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PROGRAM/放送作品
ふたりの女、ひとつの宿命 【4Kレストア版】
連帯していたはずの女性2人の絆に戦争が暗い影を落とす…時代がもたらす残酷な宿命を描いたドラマ
国際派女優イザベル・ユペールがキャリア初期の重要な映画として挙げる一作。現代劇を手がけていたメーサーロシュ・マールタ監督が戦乱の時代を舞台とし、押し寄せる歴史の荒波を女性たちの苦難と絶妙に絡めている。
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COLUMN/コラム2021.04.06
女性同士の友情を超えた固い絆を通してフェミニズムの発芽を描く女性映画の佳作『女ともだち』
戦争によって運命を翻弄され、愛のない結婚生活に縛られた2人の女性 筆者が大学時代に映画館で見て強い感銘を受けた作品のひとつである。日本公開は本国フランスから遅れること約3年の1986年1月だが、当時高校3年生だった筆者は受験勉強に忙しくて映画を見る暇などなかったため、恐らく日本大学芸術学部に入学してから都内の名画座で見たと記憶している。都営浅草線の西馬込から五反田で山手線に乗り換え、池袋経由で西武池袋線の江古田へ通っていた筆者は、その沿線にある五反田東映シネマや目黒シネマ、早稲田松竹に文芸座といった名画座へ足繁く通っていた。今となっては、そのうちのどこで本作を見たのか定かではないが、1940~50年代のフランスを舞台としたノスタルジックな映像美、ありきたりな友情を超えた女性同士の固い絆を描く繊細なドラマ、そして映画音楽の名匠ルイス・バカロフの紡ぎ出す抒情的な美しいメロディ、そのいずれもが忘れ難く、輸入盤で手に入れたセミダブル・ジャケットのサントラLPを溝が擦り切れるまで繰り返し聴いて映画の余韻に浸ったものだった。 物語の始まりは1942年。ドイツ占領下のフランスではユダヤ人の排斥が進み、この頃になると外国系ユダヤ人の取り締まりが一層のこと厳しくなっていた。その背景には、外国籍のユダヤ人をナチスに売り渡すことで、フランス国籍のユダヤ人を守ろうとした在仏ユダヤ人総連合の協力があったと言われている。南仏ピレネー=オリアンタルのユダヤ人収容所へ到着したヒロイン、レナ(イザベル・ユペール)もユダヤ系ベルギー人だ。劇中では具体的な収容所の名前は出てこないものの、恐らくピレネー=オリアンタルに実在したリヴザルト収容所と思われる。ここはいわゆる通過収容所で、最終的にはドイツ及び各国の強制収容所へ送られることになる。42年から43年にかけて、4000人近くのユダヤ人がリヴザルトからアウシュヴィッツへ送られたらしいが、本作のレナもまた同じ運命を辿るはずだった…。 ところが、ある日彼女は見知らぬ男性から手紙を受け取る。送り主は給食係の冴えない兵士ミシェル(ギュイ・マルシャン)。一方的にレナに一目惚れしたミシェルは、フランス人である自分と結婚すれば収容所を出られると持ち掛けてきたのだ。突然の申し出に面食らうレナだったが、しかし背に腹は代えられないため、この奇妙なプロポーズを受けることにする。収容所の外へ出たらサヨナラすればいい。そう考えていたものの、財産も行く当てもない彼女はそのままミシェルと暮らすことに。しかも、なんと彼もまた生粋のユダヤ人だった。先述したように、当時はフランス国籍のユダヤ人は収容所送りを免れていたのである。しかし、その後ユダヤ人排斥のターゲットはフランス国籍保持者にも及び、レナとミシェルは徒歩で国境を越えてイタリアへと脱出。いつしか夫婦の絆のようなものが生まれていた。 そのちょうど同じ頃、美大生のマドレーヌ(ミュウ=ミュウ)は同級生レイモン(ロバン・レヌッチ)と結婚して幸せの頂点にあった。ところが、恩師カルリエ教授(パトリック・ボーショー)の逮捕に抗議する学生が集まった際、レジスタンスとゲシュタポの銃撃戦が勃発し、マドレーヌを守ろうとしたレイモンが銃殺されてしまう。最愛の人を失ったことから生きる気力を失った彼女は、終戦後に知り合った売れない役者コスタ(ジャン=ピエール・バクリ)と成り行きで結婚する。 時は移って1952年。たまたま子供たちが同じ学校に通っていたことから、学芸会で知り合ったレナとマドレーヌはたちまち意気投合する。自動車整備工場を経営するミシェルとの間に2人の娘をもうけたレナ。夫の仕事は順調で羽振りも良く、何不自由ない生活を送っているレナだったが、必ずしも幸せとは言い切れないでいた。家庭を大事にする善良なミシェルは良き夫であり良き父親だが、無教養で車とスポーツ以外には関心がなく、知的好奇心の旺盛なレナは物足りなさを感じていた。一方のマドレーヌもコスタとの間に一人息子をもうけたが、しかし夫は相変わらず売れない役者のままで、一獲千金を夢見ては怪しげな商売に手を出して借金を作っている。どちらも生活のために愛のない結婚をし、不満の多い日常生活に縛られた女性同士。やがて、お互いに胸の内をさらけ出せる親友として、なくてはならない存在となっていく…。 ヒロインたちのモデルとなったのは監督の母親とその親友 物語の焦点となるのは、お互いに最大の理解者として深い友情を育みながら、やがて女性としての自我と自立心に目覚めていくヒロインたちと、そんな妻たちの精神的な成長を一家の大黒柱たる男として受け入れることの出来ない夫たちの葛藤だ。戦時中は激動する社会に運命を翻弄され、戦後の平和な時代になると今度は家庭に縛られ、常に誰かに人生をコントロールされてきたレナとマドレーヌ。私たちも自身の力で何かを選択して挑戦したい。そう考えた2人は共同でブティックを開業しようと計画するが、しかしレナの夫ミシェルは彼女が自分のもとを離れるのではないかと恐れてマドレーヌとの交際を禁じ、マドレーヌの夫コスタは家族を養うべき男としてのプライドを傷つけられたと憤慨する。これは女性の自立が叫ばれるようになる以前の時代、2人の平凡な主婦を通してフェミニズムのささやかな発芽を描いた物語と言えるだろう。 監督はこれが長編劇映画3作目だった元女優のディアーヌ・キュリス。ルイ・デリュック賞に輝く処女作の青春映画『ペパーミント・ソーダ』(‘77・日本未公開)では自身の少女時代を瑞々しく描き、カンヌ国際映画祭のコンペティションに出品された『ア・マン・イラブ』(’88)では妻子あるハリウッド俳優と恋に落ちる無名女優に自身の体験を投影したキュリス監督だが、実はアカデミー外国語映画賞候補になった本作も実話を基にしている。ヒロインのレナとマドレーヌのモデルとなったのは、キュリス監督の実の母親とその親友なのだ。彼女の両親(名前もレナとミシェル)は’42年にリヴザルト収容所で出会い結婚し、’53年に離婚している。マドレーヌは本作が完成する2年前に亡くなったという。初公開時にレナとマドレーヌの関係は同性愛とも解釈されたが、実際の2人を知るキュリス監督によると、そうとも言えるし、そうとも言えない、つまり定義付けの出来ない特別な関係だったのだそうだ。 また、先述したようにルイス・バカロフの手掛けた音楽スコアも本作の大きな魅力のひとつである。アカデミー作曲賞に輝いた『イル・ポスティーノ』(’96)をはじめ、クエンティン・タランティーノの『キル・ビル』にも引用された『怒りのガンマン/銀山の大虐殺』(’71)やジャンゴ映画の元祖『続・荒野の用心棒』(’66)、巨匠フェリーニの『女の都』(’80)など、主にイタリア映画で活躍したアルゼンチン出身の作曲家バカロフにとって、本作は初めてのフランス映画だった。東欧ユダヤの伝統音楽クレズマーをモチーフ(バカロフ自身もユダヤ系)にしたテーマ曲をはじめ、ジャズやシャンソン、民謡などを巧みにブレンドしたノスタルジックでセンチメンタルな音楽スコアがとにかく素晴らしい。2010年にボーナストラック入りの完全版が500枚限定プレスでCD化され、筆者も迷わず手に入れて家宝にしているが、より幅広く知ってもらうためにも改めての再発が望まれる。 ちなみに、キュリス監督は近作『女性たちへ』(‘13年・日本未公開)でも両親をモデルにしている。母親レナ役はメラニー・ティエリー、父親ミシェル役はブノワ・マジメル。今度は終戦直後にフランスへ戻ってからマドレーヌと知り合うまで、つまり『女ともだち』では描かれなかった空白の期間を題材に、夫ミシェルの生き別れた弟と惹かれあうレナの葛藤が描かれているという。日本で見ることの出来ないのが惜しい。■ 『女ともだち』© 1983 STUDIOCANAL - Appaloosa Dvpt - Hachette Première || "&" || Cie - France 2 Cinéma
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白雪姫〜あなたが知らないグリム童話〜
[R15+]誰もが知るグリム童話『白雪姫』を大人向けに大胆アレンジ!官能と恐怖に彩られた極上スリラー
『恍惚』のアンヌ・フォンテーヌ監督がグリム童話『白雪姫』を大胆にアレンジ。現代に生きる女性たちの性と生、そして愛憎入り混じる娘と義母の関係を、ルー・ドゥ・ラージュとイザベル・ユペールが妖艶に魅せる。
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女の復讐
死んだ夫の愛人と妻が一触即発の心理戦を繰り広げる!名優イザベル・ユペールの熱演に息を呑む異色ドラマ
ヌーヴェルヴァーグ次世代の異才ジャック・ドワイヨン監督が、同じ男を愛した女性2人の一触即発のせめぎ合いを織りなす。亡き夫の愛人を精神的に追い込んでいく未亡人を、イザベル・ユペールが静かな威圧感で熱演。
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勝手に逃げろ/人生
[PG12相当]ゴダールが商業映画に復帰!男女3人の出会いと別れを瑞々しく描く“第2の処女作”
長らく実験的な作品づくりに没頭していたジャン=リュック・ゴダールが商業映画に復帰。3人の男女を主人公にした4楽章構成の物語を、スローモーションなど意表を突いた演出を交えながら瑞々しく映し出す。
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パッション(1982)
名作絵画を映像で再現──映画監督の情熱と苦悩をジャン=リュック・ゴダールが透明な映像美で魅せる野心作
レンブラントらの絵画を三次元で再現しようとする映画監督の苦闘を、ジャン=リュック・ゴダール監督が自然光を活かして描出。その透明な映像美が評価され、カンヌ国際映画祭でフランス映画高等技術委員会賞を受賞。
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窓・ベッドルームの女
殺人事件の身代わり目撃者を災難が襲う!カーティス・ハンソン監督の手腕が冴える都会派サスペンス
カーティス・ハンソン監督がヒッチコック映画を意識したモチーフを交え、洗練されたサスペンスをスリル満点に織りなす。『ポリス・アカデミー』のスティーヴ・グッテンバーグが持ち前の愛嬌で主人公の青年を好演。
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ポルトガル、夏の終わり
死期を悟った女優の計らいで、悩める人々の人生が動き出す──イザベル・ユペール主演の家族ドラマ
イザベル・ユペールがアイラ・サックス監督に直接ラブコールし実現した作品。死期を悟った女優と彼女を取り巻く人々のシビアな人生模様を、ポルトガルの世界遺産の街シントラの美しい光景と対比しながら綴る。
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女ともだち(1983)
強く惹かれ合う2人…これは友情なのか?愛のない結婚生活を送る女性2人の絆と生き方を描くドラマ
女性2人の友情が愛に変わっていく様を女性監督ディアーヌ・キュリスが繊細に描写。直接的なラブシーンはないものの、抱擁やお互いの熱い視線から、精神的に強く惹かれ合った2人のつながりを浮き彫りにしている。
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ブロンテ姉妹
文学史に残る名作はこうして生まれた…フランス美人女優の豪華競演でブロンテ三姉妹の生涯に迫る
「嵐が丘」などの作者として知られるブロンテ三姉妹の生涯を、カンヌ国際映画祭監督賞の受賞歴を誇るアンドレ・テシネが映画化。三姉妹に扮するイザベル・アジャーニらフランス名女優たちの競演に胸を揺さぶられる。