ザ・シネマ 飯森盛良
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COLUMN/コラム2009.06.26
人生いろいろ『フォレスト・ガンプ/一期一会』
ってのは、映画冒頭、主人公フォレスト・ガンプの最初のセリフなんですけど(母親の口癖の受け売りだけど)、この言葉が、作品のすべてを語り尽くしちゃってますね。この映画では、2、3の人生が描かれます。知能に障害を持つ男、フォレスト・ガンプ。子供の頃は身体も不自由で、補助具をつけないと歩くのも困難なほど。ただ、その補助具が星飛雄馬にとっての大リーグボール養成ギプス的な役割を果たしちゃって、ガンプの脚力は、気づかぬうちに常人をはるかに上回るものになっていた。 で、とあることがキッカケで、逆に韋駄天としての超人的能力を発揮することに。それ以来、この、「ムっチャクチャ足が速い」という特技のおかげで、ガンプの人生には次から次へと幸運が舞い込んできます。野心も野望も打算も下心もなく、ただ、その時その時の自分の人生を、バカ正直に生きた男の、夢のような成功物語。ヒューマン・ドラマであると同時に、一風変わったアメリカン・ドリームを描いたサクセス・ストーリーでもある。主人公のガンプを軸に見れば、これは、そんなお話です。いっぽう。ガンプの幼なじみの女の子でヒロインのジェニーは、ヒっドい人生を送ってます。子供の頃は父親に虐待され、女子大に入るとエロ本に出たことがバレて退学に。その後、成人してからも踏んだり蹴ったりの人生。ガンプとジェニーは、世代的には“団塊の世代”です(アメリカにゃないだろ)。1950年代に子供時代をすごし、60年代に青春時代を送って、70年代にオトナの仲間入りをした。まさしくアメリカ現代史を駆け抜けてきた、そんなジェネレーション。 ジェニーは、その時代感覚に染まりきって生きてる女。女子大生の頃はジョーン・バエズにあこがれてフォーク・シンガーになる夢をいだくものの、例の顔出しエロ本発覚事件のせいで場末のストリップ小屋に身を沈めることに。ビートニック・ビューティー“ボビー・ディロン”ってバカっぽいやっすい源氏名で、野郎どもにヤラしい野次をあびせられたり、触られたりしながら、全裸でギターを弾き語りします。その頃“ビート族”が流行ってたから、「ビートニック・ビューティー」。ボブ・ディランのブレイク直後だから、「ボビー・ディロン」。その後も、ビート族からヒッピーになって、みんながシスコに詣でればシスコに行き、みんながワシントンDCでベトナム反戦デモをすればそれに加わり、マリファナとかアシッドだとかの悪い草やクスリにも手を伸ばす。流行ってたから。そのうちヒッピーが時代遅れになって70年代ディスコ・ブームが到来すると、今度はそれ風のファッションに身をつつんで、コカインとかヘロインとかまでやっちゃって、いよいよもって廃人路線を転がり落ちてく。ただ時代に流されていくだけ。時代を生きるんじゃなくて、ただ流されるまま。ガンプの方は、時代という枠の中でも、あくまでマイペースで生きてくんですけど、そういうことが、このジェニーって女には、できない。で、どんどんドツボにはまってく。なんとか逃げ出したい。「鳥になってここから飛んでいきたい」と少女の頃からずーっと祈りつづけ、人生を自分の手にしっかりと掴みたいと必死で願ってるのに、掴めず、ただ流されるまま、けっきょく抜け出せずに、もがきつづけて、どんどん身を落としてく。でも、流されるだけのジェニーを、ゼメキス監督は、映画の中で罰してるワケじゃないと思うんです。罰として次々に不幸がふりかかってるワケじゃないだろうと思うんです。この映画って、ガンプは正直者だからラッキーな人生を送り、ジェニーはスレた女だから不幸になった、という「因果応報」の物語では全然ない、とワタクシは感じるのであります。人生の浮き沈みなんてもんは、しょせん運でしかありません。流される女ジェニーは、よくある人間類型です。むしろ、ガンプのように流されずマイペースを貫ける人間ってのの方が、実はレアな存在でしょう。俊足・強運・マイペース。ガンプこそ、現実には存在しない、実は“超人”なんであって、ジェニーのような人ってのは、いつの時代・どこの国でも見られる、よくいるタイプなんじゃないんでしょうか。日本で言うと、バブルの頃にブイブイいわせてたイケイケのオヤジギャル。または、10年ちょい前に品行よろしからぬ女子高生ライフを送ってた元コギャル。あの人たちって、いったい今、どうしてるんでしょうか?あの人たちのそんな生き様ってのも、べつに間違ってたってワケじゃない。その後の人生で罰を受けて当然というほどの罪など、犯してはいないはずです。ただ、ほんのちょっと運を逃しちゃったがために、ジェニーみたく、人生の底まで沈んで行き、いまだに浮き上がれずにもがき苦しんでいるかもしれません。この2009年の日本のどこかには、きっと、そんな和製ジェニーな感じの方たちが、少なからずいるような気がしてなりません。映画『フォレスト・ガンプ』では、そんな、運に見放された気の毒な人を代表しているヒロインの、逆サクセス・ストーリーが、主人公のサクセス・ストーリーの裏で、表裏一体の関係で描かれていきます。ヒューマン・ドラマであると同時に、挫折と転落と蹉跌のドラマでもあるんすわ、この映画は。つまり、結論としては「人生いろいろ」。運のいい人、悪い人、いろいろあります。それがテーマです。ってオイ、そんなナゲヤリなテーマあるかい!そう、それを踏まえた上で、この映画では大感動のポイントがちゃーんと設けられてるんすわ。超ラッキーな男ガンプが、子供の頃から一貫して、不幸なジェニーのことを一途に想いつづけてるって点。それがそのポイントです。ストーリーは実際のアメリカ現代史(リアル)を時代背景に展開しますが、2人がつむぐ物語って、はっきり言って、リアリティまるっきしありません。ヒューマン・ドラマって、いかに人間をリアルに掘り下げて描けるかっつうとこがキモなんすけどねぇ…。ラッキーな方がアンラッキーな方を何十年間も慕いつづけてる、幼なじみの何十年ごしの片想い、なんてのは、かなりメルヘンチック(非現実的)な筋立てでしょう?でも、非現実的だけど、かなり素敵ではある。これほどまでに素敵なメルヘンを、ワタクシは他に知らんのです。ヒューマン・ドラマであると同時に、いや、ヒューマン・ドラマである以上に、ワタクシに言わせりゃ、これは、映画史上もっとも美しいメルヘンなのです。そのメルヘン要素が、多くの人を泣かせたんじゃないでしょうかね。ほんとに、生まれてきた甲斐も無いってぐらいな不幸なジェニーの人生ですが、どんなドン底の時でも、離れててどこで何してても、純真無垢なガンプがずーっと彼女のことを想い続けてる、って事実が、彼女の人生の救いであり続けるんですな。映画を見てる方にとってもこれは救いです。この作品、純愛ストーリーでもあるんです。さらに。2つの人生がおりなすメルヘンとはちょっと離れたとこから、この映画では、3つめの人生を、追っかけてます。まずこの世にいなさそうな男、強運の持ち主、天然マイペースの“超人”ガンプ。流されるだけの女、よくいるタイプ(ここまで不幸なのは滅多にいないかも)なジェニー。そして、第3の人物の登場です。この人物こそ、もっともボクらに近い、いちばん普通の人生を歩んでるキャラなんじゃないでしょうか。運が良くもないけど、悪くもない。おおよそ普通。大過なく生きてきて、ある日ある時、思ってもみなかったような信じられないぐらいの災難に見舞われてしまう…。そういうことは、誰にでもありえます。愛する人が突然死んだ。深刻な病気だと宣告された。事故に巻き込まれた。いきなり解雇され生活が破綻した…。そういうことが自分の身にだけは絶対に起こらない!と言い切れる人なんて、誰もいやしません。豚インフルだ不景気だなんていってる今日日は、特にそうです。そういう目にあってしまった一人の人物が、我が身の不幸を嘆き、神を呪い、自暴自棄になり、死にたいなどとグチりながら、ちょっとずつ再生してく姿が、この映画の3番目の人生として、描かれます。いや、3つじゃなくて、4つ目の人生も描かれてるかもしれません。ここまでのこのブログの中で、いろいろと妙なカタカナ語を書いてきました。「ジョーン・バエズ」と「ボブ・ディラン(これは分かるか)」、「ビートニク(ビート族)」…etcつまりですねぇ、とりあえずガンプが物心ついてからはケネディ→ジョンソン→ニクソン→フォード→カーター→レーガンと、大統領が6代も替わってる(そのうち何人かとガンプは会って言葉をかわしてる。会ってなくても劇中にニュース映像としては出てくる)ぐらい、1960年代(少年時代を入れると1950年代)~80年代までの、文字どおりアメリカ現代史が、映画の時代背景として描かれてんですわ。その当時の世相とか、社会情勢とか、流行とか、ファッションとか、音楽とかも、この映画の中には、これでもかとテンコ盛りに盛り込まれています。ここ数十年、アメリカという国が歩んできた道のり。もしかしたら、それは映画の中で描かれてる、4つめの人生なのかもしれません。つまり、一国の人生(ヒューマン)ドラマでもある。こりゃアカデミー賞獲るワケだ!さて。映画と同じように、このブログも最後に冒頭1行目に戻りましょう。「人生はチョコレートの箱みたいなもの。食べてみるまで中身は分からない」このテーマを常に意識的に思い返しながら、以上の4つの人生を追いかけてみてください。この、映画史上たぶん十指に入るぐらい(ワタクシの独断)のヒューマン・ドラマの大傑作『フォレスト・ガンプ』を、より楽しめちゃうことでしょう。■ TM & Copyright? ©? 1994 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2008.12.09
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』補足ブログ
本作のメイン舞台は、まずゴンドール国(の都ミナス・ティリス)。ここを舞台に、ガンダルフ、アラゴルン、レゴラス、ギムリ、メリー&ピピン、さらには『2』に出てきたローハン騎馬軍団やゴンドールのお坊ちゃまファラミア隊長らが勢ぞろいで大活躍します。もうひとつのメイン舞台がモルドール国。とうとうフロドとサムはモルドール領内に足を踏み入れ、この壮大なる物語はついにクライマックスを迎えるワケっすわ!ゴンドール国の戦いはゴンドール防衛軍と援軍のローハン騎馬軍団、人間の軍隊だけで二勢力が出てきますが、どっちも鎧と盾って衣装なんで、よっぽどそういうのに興味がないと、どっちがどっちだか見た目で区別つかん、話がますます混乱する、という事態になるかもしれません。見分けるポイントとしては、バイキングみたいな戦士が馬に乗ってるのがローハン騎馬軍団です。色的には赤茶っぽい鎧に緑のマント。あと、だいたい金髪か明るい茶髪の人が多いですな。助けに来てくれる側がこっち。一方のゴンドール軍は、町の守備兵で、黒鉄色の甲冑を着てて(胸や盾に樹の紋章あり)、基本・徒歩だちで、黒髪かダーク茶髪の人が多いです。救援される側がこちらです。ゴンドール国の戦いは、この二国、助ける軍・助けられる軍の関係を把握しながら見れば、あんまし混乱しないですむかと。んじゃ、以下、ストーリーのおさらいです。警告:以下の文章には、致命的なネタバレ情報が含まれます。映画本編を見る前には、絶対に読まないでください!・ 騎馬民族国ローハンを救ったガンダルフ、アラゴルン、レゴラス、ギムリは、ローハン軍と一緒に陥落したアイゼンガルドにやって来て、そこでメリー&ピピンと再会を果たす。ピピンは瓦礫の中から、悪の魔術師サルマンの持ち物だった黒い水晶玉みたいなのを発見する。 ↓・ この玉は悪のテレパシー装置みたいなもんで、素手でさわると、冥王サウロンと意識が直接つながっちゃって、未来が見えたりもする。トラブルメーカーのピピンがこれをさわってしまう。そして見たのは、燃え落ちるゴンドール国の都ミナス・ティリス市の幻影だった。 ↓・ 冥王サウロン軍の攻撃目標がミナス・ティリス市だと分かった一行は、その救援に向かおうって話に。でもローハン王セオデンは、『2』で自分たちが攻められてた時にゴンドール国が助けてくれなかったことを根に持ってて、救援を渋る。 ↓・ とりあえずガンダルフは、トラブルばっか起こしてるピピンを連れて、一足先にゴンドール国ミナス・ティリス市に警告するため先行して旅立つ。※ここにきて再び一行は2チームに分裂。以下、TEAMガンダルフとTEAMアラゴルン別々に見てきます。【TEAMガンダルフ】メンバー:ガンダルフ、ピピン ・ ゴンドール国ミナス・ティリス市に着き、執政デネソール候に謁見。このデネソール候って、『1』で死んじゃったボロミア・『2』でTEAMフロドを捕らえたファラミア隊長兄弟のパパで、いちおう王家の絶えたゴンドール国では代理トップの地位にいる人。この人、ピピンのことは気に入って自国の城兵として取り立てたりするが、「騎馬民族国ローハンに助けを求めれば?」ってガンダルフの提案は拒否。ってのもローハン軍には王家の末裔アラゴルンが参加してるからで、アラゴルンがここに帰ってきたら(=王の帰還)、権力の座を返さなきゃならない、ってことが気に入らない模様。ま、今年ブームの『篤姫』風に意味もなく例えりゃ、大政奉還・王政復古をイヤがってるワケですな。 ↓・ と、かたくなに助勢を拒否されても敵を利するだけなんで、TEAMガンダルフは勝手に救援狼煙に火をつけちゃう。この狼煙が上がるとローハン騎馬軍団が助けに来てくれるって約束が両国間には結ばれてる模様。 ↓・ ゴンドール国にはミナス・ティリス市より敵国モルドールに近い場所にオスギリアス市って町(廃墟。『2』でファラミア隊が戦ってた場所)がある。そこがモルドール国のオーク族軍団の攻撃を受けちゃって、陥落。 守備隊長のファラミアはどうにかミナス・ティリス市まで退却してきて、そこでTEAMガンダルフに会い、こないだTEAMフロドと会ったばっかだと伝える。 ↓・ デネソール候は、息子のうち故ボロミアをえこひいきしてて次男ファラミアを毛嫌いしてるんで、「おめおめ生きて帰って来やがって、兄さんとは大違いの、この不肖の息子めが。お前が死にゃよかったんだ、今からでも特攻してこい」的なヒドいことをファラミアに言う。凹んだファラミア、仕方なく寡兵でオーク族のオスギリアス市占領軍に向かって特攻するが、とうぜん全滅。 ↓・ ファラミアが死にかけて戻ってくると、自分のせいなのにパパのデネソール候はうろたえ、さらに、自国がついに敵軍に包囲されちゃった光景を目の当たりにして「なんでローハン騎馬軍団は救援に来てくんないんだ!」と完全に逆ギレ。「もう自殺する!!」などと言い出し、ファラミアと一緒に無理心中(焼身)するが、ファラミアだけがTEAMガンダルフに救出される。 ↓・ オーク族の包囲軍がミナス・ティリス市への攻撃を開始。さらに、空から翼竜みたいなのに乗って飛来した指輪の幽鬼ナズグルの親分に、ガンダルフが襲われる。 ちょうどその時、ローハン騎馬軍団の援軍が到着!ナズグル親分はそっちの戦場へ向かって飛び立ち、ガンダルフは助かる(こっから先の展開はTEAMアラゴルンの箇所を読まれたし)。【TEAMアラゴルン】メンバー:アラゴルン、レゴラス、ギムリ、メリーおよびローハン騎馬軍団(国王セオデン、青年将校エオメル、男勝りの姫エオウィンなど) ・ TEAMガンダルフが勝手に上げた狼煙を見て、救援に行くことを渋ってたローハン国王セオデンも考えを変える。かくして、中つ国最強の緑備えのローハン騎馬軍団、およびTEAMアラゴルンは、ゴンドールの都ミナス・ティリス市をめざすことに。 ↓・ 途中、アラゴルンの先祖に不義理を働いたため呪いをかけられて成仏(?)できないでいる亡霊どもを味方にできたら、戦局もちょい有利になるかもね、と思い立ったアラゴルンは、レゴラス・ギムリとともに、亡霊どものいる洞窟に向かう。この時点で一時的にローハン騎馬軍団から離脱。そして亡霊どもを「子孫のオレに加勢してくれたら先祖の呪いをオレが解いてやってもいいけど、どうよ?」的に誘って、連中を味方に引き入れることに成功する。 ↓・ ローハン騎馬軍団、ゴンドール国の都ミナス・ティリス市に到着。すでにゴンドール守備軍とモルドール国オーク軍団との間で戦端は開かれてたが、その敵軍の側背に騎馬突撃を敢行。その後、象の超巨大版みたいなバケモノや、翼竜みたいなのに乗った指輪の幽鬼ナズグルなどとも死闘を続ける。そのさなか、ローハン国王セオデン、討ち死に! ↓・亡霊軍団を率いたアラゴルンとレゴラス、ギムリは、まず敵国側についた傭兵海賊を倒して船を奪い、その船で河を進み戦場ミナス・ティリス市に馳せ参じ、敵の包囲軍や象の超巨大版みたいなのを攻撃。敵を全滅させた。かくして、善の勢力、勝利!ただし亡霊軍団は、約束どおり成仏(?)してしまい、以降の戦いでは加勢してくれず。※ここでTEAMガンダルフとTEAMアラゴルンは再合流をはたす。アラゴルンは王としてゴンドール国の指揮官となり(執政デネソール候の焼身自殺、その息子ファラミア隊長の負傷による戦線離脱のため)、ゴンドール軍、ローハン騎馬軍団、それにガンダルフ、レゴラス、ギムリ、ピピン&メリーらと、敵国モルドールをめざして進軍。モルドール国の玄関口「黒門」のところ(『2』でTEAMフロドが侵入をあきらめた場所)にて敵軍を挑発する。その目的は、敵軍の注意を最大限こちらにひきつけ、TEAMフロドの滅びの山突入作戦を容易にすること。 ↓・勝ち目のない陽動作戦だったが、TEAMフロドが任務を遂行し、指輪が破壊されたため、悪の魔力が消えて敵軍は壊滅し、ついに善の勢力は完全勝利をおさめる!【TEAMフロド】メンバー:フロド、サム、ついでにゴラム ・ モルドール国めざしてどんどん進む3人。途中、ミナス・モルグルという、指輪の幽鬼ナズグルの居城である、緑色に光ってるヤバそうな要塞みたいなとこの脇を通過(この時、ミナス・ティリス市攻撃のためナズグルとオーク軍団が出陣してく)。 ↓・ フロドとサムを仲たがいさせようというゴラムの悪だくみによって、フロドはサムの友情と誠実さを疑い、追い払ってしまう。 ↓・ 邪魔者サムがいなくなったことで、いよいよゴラムはフロドのことを罠にかける。「キリス・ウンゴルって峠のトンネルしか先に進める道はない」と言い、フロドをそこに誘い込んで、その中に巣を張ってる巨大グモに襲わせる計画。で、フロドが泡食ったところにすかさず襲いかかり、指輪をふんだくろうと試みるものの、フロドに蹴飛ばされ、ゴラム、崖の上から転落。 ↓・ フロドに追っ払われちゃったサムはトボトボもと来た道を帰ろうとするけど、その途中の道端にはゴラムが陰謀をめぐらしてる決定的な証拠が残されてた。それを見て、フロドを助けようと急ぎ引き返し、フロドが巨大グモに襲われてる現場に駆けつけ、どうにかこうにか巨大グモを撃退。だが時すでに遅く、フロドはクモの毒針に刺されて死んじゃってた…。 ↓・ フロドの死体は、その場にやって来たオーク族によって運ばれてく。でも、実は死んだんじゃなくて、毒針で麻痺してただけ。と、いうことを知って愕然となったサムは、フロドが運ばれてったオーク族の牢獄みたいなとこに突入、息を吹き返したフロドを救出する! ↓・ そっからモルドール国はすぐで、ついにフロドとサムはモルドール領内に足を踏み入れることに。そこには見渡すかぎりオーク族がウジャウジャいて、とても踏破できそうになかったが、なぜか急に、オークたちがどっかあさっての方向に向けて移動を開始。冥王サウロンの監視の目もそっちの方角に向けられ、2人はノーマークで先に進めるようになる(実はこの時、TEAMアラゴルンが「黒門」で陽動作戦を展開し、敵の注意がそらされたため)。 ↓・ ついに滅びの山に到着。だが、崖から落ちたはずのゴラムが実は生きてて、襲ってくる!で、取っ組み合い、くんずほぐれつのドツキ合いをしながら、ついにフロドは、指輪を奪い取ったゴラムごと、滅びの山のマグマの中に、指輪を叩き落すことに成功する。マグマの中で指輪は溶解、かくてミッション達成!ついに世界は救われた!!【エピローグ】旅の仲間全員は再会を果たし、アラゴルンはゴンドールの王位に就き、ハッピーなムードのうちに旅の仲間は解散。フロドらホビット族4人衆はホビット庄(シャイア)に無事に戻り、その後、サムは結婚。そして、何年かが過ぎる。フロドは例の養父ビルボが書いた『ホビットの冒険』の続編として、自身の回想録『指輪物語』を執筆するんだけど、その頃になっても『1』で指輪の幽鬼ナズグルに刺された古傷が癒えず、西の海の彼方、神々の土地に移住して養生しなきゃならなくなる。フロドは、エルフ族、ガンダルフ、養父ビルボ(指輪の超自然パワーが無くなってから急に老け込んだ)とともに、船に乗って西の方角へと旅立ち、二度と戻らなかったのでした。終劇!■いっやー、お疲れ様でした! このブログも異常な文章量になっちゃいましたけど、実はこれでも、覚えとかなくてもとりあえずストーリーについてく上で困らない固有名詞の解説やら、本筋に直接影響してこないサイドストーリー的なエピソードなんかは、極力、省いてるんですわ。が本当は、その細部にこそ、神は宿る!『指輪物語(LotR)』のほんとにほんとの魅力は、実はそこなんです。たとえば、ミナス・ティリス市と、ナズグルの居城だったミナス・モルグルって、なんとなく名前が似てるけどなんでだろ、とか、オスギリアス市はなぜ廃墟なんだろとか、こういったことにもちゃんとワケがある。フロドが去っていった西の海の方には何があるのか、その背景も、実はちゃーんと作られているんです。さすがにマニアうけのいい作品だけあって、ネット上には『指輪物語(LotR)』関連の情報、用語解説なんかがいくらでも載ってますんで、映画見て、この魅力にハマりそうだ、と思った人は、まずはネットでどんどん調べてみてはいかがでしょう?映画『LotR』は、小説では読んだ人が頭の中で想像するしかなかったシーンを、ワタクシのようなド凡人の乏しい想像力では無理なレベルの圧倒的ヴィジュアルに映像化してみせたって点で、本当にすばらしい! 原作ファンも、その点では100点満点をピージャック監督にあげられるんじゃないでしょうか?映画のヴィジュアルをまぶたに焼き付けた上で、ワタクシとしては、やっぱり原作も読まれることをオススメいたします。この長大な映画版より実はもっともっと情報量の多い超大河小説を、映画が見せてくれた圧巻のヴィジュアルイメージの記憶で補完しつつ読み進められりゃ、まさに鬼に金棒! 100%完璧にファンタジー文学の最高峰『指輪物語』の魅力を堪能できるだろうと思いますよ。長い小説ですけど、20世紀文学史の金字塔でもある大傑作ですんで、この年末年始の休みにでも、未読の人はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょ。©MMIIINew Line Productions, Inc.All Rights Reserved..
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COLUMN/コラム2008.12.07
『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』補足ブログ
さぁ、物語もいよいよ佳境に入る『2』こと『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』です。『二つの塔』とは、冥王サウロンの住むバラド=ドゥア塔と、裏切り者の魔法使いサルマンの本拠地アイゼンガルドにそびえるオルサンク塔のこと。いわば、悪の枢軸みたいなもんですな。しかし、本作で重要になるのはオルサンク塔の方で、それが『2』のメイン舞台のひとつ(バラド=ドゥア塔は『3』のメイン舞台です)。ここで活躍するのがメリー&ピピンの名コンビです。一方、もうひとつのメイン舞台が騎馬民族国ローハンで、こちらではアラゴルン、レゴラス、ギムリが活躍します。フロドとサムの2人は今作ではしゅくしゅくと滅びの山のそびえるモルドール国をめざして歩き続けます。『1』のラストで旅の仲間は3つに分裂、『2』では各チームがそれぞれの冒険を続けます。以下、TEAMフロド、TEAMメリー&ピピン、TEAMアラゴルンとして、『2』でのそれぞれの動きを追ってきましょう。警告:以下の文章には、致命的なネタバレ情報が含まれます。映画本編を見る前には、絶対に読まないでください!【TEAMフロド】メンバー:フロド、サム、ついでにゴラム・ 滅びの山がそびえるモルドール国めざして、ドヨーンと暗いムード漂う荒れ地を進む2人(暗いムードすぎてここがすでにモルドール領内かと勘違いする向きもありそうですが、全然モルドールの手前です。モルドール領の陰鬱さはこんなもんじゃありません!)。道中、2人はゴラムの襲撃を受ける。こいつ、現指輪所有者フロドの前の所有者ビルボの、そのまた前のオーナーだった奴で、まだ指輪に未練がある。 ※ 補足:なんだけど、そこらへんのいきさつ本編では詳しく描かれてません。描かれてるのが『ホビットの冒険』だってのは前回ブログにて既述のとおり。ゴラムの襲撃を撃退する際、フロドが「この剣は“つらぬき丸(スティング)”だ。見覚えあるだろ、ゴラム」とかミエ切ってますが、この剣も元は養父ビルボの物。『1』の時に“裂け谷”でフロドがビルボから譲られるシーン、ありましたよね。『ホビットの冒険』に、洞窟の中でゴラムがビルボの持つ“つらぬき丸(スティング)”にややビビり気味という記述があるんですが、それ知らなきゃこんなセリフ意味わからんって。 ↓・ ゴラム、その剣で脅され、指輪の奪回を断念。以後、下手に出てフロドにおもねる。TEAMフロドはこのゴラムを案内役に立てモルドール国を目指すことに。『1』で描かれてたとおり、ゴラムはモルドール国に拉致られて拷問うけた暗い過去があるんで、モルドールへの道はよく知ってる。 ↓・ 変な沼とかでいろいろあったけど、どうにかモルドール国の玄関口である「黒門」に到着。ただ、どう見ても突破なり潜入なりできるような状態じゃなかったんで、そこからのモルドール入りは断念。ゴラムが「別ルートがある。ヤバい道だけどそっちのがまだ可能性ある」とここにきて初めて明かしたんで、そっちルートに変更。 ↓・ 新ルートを進んでると、モルドール勢と対抗勢力との小競り合いに巻き込まれ、その対抗勢力の方にTEAMフロドは捕まってしまう。その対抗勢力ってのがゴンドール国。部隊を率いるのは例の死んじゃったボロミアの弟ファラミアだった。ゴンドール国はモルドール国と戦争してるんでTEAMフロドにしてみたら味方サイドのはずだけど、この国の連中、どうも禁じ手とされる「指輪使って一発逆転」狙いたがる悪いクセがあって、今度のファラミア隊長も兄貴のボロミアと同じことを考え、指輪を自国ゴンドールに持って帰ろうとする。 ↓・ でモルドールとの戦争の最前線にあるゴンドール国の町(といっても今は廃墟)オスギリアス市が攻撃を受けてるってんで、ファラミア隊に連行されてTEAMフロドもそこに行くハメに。ここでの戦闘では指輪の幽鬼ナズグルが翼竜みたいなのに乗って襲いかかってきて、そのさなかにフロドとサムの友情パワーの感動シーンが描かれたりする。その麗しい模様をコッソリ影で見てジーンときちゃったファラミア隊長は、2人を(ってか指輪を)ゴンドール国へ運ぶっていう禁じ手的な企みを断念。滅びの山への旅を続けていいと言い、TEAMフロドは無駄な足止めからやっと解放される。 ↓・ っていうか結局モルドール国に一歩も足を踏み入れられないまま、『2』終劇!しかもゴラムはしおらしく案内役を努めているようでいて、腹に一物ある模様…。【TEAMメリー&ピピン】メンバー:メリーとピピン ・ 悪に寝返った魔術師サルマンが放った強化オーク族“ウルク=ハイ”を中心としたオーク部隊に誘拐された(指輪を持ってるフロドと間違われて)2人だが、隙を見て逃げ出す。 ↓・ で、逃げ込んだ森で、木の精というか生きている樹というか樹木型二足歩行生命体というか、そんな感じのエント族と知り合い、実は死んでなかったガンダルフとも再会を果たす。ガンダルフの依頼で、エント族が2人をかくまうことに。 ↓・ メリーは、エント族も悪との戦いに加わるよう演説をぶつが、いまひとつ響かず。そこで今度はピピンが一計をめぐらし、エント族を悪に寝返った魔法使いサルマンの根拠地アイゼンガルド近くまで連れて行くことに。 ↓・ アイゼンガルド周辺はサルマンの富国強兵策によって豊かな森林が伐採され、一部、工業地域化されてた。それを見た森の守護者たるエント族は、ピピンの思惑どおり激ギレ!おりしもアイゼンガルドの10,000を下らないと言われる軍勢は騎馬民族国ローハン攻めのため出払っていて空城同然だった。その空城でエント族は大暴れを始め、堤防を決壊させて水攻めに。アイゼンガルドは床上浸水で復興不能状態、完膚なきまでに叩き壊されちゃう。それを自宅兼事務所(多分)である塔の上からなすすべもなく見てるしかない魔法使いサルマン、泣きそう…。「二つの塔」のうちの一方(オルサンク塔)、陥落!【TEAMアラゴルン】メンバー:アラゴルン、レゴラス、ギムリ ・ 誘拐されたTEAMメリー&ピピンを助けようと跡を追うが、森の中でガンダルフと再会。「あの2人はもう大丈夫」と聞いて一安心する。自分たちで救出はできなったが、結果よければすべて良しで、TEAMアラゴルンは別の戦いに身を投じることに。めざすは騎馬民族国ローハンだ。 ↓・ローハン国では国王セオデンが悪の魔法使いサルマンの魔法で廃人同然になっており、憂国の青年将校エオメルを国外追放するよう仕向けられるなど、魔法使いサルマンの意のままに操られてた。 ↓・ローハン国にやって来たガンダルフの善の魔法によってセオデン王の呪縛が解け、以後、ローハン軍は善の側として戦いに参戦。TEAMアラゴルンもこの軍に加勢する。 ↓・ 悪の魔法使いサルマンは冥王サウロンの指令に基づき人間絶滅のいくさを本格始動。その手始めに狙われたのが、自分のコントロール下から抜け出し反抗的になった騎馬民族国ローハンだった。ハンパない数の軍勢をローハン国に差し向ける魔法使いサルマン。ローハン国王セオデンは都を捨てて難攻不落の砦がある渓谷に全住民で立てこもると決める。TEAMアラゴルンも同行。ただしガンダルフは、例の追放された青年将校エオメルを呼び戻しに、どっかへ行っちゃう。 ↓・ アラゴルン、ローハン国の威勢のいいお姫様(セオデン王の姪)に片想いされちゃったり、崖から落ちたりといろいろあった後、渓谷の砦はいよいよ魔法使いサルマンが差し向けた軍勢に包囲される。彼我兵力差、なんと10,000vs300。スパルタ人でもなけりゃまず勝てない! ↓・ ローハン国王セオデンは「ウチには親しくしてる国なんて無いから、どうせどこも援軍には来てくれない」と捨て鉢ぎみだったが、 『1』に出てきたエルフ族が善の勢力同士ってよしみだけで援軍に来てくれて、人間のローハン国+エルフ族の混成軍が出来上がる。 ↓・ でもやっぱ多勢に無勢で勝てない。そもそも騎馬民族に篭城戦は向いてないってことで、最後は残った10騎ぐらいで騎乗カミカゼ特攻を敢行し華々しく散ろうとするが、ちょうどその時、ガンダルフが例の追放された憂国青年将校エオメルとその部隊2,000騎を引き連れて戻って来て敵攻囲軍の後背を突いたんで、形勢逆転!勝った!!とまぁ、こんな推移で『2』は終わり。『3』ブログに続く。■ ©MMII New Line Productions, Inc.All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2008.12.06
『ロード・オブ・ザ・リング(旅の仲間)』補足ブログ
『ロード・オブ・ザ・リング』の『1』についてちょいと補足します。ちなみに原作『指輪物語』ですと『旅の仲間』ってサブタイトルがちゃーんと付いてます。まずは、しょっぱな冒頭ですよね、『LotR』を初心者にとっつきにくくしてる元凶は。指輪がどうして世に生まれて、どうやってホビット族の手に入るに至ったのかを、ものすっごく駆け足でハショりまくって見て行くプロローグ的部分です。ここだけ補足説明しとけば『1』はまず完璧でしょう。ものの7分ちょいのプロローグなんですが、この7分間が超重要なんです!えー、この7分の中に、ホビット族のビルボ(主人公フロドの養父)が洞窟の中で指輪をたまたま拾うシーンがございますが、これ、実は『ホビットの冒険』っていう『指輪物語(LotR)』とは別の物語から引っぱってきた重要場面なんです。『ホビットの冒険』ってのは『指輪物語(LotR)』のいわゆる“エピソードI”的な前日譚です。これも前・後編でそのうち映画化されるらしいっすけどね『ホビットの冒険』の主人公はビルボで、13人のドワーフ族とともに大冒険を繰り広げるってお話なんですわ。ガンダルフとかエルロンドとか、ガンダルフを塔のてっぺんから救出した鷲とかも出てきます。映画『1』冒頭、ビルボとガンダルフが再会を喜ぶシーンがありますが、2人は『ホビットの冒険』時代に一緒に冒険した仲なんで、えらい懐かしかったんでしょう。そのシーンで、ビルボがガンダルフに「隠居してどこかで静かに本を書き終えたい」とかなんとか言ってますけど、本ってのはビルボの回想録のこと。それこそが『ホビットの冒険』なんです。つまり『ホビットの冒険』はビルボ・バギンズ著のノンフィクション、って設定になってるワケ(後で“裂け谷”のシーンで完成した本が出てくる)。さて、ビルボが指輪を拾った話に戻りますと、それがらみで『ホビットの冒険』に登場してくるキャラがゴラムです。さすがに重要すぎるキャラなんで映画『1』でもちょいちょい説明されてますが、かなり説明不足ですんで、ここで補足しときます。ゴラムは指輪の元の所有者で、指輪の魔性に魅入られ、洞窟の中で引きこもりな生活をしてた奴です。こいつがある時、大事な指輪をたまったま洞窟の中で落とすかなんかしたんです(っていうか、いつまでヒッキーに死蔵されててもラチ明かんと、冥王サウロンのもとに帰りたがってる指輪が、おのれの意志で逃げ出した)。で、その指輪を、大冒険のさなか、たまたま別件でゴラムのいる洞窟をさまよってたビルボが拾ったんですわ。直後、ビルボはゴラムと出会い、なぜか洞窟の真っ暗闇ん中でナゾナゾ対決をするハメになります。実はゴラムって、ナゾナゾ大好きという、意外にカワイイ一面があるんで。で、ビルボが勝てば洞窟の出口までゴラムに案内してもらえ、ゴラムが勝てばビルボを食ってもいいという、まさに生死を賭した勝負になったんです(『2』以降、ゴラムが刺身好きってのは描かれますが、平気で人も食っちゃうんです、実は)。で、押され気味だったビルボが最後にビルボ「いま私のポケットに入ってるものなーんだ?」ゴラム「分かるかそんなの!」(正論です)という反則技で逆転勝利(?)するんですが、ゴラムがその直後に大事な指輪を紛失したことに気づき、「指輪だな!?ポケットの中に入ってたのは指輪だな!お前が盗みやがったんだな!? 返せこのヤロー!!」という展開になるワケです。ビルボは指輪はめて透明になってその場を無事に切り抜けました(よく指輪はめた時のあの強烈な不快感に堪えれたな、ビルボは)。えー『1』の劇中、ビルボが旅立った後、主のいなくなったビルボの家で、主が残していった指輪を前に、ガンダルフがパイプをくゆらせつつ物思いに耽りながら「発端は“暗闇の謎問答”…」などとつぶやくシーンがございますが、このことを言ってたんですな。ナゾナゾ合戦のことは映画『LotR』劇中ではいっさい触れられてませんので、このセリフは『ホビットの冒険』を読んだことない人には完全に意味不明です。ちょいヒドいよな、この作りは。だから分かりにくい映画とか言われちゃうんだよ…。とにかくですね、このゴラムってのは『2』、『3』以降、フロドとの絡みで決定的に重要な役割を果たしていくキャラなんで、以上ながながと記した映画では言及されてない経緯、よーく把握しといてください。とまぁ、こんなところで『1』の補足説明は十分だと思います。あとはストーリーを簡単におさらいしときます。警告:以下の文章には、致命的なネタバレ情報が含まれます。映画本編を見る前には、絶対に読まないでください!・ 主人公フロド・バギンズが、隠居する養父ビルボ・バギンズから指輪を受け継ぐ。 ↓・ 魔法使いガンダルフの調査で、指輪が冥王サウロンのものと判明。これをサウロンが取り戻すとMAXパワーを発揮できるようになり、世界が滅ぼされる(蛇足ながら、『ロード・オブ・ザ・リング』とは「指輪の王」ってな意味で、つまりこのサウロンのことをさす)。 ↓・ 冥王サウロンはひっ捕らえたゴラムを拷問し「指輪は“ホビット庄(シャイアとも。ホビット族の村のこと)”のバギンズが持ってる」と聞き出し、恐ろしい指輪の幽鬼ナズグル9人衆を派遣。 ↓・ と、いう話をガンダルフに聞かされたフロドは、ホビット庄に居たらヤバそうだってんで、とりあえず指輪を持ってあわただしく逐電。ガンダルフは先輩魔法使いサルマンにアドバイスをもらうためサルマンが住むアイゼンガルドに向かう。フロドは独り、しばらく行った所にある村を目指し、後日そこでガンダルフと落ち合う、ってプラン。だが結局フロドには、庭師のサム、遠縁のピピン&メリーというホビット族仲間3人が同行することに。 ↓・ アイゼンガルドでサルマンと会うガンダルフ。だがサルマンは冥王の側に寝返っており、ガンダルフは監禁されてしまう。そのためフロドとの待ち合わせ場所に行けず。 ↓・ フロドらは待ち合わせ場所でガンダルフを待つが、一向に現れない。次第に追っ手ナズグルたちが迫ってくるが、その場にはアラゴルンがおり、以降、彼がフロドのことを護ってくれる。 ↓・ アラゴルンによって、フロドたちは、この待ち合わせ場所を出、エルフ族の領土“裂け谷”に導かれる。道中、ナズグルに攻撃されるが、なんとか“裂け谷”まで到着。そこには監禁から辛くも脱出してきたガンダルフの姿も。 ↓・ “裂け谷”のエルフ族領主エルロンドは、自分たちでは指輪を守りきれないので、指輪を“裂け谷”で管理することはできない、と言い、けっきょく指輪を今後どうするのか、各勢力の代表者を集めた会議にて決めることに。 ↓・ 会議の結果、指輪を破壊することに決まる。とは言え、この指輪は何をやっても破壊できず、唯一、指輪を作った滅びの山の業火だけがこれを物理的に破壊できると判明。ちなみに滅びの山は冥王サウロンの国モルドールにそびえてるんで、誰かビンボーくじ引いた奴が直接そこ(敵国の真っ只中で、かつ地獄の一丁目みたいな土地)まで行かにゃなんない。 ↓・ フロド、その超ビンボーくじ任務に志願。会議に出てた各勢力の代表者はフロドをサポートすることを誓い、ここに9人の“旅の仲間”が結成された。メンバーは、フロドサムメリーピピンガンダルフアラゴルン(実はゴンドール国の滅びだ王朝の末裔であることが判明)エルフ族のレゴラスドワーフ族のギムリゴンドール国執政の息子ボロミアって顔ぶれ。でもボロミアだけは指輪を破壊することには反対で、そのパワーで逆に冥王に対抗しようと主張する。彼の国ゴンドールは冥王の国モルドールに一番近くて、戦争状態にあるので、他の連中よりはるかに切羽詰ってて、そう考えるのもムリはないんですな。 あと、彼は執政の息子で、王家の絶えたゴンドール国の代理トップのご令息なんだけど、その王家の生き残り、ほんとのほんとのトップって血筋のアラゴルンがいきなし現れたんで、対抗意識ムキ出しになっちゃうのも、また仕方ないことです…。 ↓・ 滅びの山を目指し遥かな旅に出る仲間たち。途中、ドワーフ族の地下王国モリアを通るが、そこは今は廃墟と化しており、オーク族(この世界のザコキャラモンスター)がウジャウジャいて、その上、恐ろしいバケモノまで巣くってた。そのバケモノとの戦いで、ガンダルフ、死す! ↓・ エルフ族の国ロスロリアンを通過。女領主からいろいろ素敵なお土産をもらっちゃう。『2』以降の冒険でお役立ちアイテムとして活用されるので要チェック。 ↓・ 道中の森で、フロドとボロミアが2人きりになるシチュエーションがあり、その際にボロミアは自国ゴンドールを守るため、フロドから指輪を腕ずくで奪おうとする(そういう挙に出たのも指輪の魔力に操られたせい)。辛くも逃れたフロドは、他の仲間も指輪の魔力に惑わされ態度が豹変しちゃう恐れがある以上、ここから先は独りで旅を続けるしかない、と腹をくくる。正気に戻ったボロミアは後悔しきり。 ↓・ 寝返った魔法使いサルマンが作り出した強化オーク族“ウルク=ハイ(白い手の平マークが目印)”が旅の仲間の追跡に放たれる。その目的はフロドの拉致。旅の仲間たちもこの先の旅はフロド独りでしか続けられないことを納得し、それぞれが“ウルク=ハイ”からフロドを逃がそうと懸命に戦う。 ↓・ メリー&ピピンはフロドを逃がすため自らオトリとなり、助けに駆けつけたボロミアの奮戦もむなしく、“ウルク=ハイ”に拉致られてしまう(“ウルク=ハイ”はメリー&ピピンをフロドと勘違いした模様)。ボロミア、壮絶なる戦死!(ここ男泣きポイント) ↓・ フロドに同行すんのを断念したアラゴルン、レゴラス、ギムリは、拉致られたメリー&ピピンの身柄奪還のため、悪の魔法使いサルマンのもとに戻って行った“ウルク=ハイ”部隊を追撃することに。 ↓・ フロドは独りでモルドール国の滅びの山を目指そうとするが、忠実なる庭師のサムだけは死んでも同行すると言い張って聞かず、結局、この、主従であり親友でもあるコンビで、指輪を破壊するための旅を続けることに。 ↓・ 以上、『1』終劇!どうでしょう?『1』の展開は飲み込めました? 『2』以降はますます複雑な要素がからみ合うようになってきますが、このブログをご参考の一助にしてください。■ ©MM?New Line Productions, Inc.All Rights Reserved
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COLUMN/コラム2008.11.28
今さら人に聞けない『LotR』の基礎知識
っていうか『LotR』って何よ!? という人、そんな人のために、このブログを書いてますんでご安心を。まぁ、ただ単に『ロード・オブ・ザ・リング』の頭文字ってだけの話なんですけどね。そう略すのがナウいらしいんすわ。この12月、当チャンネルでは、世界三大ファンタジーを大特集するってことは既報のとおりであります。世界三大ファンタジー(文学)とは、『ナルニア国物語』、『指輪物語』、『ゲド戦記』のこと。それぞれ映画化もされてます。それを放送するってワケです。あ、ちなみに『ゲド戦記』って言っても、いろんな意味で話題になった例の宮さんの息子のアニメ版じゃありません。実写です。なんと実写あったんですねぇー。知らなかった…。 でも、ここではあくまで『指輪』限定で話します。あ、ちなみに『指輪物語』の映画版が『LotR』ですから。なんで『LotR』だけ特別扱いでブログに書くかって言いますと、『ナルニア』と『ゲド』って、ハッキリ言って、見りゃ分かる映画なんですわ。『LotR』も、いちおう見りゃ分かると言えば分かります。そのこと自体、実はスゴい!奇跡と言ってもいい!!と言うのも、原作『指輪』って、詰め込まれてる情報量がハンパじゃないんですよね。固有名詞多すぎ!イコール設定がすさまじく緻密ってことでもあるんですけどね。その情報の多さ・緻密さに、オタクな人々はイ・チ・コ・ロの模様(いや、自分自身を含めて)。それこそが『指輪物語』最大のウリであり、だからこそマニアうけするんですな、この作品は。あと、時間的な壮大さも魅力のひとつ。『指輪』世界の長大な時系列の一時点を切り取ったストーリーが『指輪物語』なんで、この物語以前にも物語があって、この物語以後にも物語があり、その断片情報が『指輪』の中にもチョイチョイ顔をのぞかせてくる。なので、今、自分が読んでいる『指輪』は氷山の一角で、その下にはさらに巨大な物語群、関連作なり関連情報なりが埋ずもれている。それも知りてー!というマニア願望をくすぐるようにできてるんです。まぁ、こういう『スター・ウォーズ』とか『ガンダム(宇宙世紀系の)』とかとも相通ずる(さすがにちょい強引か)ディープな魅力を持ったオタク向けの作品(の元祖的存在)なんで、ハマろうと思えばどこまでもズブズブとハマってける底なしの奥深さがあり、そこに首までドップリつかってるのがキモチいいんだ!っていうマニアな方たちのウケはすこぶる良いんですわ。でも、ズブズブが快感なんて理解不能!という一般大衆の皆様方には、手に余る作品なんじゃないかとも思うんです。それほど厄介な原作を、マニアも納得の奥深さを残しつつ、シロウトさんでも、いちおう見りゃ分かる、予備知識なしでも話についてけるレベルに映像化してみせ、最終的には誰が見ても楽しめる映画に仕上げたピージャック監督の手腕は、ほんと、神がかってるとしか言えませんわ。スゴい!奇跡だ!! というのは、そういうワケです。でも、「いちおう」見りゃ分かると書いてる通り、「いちおう」なんですな。たとえば見終わった後、マニアだけでなく一般大衆のほとんどの人もこの映画を「面白かった!」と感じるとは思うんです。エンターテインメント映画としても不世出の作品ですから。でも、じゃあどんなストーリーだったか思い出しながら説明してみてくれ、と言われて語れる人って、少ないんじゃないでしょうか?たとえば『ナルニア』なら、ふつう見た直後なら誰でもスラスラ言えちゃいますわ。良い意味で単純なお話なので。『LotR』だと、そうスラスラは言えないはずです。たぶん「結局、話的にはどういう話だったんだっけ!?」となる人が多いと思います。それぐらい複雑な話です。スラスラ言えなくたっていいんだよ講釈師じゃないんだから。ストーリー展開が頭に残らなくたって、見てる最中だけ楽しければ映画なんてそれでいいじゃん。というのは、もちろん正しい考え方です。でも、スラスラ言えちゃうぐらい内容をしっかり把握しつつ見ていくと、『LotR』はもっともっと面白く感じられるようになる、ってのもまた事実。掘り下げる気がなくても「いちおう」は楽しめるけど、掘り下げる気になれば、楽しさが質的に飛躍的に向上するハズなんですわ。そもそもが掘り下げて楽しむという楽しみ方ができるよう、奥深く作られてる作品なんですから。なんといっても大ヒット作ですから、ウチのチャンネルでやる前にどっかで三部作とっくに見てるよ、という人も大勢いらっしゃるかと思います。でも、その時は深く掘り下げるほどのモチベーションがなかったので、「いちおう」は楽しめた、でも所詮「いちおう」だった、という人、実際問題かなり多いんじゃありません?今回、年末のウチの放送は、その時よりもちょっと掘り下げたレベルで見てみませんか?そのお手伝いをする目的で、お節介を承知でこのブログを書くことにしました!もちろん、ヒット作ながら今まで見逃していたという人、今回が初見だという人。そういう人のこともケアしたい。映画本編を見て「複雑なストーリー展開だなー、2、3と見続けても話についていけるかなー」と気力が萎えかけても、大丈夫!後でこのブログの補足説明とかフォローとかを読んでいただければ、きっと、ついてけるハズです!これから、『1』、『2』、『3』各回のザックリとしたストーリー展開をここのブログに書き込んでいきますんで、それで大づかみで流れを把握しちゃってください。もっとも、文中には致命的ネタバレ情報も含まれますんで、必ず映画本編を見た後にしてください!『1』本編を見た後で『1』のブログを読み、理解を深めた上で、それから『2』本編を見る、というのが一番望ましいです。昔いちど『LotR』見てる、という人は、ネタバレも何もないので、本編前に予習的に読んでしまってもいいかと思います。その上でもう1度本編を見てみると、「これはこういうことだったのか!」と話がつながってくる部分も出てくるかと思います。とにかくですねえ、上辺だけサーッと見て、それだけでも楽しいは楽しい作品なんですが、それじゃもったいないワケですよ。やっぱ、最終的にはアカデミー賞とってますから!しかも史上最多部門とってますから!極論すれば、映画史上最高の作品(極論です!)とも言えるのかもしれません。さすがにこれは、できるかぎり深いレベルで堪能しといて惜しくはない作品でしょう。ということで、今さらながら感は若干残しつつも、当チャンネルで手厚く紹介しとくべきだよなーと思い、これから3回に分けて、三部作各話について書いてきますんで、おつきあいのほど、よろしくお願いいたします。■©MMI New Line Productions, Inc.All Rights Reserved.
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NEWS/ニュース2008.09.29
08年アメコミヒーロー映画フィーバー、いよいよ真打『アイアンマン』登場!
いやいやーアメコミヒーロー映画の公開、夏の間じゅう立て続きましたなぁ。『インクレディブル・ハルク』、『ダークナイト』、『ハンコック』(アメコミじゃないけど、それ風のスーパーヒーロー映画ではある)ときて、さぁ、いよいよ、『アイアンマン』ですよ! 特に『ダークナイト』と『アイアンマン』の2作って、本国で興収ウン億ドルを記録したとか、それが歴代興収ナン位とか、数字で語られちゃうぐらいの物凄いヒットの仕方だったらしいですな。数字が嫌いなワタクシ的には、何億で何位とか、まるっきし興味ないのですが、とにかく、面白いということだけはこの目で確かめたんで分かった!(と言いながらマイベストは『ハンコック』だったりしますが) で、その『アイアンマン』なんですが、これも、個人的にはいたく気に入りましたねぇ。いや、スーパーヒーローものなので、クライマックスはセオリー通りの硬いラスボスが出てきて、そいつと我らがヒーロー・アイアンマンがガチな死闘を演じるワケですが、そこに至るまでの中盤ですよ、僕がいたく気に入ったのは! アイアンマンの正体は、軍事企業の社長のオッサンです。しかも、一昔前に流行った“ちょいワルおやじ”系な。商才あってリッチでメカに明るくて頭良いけど、軽薄でスケベでニキータな女をお持ち帰りしてはコマす(誰なんだよニキータってのは)、っていうような輩です。あ、ちなみにこの写真はおやじランニング姿ですが、普段はちょいワルルックでキメてて、ギラギラした感じがジローラモ級にかっこよいです。このオッサンが冒頭、新兵器のデモンストレーションのためアフガンに飛びます。軍産複合体の一翼を担う大企業の社長とあって、現地米軍の方でも、下にも置かない接待っぷりです。しかし、米軍のHMMWV(と書いて「ハンビー」と読む)に乗っけてもらって悪ノリしながら移動中に、案の定、テロリストが仕掛けたIEDが炸裂!同乗してた護衛の米兵たちは銃撃してきたテロリストどもに殺され、社長だけが拉致られ、アジトに連行されます。で、テロリストのボス(これ中ボス)から、大量破壊兵器を製造するよう脅迫されるのです。アジトには彼の会社の兵器のパーツが山積みで、社長は技術畑の人なんで、これだけ材料がありゃ作ろうと思えば何でも作れちゃうんですな。そこで社長は、テロリストどもの目をごまかしながら、大量破壊兵器じゃない、別の物を作っちゃうのです。それがアイアンマンのパワードスーツ(の言うなりゃ零号機)。で、テロリストにバレる寸前にこれを完成させ、蒸着!ここからです、いたく気に入ったのは!いやー気持ちいいのなんのって!! テロリストをやっつけるやっつける!それも超一方的に!! 連中がAK(と書いて「アーカー」と読む)とかでパラパラ撃ってきても、屁のツッパリにもならない。で、手製火炎放射器で倍返し!痛快だわーこれ!!連中のアジトを完膚なきまでにブッ潰し(はぁースカっとした)、無事、アメリカに生還。そこで、自分のビジネスが世界を平和にするどころかますます危険にしてると遅まきながら悟り(早く悟れよアメリカ人)、アイアンマン・スーツの改良を重ね、初号機、弐号機とバージョンアップさせていきます。 で、いよいよテロとの戦いを個人で開催。満を持して弐号機、赤射!今度はわざわざ好きこのんで紛争地帯まで飛び(空飛べます)、武装勢力を徹底的にブチのめし(またワンサイドゲーム)、避難民を助けます。このように、ラスボスが出てくるまでは、常にアイアンマンのワンサイドゲームなのです。『ロボコップ』でラスボスED-209が出てくるまでの、ロボコップが町にはびこる犯罪者どもを片っ端から退治しまくった中盤、あの痛快感と相通ずるものがありますな。我が心の師・セガール親爺が、その高邁なる作品群を通じて教えてくださったことのひとつに、敵キャラが強い必要はない、正義のヒーローだけが強けりゃいい、敵キャラは、ヒーローが繰り出すセガール拳でただ叩きのめされてりゃそれでいいんだ、という映画の真理があります。そういう構造を持った映画って、たしかに、見ててムっチャクチャ気持ちいいんですよね!しかも本作の悪党(ラスボス以外)というのは、あの、人質のクビ切ってビデオで流しちゃうような鬼畜テロ集団。情状酌量の余地もない絶対悪ですからね。21世紀の現代を生きる人なら誰もが許せないと思ってる連中が、バッタバッタと斃されるワケですから、見てて血沸き肉踊るのですよ。ということで、映画見ててこんなに痛快感を覚えたのは、かなり久しぶり。個人的にはいたく気に入りましたねー。さてさて。主役のちょいワルCEOを演じたロバート・ダウニーJr.が、公開を前に来日しましたんで、先に本編をマスコミ試写で見て興奮冷めやらぬワタクシ、彼の会見の取材にもノコノコ行ってきました。ここからはその模様をお伝えしましょう。 ロバート・ダウニーJr.、『チャーリー』以来、実に15年ぶりの来日なんですなぁ。まず、15年ぶりの日本の感想を求められ、「…別に。前回と変わらない」と、エリカ様ばりのコメント。しかし、目が笑ってるのでシャレと分かり、報道陣もひと安心。『アイアンマン』大ヒットの秘訣について聞かれると、「こんな映画なのに女性にもウケたってのが勝因だな。いやホント、これがオレの回りの女どもにウケてるんだって。なんだっけ、SATCだっけ?あれにも男客が入ってるみたいだけど、あの男どもは、ただ女に引っぱり出されたきただけだろ」と、のっけから飛ばしまくり(そういやあんた、むかしSJPと付き合ってなかったか!?)。もう止まりませんぞこのオッサンは!エリカ様も、こういうブラックユーモアを学ばないとね。でも、こういう人、どっかで見たことあるな…「いゃー、最近のオレってノッてるよね。25年この商売やってて今が一番いい。これまで、つまんねー映画ばっか出てたからなー。ここ数年はなんか冴えてるよ。ま、冴えてたこと自体が25年間で初なんだけどな」などとますます舌も滑らかに自虐トークをかまし、ここらへんからは報道陣も大ウケ!たしかにアンタにゃこれまでいろいろありましたよねぇ…。ちょいワルどころか大ワルおやじ、どころか服役してましたよねぇ…深くは書きませんけど。にしても、ますます見たことあるぞ、こういうキャラのオッサンを。オッサンと言えば、アイアンマンってのも、普段はスーツ着たただのオッサンです。で、そのスーツ(背広)脱いで、パワードスーツ(メカ)を装着すると、一個の戦闘兵器と化し、マッハで空飛んで、アメリカ様がウチの国の自衛隊には売ってくれないF-22ラプター(しかも2機)とも互角に渡り合えちゃうし、旧東側の兵器で固めたテロリストどももギッタンギッタンのバッタンバッタンにのせちゃえる。パワードスーツ脱いだら、なんの超能力も無いただの中年なんですけどね。「そこらへんの設定に男も燃えるのさ。クモに噛まれてスーパーパワーとか、そんなもんありえないだろ。こちとらテクノロジーなんだよ、テ・ク・ノ・ロ・ジ・ー!」確かにスーパーパワーをゲットする過程がアメコミにしてはリアルなので、オトナの男性客も自己投影とか感情移入をしやすいですし、男だけでなく女性にウケたってのも、男子感ただよう突拍子もない変身方法じゃなかった点が大きいのかも。「最後に最近元気ない日本のオッサンにエールを送ってくれってか?…40歳なんてまだまだ人生半分。これからだよ、これから!昔の映画とかだと、オッサンのスターが自分の半分ぐらいの年頃の娘と恋に落ちたりとか、普通にあったぐらいだし。もっとも今あれやったら完璧ペドだけどな。まぁ、とりあえず頑張れや」あーなんか思い出してきたぞ…この人、日本で言うと陣内孝則なんだ!あの人も軽口でドラマの会見とか完全にさらっていきますね。「どうせ脇役の私のコメントはあまり載らないでしょうから、こうなったら好きなことを適当に喋ります!」って公言して会見をワンマントークショーにしたりとか。ハンパな若手芸人が同席しててもそっちより全然トークが面白い!あの人も報道陣ウケはいいですな(で、肝心の主役の人のコメントが少なくて、後で大いに困ったりする)。決定! 今後、ロバート・ダウニーJr.は「ハリウッドの陣内孝則」ということで。報道関係者はまた来日してくれるのを楽しみに待ってますぞ。15年も間を空けずにチョイチョイ来て下さい。■ © 2008 MVLFFLLC. TM & © 2008 Marvel Entertainment. All Rights Reserved.
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COLUMN/コラム2008.08.29
これぞ正しいアイドル映画、『リジー・マグワイア・ムービー』
「イヤねぇー、最近のアメリカのアイドルって下卑たスキャンダルにまみれまくりで」 「そこがいいんじゃない!」 と、みうらじゅん風に始めてみました。ドラッグ、アルコール、セックス、奇行、逮捕などなどのスキャンダル渦巻くアメリカのショウビズ界において、とうに絶滅したはずの太古の種の生き残り、オゴポゴやモケーレ・ムベンベ等とならぶUMAの一種とされる、「清純派アイドル」。 スキャンダルなど無縁。エロい話題はご法度。清く正しく美しい萌えな、品行方正の美少女。オナラもしなきゃトイレにも行かない、という特異な生理を持つとの学説もある、謎の超自然生命体「清純派アイドル」でありますが、その実在がアメリカでついに確認されたのは、21世紀初頭のことでした。それが、ヒラリー・ダフ。略して“ヒラダフ”なのであります! ブリトニー・スピアーズの下、いま現地で大ブレイク中のマイリー・サイラス(日本で言えば平成生まれ)の上の世代。リンジー・ローハンとは同世代のライバル関係で、まさに、ゼロ年代を代表するアイドルです。上で名前をあげたみなさんは、スキャンダルにまみれておいでの、自由奔放なちょっと困ったチャンたちなんですが、唯一ヒラダフ嬢だけ、これまでスキャンダルらしいスキャンダルも無く、純潔のイメージを守り抜いてきたのですな。最近の彼女は、ディズニー・モバイルのCMで日本のお茶の間でもすっかりおなじみですね。っていうか彼女もふくめ、上記のスキャンダラスなみなさんも全員が、実は某ディズニー・チャンネルから出た人たちなのです!すごいぞ某ディズニー・チャンネル!!ここ10年の某ディズニー・チャンネルって、トップアイドル輩出機関的な役割をはたしてて、そっち方面が好きな御仁は要チェックなのです。日本で言えば、70年代の『スタ誕』か、80年代の『ミスマガジン』か、90年代の『ボクたちのドラマシリーズ』&『月曜ドラマ・イン』状態。そのヒラダフ嬢がローティーンのころに出演し、ブレイクするきっかけとなったのが、連続ドラマ『リジー&Lizzie』。中学生のリジーを中心に、彼女の学校生活や家族模様なんかをコミカルに描いた、ティーン向けのドラマです。で、今回ウチで放送する『リジー・マグワイア・ムービー』とは、何を隠そう、その『リジー&Lizzie』の映画版なのです(あー回りくどい!)。 この映画で、冒頭リジーは中学校(あの、ファンにとっても思い出深い)を卒業。いつもの仲間たちと一緒に、卒業旅行ならぬ高校の入学旅行でローマに行きます。そこで、イタリアのイケメンとのロマンスが待っている、という、豪華映画版なのです。学校行事の旅行ながら、おなじみのマグワイアファミリーももちろん登場します。 もう、これぞまさしく、正統派アイドルムービー!ってかんじですな。かなりムチャな話の運びやマンガチックな展開が目立つティーン向け映画ですが、そこはまぁ、あげ足とらんと、相好くずしっぱなしでヒラダフ嬢のかわいさを愛でる、というのが、オトナゲある鑑賞態度でしょう。 ちなみに、連ドラの方を一度も見たことなくても楽しめる作りになってますが、補足説明しときたいところが一ヶ所だけ。冒頭、慣れない卒業式用衣装を着たリジーとゴード(っていう仲良しの男子)の、 「ゴード、私の見た目、OK?」 「リジー、僕は君の男の親友だ。その手のことならミランダに聞いた方が確かだよ」 「あの子、今、メキシコ・シティよ」 「あぁ、そうだったっけ」 といったようなやりとりがありますが、「ミランダ」なる人物、“不在”の理由がこの短いセリフで説明されただけで、それっきり、この映画には出てきませんし、二度と触れられもしません。 連ドラでは、ドジっ娘(萌え)白人のリジーと、ユダヤ系お利口男子のゴード、そして、そのミランダってヒスパニック系のおきゃんな女の子が、仲良し3人組でワンセットなのです。リジーにはほんとは、異性の親友と同性の親友がいたんですねぇ。 連ドラ版ファンにとって、この栄えある映画版(連ドラ版の完結編でもある)にミランダが出ないなんて、まったくもって、けしくりからん事態!たとえるなら、『ドラえもん』最終回劇場版に、なぜかスネ夫だけ「家族でおフランスでバカンス中」とか、ジャイアンだけ「カアちゃんにお使いたのまれた」とかのしょうもない理由で、1シーンも出番が無い、というのに匹敵する、断じてあってはならん、ファン置き去りの許しがたい事態なのです!! でも、連ドラを見たことない人にとっては、そんなのどうでもいい話。そこで引っかからない分、連ドラからのファンよりこの映画を素直に楽しめちゃうかもしれません。 ところで、そのミランダも出るけど、ミランダの妹が主役(それがなんと『ウェイバリー通りのウィザードたち』のセレーナ・ゴメスなんだとか)、っていうファン垂涎の『リジー&Lizzie』スピンオフ・ドラマが、アメリカで作られたとか作られてないとか、作られたけども放送のメドが立ってないとか…。ってそれ絶対都市伝説だろ!ぐらいあやふやで不確かな話が、米本国ではここ数年ささやかれてる模様。それ、見れるもんなら激しく見たい!某ディズニー・チャンネル様、おがみます!!で、最後は、例によって吹き替えの話。もとが連ドラなので、それを見てたファンはもちろん字幕よりも吹き替えの方に耳が馴染んじゃってるワケです。そこは吹き替え尊重チャンネルザ・シネマ、抜かりありません。字幕版とあわせて吹き替え版も、当たり前にお届けいたします!(9月字幕、10月吹き替え) ただ、「いゃー、吹き替えって、本っ当にいいもんですね!それではまたザ・シネマでお会いしましょう」が口癖の僕ではありますが、なんでもかんでも吹き替えが良いと思ってるワケでもないんです。この『リジー』は吹き替えもいいのですが(っていうかそっちに耳が慣れてるのですが)、あわせて字幕でも見たい作品なのです。 なぜなら、ヒラダフって子は、声がかわいらしいから。向こうの女優さんにはめずらしい、日本人好みのアニメ声といいますか。歌手としての彼女の歌も、曲の良し悪しより声質のかわいさで聴けてしまいます(ワタクシだけ?)。こういう女優は、本人の声も聞きたい! ついでに言うと、ヒラダフが清純派アイドルとしたら“ヨゴれアイドル”(いゃ、良い意味で)なイメージがすっかり定着してしまったお騒がせセレブ、ハスキーキュートなズベ公ボイスのリンジー・ローハンとか、あの迫力ボディとはあまりにチグハグな舌ったらずで甘ったるい声のJ.Loなんかも、ぜひとも本人の声で聞きたい女優さんです(またもワタクシだけ?)。にしても、なぜか歌手兼業な人ばっかですな。 ワタクシだとどうしても野郎目線になってしまいますが、女性のみなさん的にも「この俳優の重低音ボイスはシビレるわ」みたいなこだわりがある人って、けっこういるのではないでしょうか。 まさに、字幕がいいか吹き替えがいいかはケース・バイ・ケースってことでしょう。■ ©Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
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NEWS/ニュース2008.08.05
08年アメコミ夏の陣、トップバッターは『インクレディブル・ハルク』
みなさん暑いですねぇ、『インクレディブル・ハルク』、もう見ました? この夏から秋にかけて、アメコミ・ヒーロー映画が波状攻撃的にやっくるワケですが、その最初を飾るのがこの『インクレディブル・ハルク』なのです。映画史的に見て、「2008年ってのはアメコミ・ヒーロー映画大豊作の年だったね」と言われること、もはや確実な情勢(今後も続々と公開されますが、それについては近日また書きます)。将来、「あの夏、私はその熱きムーヴメントの真っ只中にいて、すべてを体験し、目撃したのだ」と、遠くを見るまなざしで子孫に語り継ぐイカした年寄りになるためには、まずこの『インクレディブル・ハルク』を見なきゃ始まりませんよ。 今回ワタクシ、この映画に出演したエドワード・ノートンとリヴ・タイラーの2人にインタビューする栄光に浴しました。その模様のダイジェスト版がすでに当チャンネルでは流れておりますが、例によって、ここでは文字起こしして全文を掲載しましょう。 せっかちにも早速インタビューを始めようとするワタクシ。その、常人には計り知れないハイセンスな横山やすし師匠か『ケープ・フィアー』のデニーロ風なファッションを見たリヴ・タイラーから、「あなたの服キュートね。ベリー・スタイリッシュよ。私もメイン州に住んでた小さい頃、そんなような靴(デッキ・シューズ)履いてよく遊んだわ」との、み、み、み言葉が! Let’s 小躍り!夕星(ゆうづつ)姫アルウェン様にキュートって言われちった!! 嗚呼、かたじけなやもったいなや。前の夜、『魅せられて』DVDを見てギンギンにモチベーション高めてのぞんだ甲斐があったというもんだ。 …と、浮かれてばかりもいられません。限られた取材時間が惜しくて、リヴがせっかく気を使ってくれた“場なごませコメント”をあえて拾いには行かずに、いきなり本題に入る僕。しかもリヴを無視してまず主演のエドワード・ノートン相手に(リヴ・タイラーさんごめんなさい、そしてアイラブユー)。 で、早速ですがノートンさん。あなたは演技派、実力派、スゴい役者、というイメージが日本では定着してて、アメコミ・アクションの娯楽映画に出るって聞いた時はちょっと意外だったんですけど。 「だろうね。っていうか自分がいちばん意外。でもこのテの映画に出るってことは、自分的にかつてない経験なので、いつもと違うことができて良かったと思ってるよ。それに、ガキの頃にハマってた話に出られたのは、役者としてハッピーなことだしね」 (エドワード・ノートンでも子供の頃はハルクにハマってたんだ…) でも、あの天下のエドワード・ノートン主演ときたら、普通のアメコミ・アクションじゃないんでしょ? ハルクっていったら過去に何度も映像化されてるけど、やっぱり今作はちゃんとノートン印になってんでしょ? 「そりゃそうさ。ただのアメコミ映画じゃない。いろんな人に楽しんでもらえる作品に仕上がったと思うよ。それと、あれだね、言ってみりゃこれってシェイクスピアみたいなもんでさ、むかしっから何度となく再演されてるけど、そのつど何らか新しい要素が加わって生まれ変わり、次の時代に伝えられていく。ハルクの物語もそうやって伝えていきたいと思ってね。それに、世間でよく知られた作品をまた新たな創造世界に導くってことも、これまた役者としてはハッピーなことだしね」 なるほど。まさに、この人をして言わしめる、ってトコですな。 さて、お待たせしてすいませんリヴ・タイラーさん。どうも貴女が演じたベティって役のおかげで、今回のこの『インクレディブル・ハルク』はずいぶんとLOVEの要素が濃くなってると聞いてますが。 「そうね。たとえばTVシリーズのハルクって、根は優しいんだけど、すっごく孤独な存在で、独りぼっちで闘っているキャラだったでしょ?社会と関わっていきたいのに、自分がモンスターになってしまうって引け目があって、ジレンマを抱え込んでた。でもこの映画では、ベティの愛・ベティへの愛によって、そんなハルクが変わっていくの」 そうそう、肝心のストーリーを書き忘れてました。ブルース(エドワード・ノートン)は科学者で、アメリカ軍ロス将軍が指揮する人体強化薬の極秘開発プロジェクトにたずさわってたんだけど、自分自身に人体実験したその薬をオーバードーズしてしまい、モンスター化(このモンスターがハルクと呼ばれる)。緑の巨人に変身してバーサークし、秘密研究所をぶっ壊したあげくのはてに、同僚で恋人で将軍の娘でもあるベティ(リヴ・タイラー)にもケガを負わせた上、脱走してしまう。 一定時間たつと変身は解けて元のブルースに戻れるんですけど、体質的には永久に変わってしまって、以降、心拍数が特定値をこえるとハルク化する体になっちゃったんですねぇ。とくに、怒るのが一番よくない。心拍数が上がってヤバい事態になる。 そこでブラジルに渡って、怒りをコントロールするためヒクソン・グレイシーに呼吸法を習う、というかなり飛躍した思いつきを実行に移し、400戦無敗の男に横っツラを張られながらも必死に怒りをこらえる、というお笑いウルトラクイズすれすれな特訓をつうじて精神修養を積みます。 ただ研究プロジェクトをつぶされたロス将軍も黙ってません(娘をモノにした男ということで必要以上にブルースを目のカタキにしている模様)。ブルース=ハルクを生け捕ろうと特殊部隊をブラジルに送り込み、ブルースはその追っ手から逃げ回りながら「早く人間になりたーい」とばかりにキレイな体に戻るための科学的方法を研究しつづけ、ついに、結局はアメリカの大学で教鞭をとってるベティと再会することになるんですねぇ。 ブルースとベティ、焼けボックイについた火はメラメラと燃えあがり、一方でロス将軍の執拗な追跡は2人を着実に追い詰め、そのうえ将軍の部下の特殊部隊隊長が「おら、ハルクより強くなりてぇ。おらは宇宙いち強くなりてぇ」とドラゴンボール(しかもZ)的嫉妬にかられて暴走しだす。と、いよいよもって物語はドラマチックかつジェットコースターのような展開を見せていくのであります!さて、リヴ・タイラーのコメントを再開しますと、 「原作では、ベティとブルースを結婚させようって試みも何度かあったらしいの。それは悲恋に終わったんだけど、今回の映画では、そんな悲しいカップルをなんとか一緒にして、美しい物語に作ってあげたい、という気持ちがこめられていると思うわ」 そんなLOVE要素、そして、たたみかけるがごときアクション要素、そのうえ、クスっと笑わせるコメディ要素も案外ふんだんに盛り込まれていて、笑って、泣けて、手に汗握る、ありとあらゆる娯楽の要素をテンコ盛りにした、これぞエンターテインメント幕の内弁当状態なのですな、この映画は。 まさに、“2008年アメコミ・ヒーロー映画の夏”の口火を切るのにふさわしいトップ・バッター『インクレディブル・ハルク』。みなさん、ぜひ劇場に足を運びましょう!■
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COLUMN/コラム2008.06.12
6月の吹き替えの日は
まえにここのブログで「昭和の洋画吹き替えを無形文化財に指定せよ」という記事を書いてから、視聴者の皆様よりたくさんのご意見・ご要望をいただいてます。ありがとうございます! 「よくぞやってくれた!っていうか、いっそ吹き替え専門チャンネルになって」という激励(?)もあれば、「吹き替えなんて邪道だから字幕版だけでよい!」というご意見もあります。 結論として、ザ・シネマとしては、吹き替え専門にはなりません。けど、吹き替え特集に力は入れ続けます。 吹き替え版しかやらない、という作品が原則ないよう心がけてますので(ごくごくまれな例外中の例外はご勘弁ください)、吹き替え否定派のかたは、字幕版の放送のほうでお楽しみください。 また吹き替え肯定派のかたは、今後も特集「吹き替えの日」にご注目ください。その筋のひと的に価値ある吹き替え版を、これからも厳選してお届けします。 っていうか、その筋のエッジなひとたちのあいだで高まった吹き替え再評価の気運って、いま、広く一般ピープルのあいだにも「むかしは映画って夜9時からテレビの洋画劇場で見てたよなー、あの頃の吹き替えって懐かしいよなー」的な昭和ノスタルジアとして波及してるんですよね。 字幕のオリジナリティも良い。吹き替えの妙も捨てがたい。要はケース・バイ・ケースなのでは?という柔軟な立ち位置にザ・シネマはいますが、この気運がますます盛り上がればよいと願っており、吹き替え再評価ブームの一翼を担えれば、と思ってます。 そこで早速、またしても「6月20日は吹き替えの日」という24時間特集を組みます! 今度のラインナップは、 『レッドブル』…シュワ=玄田哲章 『ロックアップ』…スタも玄田哲章 『レッドソニア』…シュワ=今度は屋良有作 『インナースペース』…(後述) 『ユニバーサル・ソルジャー』…ヴァンダミング=山ちゃん、ドルフ・ラングレン=大塚明夫 『テキーラ・サンライズ』…(後述) というアクション系6タイトルです。 とくにご注目いただきたいのが、『レッドソニア』。これについては以前書いたとおり。 さらに追加で書くと、この映画は『コナン・ザ・グレート』の番外編だとまえに触れましたけど、正伝『コナン・ザ・グレート』でヒロインの女剣士バレリアをアテてた戸田恵子が、異伝『レッドソニア』ではヒロインの女剣士ソニアを担当してます。なるほど、『コナン』シリーズでの戸田恵子は、正義のヒロイン女剣士担当声優ってワケなんですね。 ちなみに、正伝『コナン・ザ・グレート』のヒロイン女剣士役サンダール・バーグマンは、異伝『レッドソニア』では悪の女王役です。ヒロインやった女優が今度は悪役で起用された。こういうキャスティングの遊びって、番外編ならではのお楽しみですよね。ただ、逆に言うと、戸田恵子はサンダール・バーグマンFIXの声優扱いをされなかった、ってことです。 個人的には、そうであって欲しかった!そうすれば正伝と異伝がきれいに日本語の声でもつながったのに、というらちもないマニア願望をいだかずにはいられない僕です…(すでにシュワ声優が玄田哲章と屋良有作で違っちゃってますから、その時点でつながらないのですが…)。 次に注目は『インナースペース』。DVDは、なんと『クライマーズ・ハイ』の原田眞人監督が吹き替え演出を担当、デニス・クエイド=上杉祥三、マーティン・ショート=野田秀樹、メグ・ライアン=斉藤慶子という、ある意味サプライズ人事ですが、まぁ、これに関しては各自、DVDでお楽しみください。 今回ザ・シネマで放送しますのは、見ようと思っても見れないレアなテレビ版です! こっちのバージョンですと、デニクエ=谷口節、マーティン・ショート=堀内賢雄、メグ・ライアン=佐々木優子と、手堅い人事になってて安心です。 さらに!きわめつけは『テキーラ・サンライズ』。あさ10時からはメル・ギブ=神谷明版、よる10時からは野沢那智版にて放送!(我ながらこんなマニアックな企画よくやるわ…) この映画でのメル・ギブソンは、ヤクのディーラーという「二枚目なヤバいひと」の役なんですが、メルギブの二枚目感は神谷明に、ヤバいひと感は野沢那智に、僕ならそれぞれ軍配を上げたい。ぜひ、聴き比べてみてください。 さらにさらに、『レッドブル』のジェームズ・ベルーシ=富山敬、『ロックアップ』のドナルド・サザーランド=家弓家正といった脇も、見逃せない(聴き逃せない?)配役です。 というわけで、全国の吹き替えファンの皆々様、6月20日も、ザ・シネマ吹き替えの日、ご堪能ください! コアな吹き替えマニアではない一般ピープルの皆様も、この日は、一昔前のテレビ洋画劇場、荻昌弘が、水野晴郎が、高島忠夫が、そして淀長翁が(むろん木村奈保子もですが)、夜ごとシネマの世界へと誘ってくれた、あの時代の夜の、あの雰囲気に囲まれて、幸福なノスタルジーに浸りきってみてはいかがでしょう? それにしても、いゃー、昔のテレビ洋画劇場って、本っ当にいいもんですね! 【特報!】そして盛夏8月、すごい品ぞろえで「吹き替えの日」を実施予定!詳細後日!! 乞う御期待!!!■
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NEWS/ニュース2008.05.09
2008年いちばん注目のハリウッド新鋭スターは?(1)
と、言い切っちゃうのも語弊がありますが、ほんと、それぐらいの勢いなんです。 5/31に公開が迫る『ラスベガスをぶっつぶせ』。初登場&2週連続1位の全米大ヒット作です。 これに主演してるのが彼、ジム・スタージェス。ほとんどの日本人が聞いたこともない俳優だと思います。イギリス人で、アメリカ映画に進出して出演作もまだほとんどありませんから、たぶん米本国でもあまり知られてないんじゃないでしょうか。そんな彼が先日、プロモーションのため来日したので、インタビューしてきました。すでに当チャンネルの放送でその模様の一部が流れてますが、ここで完全版をテキストに起こして収録します。まず作品について。「この作品は楽しいジェットコースターのような映画だけど、それだけじゃなくて、青春映画でもあり、主人公の自分探しの物語でもある。主人公たちは、平日は普通に学生生活を送っている、どっちかと言えばガリ勉系な連中なんだけど、週末ともなるとラスベガスで大金を賭けて、VIP待遇を受けてる。実際にベガスから何百万ドルも巻き上げてるんだ。そして、それが実話だってことがポイントだね」 数学がむちゃくちゃ得意な人は、ブラック・ジャックというギャンブルでカードが読める。で、スタージェス演じる主人公は数学の超天才で、同じような大学の天才たちとチームを組んでベガスで荒稼ぎする、ってストーリーです。 この行為って、イカサマじゃないんだけど限りなく黒に近いグレーで、万一バレるとカジノの用心棒にボコられる、そのスリリングなハラハラ感や、貧乏学生が豪遊セレブに大変身、みたいな展開が「ジェットコースターのよう」ということでしょう。自分探しってのは、この半イカサマ行為がもともとは進学資金集めという目的のための手段に過ぎなかったはずなのに、あまりにも天文学的な額を稼げちゃうので、次第に手段が目的化してくるんですね。人まで変わってきちゃう。初心を貫いて進学しようか、それともこのままリッチなイカサマ師の道を突っ走るか、みたいな躊躇がドラマとして描かれてるので、ちゃんとした青春映画としても立派に成立してる娯楽作品に仕上がってます。なみにご本人は、数学とかギャンブルとかってどうなんですか? 「数学は嫌いじゃないけど得意でもない。もし得意だったら今頃ベガスで荒稼ぎしてるって。ギャンブルもある程度は楽しむけどハマるってことはない。撮影が終わってからは一度もやってないよ。撮影中はずいぶんやったけどね」とのこと。まぁギャンブルやるようなタイプには見えないけど、彼はどっからどう見ても文化部系な雰囲気なので、頭良さそうには見えますね。本作で大儲けする前のアキバ系ガリ勉スタイルも板に付いてて、こういう役をすんなり演じられるイケメンってのも珍しいです。なんとなくアキバ系を演じてる時の方が、演じるのがラクそうに見えましたけど?「どっちがラクとは言えないね。どっちも僕自身とはかけ離れてるから。役作りは環境が助けてくれたよ。学生の格好で大学の構内で演技してる時は自然と芝居もそうなったし、ベガスで高価なアルマーニのスーツでキメてる時は、そういう気持ちに入りやすかった」アメリカ版アキバ系も演じられる文化部風イケメン俳優。この映画を大ヒットに導き、早くもマネー・メイキング・スターの仲間入りか?これから特に注目しておいた方がいいハリウッド・スターであることは間違いないです。 ところで、この映画の試写に行く前、「ラスベガスを舞台に息詰まるポーカーの戦いが繰り広げられる」的な内容の、さるギャンブル映画を見たんです。有名ハリウッド俳優が出ている、そこそこ近年に公開されたこの映画が、年に1本あるかないか級につまらなかった…。調べたら興収的にも大コケしたそうです。ちょっと前にそういう痛い思いをしてたので、この『ラスベガスをぶっつぶせ』も、かなり警戒してマスコミ試写を見に行きました。何を警戒してたかと申しますと、ギャンブルの描かれ方です。現在、ワタクシ家にトランプってものがありません。トランプは子供の頃にババ抜きと神経衰弱をやったぐらいで、それすら今はもうルール忘れました。ポーカーとかブラック・ジャックなんて一切ルール知りません。って言うか競馬パチンコなどギャンブルそのものをやりません。そのヒマがあれば映画を見ます。つまり、爪の先ほども興味関心が無いのです。そういう人間でも楽しめるような映画作りしてるか?トランプのルールに精通してる人なんて10人中1人ぐらいだろうから、残り9人のこともちゃんと考えて作れよ?って言うかむしろ9人の方が数的に言って重要だろ。という観点から、徹底的にシビアに採点してやろうと、構えて見に行ったのです。 例の大コケしたギャンブル映画ってのは、そこらへんがまるっきりなってなかった!DVDの映像特典で、監督が「ギャンブルを知らない人でも楽しめる映画になったと思うよ」としゃあしゃあと自画自賛してましたけど、いや、なってねーから!話に全然ついてけません。 『ラスベガスをぶっつぶせ』は、この点が実にお見事。これから本作を見ようという人で、しかもギャンブルをやらない人は、どうやって何も知らない自分をこの映画が楽しませてくれるのか、ぜひ映画の作りを意識しながらご覧ください。1人でも多くのお客に、より高い満足度を与える、という崇高なる使命を担ったエンターテインメント映画の、これぞ正しい作られ方です。いやはや感服つかまつりました!最後に、あともう1本、ジム・スタージェス主演のヒット作が日本で公開されます。それについては続きの(2)で。■