで必読なテキストと言える。『アバター』を起点とするキャメロンの表現世界を解読するための鍵は、実は本作の、深海の底に沈んでいるのだ。■ 『アビス』(C) 1989 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
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COLUMN/コラム2025.12.04
孤独な現代人へのメッセージも込められた古典的名作の見事なアップデート『LIFE!/ライフ』
原作小説を大胆に翻案した’47年版 1939年に雑誌「ザ・ニューヨーカー」に掲載された作家ジェームズ・サーバーの小説「ウォルター・ミティの秘密の生活」。平凡な日常生活を淡々と送る平凡で冴えない男性ウォルター・ミティが、毎週恒例である妻の美容院と買い物に付き合って出かけたところ、その道すがら自らの英雄的な活躍を妄想した5つの白日夢を見る。ある時は猛烈な嵐に立ち向かう海軍飛行艇のパイロット、ある時は困難な手術を華麗にこなす天才的な外科医、そしてある時は命がけの秘密工作に挑む英国軍兵士。そこから浮かび上がるのは、地味で控えめで温厚なため周囲から過小評価され、かといって大胆な行動を取るような勇気も度胸もなく、白日夢という束の間の現実逃避に救いを見出すしかない凡人の姿である。 恐らく、世の中に彼のような夢想家は決して少なくないはず。むしろ、誰しも心の中に「小さなウォルター・ミティ」を抱えているのではないだろうか。そんな普遍的ストーリーが多くの読者の共感を呼んだのか、たったの2ページ半にしか過ぎない短編小説「ウォルター・ミティの秘密の生活」は大変な評判となり、これまでに2度もハリウッドで映画化されている。それが当時の日本人からも熱愛された喜劇王ダニー・ケイの主演作『虹を掴む男』(’47)と、ベン・スティラーが監督と主演を兼ねた本作『LIFE!/ライフ』(’13)である。 まずは最初の映画化である『虹を掴む男』について振り返ってみよう。ダニー・ケイ扮するウォルター・ミティは、ニューヨークの出版社に勤務するしがないサラリーマン。パルプ小説雑誌の編集部で真面目に働くウォルターだが、しかし過干渉で口うるさい母親には小言ばかり言われ、自己中な社長には自分の企画やアイディアを片っ端から盗まれ、我儘な婚約者とその母親には都合よくこき使われ、幼馴染のガキ大将にはいまだ小バカにされている。日頃からウォルターの尊厳を土足で踏みつけておきながら、しかしその自覚が全くない周囲の人々。なぜなら、気が弱くてお人好しなウォルターが怒りもしなければ反論もせず、それどころか自分を卑下して相手に従ってしまうため、むしろ彼らは無能で頼りないウォルターを自分たちが助けてやっている、親切にしてあげていると勘違いしているのだ。 いつも周囲から軽んじられ不満を溜めたウォルター。そんな彼にとって唯一のストレス解消が「白日夢」である。ある時は大海原の激流に立ち向かう勇敢な船長、ある時は患者の病気だけでなく医療機器の不具合まで直してしまう天才外科医、ある時は詐欺師どもをコテンパンにやっつける西部の天才ギャンブラーなど、まるで自分が編集しているパルプ雑誌の小説に出てくるような無敵のヒーローになってブロンド美女を救う様子を夢想するウォルター。そんなある日、通勤列車の中で白日夢に出てくる美女と瓜二つの女性ロザリンド(ヴァージニア・メイヨ)と出くわした彼は、やがて行方不明になったオランダ王室の秘宝を巡る陰謀事件へと巻き込まれ、愛するロザリンドを救うため暗殺者の執拗な追跡をかわしながら、秘宝の隠し場所を記した黒い手帳を探して大冒険を繰り広げていく。 ヒーロー願望を抱えた地味で目立たない夢想家の凡人という主人公ウォルターの基本設定を踏襲しつつ、原作とは似ても似つかないストーリーに仕上がった『虹を掴む男』。アクションありサスペンスありロマンスあり、さらにはミュージカルにファンタジーにドタバタ・コメディもありという大盤振る舞い。この大胆すぎる脚色は製作を手掛けた大物プロデューサー、サミュエル・ゴールドウィンの意向を汲んだものだったとされる。怒り心頭の原作者サーバーからは猛抗議を食らったそうだが、しかしテクニカラーの鮮やかな色彩で描かれる愉快で賑やかな大冒険は、これぞまさしく古き良きハリウッド・エンターテインメントの醍醐味。臆病者で気の弱いウォルターが、奇想天外な事件に巻き込まれて右往左往する中で意外にも英雄的な力を発揮し、数々の困難を乗り越えることで自信をつけていくという負け犬の成長譚を通して、勇気をもって一歩踏み出せば誰だってヒーローになれる!という前向きなメッセージを込めた筋書きも実に後味が良い。名作と呼ばれるに相応しい映画と言えよう。 21世紀の現代版は原作小説よりもその映画版に近い? そんなウォルター・ミティの物語を再び映画化すべく動き出したのが、『虹を掴む男』のプロデューサーだったサミュエル・ゴールドウィンの息子サミュエル・ゴールドウィン・ジュニア。企画自体は’94年頃からあったらしく、当初はウォルター役にジム・キャリー、監督はロン・ハワードという顔合せだったという。しかしプロデューサー陣の満足するような脚本がなかなか出来ず、業界用語で開発地獄(Development Hell)と呼ばれる長期間の難産状態に陥ってしまった。 ようやくスティーヴン・コンラッドの書いた脚本でゴーサインの出たのが’10年のこと。企画立ち上げから実に15年以上が経っていた。その間に映画会社重役からプロデューサーに転身したゴールドウィン・ジュニアの息子ジョン・ゴールドウィン(つまりサミュエル・ゴールドウィンの孫)が製作陣に加わり、オーウェン・ウィルソンやマイク・マイヤーズ、サシャ・バロン・コーエンなどがウォルター役の候補に挙がっては消え、スティーヴン・スピルバーグやチャック・ラッセル、マーク・ウォーターズなどが監督候補として企画に関わったが、しかし最終的にベン・スティラーが主演と監督を兼ねることで落ち着く。こうして作られたのが本作『LIFE!/ライフ』だったのである。 ◆『LIFE!/ライフ』撮影中のベン・スティラー(中央) 今回の主人公ウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は、世界的に有名な老舗フォトグラフ誌「ライフ」の写真管理責任者。仕事に関しては真面目で有能な完璧主義のプロフェッショナルだが、その一方で性格は几帳面かつ保守的で冒険や変化を好まず、それゆえ職場でも地味で目立たない存在だ。1ヶ月前に入社したシングル・マザー女性シェリル(クリスティン・ウィグ)に淡い恋心を抱いているが、しかし一緒の職場に居ながら話しかける勇気さえない。毎日同じことを繰り返す平凡で退屈な人生。かつてはモヒカン刈りでスケボーが大好きな腕白少年だったが、早くに父親と死別したことから母親(シャーリー・マクレーン)を支えるため働き続け、そのため外の世界を見に行くような余裕すら持てなかった。なので、シェリルと接点を持ちたいと考えて入会した出会い系サイトでも、プロフィールに書けるようなエピソードは全くなし。そんなウォルターにとって唯一の現実逃避は、勇敢なヒーローとなって大活躍する自分の姿を思い描くこと。空想の中だけでは理想の自分になれるのだ。 そんな折に「ライフ」誌の休刊が発表され、オンラインへの移行に伴って大掛かりな人員整理が行われることとなる。事業再編のため外部から送り込まれた新たなボス、テッド(アダム・スコット)は、「ライフ」誌の果たしてきた役割もその文化的な価値も全く理解していない杓子定規なビジネスマン。誰がクビを切られてもおかしくない。社員一同が戦々恐々とする中で進められる最終号の準備。その表紙を飾る写真を担当するのは、「ライフ」誌の看板フォトジャーナリストである冒険家ショーン・オコンネル(ショーン・ペン)である。ウォルターのもとにはショーンから大量の写真ネガと、ウォルターの長年の堅実な働きぶりに対する感謝の手紙、そしてささやかな贈り物として革財布が届けられるのだが、しかし最終号の表紙に使うよう指示された25番のネガだけがどこにも見当たらなかった。 いったい肝心の25番はどこにあるのか?テッドからは真っ先に表紙写真を見せるように催促されているウォルター。とにかく、ショーンと連絡を取ってネガの行方を突き止めなくてはならないが、しかし写真撮影のため世界中を飛び回っている彼の居場所を掴むのは至難の業。想いを寄せるシェリルから外の世界へ一歩踏み出すよう背中を押されたウォルターは、僅かな手がかりをもとにショーンを追いかけてグリーンランドからアイスランド、アフガニスタンへと渡り、ヘリから北海へジャンプしてサメと格闘したり、火山の大噴火から決死の脱出を試みたりと、ちょっとあり得ないような大冒険を繰り広げていくことになる。 『虹を掴む男』と同じく、ジェームズ・サーバーの原作とは大きく異なる内容となったベン・スティラーの『LIFE!/ライフ』。むしろ、アクションやサスペンスをふんだんに盛り込んだ娯楽性の高さや、主人公ウォルターが実際に平凡な日常を飛び出して奇想天外な冒険を繰り広げ、その数奇な体験を通して逞しい人間へと成長するという展開は、どちらかというと『虹を掴む男』のストーリーに近いと言えよう。ウォルターの職場が出版社というのも同じ。そういう意味で、本作は短編小説「ウォルター・ミティの秘密の生活」の2度目の映画化というより、『虹を掴む男』のリメイクと呼ぶ方が相応しいかもしれない。 全体を通して21世紀の世相を巧いこと取り込んだ脚本だと思うが、中でも特に良かったのがウォルターの勤務先を「ライフ」誌という実在の雑誌編集部に設定したことであろう。インターネットの普及に伴う出版不況によって、’07年に惜しまれつつ休刊した老舗のフォトグラフ雑誌「ライフ」。そこで屋根の下の力持ちとも言うべき写真管理を任され、たとえ目立つことのない地味な仕事であっても、コツコツと真面目に職務をこなしてきたウォルター。これは、臆病で控えめで自己肯定感の低い平凡な男性が、自分の殻を打ち破って自尊心を取り戻す物語であると同時に、テクノロジーの目覚ましい発達によって何もかもが合理化され、急速に変化する社会で上手く立ち回った人間ばかりが得をする現代にあって、ウォルターのように不器用でも目立たない存在でも、勤勉で慎ましくて思いやりのある誠実な人間こそが真のヒーローと呼べるのではないか?と見る者に問いかける。つまり、この社会を構成する我々ひとりひとりが既にヒーローなのだ。それを象徴するのが、最終号の表紙を飾るショーンの撮った写真。このように同時代の世相を通して人間の有り様を考察する視点の面白さと奥深さこそが、本作と『虹を掴む男』の最も大きな違いと言えよう。 加えて、劇中で何度も登場する「ライフ」誌のスローガンにも要注目。「世界を見よう、危険でも立ち向かおう、壁の裏側をのぞこう、もっと近づこう、お互いを知ろう、そして感じよう、それが人生(ライフ)の目的だから」。これは、今までの人生で一度も遠くへ行ったことがなかった、冒険をしたことがなかった、他者と深くつながったことのなかった主人公ウォルターへのメッセージであると同時に、インターネットの発達によって人間同士の関係性が希薄になった21世紀の現代に生きる人々全てへ向けたメッセージでもある。そうやって考えると、90年近く前に書かれた小説、80年以上前に作られたその映画版をベースにしつつ、見事なくらいに現代性を纏った作品と言えるだろう。実に良く出来た古典のアップデートである。 もちろん、最先端のCG技術をフル稼働して描かれるウォルターの奇想天外な白日夢も大きな見どころ。アナログゆえ映像表現に限界のあった『虹を掴む男』の空想シーンと違って、デジタルを駆使した本作のそれには限界が全くない。文字通り何でもアリの異世界アドベンチャーが縦横無尽に展開する。また、映画の冒頭は無機質で整然としたモノトーンの映像で統一され、カメラもほとんど動くことがないのだが、しかしウォルターが外の世界へ踏み出すと同時にカメラも大胆に動き始め、色彩も次第に豊かとなっていく。この主人公の心理的な変化に合わせた演出スタイルの使い分けも面白く、その細部まで計算されたベン・スティラー監督の洗練された映像技法にも感心する。劇場公開時には批評家から高く評価され、興行的にも大成功を収めた本作だが、しかしアカデミー賞など賞レースで殆ど無視されてしまったのは惜しまれる。■ 『LIFE!/ライフ』© 2013 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.
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NEWS/ニュース2025.12.01
【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP《シリーズ一挙&人気作イッキ見SP 20人のスター ~ ハリウッドからアジアまで》
【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP:4つのテーマで選ぶ20人のスター 2005年12月1日に誕生した洋画専門チャンネルザ・シネマは、洋画ファンの熱い思いに支えられ開局20周年を迎えました。日頃のご愛顧に感謝して、2025年11月から2026年3月まで、「20」をキーワードにしたスペシャル編成や感謝プレゼント企画など様々な“開局20周年企画”をお届けしてまいります! 12/27(土)~1/4(日)の年末年始SPでは、《シリーズ一挙&人気作イッキ見SP》《『ワイルド・スピード』シリーズ一挙SP》《レトロ・ハリウッドSP》《西部劇SP》の4つのテーマで、“20人のスター”を切り口にお届けします! 《シリーズ一挙&人気作イッキ見SP 20人のスター ~ ハリウッドからアジアまで》 ①ジェラルド・バトラー 『カンダハル 突破せよ』© 2022 COLLEAH PRODUCTIONS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED. 12/27(土)『カンダハル 突破せよ』字幕:12月27日(土) 12:25 - 14:35 吹替:12月31日(水) 16:45 - 19:00https://www.thecinema.jp/program/07091 12/27(土)『エンド・オブ・ホワイトハウス』シリーズ3作14:35『エンド・オブ・ホワイトハウス』16:50『エンド・オブ・キングダム』18:45『エンド・オブ・ステイツ』https://www.thecinema.jp/tag/627 ②ニコラス・ケイジ 『ナショナル・トレジャー2/リンカーン暗殺者の日記』©Disney Enterprises, Inc. All rights reserved. 12/27(土)『ナショナル・トレジャー』 字幕:2025年12月27日(土) 21:00 - 23:30吹替:2026年01月02日(金) 09:05 - 11:30字幕:2026年01月02日(金) 21:00 - 23:35https://www.thecinema.jp/program/01162 12/27(土)『ナショナル・トレジャー2/リンカーン暗殺者の日記』字幕:2025年12月27日(土) 23:30 - 深夜 01:50吹替:2026年01月02日(金) 11:30 - 13:50字幕:2026年01月02日(金) 23:35 - 深夜 02:00https://www.thecinema.jp/program/01163 12/29(月)『ザ・ロック』吹替:2025年12月29日(月) 12:20 - 14:50字幕:2025年12月29日(月) 21:00 - 23:30https://www.thecinema.jp/program/01678 12/30(火)『コン・エアー』字幕:2025年12月30日(火) 12:10 - 14:20https://www.thecinema.jp/program/01860 ③アンディ・ラウ 『暗戦 デッドエンド【ニュー2Kリマスター版】』© 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved. 12/27(土)『暗戦 デッドエンド【ニュー2Kリマスター版】』字幕:2025年12月27日(土) 深夜 01:50 - 03:40 https://www.thecinema.jp/program/07036 ④ブルース・ウィリス 『RED/レッド』© 2010 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. 12/28(日)『RED/レッド』吹替:2025年12月28日(日) 10:55 - 13:00字幕:2025年12月28日(日) 21:00 - 23:05https://www.thecinema.jp/program/06418 12/28(日)『REDリターンズ』吹替:2025年12月28日(日) 13:00 - 15:05字幕:2025年12月28日(日) 23:05 - 深夜 01:10https://www.thecinema.jp/program/06441 ⑤リーアム・ニーソン 『バッド・デイ・ドライブ』© 2022 STUDIOCANAL SAS – TF1 FILMS PRODUCTION SAS, ALL RIGHTS RESERVED. 12/28(日)『バッド・デイ・ドライブ』字幕:2025年12月28日(日) 15:05 - 16:50https://www.thecinema.jp/program/07120 12/28(日)『マークスマン』字幕:2025年12月28日(日) 16:50 - 18:50https://www.thecinema.jp/program/07127 ⑥ジェイソン・ステイサム 『オペレーション・フォーチュン』© 2023 MIRAMAX DISTRIBUTION SERVICES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. ALL MOTION PICTURE ARTWORK © 2023 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED 12/28(日)『オペレーション・フォーチュン』字幕:2025年12月28日(日) 18:50 - 21:00吹替:2026年01月02日(金) 13:50 - 16:00https://www.thecinema.jp/program/07141 ⑦ドウェイン・ジョンソン 『スコーピオン・キング』© 2002 KALIMA Productions GmbH & Co. KG. All Rights Reserved. 12/29(月)『スコーピオン・キング』字幕:2025年12月29日(月) 23:30 - 深夜 01:10https://www.thecinema.jp/program/01022 ⑧レア・セドゥ 『潜水艦クルスクの生存者たち』© 2018 EUROPACORP 12/30(火)『潜水艦クルスクの生存者たち』字幕:2025年12月30日(火) 16:50 - 19:00https://www.thecinema.jp/program/07105 ⑨マ・ドンソク 『犯罪都市(2017)』(C)2017 KIWI MEDIA GROUP & VANTAGE E&M. ALL RIGHTS RESERVED 12/30(火)『犯罪都市』シリーズ4作21:00『犯罪都市(2017)』23:20『犯罪都市 THE ROUNDUP』25:25『犯罪都市 NO WAY OUT』27:25『犯罪都市 PUNISHMENT』https://www.thecinema.jp/tag/687 1/2(金)『悪人伝』字幕:2026年01月02日(金) 深夜 04:00 - 06:00https://www.thecinema.jp/program/07004 ⑩スカーレット・ヨハンソン 『LUCY/ルーシー』© 2014 EUROPACORP-TF1 FILMS PRODUCTION - GRIVE PRODUCTIONS. All Rights Reserved. 12/31(水)『LUCY/ルーシー』字幕:2025年12月31日(水) 13:05 - 14:45字幕:2025年12月31日(水) 21:00 - 22:45https://www.thecinema.jp/program/04136 ⑪エミリー・ブラント 『ボーダーライン(2015)』©2015 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved. 12/31(水)『ボーダーライン(2015)』字幕:2025年12月31日(水) 深夜 01:25 - 03:45https://www.thecinema.jp/program/05490 1/1(木)『オール・ユー・ニード・イズ・キル』字幕:2026年01月01日(木) 14:35 - 16:40https://www.thecinema.jp/program/04478 ⑫トム・クルーズ 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc., WV Films IV LLC and Ratpac-Dune Entertainment LLC 1/1(木)『オール・ユー・ニード・イズ・キル』字幕:2026年01月01日(木) 14:35 - 16:40https://www.thecinema.jp/program/04478 ⑬ジョニー・デップ 『パブリック・エネミーズ』© 2009 Universal Studios. All Rights Reserved. 1/1(木)『パブリック・エネミーズ』字幕:2026年01月01日(木) 深夜 03:25 - 06:00 https://www.thecinema.jp/program/01772 ⑭マイケル・ジャクソン 『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』© 2009 The Michael Jackson Company, LLC. All Rights Reserved. 1/2(金)『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』字幕:2026年01月02日(金) 深夜 02:00 - 04:00https://www.thecinema.jp/program/04493 ⑮ジャッキー・チェン 『シャンハイ・ヌーン』© 2000 Buena Vista Pictures Distribution and Spyglass Entertainment Group, LP. 1/3(土)『シャンハイ・ヌーン』字幕:2026年01月03日(土) 11:35 - 13:45 https://www.thecinema.jp/program/00740 1/3(土)『シャンハイ・ナイト』字幕:2026年01月03日(土) 13:45 - 16:00 https://www.thecinema.jp/program/00739 ⑯ドニー・イェン 『シャクラ』© 2023 Wishart Interactive Entertainment Co., Ltd. All Rights Reserved 1/3(土)『シャクラ』字幕:2026年01月03日(土) 21:00 - 23:20https://www.thecinema.jp/program/07155 ⑰ワン・イーボー 『無名』Copyright 2023 (C) Bona Film Group Company Limited All Rights Reserved 1/3(土)『無名』字幕:2026年01月03日(土) 23:20 - 深夜 01:45 https://www.thecinema.jp/program/07076 ⑱キルステン・ダンスト 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』©2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved. 1/4(日)『シビル・ウォー アメリカ最後の日』字幕:2026年01月04日(日) 16:15 - 18:20https://www.thecinema.jp/program/07110 ⑲ミラ・ジョヴォヴィッチ 『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』©2011 Constantin Film Produktion GmbH, NEF Productions, S.A.S. and New Legacy Film Ltd. All rights reserved. 1/4(日)『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』字幕:2026年01月04日(日) 23:30 - 深夜 01:30https://www.thecinema.jp/program/02941 ⑳イドリス・エルバ『アラビアンナイト 三千年の願い』 『アラビアンナイト 三千年の願い』© 2022 KENNEDY MILLER MITCHELL TTYOL PTY LTD. 1/4(日)『アラビアンナイト 三千年の願い』字幕:2026年01月04日(日) 深夜 01:30 - 03:30https://www.thecinema.jp/program/07131 【ザ・シネマ開局20周年】 ⇩特設ページはこちら⇩https://www.thecinema.jp/special/3920th/ 【年末年始】【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP:4つのテーマで選ぶ20人のスター 12/27(土)~1/4(日) 作品一覧:https://www.thecinema.jp/tag/727 ↓各特設ページはこちら↓ 《シリーズ一挙&人気作イッキ見SP20人のスター ~ ハリウッドからアジアまで》※本ページ 《レトロ・ハリウッドSP若かった20人のスター》https://www.thecinema.jp/article/1453 《『ワイルド・スピード』シリーズ一挙SPワイスピ20人のスター》https://www.thecinema.jp/article/1452 《西部劇SP 西部劇20人のスター ~ ヒーローから職人まで》https://www.thecinema.jp/article/1454 映画ファン必見の情報をお届け!ザ・シネマ公式メールマガジン、20周年を記念して12/1より配信開始! ⇩ご登録はこちら⇩https://www.thecinema.jp/mail/
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NEWS/ニュース2025.12.01
【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP《『ワイルド・スピード』シリーズ一挙SP ワイスピ20人のスター》
【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP:4つのテーマで選ぶ20人のスター 2005年12月1日に誕生した洋画専門チャンネルザ・シネマは、洋画ファンの熱い思いに支えられ開局20周年を迎えました。日頃のご愛顧に感謝して、2025年11月から2026年3月まで、「20」をキーワードにしたスペシャル編成や感謝プレゼント企画など様々な“開局20周年企画”をお届けしてまいります! 12/27(土)~1/4(日)の年末年始SPでは、《シリーズ一挙&人気作イッキ見SP》《『ワイルド・スピード』シリーズ一挙SP》《レトロ・ハリウッドSP》《西部劇SP》の4つのテーマで、“20人のスター”を切り口にお届けします! 《『ワイルド・スピード』シリーズ一挙SP ワイスピ20人のスター》 12/29(月)~1/4(日)11作一挙放送※放送情報詳細はスター紹介後に記載 ① ヴィン・ディーゼル(ドミニク・トレット) 『ワイルド・スピード【4Kレストア版】』© 2001 Universal Studios. All Rights Reserved. ② ポール・ウォーカー(ブライアン・オコナー) 『ワイルド・スピード【4Kレストア版】』© 2001 Universal Studios. All Rights Reserved. ③ ミシェル・ロドリゲス(レティ・オルティス) 『ワイルド・スピード MAX』© 2009 Universal Studios. All Rights Reserved. ④ ジョーダナ・ブリュースター(ミア・トレット) 『ワイルド・スピード MAX』© 2009 Universal Studios. All Rights Reserved. ⑤ タイリース・ギブソン(ローマン・ピアース) 『ワイルド・スピードX2【4Kレストア版】』© 2003 Universal Studios. All Rights Reserved. ⑥ エヴァ・メンデス(モニカ・フェンテス) 『ワイルド・スピードX2【4Kレストア版】』© 2003 Universal Studios. All Rights Reserved. ⑦ クリス・“リュダクリス”・ブリッジス(テズ・パーカー) 『ワイルド・スピードX2【4Kレストア版】』© 2003 Universal Studios. All Rights Reserved. ⑧ ルーカス・ブラック(ショーン・ボズウェル) 『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT【4Kレストア版】』 © 2006 Universal Pictures. All Rights Reserved. ⑨ サン・カン(ハン) 『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT【4Kレストア版】』 © 2006 Universal Pictures. All Rights Reserved. ⑩ ドウェイン・ジョンソン(ルーク・ホブス) 『ワイルド・スピード EURO MISSION』© 2013 Universal Studios. All Rights Reserved. ⑪ ガル・ガドット(ジゼル・ヤシャール) 『ワイルド・スピード MAX』© 2009 Universal Studios. All Rights Reserved. ⑫ ルーク・エヴァンズ(オーウェン・ショウ) 『ワイルド・スピード EURO MISSION』© 2013 Universal Studios. All Rights Reserved. ⑬ ジェイソン・ステイサム(デッカード・ショウ) 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』© 2023 Universal Studios. All Rights Reserved. ⑭ カート・ラッセル(ミスター・ノーバディ) 『ワイルド・スピード SKY MISSION』© 2015 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED. ⑮ シャーリーズ・セロン(サイファー) 『ワイルド・スピード ICE BREAK』© 2017 Universal City Studios Productions LLLP. All Rights Reserved. ⑯ スコット・イーストウッド(リトル・ノーバディ) 『ワイルド・スピード ICE BREAK』© 2017 Universal City Studios Productions LLLP. All Rights Reserved. ⑰ ヘレン・ミレン(マグダレーン・ショウ) 『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』© 2020 Universal City Studios Productions LLLP. ALL RIGHTS RESERVED. ⑱ ジョン・シナ(ジェイコブ・トレット) 『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』© 2020 Universal City Studios Productions LLLP. ALL RIGHTS RESERVED. ⑲ ブリー・ラーソン(テス) 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』© 2023 Universal Studios. All Rights Reserved. ⑳ ジェイソン・モモア『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』© 2023 Universal Studios. All Rights Reserved. ワイルド・スピード 【4Kレストア版】12月29日(月)14:50~16:50 ワイルド・スピードX2 【4Kレストア版】12月30日(火)14:50~16:50 ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT 【4Kレストア版】12月31日(水)14:45~16:45 ワイルド・スピード MAX1月1日(木)16:40~18:40 ワイルド・スピード MEGA MAX1月1日(木)18:40~21:00 ワイルド・スピード EURO MISSION1月2日(金)16:00~18:25 ワイルド・スピード SKY MISSION1月2日(金)18:25~21:00 ワイルド・スピード ICE BREAK1月3日(土)16:00~18:30 ワイルド・スピード/スーパーコンボ ※スピンオフ1月3日(土)18:30~21:00 ワイルド・スピード/ジェットブレイク1月4日(日)18:20~21:00 ワイルド・スピード/ファイヤーブースト1月4日(日)21:00~23:30 【ザ・シネマ開局20周年】 ⇩特設ページはこちら⇩https://www.thecinema.jp/special/3920th/ 【年末年始】【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP:4つのテーマで選ぶ20人のスター 12/27(土)~1/4(日) 作品一覧:https://www.thecinema.jp/tag/727 ↓各特設ページはこちら↓ 《シリーズ一挙&人気作イッキ見SP20人のスター ~ ハリウッドからアジアまで》https://www.thecinema.jp/article/1451 《レトロ・ハリウッドSP若かった20人のスター》https://www.thecinema.jp/article/1453 《『ワイルド・スピード』シリーズ一挙SPワイスピ20人のスター》※本ページ 《西部劇SP 西部劇20人のスター ~ ヒーローから職人まで》https://www.thecinema.jp/article/1454 映画ファン必見の情報をお届け!ザ・シネマ公式メールマガジン、20周年を記念して12/1より配信開始! ⇩ご登録はこちら⇩https://www.thecinema.jp/mail/
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NEWS/ニュース2025.12.01
【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP《レトロ・ハリウッドSP 若かった20人のスター》
【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP:4つのテーマで選ぶ20人のスター 2005年12月1日に誕生した洋画専門チャンネルザ・シネマは、洋画ファンの熱い思いに支えられ開局20周年を迎えました。日頃のご愛顧に感謝して、2025年11月から2026年3月まで、「20」をキーワードにしたスペシャル編成や感謝プレゼント企画など様々な“開局20周年企画”をお届けしてまいります! 12/27(土)~1/4(日)の年末年始SPでは、《シリーズ一挙&人気作イッキ見SP》《『ワイルド・スピード』シリーズ一挙SP》《レトロ・ハリウッドSP》《西部劇SP》の4つのテーマで、“20人のスター”を切り口にお届けします! 《レトロ・ハリウッドSP 若かった20人のスター》 ① アル・パチーノ 『スカーフェイス』© 1983 Universal Studios. All Rights Reserved. 12/27(土)『スカーフェイス』2025年12月27日(土) 09:25 - 12:25https://www.thecinema.jp/program/00243 ② アンジェリーナ・ジョリー 『ボーン・コレクター』© 1999 Universal City Studios, Inc. and Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. 12/28(日)『ボーン・コレクター』2025年12月28日(日) 08:45 - 10:55https://www.thecinema.jp/program/02841 ③ チャーリー・シーン 『ウォール街』© 1987 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. 12/29(月)『ウォール街』2025年12月29日(月) 09:55 - 12:20https://www.thecinema.jp/program/04421 ④ マイケル・ダグラス 『ウォール街』© 1987 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. 12/29(月)『ウォール街』2025年12月29日(月) 09:55 - 12:20https://www.thecinema.jp/program/04421 ⑤ シルヴェスター・スタローン 『デモリションマン』© Warner Bros. Entertainment Inc. 12/29(月)『デモリションマン』2025年12月29日(月) 16:50 - 19:00https://www.thecinema.jp/program/00027 ⑥ メリル・ストリープ 『激流』© 1994 Universal Studios. All Rights Reserved. 12/30(火)『激流』2025年12月30日(火) 07:50 - 09:55https://www.thecinema.jp/program/07016 ⑦ ケヴィン・ベーコン 『激流』© 1994 Universal Studios. All Rights Reserved. 12/30(火)『激流』2025年12月30日(火) 07:50 - 09:55https://www.thecinema.jp/program/07016 ⑧ ロバート・デ・ニーロ 『レナードの朝』© 1990 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. 12/30(火)『レナードの朝』2025年12月30日(火) 09:55 - 12:10https://www.thecinema.jp/program/02911 ⑨ ロビン・ウィリアムズ 『レナードの朝』© 1990 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. 12/30(火)『レナードの朝』2025年12月30日(火) 09:55 - 12:10https://www.thecinema.jp/program/02911 ⑩ クリスチャン・ベイル 『太陽の帝国(1987)』© 1987 Warner Bros. Inc. 12/31(水)『太陽の帝国(1987)』2025年12月31日(水) 08:20 - 11:05 https://www.thecinema.jp/program/04942 ⑪ アーノルド・シュワルツェネッガー 『キンダガートン・コップ』© 1990 Universal Studios. All Rights Reserved. 12/31(水)『キンダガートン・コップ』2025年12月31日(水) 11:05 - 13:05https://www.thecinema.jp/program/04781 ⑫ レイフ・ファインズ 『ストレンジ・デイズ【HDリマスター版】』© 1994 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. 12/31(水)『ストレンジ・デイズ【HDリマスター版】』2025年12月31日(水) 22:45 - 深夜 01:25https://www.thecinema.jp/program/07133 ⑬ マコーレー・カルキン 『ホーム・アローン』© 1990 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. 1/1(木)『ホーム・アローン』吹替:2026年01月01日(木) 07:55 - 09:50字幕:2026年01月01日(木) 21:00 - 23:00 https://www.thecinema.jp/program/03759 1/1(木)『ホーム・アローン2』吹替:2026年01月01日(木) 09:50 - 12:05字幕:2026年01月01日(木) 23:00 - 深夜 01:15https://www.thecinema.jp/program/03727 ⑭ マイケル・ビーン 『アビス』© 1989 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. 1/1(木)『アビス』2026年01月01日(木) 12:05 - 14:35https://www.thecinema.jp/program/07137 ⑮ ラッセル・クロウ 『グラディエーター』© 2000 DreamWorks LLC and Universal Studios. All Rights Reserved. 1/3(土)『グラディエーター』2026年01月03日(土) 08:45 - 11:35https://www.thecinema.jp/program/01482 ⑯ ジュリア・ロバーツ 『プリティ・ブライド』© 1999 Paramount and Touchstone Pictures. All Rights Reserved. 1/3(土)『プリティ・ブライド』2026年01月03日(土) 深夜 01:45 - 03:55 https://www.thecinema.jp/program/07156 ⑰ リチャード・ギア 『プリティ・ブライド』© 1999 Paramount and Touchstone Pictures. All Rights Reserved. 1/3(土)『プリティ・ブライド』2026年01月03日(土) 深夜 01:45 - 03:55 https://www.thecinema.jp/program/07156 ⑱ リバー・フェニックス 『旅立ちの時』© 1988 Warner Bros. All Rights Reserved. 1/3(土)『旅立ちの時』2026年01月03日(土) 深夜 03:55 - 06:00 https://www.thecinema.jp/program/07063 ⑲ デンゼル・ワシントン 『遠い夜明け』©1987 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved. 12/28(日)『ボーン・コレクター』2025年12月28日(日) 08:45 - 10:55https://www.thecinema.jp/program/02841 1/4(日)『遠い夜明け』 2026年01月04日(日) 08:15 - 11:05https://www.thecinema.jp/program/00392 ⑳ ジョディ・フォスター 『コンタクト』© 1988 Warner Bros. All Rights Reserved. 1/4(日)『コンタクト』2026年01月04日(日) 11:05 - 13:45https://www.thecinema.jp/program/04307 【ザ・シネマ開局20周年】 ⇩特設ページはこちら⇩https://www.thecinema.jp/special/3920th/ 【年末年始】【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP:4つのテーマで選ぶ20人のスター 12/27(土)~1/4(日) 作品一覧:https://www.thecinema.jp/tag/727 ↓各特設ページはこちら↓ 《シリーズ一挙&人気作イッキ見SP20人のスター ~ ハリウッドからアジアまで》https://www.thecinema.jp/article/1451 《レトロ・ハリウッドSP若かった20人のスター》※本ページ 《『ワイルド・スピード』シリーズ一挙SPワイスピ20人のスター》https://www.thecinema.jp/article/1452 《西部劇SP 西部劇20人のスター ~ ヒーローから職人まで》https://www.thecinema.jp/article/1454 映画ファン必見の情報をお届け!ザ・シネマ公式メールマガジン、20周年を記念して12/1より配信開始! ⇩ご登録はこちら⇩https://www.thecinema.jp/mail/
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NEWS/ニュース2025.12.01
【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP《西部劇SP 西部劇20人のスター ~ ヒーローから職人まで》
【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP:4つのテーマで選ぶ20人のスター 2005年12月1日に誕生した洋画専門チャンネルザ・シネマは、洋画ファンの熱い思いに支えられ開局20周年を迎えました。日頃のご愛顧に感謝して、2025年11月から2026年3月まで、「20」をキーワードにしたスペシャル編成や感謝プレゼント企画など様々な“開局20周年企画”をお届けしてまいります! 12/27(土)~1/4(日)の年末年始SPでは、《シリーズ一挙&人気作イッキ見SP》《『ワイルド・スピード』シリーズ一挙SP》《レトロ・ハリウッドSP》《西部劇SP》の4つのテーマで、“20人のスター”を切り口にお届けします! 《西部劇SP 西部劇20人のスター ~ ヒーローから職人まで》 ① ケヴィン・コスナー 『ワイアット・アープ(1994)』© Warner Bros. Entertainment Inc. 12/27(土)『ワイアット・アープ(1994)』 字幕:2025年12月27日(土) 06:00 - 09:25https://www.thecinema.jp/program/05504 ② ブライアン・キース ※画像右『ビッグトレイル』© 1965 The Estate Of John E. Sturges. All Rights Reserved. 12/28(日)『ビッグトレイル』字幕:2025年12月28日(日) 06:00 - 08:45 https://www.thecinema.jp/program/00576 ③ クリント・イーストウッド 『荒野のストレンジャー』© 1973 Universal Studios City Studios, LLC. All Rights Reserved. 12/29(月)『荒野のストレンジャー』[R15+相当] 字幕:2025年12月29日(月) 06:00 - 08:00 https://www.thecinema.jp/program/00648 ④ ポール・ニューマン 『左きゝの拳銃』© 1958 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. 12/29(月)『左きゝの拳銃』 字幕:2025年12月29日(月) 08:00 - 09:55https://www.thecinema.jp/program/01924 ⑤ リチャード・ウィドマーク 『ガンファイターの最後』© 1970 Universal Pictures. All Rights Reserved. 12/30(火)『ガンファイターの最後』 字幕:2025年12月30日(火) 06:00 - 07:50https://www.thecinema.jp/program/06977 ⑥ クラーク・ゲイブル ※画像左『荒馬と女』© 1961 Seven Arts Productions, Inc. All Rights Reserved 12/31(水)『荒馬と女』 字幕:2025年12月31日(水) 06:00 - 08:20https://www.thecinema.jp/program/01099 ⑦ マリリン・モンロー 『荒馬と女』© 1961 Seven Arts Productions, Inc. All Rights Reserved 12/31(水)『荒馬と女』 字幕:2025年12月31日(水) 06:00 - 08:20https://www.thecinema.jp/program/01099 ⑧ モンゴメリー・クリフト 『荒馬と女』© 1961 Seven Arts Productions, Inc. All Rights Reserved 12/31(水)『荒馬と女』 字幕:2025年12月31日(水) 06:00 - 08:20https://www.thecinema.jp/program/01099 ⑨ バート・ランカスター 『追跡者(1971)』© 1971 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. 12/28(日)『ビッグトレイル』字幕:2025年12月28日(日) 06:00 - 08:45 https://www.thecinema.jp/program/00576 1/1(木)『追跡者(1971)』字幕:2026年01月01日(木) 06:00 - 07:55https://www.thecinema.jp/program/07049 ⑩ ロバート・ライアン 『追跡者(1971)』© 1971 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. 1/1(木)『追跡者(1971)』字幕:2026年01月01日(木) 06:00 - 07:55https://www.thecinema.jp/program/07049 ⑪ ジョン・ウェイン 『西部開拓史』© Turner Entertainment Co. and Cinerama, Inc. 1/2(金)『西部開拓史』字幕:2026年01月02日(金) 06:00 - 09:05https://www.thecinema.jp/program/05527 ⑫ ジェームズ・スチュワート ※画像中央『西部開拓史』© Turner Entertainment Co. and Cinerama, Inc. 1/2(金)『西部開拓史』字幕:2026年01月02日(金) 06:00 - 09:05https://www.thecinema.jp/program/05527 ⑬ グレゴリー・ペック 『西部開拓史』© Turner Entertainment Co. and Cinerama, Inc. 1/2(金)『西部開拓史』字幕:2026年01月02日(金) 06:00 - 09:05https://www.thecinema.jp/program/05527 ⑭ ヘンリー・フォンダ 『西部開拓史』© Turner Entertainment Co. and Cinerama, Inc. 1/2(金)『西部開拓史』字幕:2026年01月02日(金) 06:00 - 09:05https://www.thecinema.jp/program/05527 ⑮ ウィリアム・ホールデン 『ワイルドバンチ【ディレクターズカット版】』© 1969 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. 1/3(土)『ワイルドバンチ【ディレクターズカット版】』字幕:2026年01月03日(土) 06:00 - 08:45https://www.thecinema.jp/program/05119 ⑯ アーネスト・ボーグナイン 『ワイルドバンチ【ディレクターズカット版】』© 1969 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. 1/3(土)『ワイルドバンチ【ディレクターズカット版】』字幕:2026年01月03日(土) 06:00 - 08:45https://www.thecinema.jp/program/05119 ⑰ エドモンド・オブライエン 『ワイルドバンチ【ディレクターズカット版】』© 1969 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. 1/3(土)『ワイルドバンチ【ディレクターズカット版】』字幕:2026年01月03日(土) 06:00 - 08:45https://www.thecinema.jp/program/05119 ⑱ ウォーレン・オーツ 『ワイルドバンチ【ディレクターズカット版】』© 1969 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. 1/3(土)『ワイルドバンチ【ディレクターズカット版】』字幕:2026年01月03日(土) 06:00 - 08:45https://www.thecinema.jp/program/05119 ⑲ ベン・ジョンソン 『ワイルドバンチ【ディレクターズカット版】』© 1969 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. 1/3(土)『ワイルドバンチ【ディレクターズカット版】』字幕:2026年01月03日(土) 06:00 - 08:45https://www.thecinema.jp/program/05119 ⑳ ホアキン・フェニックス 『ゴールデン・リバー』© 2018 - WHY NOT PRODUCTIONS 1/4(日)『ゴールデン・リバー』字幕:2026年01月04日(日) 06:00 - 08:15 https://www.thecinema.jp/program/05089 【ザ・シネマ開局20周年】 ⇩特設ページはこちら⇩https://www.thecinema.jp/special/3920th/ 【年末年始】【開局20周年】ザ・シネマ年末年始SP:4つのテーマで選ぶ20人のスター 12/27(土)~1/4(日) 作品一覧:https://www.thecinema.jp/tag/727 ↓各特設ページはこちら↓ 《シリーズ一挙&人気作イッキ見SP20人のスター ~ ハリウッドからアジアまで》https://www.thecinema.jp/article/1451 《レトロ・ハリウッドSP若かった20人のスター》https://www.thecinema.jp/article/1453 《『ワイルド・スピード』シリーズ一挙SPワイスピ20人のスター》https://www.thecinema.jp/article/1452 《西部劇SP 西部劇20人のスター ~ ヒーローから職人まで》※本ページ 映画ファン必見の情報をお届け!ザ・シネマ公式メールマガジン、20周年を記念して12/1より配信開始! ⇩ご登録はこちら⇩https://www.thecinema.jp/mail/
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COLUMN/コラム2025.11.21
まさかのトランプ2期目を予見!?『シビル・ウォー アメリカ最後の日』
“シビル・ウォー=Civil War”という言葉は、アメリカでは、奴隷制度廃止などを巡って、1861年から65年に掛けて行われた内戦“南北戦争”を指す。近未来のアメリカが再び、血みどろの“内戦”に突入したという設定の本作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024)の、脚本・監督を担当したのは、イギリス人のアレックス・ガーランド。 彼にとっては、4本目の長編監督作品に当たる本作は、2016年にその発想のオリジンがある。この年アメリカでは、ドナルド・トランプが大統領に当選。イギリスでは、ボリス・ジョンソンらの扇動で、ブレグジット=EU離脱が、国民投票で可決されてしまった。 ジョンソンは後年、イギリス首相の座に就く。それ以外にも、イスラエルのネタニヤフやブラジルのボルソナーロなど、世界各国で強権的なポピュリスト政治家が台頭するようになっていった。 こうした世界の変化に思いを巡らせたガーランドは、2020年頃に本作の脚本を執筆。製作・配給会社のA24に諮ると、すぐに映画化が決まったという。 ***** 強権的な大統領の下で分断が進んだ、アメリカ合衆国。連邦政府から19の州が離脱し、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる“西部勢力”と、“政府軍”の間で、“内戦”が勃発した。 戦闘は長期化したが、やがて西部勢力がワシントンD.C.への侵攻を窺う情勢となり、大統領が率いる政府軍の敗色は、日に日に濃くなっていく。 戦場カメラマンのリーと相棒の記者ジョエルは、もう14ヶ月間もマスコミの前に姿を現してない大統領への単独取材の計画を立てる。ニューヨークからD.Cまで1,379㌔。リーの恩師である黒人ジャーナリストのサミーと、リーに憧れる若手カメラマンのジェシーを乗せて、車の旅が始まった。 戦火が渦巻くアメリカで、過酷な“内戦”の実相を目撃していく一行。折々危険に曝され、遂には仲間の1人を失ってしまう。 そうした中で、大統領が立て籠もるホワイトハウスに、西部勢力の攻勢と共に、足を踏み入れる瞬間がやってくるが…。 ***** ガーランドは政治漫画家の息子で、子どもの頃は、父の友人のジャーナリストに囲まれて育った。彼の名付け親も、その内のひとり。 少年時代の経験から、当初はジャーナリストになることを夢見たガーランドは、20歳の頃、世界各地を旅して特派員の真似事をした。彼はそこで見聞きしたことを、ルポルタージュにまとめることを試みたが、失敗。ジャーナリストになることをあきらめた経緯がある。 方向性を変えたガーランドは、小説を執筆。その小説がダニー・ボイルによって、『ザ・ビーチ』(2000)として映画化されたことが縁となって、映画界に身を投じた。ボイル監督の『28日後…』(02)で脚本家デビューを果し、2015年には『エクス・マキナ』で、監督としてもスタートを切った。 そんなガーランドが、日頃強く感じていたのが、「政府とジャーナリズムは本来、両方ともバランスをとる役割があるけれど、共に今は正常に機能していない」ということ。 自由な国には自由な報道が絶対的に必要なのに、今やジャーナリズムには、昔のような力はなくなった。ジャーナリストたちも、必要な存在と見なされなくなってきている。 1970年代には、「ワシントン・ポスト」紙の2人の記者が、“ウォーターゲート事件”の真相を暴いたことによって、ニクソン大統領を、任期途中での辞任に追い込んだ。しかし今や、ニクソンなどより遥かに多くの悪事を為しているであろうトランプに、報道がトドメを刺すことなど、極めて困難な事態となっている…。 本作では、テキサス州とカリフォルニア州が組んで、大統領の圧政=ファシズムに対抗するという構図になっている。アメリカ政治の知識がある方には自明だが、テキサスはいわゆる“赤い州”。現在トランプが支配している共和党が、圧倒的に強い地域。一報カリフォルニアは“青い州”で、トランプと敵対する、野党民主党の金城湯池である。 というわけで現状に鑑みれば、テキサスとカリフォルニアが組んで、ファシズムに対抗するなどという事態は、非常に想像しにくい。ガーランドが敢えてこうした設定にしたのは、観客に特定のイデオロギーを感じさせないためだたったと思われる。 とはいえ強権的な大統領の振舞いは、イヤでもアメリカの現状を想起させる。本作では“内戦”が起こった原因は、直接的には描かれていないが、大統領が何をやったかは、端的に語られる。 まず注目すべきは、この大統領は、現在“3期目”を迎えているということ。アメリカの憲法では、大統領の任期は“2期=8年”までと、明確に定められている。ということは、何らかの手段を以て、憲法を無視する挙に出て、大統領の椅子に居座り続けているということである。 またこの大統領は、FBI=アメリカ連邦捜査局の解体に踏み切っている。即ち政府の暴走や大統領の犯罪的行為を取り締まる機関が、存在しなくなったというわけだ。また連邦国家であったアメリカに於いて、州を跨いでの犯罪捜査が不可能になってしまい、治安の悪化にも繋がっている。 そしてこの大統領は、アメリカ市民への空爆を実施したことが、語られる。アメリカの三権分立は空文化し、大統領が己の保身と抵抗勢力を踏み躙るためには、「何でもあり」の状態になってしまっているのだ。 この作品がアメリカで公開されたのは、昨年=2024年4月。トランプが大統領選2度目の勝利を収める、7ヶ月も前のこと。元々トランプは、“3期目”を目指すことを、折りに触れては滲み出していたが、今年1月に正式に大統領の座に返り咲くと、FBI長官に己の意のままになる者を就け、大幅な人員削減に着手。トランプ関連の捜査を行っていた、スタッフの首切りを実施している。 そしてトランプは、“治安維持”をお題目に、ロサンゼルスやメンフィス、首都ワシントンなど、野党民主党の勢力が強い都市に、次々と州兵を送り込んでいる…。 恐ろしいほどに、トランプ2期目の今のアメリカと、情勢が重なってくるのだ! 本作の主役と言えるのは、戦場カメラマンの2人の女性。ベテランのリー・スミスと、新人のジェシー・カラン。この2人の名は、ガーランドが尊敬する2人の戦場カメラマン、リー・ミランとドン・マッカランに因んでいる。 キルスティン・ダンストは「(本作の)脚本を読んでドキドキ」し、翌日には監督とミーティングを行っている。そしてリーの役を、「絶対に演じたい」、リスペクトするガーランドと「仕事をしたい」と、強く思ったという。 ジェシー役に抜擢されたのは、ガーランド監督のTVシリーズ「DEVS/デヴス」などに出演していた、若手女優のゲイリー・スピーニー。 ガーランド監督は、ジャーナリストを目指していた頃の若き日の自分を、ジェシーのキャラクターに反映。リーのモデルとなったのは、その当時にガーランドが親しくしていた、経験豊富なジャーナリストだという。 撮影現場では、ダンストとスピーニーは、本作に於けるリーとジェシーのように、日々を絆を深めていった。過酷な撮影の中で、スピーニーはダンストの家に行っては、その家族との交流の中で、癒されていたという。 ダンストにとってスピーニーは、「妹のような存在」となり、ある時に友人であるソフィア・コッポラ監督に紹介。それがきっかけとなって、スピーニーはコッポラの『プリシラ』(23)で、プリシラ・プレスリーを演じることとなった。 リーの相棒ジョエル役には、TVシリーズ「ナルコス」で、実在の麻薬王パブロ・エスコバルを演じた、ワグネル・モウラ。黒人の老ジャーナリスト、サミー役は、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソンが演じた。 さて1シーンだけの出演だが、強烈な印象を残すのは、“虐殺”を主導する正体不明の民兵を演じるジェシー・プレモンス。 彼が放つ一言「What kind of American are you?(お前はどういう種類のアメリカ人だ?)」は、本作を象徴する強烈な名台詞となっているが、一体どんなシチュエーションで吐かれるかは、観てのお楽しみとしておきたい。 実はプレモンスの役は、当初別の俳優が演じることになっていたが、直前に降板。代役に思い悩むガーランド監督に、ダンストが、自分の夫であるプレモンスを、推挙したという流れだった。 撮影5日前に急遽出演が決まったプレモンスは、限りある時間で徹底的にリサーチ。兵士の話を聞きまくったという。因みに彼が掛けている赤いサングラスは、自ら用意した10種類ぐらいのメガネから、現場でピタッとハマったものを選んだという。 ガーランドは、絵コンテなどは用意せず、現場で起こることに即応して、撮影を進めていくタイプの監督。本作では小さな手持ち撮影のカメラを多用したという。 本作の軍事顧問を務めたのは、アメリカ海軍の特殊部隊ネイビー・シールズ出身のレイ・メンドーサ。彼の指導の下、画面に登場する兵士たちは、実際に従軍経験のある者ばかりだった。 クライマックスのホワイトハウス突入のシーンで、監督として兵士役の者たちに伝えたのは、カメラのことは気にしないで「普段通りに行動して」ということだけだったと。セリフも、兵士同士の普段の会話のため、ガーランドは、ドキュメンタリーを撮っているような感覚に陥ったという。 サウンド・デザインで銃器の怖ろしさを表現する工夫を施した本作は、アメリカでは163年前に“南北戦争”が勃発した、2024年の4月12日を選んで、公開。製作・配給のA24作品史上、最高のオープニング興収を樹立し、2週連続で興行ランキング1位を獲得する大ヒットとなった。 日本では大統領選直前の10月に公開となったが、それから1年余。現実を鑑みると、いま観た方が、更にゾッとする展開になっている。■ 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』© 2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2025.11.14
嵐の海を進む豪華客船に仕掛けられた“恐怖”——『ジャガーノート』の航跡
◆豪華客船を爆破の危機から救え! 1974年、イギリス映画『ジャガーノート』は、荒れ狂う北大西洋を舞台にしたサスペンス大作として製作・公開された。舞台となるのは総トン数約2万5千トンの豪華客船ブリタニック号。本船が大西洋横断の最中、何者かによって7つの爆弾を仕掛けられ、“ジャガーノート”を名乗る犯人が身代金として50万ポンドを要求する。荒天のため乗客の避難も不可能ななか、約1200人の乗客を救うべく爆薬処理班が派遣され、このシンプルかつ極限的な設定が、2時間近くにわたって観る者の緊張を持続させていく。 監督は、『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』(1964年)や『ナック』(1965年)で知られる俊英リチャード・レスター。彼はこの作品で、前半に軽快なテンポを与えつつ、後半に向けて緻密なサスペンスへと収束させていく。冒頭、軍の爆薬処理班が悪天候の中、輸送機からパラシュートで降下し、激しく揺れる船に乗り移るまでの一連の場面は、まさしくスペクタクルの粋を感じさせる。だが物語が進むにつれてカメラは次第に静まりを見せ、船室にこもる静寂とともに緊張を描き出していく。わずか小指の先ほどの回路を前に、爆弾処理班の手元が震える。恐怖とは爆音ではなく沈黙の中にこそ潜むものだと、レスターは見事に示してみせたのだ。 主演のリチャード・ハリスが演じるフォーリング中佐は、爆弾処理のプロフェッショナルとして航行中の豪華客船に降下し、乗客の命を預かる立場に立たされる。彼の飄々とした佇まいながらも冷静な判断が、観客の恐怖と緊張をいっそう際立たせている。対してオマー・シャリフが演じる船長アレックス・ブルヌエルは、航海の責任に苛まれながらも、激動の海上で毅然と行動する男だ。二人の関係の緊張が映画の中心に静かな熱を生み出している。さらに デヴィッド・ヘミングス、 シャーリー・ナイト、イアン・ホルム、アンソニー・ホプキンスら名優が脇を固め、群像劇としての厚みを加えている。 撮影は実際の豪華客船を用い、北海や北大西洋の実際の海上で行われた。荒れた天候を利用してカメラを回し、スタジオでは再現できない海の重量感がスクリーンにあらわれている。音楽を担当したケン・ソーンのスコアも見事で、管弦の旋律が波と風の轟音に交錯し、緊迫感をさらに高めている。 『ジャガーノート』は、パニック映画の系譜に属しながらも、派手な群衆劇とは一線を画している。爆発の恐怖を描きながら、決して観客を必要以上にあおらない。映画は人間の理性と狂気のせめぎ合いを冷徹に観察し、恐怖を構造として見せていく。救命艇も出せぬ嵐の中、孤独な技術者が見えない敵と闘う。この孤独の構図こそが、本作を70年代サスペンスの中でも異彩を放っているのだ。 荒れ狂う波間を漂う〈ブリタニック〉は、単なる舞台装置ではなく、人間の理性と偶然、秩序と混沌の象徴そのものである。 ◆リチャード・レスター 才気と放浪の映像作家 そう、こうして『ジャガーノート』を語るうえで、監督リチャード・レスターを抜きにすることはできない。彼は生粋のイギリス映画人に見えるが、その出発点はアメリカ・フィラデルフィアにある。ペンシルベニア大学で心理学を学んだのち、テレビ業界に進み、20代にしてイギリスのテレビ界でディレクターとして頭角を現す。風刺とテンポ感に満ちた演出で注目を集めた彼は、やがて映画界へと進出し、『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』で世界的な名声を確立する。CM演出なども手がけ、テンポの速い編集と軽妙なユーモアを武器に新しい映像感覚を確立していく。そして続く『ヘルプ! 4人はアイドル』(1965年)ではポップカルチャーの映像化に挑み、音楽映画というジャンルを根底から変えてみせた。 しかしレスターの野心は「ビートルズ映画の監督」という枠には収まらない。『ナック』ではカンヌ国際映画祭グランプリを受賞し、社会風刺と実験的映像を華麗に融合させた。その後、『ローマで起こった奇妙な出来事』(1966)や『ことづけられた情事(ペチュリア)』(1968)など、コメディからシリアスまで自在に行き来しながら、イギリス映画界に新風を吹き込んでいく。彼の作品には、常に登場人物を突き放して観察する冷静な視線と、どこか人間を愉快に眺めるようなバランス感覚が絶妙に機能し、それが後年の『三銃士』(1973年)や『四銃士』(1974年)の痛快さへと結実していく。 レスターにとって映画は、ジャンルやスタイルに縛られない実験の場だった。彼はしばしば「自分には固有のスタイルなどない。素材に導かれて動くだけだ」と語っている。その柔軟な姿勢こそが、まさに『ジャガーノート』への発火点となった。もともと他の監督による企画であり、前任の降板を受けて引き継ぐ形で参加したレスターは、自らの制約や演出スタイルを持ち込むことを避けた。だがそれでも結果的に、彼の作品群に通底する人間の滑稽さと理性への信頼が、思いがけず鮮明に浮かび上がることとなる。 ◆混沌の中の秩序──制作の舞台裏 『ジャガーノート』の誕生は、偶然の連鎖の産物だった。『三銃士』の撮影を終えたばかりのリチャード・レスターがスペインで休息を取っていた頃、プロデューサーのデニス・オデルから一本の電話が入る。新作サスペンスの監督ブライアン・フォーブスが降板し、代役を探しているというのだ。撮影開始までわずか4週間。多くの監督が尻込みする中で、レスターは即座に引き受けた。報酬は安く、準備期間もほとんどなかったが、彼にとって重要だったのは「作品そのものを愉しめるかどうか」という直感だけだった。 脚本はリチャード・アラン・シモンズによるものだったが、レスターは「全体を書き直すべきだ」と主張し、アラン・プラターとともに短期間で改稿を重ねた。結果、犯人像の曖昧さが残る代わりに、群像劇としての人間的リアリティが際立った。恐怖の根源は爆弾ではなく、人間の判断の誤差や偶然にあるという、レスターらしい視点である。完成版の脚本に不満を漏らしたシモンズは、“リチャード・デコッカー”の名でクレジットされた。 撮影は北海で行われ、使用されたのはのちに〈マキシム・ゴーリキー〉と改名されるドイツ客船〈ハンブルク号〉。嵐に見舞われながらの撮影は過酷を極め、多くの機材が損傷したという。レスターは即興の連続の中でも冷静さを失わず、リチャード・ハリスのカツラ問題を小道具の帽子で解決するなど臨機応変の才を発揮。撮影は予定より短期間で完了し、彼はすぐに『四銃士』の現場へ戻っていった。 公開後、『ジャガーノート』は興行的には中程度の成績にとどまったが、批評家たちはその緊張感とウィットを高く評価した。米『TIME』誌はレスターの演出を「冷静かつ風刺的」と評し、『Newsweek』も「同時期のパニック映画よりも爆弾処理の描写が現実的だ」と称賛。ポーリン・ケールは「冷たい人間描写」としながらも、その技巧を認めている。アメリカでは控えめな成績だったが、ヨーロッパでは一定の成功を収め、BBC放映時には1900万人が視聴した。 この作品でレスターは、ハリウッド的な誇張を避け、人間の知性と偶然のはざまにある静かなパニックを描いた。豪華客船ブリタニックが進むその姿は、社会という巨大な機構の象徴のようでもある。制御不能な力に翻弄されながらも、誰かが理性の火を絶やさずにいる──それがレスター流の英雄譚だったのだ。■ 『ジャガーノート』© 1974 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved