検索結果
-
PROGRAM/放送作品
列車に乗った男
『髪結いの亭主』のルコント監督が、偶然出会った2人の男の切ない友情の3日間を描いた物語
『橋の上の娘』のパトリス・ルコント監督が描いた、2人の男の切なくも温かい友情の3日間。主演は『髪結いの亭主』のジャン・ロシュフォールと『ゴダールの探偵』のジョニー・アリディ。
-
COLUMN/コラム2020.12.21
マルコム・マクダウェル原案・主演×リンゼイ・アンダーソン監督による「ミック・トラヴィス3部作」の第2弾
今日お勧めの映画は『オー!ラッキーマン』(73年)です。タイトルだけ聞くと、楽しそうな映画かな?と思うでしょうが、主人公が“地獄めぐり”をする話です。 主役はマルコム・マクダウェル。本作の直前にあのスタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』 (71年)で主人公を演じて世界的なス ターになりました。映画自体も全世界でセンセーションを起こし、英国では上映禁止になるくらいのスキャンダルになりました。 この『オー!ラッキーマン』は、『時計 じかけ〜』の裏返しなんです。主人公ミック・トラヴィス役のマクダウェルは心優しい青年です。子どもみたいな笑顔が魅力的で、何をされても怒らない...... と『時計じかけ〜』のアレックスとは全く逆なんですよ。でもこっちのほうがマルコム・マクダウェルに近いんですって。 マルコムはリンゼイ・アンダーソン監督の『if もしも...』(68年)で主役に抜擢され、それを観たキューブリックが『時計じかけ〜』のアレックス役に起用しました。それであまりに有名になったマルコムは、自分もあんな凶暴な人柄だと思われるのが心配になり、自分の若いころをモデルにしたストーリーを書いて、アンダーソン監督に見せました。コーヒー豆のセールスマンから演劇を志しアンダーソン監督に見いだされて映画に出てスターに......と、これが全然面白くない(笑)。 そこで監督は脚本家を呼んで、セー ルスマンからスターになるまでの間に、 なるだけメチャクチャな話をブチ込め るだけブチ込めと、書き直させたのが本作なんです。 主人公のミックは心優しい青年で、何の罪もないのに当時のイギリス社会を象徴するような酷い目に遭っていく......拷問されたり、人体実験されたりね。『時計じかけ〜』もそうですよね。あっちは主人公が極悪人だけど、どちらもイギリス社会の被害者となってボロボロに虐められて、ドン底にまで堕ちていく。どこがラッキーマンやねん! この映画、なぜかオールスター・キャストで、ラルフ・リチャードソンやレイチェル・ロバーツ、若きヘレン・ミレンら有名どころが次々と出て来ますが、彼らがひとりで何役も演じています。何かテーマ的な意味があるのかと思うじゃないですか、ところが何の意味もありません(笑)。撮影中にも脚本が出来ておらず、行き当りばったりで撮影してたんで、俳優のスケジュールだけ押さえて、いろんな役をやらせたんですね(笑)。 この話、実は元ネタがあります。 1759年に発表した『キャンディード』という小説で、世の中や人間とは善いものだと信じている純粋無垢な若者キャ ンディードが世界中を旅しながら戦争や災害や貧困や異端審問や奴隷制度などこの世のありとあらゆる残酷な現実を経験するという話です。『ヤコペッ ティの大残酷』(75年)という映画にもなってます。『世界残酷物語』(61年) のグァルティエロ・ヤコペッティの。 『オー!ラッキーマン』はすごく楽しい歌が全編を飾っていますが演奏はアラン・プライス。アニマルズのメンバーで、「朝日のあたる家」のハモンドオルガンを弾いているのが彼です。 あと、若いころのヘレン・ミレンが マルコムとやたらいちゃいちゃしますが、どうも私生活でもつきあってたらしいですよ! (談/町山智浩) MORE★INFO.。●本作は、『if もしも...』(68年)と『ブリタニア・ホスピタル』(82年)の間に製作された、リンゼイ・アンダーソン監督、デヴィッド・シャーウィン脚本、マルコム・マクダウェル主演の「ミック・トラヴィス3部作」の第2弾。●監督と脚本家のシャーウィンは、80年代半ばに「ミック・トラヴィス」シリーズの第4弾『if もしも...2』の脚本を執筆していた。●2006年、マルコム・マクダウェルの半生を振り返るドキュメンタリーが作られたが、題名が『O Lucky Malcolm!』と本作のパロディになっている。その中でマクダウェルは、本作を「最も愛する出演作で誇りに思っている」と語っている。 ©︎Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
-
PROGRAM/放送作品
E.T. 20周年アニバーサリー特別版
巨匠スピルバーグ監督が世界中を涙させた、いつまでも色あせないSFファンタジーの名作!
巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が、宇宙人と少年の交流を暖かく描き、世界中を涙の渦に巻き込んだSFファンタジーの名作。『ジョーズ』の音楽を手掛けた名作曲家ジョン・ウィリアムズの音楽で感動もひとしお!
-
NEWS/ニュース2017.10.05
9月9日公開。クリストファー・ノーラン監督待望の新作『ダンケルク』監督来日記者会見レポート!!
▼登壇ゲスト 監督:クリストファー・ノーラン ファン代表:岩田剛典(EXILE/三代目J Soul Brothers) 日時:2017年8月24日(木) 場所:六本木アカデミーヒルズ タワーホール 司会:荘口彰久(以下司会) 通訳:今井美穂子 作品の巨大垂れ幕が印象的な記者会見会場。クリストファー・ノーラン監督を紹介するVTR上映後、監督本人が登壇。 司会:『ダークナイト』『インセプション』のクリストファー・ノーラン監督が初めて実話に挑んだ最新作『ダンケルク』。今見ていただいた映像やプロデューサーのエマ・トーマスさんが言っていたように、新たな究極の映像体験できる、まさにノーラン監督の最高傑作と言える作品です。いち早く全世界で公開されて、大ヒットを記録しておりますが、すでに多くのメディアでアカデミー賞を有力視されております。早速ご紹介しましょう。大きな拍手でお迎えください。『インセプション』以来、7年ぶりの来日を果たされました。クリストファー・ノーラン監督です。 クリストファー・ノーラン監督(以下監督):皆さん、今日は誠にありがとうございます。今回7年ぶりの来日となるわけですが、再び日本に来れてとても光栄に思います。訪れる場所としては世界の中でも一番好きな国のひとつです。日本の観客の皆さんにこうやって新作を届けることができ、ワクワクした気持ちでいっぱいです。 質問1:圧倒的な映像体験と臨場感がある作品と感じました。この作品は実話ということもあり、臨場感のある映像に込めた思いは? 監督:歴史的な史実に基づく映画を作るのは初めてですので、かなり徹底的にリサーチを重ねました。ダンケルクにいた方々の証言を聞き、入念に彼らの実体験を調べていきました。緊迫感溢れる映画、観客がまるで当事者であったかのような疑似体験できるような映画を作りたかった。作品を撮るにあたり、帰還兵たちの証言を集めている史学者のジョシュア・レヴィーンさんに歴史アドバイザーとして参加して頂きました。この映画を企画していく中で、まだご存命でダンケルクを体験された方々をジョシュアさんが紹介してくださり、彼らにインタビューすることができました。直接お話を聞くことができ、非常に心揺さぶられるものがありました。実際に彼らの実体験、体験談は反映されていて、脚本を書いていく上で取ったアプローチは、架空の人物に彼らの体験談を語ってもらう、そういう手法を取りました。 質問2:この作品は戦争映画ではつきものである残虐なシーンがあまり描かれていない印象です。今回そのような手法を取られた理由は? 監督:今回なぜその手法を取らなかったのか、つまり血を見せなかったのか。それはダンケルクの話は、他の戦争とそもそも性質が違うからです。これは戦闘の話ではなくて撤退作戦なわけです。この物語を語る手法として、サスペンススリラーを描くというアプローチを取りました。従来の戦争映画であれば、戦争がいかに恐ろしいか、目を背けたくなるホラーとして語る手法がありますが、ダンケルクはホラーではなく、サスペンスを語るという手法にしました。目をそむけたくなるどころか、目が釘付けになってしまう、そういうアプローチを取っています。この作品にある緊張感は他の戦争映画とはちょっと違うモノだと思います。グロテスクなもの、敵の姿さえも見せていません。これはサバイバルの話であり、何かジリジリと寄ってくる敵の存在感を感じさせる、そういう手法でサスペンスフルな映画にしています。そして何よりも、タイムリミットがあるという部分も非常にこの作品を緊迫感あるものにしています。 質問3:監督はスピルバーグやジョージ・ルーカスがお好きと伺っております。本作の製作にあたってまたは、同じフィルムメーカーとして彼らから影響を受けたことは? 監督:スピルバーグ監督やルーカス監督から影響は受けています。僕が7歳の時に見た『スターウォーズ』は、非常に決定的な出来事でした。映画を撮ることとなる私にとって非常に影響を受けました。またスピルバーグ監督は、自身が持っていた『プライベート・ライアン』の35ミリのプリントを貸してくださいました。それをスタッフ全員で観させて頂き、非常に参考になりました。今見ても名作ですし、この作品と競争するわけにはいかないと思いました。スピルバーグ監督が『プライベート・ライアン』で成し遂げた緊張感というのは、私たちが『ダンケルク』で狙っている緊張感とは違うこともわかりました。またスピルバーグ監督は水上で撮影する時はどうしたらいいのかという、貴重なアドバイスもたくさん下さいました。ジョージ・ルーカス監督やスピルバーグ監督に加え、ヒッチコック監督、デビッド・リーン監督の影響も受けています。監督として重要だと思うのは、彼らがどういったことをどのようにして成し遂げたのか、これを学ぶということです。これらを参考にして自分の映画作りをしていくということが大事だと思っています。 質問4:世界中で対立が深まっている中、あえて逃げるという題材を選んだ監督の思いは? 監督:映画の作り手として、世の中で起きていることに影響を受けずにはいられないので、少なからず映画の中に反映されているかもしれませんが、故意にそうしているのではありません。世の中で起きていることを描くためにモチーフ使って描き、あるいは説教するというつもりは全くありません。今日の世界は、個人の業績などをもてはやす傾向にありますが、そうではなくみんなが協力し合ってできるものの偉大さ。『ダンケルク』は英国人であれば昔から聞いている物語であり、みんなで力を合わせればどんな逆境でも超えることができるということを思い出させてくれる話なんです。この話はイギリスのみならずどんな文化圏であっても、どんな地域の方々でも共感してもらえると思います。~ノーラン監督のファン代表、EXILE/三代目J Soul Brothers 岩田剛典さんが登壇~ 司会:目の前にノーラン監督がいらっしゃいます。今の気持ちどうですか。 岩田さん:感激です。本物のノーランだと思って。すごく光栄です。この作品は本当に今までのノーラン作品とテイストもどれも違いますし、実話をもとに作られた作品ということで、いい意味でノーランっぽくない作品なのかなと思って拝見しました。作品が始まってすぐ5秒くらいで一気に戦場に連れていかれる。本当に自分があたかも戦場にいるかのような、VR体験じゃないですが、そういう疑似体験をさせてもらえる、映画ならではの表現というか、そういうところも細部までこだわってらっしゃって。エンターテインメント作品でもあり、本当にドキドキハラハラさせられる映画っていう意味ではテーマ性というのは抜きにしても楽しめるし、登場人物ひとりひとりにストーリーがあるので共感できる作品と思いました。監督:どんな年齢の観客でもご堪能いただけるような映画になっていると思いますが、特に若い世代に訴えかけるような映画になればと思います。キャスティングをする上でも、ハリウッドにありがちな、例えば40歳の俳優に若い兵士役をやってもらうとか、そういうことはやりたくなかった。実際、戦場で戦っていたのは18歳、19歳、20歳そこそこの兵士でしたから、色んな若者を見てきました。例えばドラマスクール、演劇学校に行ってスカウトしたり、まだ駆け出しの若い俳優さんを見てみたりと。キャスティングするにあたって、映画初出演という方々にも出てもらっています。これは非常に大事なポイントでした。戦場の現実というものを見せていかなければならないと思ったからです。自分の年齢の人たちがこういう現状を突き付けられていた現実を共感していただければと思います。 司会:岩田さんはインタビューの中で、ノーラン監督が「頭の中をのぞいてみたい人ナンバー1」とおっしゃっていました。 岩田さん:監督の作る作品は、完成図を想定してどう作り上げていくのかというところを、結果がわかった上で逆算して作っているようなイメージをもっています。その映像を撮るにあたって色んなインスピレーションや表現したいものが明確になっていないと、色んなスタッフ、や様々な人の協力がないと形にすることが難しいと思います。それをハリウッドで毎回、作りたいものを作っているという監督は本当に稀有な存在と感じています。この人の頭の中どうなっているだろうと。才能がうらやましいです。 監督:優しいお言葉ありがとうございます(笑)。監督業の面白いところは、何かひとつのことに秀でてなくても構わない(笑)。やるべきことは自分の興味を持った対象、思ったことだとか、やり遂げたいことをやるのに、才能ある人々を集めればいいわけです。彼らの意見やと視点を束ねる、これが監督業の仕事だと思います。つまり、色んな意見に一貫性を持たせるということ。カメラに例えるならばレンズの部分かもしれません。色んな視点の焦点を定めるというとことだと思います。それがうまくいけば、洗練された映画ができると思います。映画のビジョンをうまく明確にし、様々なパズルを一緒にくっつけ合わせるという作業です。他の職業に例えるならば、例えば建築家。図面をスケッチするのは建築家であっても、実際に現場で働くのは色んなスタッフであるわけです。あるいは才能あるミュージシャンを束ねていく、楽団の指揮者にも似ているかもしれません。 司会:岩田さん、せっかくですので監督に質問はありますか? 岩田さん:シンプルに、現場感を大切にされる監督だと伺っていて、いつもモニターというよりは、カメラのすぐわきでディレクションされているそうですが、作品作りで最も重点を置いていることというか、大切にしているポイントを伺いたいと思います。 監督:映画作りは色んな段階を経て完成します。撮影当初は、みんなエネルギッシュで意気揚々と取り組めて、現場は楽しいです。撮影がしばらく続くとそのうち疲弊して、皆疲れ切った状態になりますが、それが終了すると今度は編集です。撮った映像をどういう風につなぎ合わせて、どういう風にベストな映画を作るかというのを四苦八苦しながら、色々考えながらやっていくわけですが、楽しい作業であります。中でも一番好きなのは音のミックシング。これは数か月がかりですが、その頃には編集も終わっていて、絵としては完成しています。サウンドミックシングは、何千という音や効果音と音楽をつなげ合わせて、より良い作品にするにはどうしたらいいのかを考えます。そしてお客様にとってベストな体験となるように工夫していく、非常に充実感のある作業です。 岩田さん:世界各国を飛び回られて映画のことばかり聞かれていると思いますので、日本の訪れた場所で好きな場所、好きな食べ物は何ですか? 監督:前回は家族と一緒に来日しました。新幹線で京都へ行って、旅館に泊まりました。子供たちも連れていけたので、非常にいい思い出になりました。子供たちもよく覚えてくれていて。木刀を買って障子に穴をあけてしまった(笑)。私たちも非常に京都旅行はいい思い出になっています。もう一回来たいと思っています。 司会:実はここでノーラン監督から岩田さんにサプライズプレゼントが 監督:『ダンケルク』の英語版の脚本です。中の方にサインを入れています。岩田さん、今日は本当にご一緒させてもらって本当にありがとうございました。優しい言葉もたくさんいただけて、とても楽しいひと時を過ごせました。本当にありがとうございます。 岩田さん:むちゃくちゃ嬉しいです。童心に帰りました。ありがとうございます。 フォトセッション後、会見終了となりました。■ 『ダンケルク』 原題:Dunkirk上映時間:106分監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン出演:トム・ハーディ、キリアン・マーフィー、ケネス・ブラナー、 マーク・ライランス、ハリー・スタイルズ、フィン・ホワイトヘッドほか2017年/アメリカ/2D・MX4D・IMAX©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED配給:ワーナー・ブラザーズ映画2017年9月9日(土)より全国公開
-
PROGRAM/放送作品
ふたりの5つの分かれ路
理想と本音が交錯する!結婚から離婚へ至る分かれ路を描く、せつない愛のドラマ!
『8人の女たち』で注目され、『スイミング・プール』でカンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞)を受賞したフランス気鋭の監督、フランソワ・オゾンが描き出す夫婦の愛の物語。R-15指定。
-
NEWS/ニュース2017.10.30
『ブレードランナー 2049』の公開にあわせ、ハリソン・フォードほかキャスト、監督が来日!都内でおこなわれた来日記者会見を完全レポート!
▼登壇ゲスト :ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、シルヴィア・フークス、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督 日時:2017年10月23日(月) 場所:ザ・リッツ・カールトン東京 司会:伊藤さとり 通訳:戸田奈津子、鈴木小百合 沢山の報道陣の熱気と作品の世界観を現したパネルが印象的な記者会見会場。盛大な拍手と共に、和やかな雰囲気でハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、シルヴィア・フークス、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が登壇。 司会:ようこそお越しいただきました。ひと言ずつご挨拶をいただければと思います。素晴らしい映像世界を作り上げてくださいました、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督からお願いします ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督:本当に、日本に来られて非常に光栄に思います。この作品を皆さんと一緒にシェアできるということ、とても今興奮しております。司会:どうもありがとうございます。最強の女性レプリカントのラブ役を演じましたシルヴィア・フークスさんです。シルヴィア・フークス:私は初来日なので、今とても幸せですし、本当にエキサイティングな気持ちです。東京に初めて来て、まさに『ブレードランナー』の世界に入り込んだような、そういう感覚にとらわれています。司会:ライアン・ゴズリング扮するKの恋人ジョイをチャーミングに演じられました、アナ・デ・アルマスさんです。アナ・デ・アルマス:皆さんこんにちは。東京は2回目です。19歳の時だったと思いますけれども、小さなスパニッシュ映画祭がございまして、その時に来ました(2009年「ラテンビート映画祭」で初来日)。また帰ってこられて、本当にうれしい。この映画のことをいろいろお話ししたいと思います。司会:最後に、再びデッカードを演じられました、9年ぶりの来日となるハリソン・フォードさんです。 ハリソン・フォード:私も、また日本に戻ってこられて大変うれしく思っております。台風も追い払ってくださいまして、本当にありがとうございました。昨日の台風は、大変興味深い経験でした。今回この『ブレードランナー』の続編を持ってこられたことを大変うれしく思っております。最初の『ブレードランナー』が、日本での反響がとてもよかったことを覚えており、非常に幸せに思っておりました。この続編を日本の皆さまが、楽しんでいただけることを願っております。 司会:どうもありがとうございました。代表質問をさせていただきます。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督に質問です。『ブレードランナー2049』で描かれている世界観でこだわった部分を教えてください。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督:オリジナルの『ブレードランナー』は2019年という設定でした。我々はその時代に近づいてきていて、最初の映画で描かれた世界とはかなり違う世界になっております。ですから、ある意味パラレルワールド的な別の世界観、最初の『ブレードランナー』の繋がりとして、30年後の世界を今回は描いています。そこにスティーブ・ジョブズは存在しません(笑) 実際の現代社会よりも遥かに厳しい気候や過酷な生活の中で、建築物や乗り物、テクノロジーが進歩した世界を描いています。私にとって一番興味深いのは、未来についてこの映画が語っていることではなく、現在について語っていることです。 司会:ハリソン・フォードさんに質問です。前作から35年ぶりにデッカードのオファーが届いた時の率直な気持ちを教えてください。 ハリソン・フォード:撮影が始まるたぶん4年前だったと思いますが、リドリー・スコットから「デッカードをもう一度やる気があるか?」という電話がありました。「ストーリー次第だけど、とてもやりたい」という気持ちを伝えました。その後、リドリー・スコットから、ハンプトン・ファンチャー(本作の原案を担当)のオリジナル短編を元に書いたシナリオが送られてきました。デッカードがエモーショナルな次元で非常によく書かれており、とても共感できるキャラクターであり、これならいけると思い出演しました。 司会:シルヴィアさんとアナさんにお伺いしたいと思います。『ブレードランナー』への出演オファーを受けた時の気持ちを教えてください。 シルヴィア・フークス:最初のリアクションはプロデューサーのオフィスで、本当に大きな声で叫んだ後、号泣しました(笑)。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ハリソン・フォード、ライアン・ゴズリング…こういう方々と仕事ができるという喜びがありました。そしてこの作品が、私にとって人間的にも女優としても大変重要な映画でした。この方々とこの映画の世界に入り込めるチャンスを掴んだということで圧倒されました。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督:オファーを彼女に伝えた張本人なのですが、彼女の叫び声があまりにも大きくて、耳がちょっと痛かったなと。プロデューサーに「彼女、死んじゃったの?」と(笑) アナ・デ・アルマス:エモーショナルな部分で貴重な経験ができました。ナーバスにもなりましたし、この映画の世界の一部に自分がなるということで、非常にドキドキする部分もありました。皆さんが期待するような演技をできるようにというプレッシャーがありました。素晴らしいキャスト、クルーの方たちと一緒にお仕事をできるということも、非常に胸がワクワクする経験でした。私が演じた「ジョイ」というキャラクターも非常に興味深い女性ですし、一体どういう人間なのかという好奇心も駆られ、非常にやりがいのある役でした。この映画はオーディションからリハーサル、撮影の5か月間、そのすべての期間が私にとって本当に実りある時間でした。 記者1:ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督に質問です。日本のアニメーション監督にも影響を及ぼした前作『ブレードランナー』ですが、監督が35年前にご覧になった時のその衝撃をお聞かせ下さい。また、監督された作品にどんな影響がありましたか?ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督:ある意味『ブレードランナー』以前と以後で、だいぶ違うと思います。リドリー・スコット監督の照明の使い方、また雰囲気の作り方、まったく見たことのない世界観。私の映画にも非常に影響を与えていますし、私の友だちや、同世代の監督たちはこの『ブレードランナー』から非常に影響を受けていると思います。 記者2:ハリソン・フォードさんに質問です。昨日は丸一日オフだったということですが、どのように過ごしましたか?また、どこか行きたい場所はありますか? ハリソン・フォード:雨だったので、近くのショッピングモールを歩いたり(笑)。ホテルの部屋がとても高層だったので、この2日間、雲に閉じ込められて全然外が見えなくて、今朝になってやっと景色が見えました(笑) 東京と京都はもう何度も来ています。京都だけで5度くらい。もし機会があれば地方を自分で運転しながら、ドライブ旅行をしてみたいです。もっと日本のいろんなところに行きたいですね。 記者3(フジテレビ、軽部さん):『ブレードランナー』とハリソン・フォードさんに敬意を表して、こういう衣装(デッカードの衣装をハリソン・フォードに見せて)で来たのですが、いかがでしょう? ハリソン・フォード: (OKサインを出す) 記者3(フジテレビ、軽部さん):ありがとうございます。ハリソン・フォードさんは、『スター・ウォーズ』のハン・ソロも30年以上、『インディ・ジョーンズ』も随分時間を経て、また同じ役を演じていらっしゃいます。今回のデッカードも35年ぶりということですが、同じ役を長い時間を経てもう一度演じるというのは、どういう気持ちで、どんなことを感じますか? ハリソン・フォード:やっちゃいけないですか?(ニヤリ)各作品とも凄くファンがいる映画ですね。そういう機会を楽しみに待っている人がたくさんいる。それに応えて、自分が昔演じたキャラクターをもう一度繰り返して、ハン・ソロが30年後にはどうなっているか、デッカードが35年後にはどうなっているか、その時の流れがどういう影響を与えているか、人生をどう生きてきたかということを演じることは、俳優として非常に興味深いことでもあります。それでそういうことを繰り返しているということになるんだと思います。 記者4:前作公開当時、生まれていない若者もこの作品に触れると思います。彼らに対しての何かメッセージはありますか? ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督:『ブレードランナー2049』は、これだけ観ても十分わかるように意図して作られております。そうは言っても、本当にオリジナルを観てほしい。オリジナルは、本当に美しくパワフルな映画で、サイエンス・フィクションとしても金字塔的な作品ですから、両方観てほしいという思いです。最近SFは戦争ものが多い。そういう中で、『ブレードランナー』の世界観というのは、SFを啓示ものとして扱っていますし、謎を解いていくというミステリーなんです。ですから、すごくエモーショナルなものもあります。ハリソン・フォード:今の監督のコメントを聞いて、彼こそ続編を作る正しい監督だったということがおわかりになったと思います。彼はキャラクターからこの作品にアプローチして、感情というものに非常に注意深く描いている。それが作品に対する正しいあり方だと思います。最初の作品はやはり観てほしい。映画をひとつの織物としますと、前作を観るともっと大きな織物が観られる体験できると思います。本作だけでも非常に壮大なスケールですし、満足のいく経験ができます。それに加えて、もし前作を観ればちょっと違った経験も感じることができるんじゃないかと思います。記者5:シルヴィアさんとアナさん、ハリソン・フォードさんと初めてお会いした時の印象、教えてください。それを受けてハリソン・フォードさん、ひと言お願いします。 シルヴィア・フークス:この役の準備のために、ハードなトレーニングをしなくちゃいけなかった。とにかくお腹がすくので、丁度ケータリングのテーブルのところで、色んなモノに食らいついていたんです(笑)。そこにハリソン・フォードさんが素敵なイヤリングをしてクールな感じで来まして、「明日のシーンのことなんだけど…」と言われて、もうごはんを飲み込めなくなってすごく大変な思いだったのを覚えています(笑)。最初のシーンはすごく小さな空間だったのですが、彼を見ると「ハン・ソロだ! インディ・ジョーンズだ!」と思ってしまうので、なるべく彼を見ないように地面を見ていました(笑)。でも彼が、私が彼の方をチラッと見た時、急にジョークを言ったんです。「ある時、バーに犬がいてね」と始まって、それからずっと私を笑わせてくれました。その日はいろんなシーンの合間合間で、彼のジョークがあって。とても温かい人柄と、そしてクリエイティビティーを大事にされる方です。ですからとにかく笑って楽しい雰囲気でした。アナ・デ・アルマス:いつだったかしらと記憶が定かでなくて。ラスベガスにある彼のアパートのシーンだった気がします。ジョイという役の衣装がいつもミニスカートとセーター(笑)。とてもセクシーなので、ライアン・ゴズリングもとても気に入ってくれました。寒い衣装なので、ハリソンはそれを気遣ってくださって「寒くないかい?」とか「そのブーツ、大丈夫?」とか「これ、貸してあげよう」とか、非常にいつも気遣って心配してくれました。「覚えている?」と聞いたら、「全然覚えてない」と(笑)。ハリソン・フォード:とにかく楽しい現場でした。一日一日とても長い時間をかけての撮影ですし、シーンも複雑なので難しい映画なのですが、雰囲気はとても和気あいあいとしていて、私の記憶の中で、この映画の撮影中は楽しかったというものです。 記者6:全世界45か国以上で、初登場No.1を獲得した反響をどう思われているか教えてください。 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督:私たち全員そうですが、この映画を制作するプレッシャーは凄く感じていました。もちろん最初のオリジナルの『ブレードランナー』というのが名作中の名作ということで、その続編を作るというのは、私たちにとってものすごく興奮することであり、そして同時に非常に緊張感、恐怖を覚えました。最高のものを作るべく、ベストを尽くしました。そして今、映画の神様に感謝をしたいと思います。これだけ世界中で反響を呼び、そして非常にヒットしているということで、本当に私は心から感謝をしていますし、誰も私の車の下に爆弾を置かないということは安心できます(笑)。この映画に関わったアーティストたちは、ほぼ全員が『ブレードランナー』ファンでしたし、ですから我々全員が非常に敬意を払って作品作りをしよう、我々の中のこの記憶とか思い出をリスペクトしようという気持ちでした。ハリソン・フォード:この映画は、確かに世界中でヒットしております。それも、いろんな文化が違うところで、ちゃんとヒットしているわけです。それは私にとっては興味深い。話自体はカリフォルニアとラスベガスが舞台ですが、やっぱりこの映画が伝えたいのは、場所じゃなくてキャラクターであり、キャラクターのストーリーなんです。人間とは何かとか、人間は運命をコントロールできるのかとか、そういうどんな文化も超えた人間の自然に抱く質問に答えようとする映画、人間のエモーションに関して答えようとする映画で、そういう意味でこの映画は文化圏を超えたインターナショナルな映画と言うことができると思います。この映画が成功したとすれば、成功の鍵はそこにあると。真の意味で「インターナショナル」ということだと思います。シルヴィア・フークス:この映画を撮っていた時には、まるで本当に小さい独立系の映画のある自由とか信頼を、監督が与えられてくれました。監督は本当に俳優を信頼してくださって、何でもやらせてくれる環境を作ってくれるんですね。ですから、これだけのクリエイティビティーと創造性を出すことができました。これだけアウトハウス的な制作をして公開されると、非常に大きな映画で、それでまた成功しているということはこれ以上ない幸せですし、私たちが一生懸命やったものがこれだけ多くの人たちに温かく迎えられている、そして世界中の人にこの作品が通じているというのがとてもうれしいことです。アナ・デ・アルマス:付け加えることはもうないのですが、とにかくあらゆるところでヒットしていることは本当にうれしいことです。人々の心にタッチしているという、そういう映画でございまして、それはとてもうれしいこと。それはクリエイティブな面でも、それからエモーショナルな面でも人々を動かしているということだと思います。素晴らしいことだし、本当にスペシャルな映画だと思います。そういう映画に携われたことに非常にハッピーに思っております。司会:どうもありがとうございました。 フォトセッション後、会見終了となりました。■ 『ブレードランナー 2049』原題:Blade Runner 2049上映時間:163分製作総指揮:リドリー・スコット監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ出演:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、ロビン・ライト、ジャレッド・レトー、アナ・デ・アルマス、シルヴィア・フークス、カーラ・ジュリ、マッケンジー・デイヴィス、バーカッド・アブディ、デイヴ・バウティスタ 2017年/アメリカ/2D・3D配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント2017年10月27日(金)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー■公式サイト:http://www.bladerunner2049.jp/
-
PROGRAM/放送作品
めぐり逢えたら
運命的に引かれ合う2人をトム・ハンクスとメグ・ライアンが演じた大人のラブ・コメディ
運命的に“めぐり逢う”見知らぬ男女を『フォレスト・ガンプ』のトム・ハンクスと『ニューヨークの恋人』のメグ・ライアンが演じた大人のラブ・コメディ。監督・脚本は『恋人たちの予感』の脚本家ノーラ・エフロン。
-
NEWS/ニュース2017.03.28
最新作『ゴースト・イン・ザ・シェル』。スカーレット・ヨハンソンなど豪華ゲストによる来日記者会見レポート!
作品の世界観を表現した記者会見会場。BGMと共にルパート・サンダース監督、ジュリエット・ビノシュ、ピルー・アスベック、ビートたけし、スカーレット・ヨハンソンの順で登壇。 司会:本当に日本でも、ファンが多い『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』がついに、待望のハリウッド実写化ということで、記者の皆さんもすごく楽しみにされています。早速皆さんから一言ずつご挨拶をいただきたいと思います。 スカーレット・ヨハンソン:皆さんこんにちは。東京に来ることができ、とても嬉しく思います。この作品を、皆さんにご紹介できることを大変嬉しく思っています。非常に長い旅となった体験ではありますが、この作品をお披露目する初めての都市が東京であるということがとてもふさわしいと思いますし、とても興奮しています。本日はありがとうございます。 ビートたけし:あ、どうもご苦労様でございました。やっと幸福の科学からも出られて、今度は統一教会に入ろうかと思ったんですけども、やっぱりこの映画のためには創価学会が一番いいんじゃないかっていう気がしないでもないですけども(会場で笑いが起こる)、初めて本格的なハリウッドのコンピューターを駆使した、すごい大きなバジェッドの映画に出られて、自分にとってもすごいいい経験だし、役者という仕事をやるときに、もう一度どう振る舞うべきかっていうのをスカーレットさんに本当によく教えていただいた。さすがにこの人はプロだと、日本に帰ってきてつくづく思っています。それくらい素晴らしい映画ができたと思っています。 ピルー・アスベック:日本は初めてなのですが、本当に大好きになりました。いつもこういうふうに皆さんと接することができるのであれば、もっとこれからも来日したい。夕方に着きまして、神戸ビーフを初めて口にしました。人生最上のお肉で非常においしかったです。また、今日は皆様お越しいただいてありがとうございます。僕らも本当に努力してこの作品を作り上げました。それをやっと皆さんとこういう形で分かち合えることが非常に嬉しく、光栄に思っております。 ジュリエット・ビノシュ:皆さんこんにちは。こうして東京、日本に来られてとても嬉しく思っております。『ゴースト・イン・ザ・シェル』というのは、日本発のコンテンツということで、日本にこの映画とともに帰ってこられるということを本当に嬉しいことだと思っています。そして、『ゴースト・イン・ザ・シェル』の素晴らしい世界観の一部に自分がなれたということもとても嬉しいですし、この映画を作り上げた素晴らしいアーティストたちとの体験も本当に楽しかったです。正直、脚本を最初に渡されて読んだときに、まるで暗号書を解読でもしているかのように、まったく理解ができませんでした。そういった意味でも非常に自分にとっては挑戦しがいのあるとても難しい役柄でしたが、素晴らしい映画にできあがっていると思いますので、皆さん是非見て頂きたいと思います。ありがとうございます。 ルパート・サンダース監督:本当に今回ありがとうございます。今ジュリエットが言ったように、この素晴らしいレガシーの一部になるということは非常に光栄なことです。私が美術学校の学生だった頃に、この『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』には出会い、本当に素晴らしい作品で非常に想像力をかきたてられ「この実写版を作るんだったら、僕が作りたい」とそのときは思ったんですが、スティーヴン・スピルバーグが作るということが分かって、「ああ、僕じゃない」とそのときは諦めたんです。でも色々なことがあり、非常に幸運にも私が作ることになりました。この映画を通して、本当に日本が生んだ素晴らしい文化、そして非常に芸術性豊かな正宗士郎さんのオリジナルな漫画、押井守さん、神山健治さんのアニメーションや作品に、世界の皆さんがこの作品を通して知ることになるということ、私が若いころに触発されたように皆さんもこの『ゴースト・イン・ザ・シェル』を通して色んなものに出会っていただきたい。日本、東京が大好きですし、この作品を生み出したこの日本という国を本当に素晴らしいと思います。 司会:どうもありがとうございました。私から皆さんに代表質問をさせていただきます。本当に日本が生んだ、そして日本にもファンが非常に多いこの『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』、これを実写化するというプロジェクトに実際参加されてみてどういうふうに感じられたのかっていうお話を聞いてみたいと思うのですが、スカーレット・ヨハンソンさんからお願いできますか? スカーレット・ヨハンソン:初めて原作アニメーションを拝見して、この作品をどう実写化していくかが自分の中ではっきり見えていなかったんです。気持ち的に怖気づくといいますか、ひるむといいますか、原作アニメーションがとても詩的で、夢のような世界が描かれていたり、その存在について静的なところがあったりと色々な要素があり、登場するこのキャラクターに対して自分がどう入っていけるのか、というところがありました。ただ、とても興味があって、アニメが自分の頭の中に残り、ルパート監督と長い時間をかけて彼が集めた色々な素材や資料を見て、彼の考えているその世界観が原作に敬意を持ちながら、独自のものを持っていることがわかりました。自分が演じる役どころ、彼女の人生というか彼女のその存在というものについて二人で色々会話をして、自分の中で否定できないようなものになりましたし、この『ゴースト・イン・ザ・シェル』というものが頭から離れないものになったんですね。監督と二人三脚で未知の世界に大きく一歩を踏み出しました。 監督がとても色々と努力をなさってこれだけ愛されている原作、作品であるということで、私も今回(参加できて)とても光栄に思いますし、とても責任を感じています。この役に自分が息を吹き込むことができ、本当に素晴らしい経験になりました。感情的にも肉体的にも大変な経験でしたけれども、人として学ぶことも多かったですし、また役者として今作から色々学べました。演じた役と一緒に成長を感じることが体験できたのでとても感謝をしています。皆さん作品をご覧になるとお分かりになると思うのですが、この役が遂げている成長を投影して、自分も成長できた作品になっていると思います。ちゃんとした答えになっているか分かりませんけれども、それだけとても大きな意味、体験ができた作品となっています ※ヨハンソン一通り話した後、お茶目に通訳の方を向いて「GOOD、LUCK!」と話す。 司会:はい。素晴らしかったです。ありがとうございました。通訳さんもさすがでございます。では続きましてビートたけしさんはどういうふうに感じられたのでしょうか。 ビートたけし:このアニメは自分の世代のちょっと下の人たちが読んでいたアニメであって、自分はこの作品のオーダーがあったときに、まずアニメ化されたものを見て、漫画を見て、かつてマニアックな人は実写版というのは必ずもともとのコミックとかアニメに必ず負けて文句を言われるというのが定説で、ファンは絶対「違う、違う、こういうのじゃない」というような感じがよくあるんですが、今回は自分の周りにもその世代の子どもたちがいっぱいいて、ちょっと見た限り、昨日ちょっと見たんだけども、やっぱりすごいということで、忠実であって、なおかつ新しいものが入っていて、もしかすると最初にアニメ、コミックの実写版で最初に成功した例ではないかというような意見があって。唯一の失敗作は荒巻じゃないかという噂もあるし(笑)。その辺は言わないようにといってますけども(笑)。それくらい見事な作品だと自分は思っているし、現場でもいかに監督がこの作品にかけているかっていうのもよく分かったし。まあ、全編大きなスクリーンで見ていただければ、いかに迫力があってディテールまでこだわっているかよく分かります。よろしくお願いします。 司会:ありがとうございます。素晴らしい本当に作品でございました。ではピルー・アスベックさんは今回参加されていかがでしたでしょうか。 ピルー・アスベック:日本で生まれた最も素晴らしい物語のひとつに参加することに、もちろん怖い思いはありました。特に演じるキャラクター、バトーは本当に愛されているキャラクターで、ファンの期待も裏切られないという思いもありましたが、この素晴らしいチームに恵まれて、そんな不安も吹き飛びました。本当に参加していて大好きでしたし、すごく楽しめました。それに攻殻機動隊のファンなんです。押井さんのアニメがヨーロッパ、そして世界公開された当時、僕はこの作品に出会いました。色々と話を聞きながら僕が士郎正宗さんの漫画を手に取り、原作のバトーは軍人であり年上なので、僕はもっと歳は若いし、平和主義者だし、ちょっと共通点が見出せなかったんですね。けれども漫画を読みましたら、ビールもピザも大好き、「これだ!」と思いました。ここからキャラクター作りというのができ、もちろん道のりは簡単ではありませんでしたが、ここにいらっしゃるスカーレットさん、ジュリエットさん、そしてたけしさんと、もちろん監督とともに仕事ができたことは大きな喜びでした。 司会:ありがとうございました。ではジュリエット・ビノシュさんお願いいたします。 ジュリエット・ビノシュ:先ほども申し上げましたように、脚本を受け取って一読したときには本当にまったくさっぱりわからなかった。このSFというジャンル自体にもあまり馴染みがないこともありましたし。ただ、自分の息子が映画関係の仕事をしており、特に3Dの特殊技術の関係の仕事をしていて、その息子が原作のアニメーションの大ファンで、私が監督と話し合いを重ねている間、息子が脚本を2回も読んで、色々と逆に説明をしてくれたり、「是非出たほうがいいよ。これは本当に素晴らしい話だから、本当に素晴らしいコンテンツだから」というふうに勧められたことも後押しになった理由のひとつでもありました。本当にとても難しい内容で、独自の言語みたいなもの、暗号にも近いコードみたいなものが存在する話で、自分が演じる役は非常に複雑なキャラクターでした。そういう意味で別に喧嘩したわけではないんですが、監督とかなり熱論を何度も交わしてから役づくりしていたということがあります。撮影自体は、本当にとても刺激的な現場で素晴らしい仲間に恵まれて、共演者やスカーレットが朝から現場に行くと頑張ってトレーニングをしていたり、またルパート監督が目の下にクマを作って昼夜通して働き詰めの中、とても国際色豊かな各国から集まった素晴らしいアーティスト、スタッフたちが一丸となってこの映画に取り組んでいる本当に素晴らしく活気あふれる現場でした。 私が演じるオウレイ博士というキャラクターというのは非常に多層的なキャラクターで、色々な陰謀が明らかになる悪魔のような企業で働きながら、自分が作り上げた「少佐」という存在に対して、あくまで人間的な部分を保たせようと必死になる役柄で、自分自身の人間性というのにも向き合っていくという非常に複雑でとても演じがいがあったんですね。登場シーンが非常に少ないので、その中で自分のキャラクターというのをしっかり観客に伝えなければいけない。そういう意味でもとても演じがいがある分、とても難しいキャラクターでもありました。普段は滅多に出演しないSFの映画作りの新しい側面というのにも触れて、自分にとってエキサイティングな体験でした。日本と縁があるのか、『GODZILLA ゴジラ』(2014)にも出演しているので、少しそういった世界を体験していましたが本格的なSF映画というのは今回が初めてで、これをきっかけに原作マンガを読み返したりして、とても日本のマンガとかアニメに興味を持つようになりました。 司会:どうもありがとうございました。さあ、では、監督はいかがだったんでしょうか。 ルパート・サンダース監督:本当に映画っていうものは常にプレッシャーがあるものですね。大きいものも小さいものも。本当に多くの人に見られて判断される、非常に気に入っていただけるか、憎まれるのか、何が起きるかわからない。今作の場合、世界中に原作のファンがいますし、カルトクラシックとされているものです。登壇されている人たちに、このプロジェクトに是非とも参加してほしいと私から説得しました。たくさんのファンがいる中で、士郎さんや押井さん、そういうクリエイターたちに対して恥のないような本当にいいものを作らなくてはいけないというプレッシャーがありました。私はそういったプレッシャーの中で仕事することがかなり好きな方で、疲労困憊した中で狂気の中を彷徨っている部分もありましたが、とにかく最高のものを作るんだという気持ちの中で、私の想像力を全開にして、すべてやり尽くすという気持ちでいました。本当に戦いでしたし、まるで戦争のような形でここまで漕ぎつけました。世界中の人たちの心に響くものを作りたいというふうに思いましたし、皆さんが見たことのないような新しい作品、スカーレット・ヨハンソンの出演でさらに特別なものになっていますので、『ゴースト・イン・ザ・シェル』を世界中の人たち、多くの方々に見ていただきたいと思っています。 司会:どうもありがとうございました。さあ、ではお待たせしました。今日は記者の方がたくさんいらっしゃっておりますので、質疑応答タイムに移ります。 記者:ビートたけしさんにご質問です。今回出演なさってハリウッド映画と日本映画の違い、どのような点がありましたでしょうか。監督作に取り入れたいような部分があったら教えてください。 ビートたけし:自分が監督をやるときは非常に簡単に、ワンテイクが多いんですけども、ハリウッド映画はカメラの台数も、自分は最高で3カメくらいしか使わないけども、5カメも6カメもあって、ただ歩くシーンだけでも日本で役者やってるつもりで、「よーい」、まあ「ローリング」っていうんだけれども、「よーいスタート」で歩いて、監督が「Good.」っていって、良かったのかなと思って、「Good. One more.」そのあとまた「Nice. One more.」。そのあとやると「Very good. One more.」、「Excellent. One more.」、「Genius. One more.」(笑)。結局、歩くシーンだけでも5カメラで5回か6回歩いて、30カットあるってくらいの撮り方をして、その各カメラが各パーツを狙っていたり、全体を狙っていたりして、これはお金がかかるなとつくづく思いました。 記者:スカーレット・ヨハンソンさんに質問です。この映画を撮ることで、新しい自分を発見した、新しいスキルであり自分的なキャラクター、パーソナリティでありを発見したというふうにおっしゃっておりましたけれども具体的にどの点が、「あ、私こんなところなかったのに。こんな自分があったのか。」というような発見があったのか教えていただけますでしょうか。 スカーレット・ヨハンソン:とても個人的な質問ですね。過去5年位の間で興味を持っていることは、自分の仕事に関していろんなことを発見していく中で、自分が何か不快に感じるような状態に自分を置いて、それが肉体的な面である場合もあれば、ちょっと恥ずかしいと思うような気持ちの面であったりと心地よくない状態に長く自分を置いたときに、考えたことや感じたことを大切に感じて生きています。俳優としてそういうものをいい意味で利用していくというところがあるんですが、深く掘り下げていって本能的な部分、なにが芯の部分であるか、特定のキャラクターを演じるときに、そういうものが使えるのではないかと思っています。この役は、その存在が危機に直面しているという状況を5ヶ月間くらい演じ、決して心地いい体験ではありませんでした。それをどう乗り切るか、またそういう体験をして、2週間ほど前に初めて本編を見て、乗り切ることができたと思っています。質問に答えるのが難しいのですが、とても個人的なものでもありますし、多少抽象的なものであると思うんですけれども、今回非常に難しい困難な仕事ではありました。役者としても、人としても成長することができた作品と思っています。 司会:ありがとうございました。本当に最後の時間になってしまったので、最後の質問になります。記者:監督にお伺いしたいのですが、先ほどたけしさんがご指摘になったように、漫画やアニメーションの大ヒット作には厳しい目があります。それを越えるための戦略、そしてこの作品を実写にするための意義、その辺をどのように考えて挑みましたか。 ルパート・サンダース監督:この作品は大きなチャレンジでした。アニメーションでは簡単にできることが実写になると非常に難しい。例えばバトーの目。実写にすると滑稽なものになってしまう可能性はあります。そして荒巻の髪型、これも実際に滑稽にならないように実写化するのは難しい。少佐の全裸に見えるようなスーツ。これはちゃんとやらないとやはり映画的にはよくない。色々なことがあるんですが、若い頃に出会ったこの作品に非常に縁を感じ、あらゆるチャレンジを受けて立つという気持ちで挑みましたし、本当にこの中でカットのスタイルですとか、ペースですとか、本当に日本映画を意識しているっていうところがかなりあるんですね。『酔いどれ天使』と『ブレードランナー』が出会うようなそういう世界観。黒澤明さんの作品、西洋のSF映画、そういうようないろんなチャレンジはあっても、題材が本当に偉大、素晴らしいものというふうに思っていたので、単にポップコーンがズボンについたまま映画館を出て、全て忘れるような映画ではなくて、見た後色々考えたり、いろんな話をしたりという、そういう作品にしたかったんです。 今回はスカーレット・ヨハンソンが本当に素敵な演技を見せてくれました。非常に複雑な役柄で、「誰なのか」「なんなのか」というアイデンティティの問題や技術革新のテクノロジーが発達した世界で、何が人間たるものかという比喩になっていると思います。士郎さんが発表した当時はインターネット、携帯電話のないそういう時代でしたから、このテーマというのは非常に今日的なテーマであって、多くの観客にこの映画を見ていただいて、テーマやアイデアについて士郎さんがパイオニアであったこの作品を見ていただきたいと思います。 司会:どうもありがとうございました。たくさん質問、皆さん手を挙げてくださっておりますけども、お時間の都合で申し訳ありませんでした。ではこのあとフォトセッションに移りますので、よろしくお願いします。 ジュリエット・ビノシュが今日はルパート・サンダース監督のお誕生日!といって称え、会場に拍手が起こる。ゲストが後段しフォトセッション後、会見終了となった。<終了> ■ ■ ■ ■ ■ 原題:GHOST IN THE SHELL原作:士郎正宗『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(講談社「ヤングマガジン」所蔵)監督:ルパート・サンダース脚本:ジェイミー・モス、 ウィリアム・ウィーラー、アーレン・クルーガー出演:スカーレット・ヨハンソン、ピルー・アスベック、ビートたけし、ジュリエット・ビノシュ、マイケル・ピット 2017年/アメリカ/2D・3D©2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.配給:東和ピクチャーズ2017年4月7日(金)より全国公開 ■公式サイト:http://ghostshell.jp/
-
PROGRAM/放送作品
カリブの熱い夜
カリブ海のリゾートで出会った男と女―。欲望と陰謀の渦巻く危険な愛を描くロマンティックサスペンス
『愛と青春の旅立ち』のテイラー・ハックフォードが製作・監督。危険な大人たちの愛と欲望をミステリアスに描いたロマンティックサスペンス。フィル・コリンズの歌う大ヒット主題歌「見つめて欲しい」も必聴!
-
NEWS/ニュース2017.01.27
世界中が待ち望んだ!『チェイサー』『哀しき獣』のナ・ホンジン監督、最新作。3月11日(土)公開『哭声/コクソン』の日本最速!ティーチイン付きプレミア上映会レポート!!
5年3ヶ月ぶりの来日となるナ・ホンジン監督と、日本を代表する俳優であり、本作では「よそ者」という謎の男で作品を引っ張る國村隼さんのQ&Aのコーナーを(ほぼ)全文レポートさせて頂きます! ※ネタバレを含む部分があります!該当部分には警告がございますので 注意の上ご一読頂ければ幸いです!! ザ・シネマでは3月、ナ・ホンジン監督の過去作『哀しき獣』と『哭声/コクソン』でもその演技で深い印象を残す、韓国映画界の大スター、ファン・ジョンミンが人気を不動のものにした『新しき世界』を特集放送。『哭声/コクソン』公開連動特集もお見逃しなく! 司会:では、ナ・ホンジン監督、5年3か月ぶりの来日となります。國村さんもいらっしゃっています。さっそくお呼びしようと思います。『哭声/コクソン』から、國村隼さん、そしてナ・ホンジン監督です。拍手でお迎えください。 ではまず、お二人にご挨拶を頂戴したいと思います。まず國村さんからお願いします。 國村隼(以下、國村):こんばんは。今日は本当にありがとうございます。映画をご覧になった後のお客さんの前に出てくると、ほんとにちょっとドキドキしますが、ちょっとホッとしました(笑)。この日本で、一番最初にこの『哭声/コクソン』をご覧になって下さった皆さんです。本当にもう嬉しくて、嬉しくて、皆さんお一人お一人をハグしたい気がします。今日は本当にありがとうございます! ナ・ホンジン監督(以下、監督):こんばんは、ナ・ホンジンです。お会いできて嬉しいです。足を運んで頂き誠にありがとうございます。映画の上映時間が結構長かったと思うのですが、お待ち頂き本当にありがとうございます。トイレとかは大丈夫でしょうか(笑)? シナリオから6年くらいをかけて作った映画なのですが、皆さんにお見せできるこの時間を迎える事ができて、本当に嬉しく思います。この後のQ&Aの時間もベストを尽くして挑みますので、よろしくお願い致します。 司会:ありがとうございます。では、お二人には(椅子に)おかけ頂いてお答えいただこうと思います。今日は立ち見のお客様もいらっしゃいます。ではさっそくいきましょうか。すでにリドリー・スコット監督の製作会社からリメイクのオファーが入ったとの事ですが、韓国サイドの代表の方が「この題材を撮れるのはナ・ホンジン以外いない」と明言されたとお聞きしました。もし、監督にハリウッドからリメイクのオファーが来たら、もう一度本作を撮ろうと思われますか?その場合、また國村さんを起用されますでしょうか?また、國村さんはハリウッドからリメイクのオファーがもし入ったらどうされますか? 監督:スコット・フリー(スコット・フリー・プロダクションズ※リドリー・スコットの製作会社)から連絡があったという事は聞きました。でも、対応の方が「演出できるのはナ・ホンジンしかいない」と冗談半分で言ったのだと思います。でも自分に要請が来たとしても、リメイク版を演出するつもりはありません。でも隼さんはこの映画に重要な方なので、必ず必要になると思います。ですのでオススメしたいと思います(笑)。 國村:あの…。オススメされてもやはり、ナ・ホンジンがメガホンを取らないのであれば、私もやることは多分ないんじゃないかと思います(笑)。 監督:では両方ともしないということにします(笑)。 司会:ここでやんわりお断わりが入りましたね(笑)。これまでのナ・ホンジン監督の過去作『チェイサー』や『哀しき獣』は、どちらかというと社会派サスペンスの様な作品だったと思いますが、本作はどちらかというと、ちょっと表現しにくいのですが「オカルト」の様な印象です。どちら(の作風)が監督が嗜好されていた作品、作りたいと思うものだったのでしょうか?教えて頂きたいと思います。監督:この『哭声/コクソン』という映画は、前2作を撮った後に、もう少し自分らしく、自由に、やりたい様に作りたいという意欲が昂ぶった時に作った作品なので、自分のスタイルのままに作った、ありのままに作った、よりやりたいものに近い作品だと思います。 司会:今回、監督が國村さんを起用された理由は何でしょうか?日本では非常にベテランの俳優さんで、悪役から非常に良い方の役まで演じてらっしゃいますが、一番の決め手は何だったのでしょうか?それと國村さんは、ナ・ホンジン監督の現場で一番印象に残っている事はなんでしょうか? 監督:シナリオが出来上がった時に、日本人の俳優が必要だということになり、國村さんと同年代の俳優さんを沢山調べました。既に國村さんという存在を存じ上げておりましたし、ずっと尊敬し続けていた俳優さんであったのですが、(探す過程で國村さんの)全作品を集中して見続けているうちに、ある特徴に気づきました。それはカットごとに自分の演技だけで既に編集され尽くされている様な演技をされるなぁという事でした。カットの中で、自由に演技をされているところが、とても素晴らしいと思ったのです。 で、この『哭声/コクソン』の中で、(國村さん演じる)「よそ者」という役は、お客さんに「この人物ってどういう存在なんだ?」という疑問を投げかける、とても重要な存在なんですね。その役をやり遂げるのはやはり隼さんしかいない、國村さんしかいないという確信を持って、日本に来てオファーをさせて頂きました。 國村:最初にオファーを頂いて、彼の前作『チェイサー』と『哀しき獣』そしてもちろん(本作の)脚本を読ませて頂き、もうその段階で「このナ・ホンジンという人はとんでもない才能だな」と実感していました。いざ、現場に入り一緒に撮影をしていく中で、最初に思っていた以上に「この人はもう才能のカタマリがそのまま人の形をしている様な人だな」と感じました。 というのは、現場でテイクを撮っていくんですが、この人はなかなか終わらないんです。1つテイクをとり終わった後、最初の基本のビジョンから新たにどんどんイメージが湧いていくタイプの方で、その自分の中で膨らむイメージを、「もっともっと」と、テイクを重ねる、という様な事がありました。 ただ、むやみやたらに重ねるのではないんです。自分の中のイメージの膨らみ、その膨らみこそがすごい才能だと思います。それを現場で目の当たりにして、やっぱり想像以上にすごい人だと、そういう風に思いました。 昨年、ソウルで『哭声/コクソン』を観させて頂きました。朝一で観たんですが、その日一日ブルーな気持ちになってしまいました(笑)。方言が難しくてあまり理解ができていなかったのですが、今日改めて拝見してさらにブルーになりました(笑) 司会:私は、ファン・ジョンミンさんのファンなのですが、國村さんは、現場でどの様なお話しをされましたでしょうか?何かエピソードがあれば教えて頂きたいです。 國村:ファンさんとは、画面の上でやり合ったりする事はなかったので、撮影の現場を一緒に過ごした事はあまりないのですが、その少ない中でも、彼はやっぱり、韓国の役者さんってみんなそうなんですが、映画の世界に来るまでにものすごく色々なスキルを重ねてらっしゃる。彼もまた、学生時代に演劇というものを始めて、それからこの世界に入り、映画の世界に行くまで様々な経験を重ねてらっしゃった様です。だから当然のごとく、経済的にもとても苦労した、という様な話しを、「ああ、なんかその辺は日本の役者の事情と非常に似ていて面白いな。一緒なんだな。」と思って。もちろんファンでいらっしゃるので、ご存知だと思いますが、韓国の大スターでらっしゃいます。けれども全然驕るところのない方で、本当に色々なキャラクターを演じられます。今回の役も明らかですが、どこかにファンさん自身の、物事に対する真摯な人柄みたいなものがちょこっ、ちょこっと出てくる。そのまんまの人です。あの人は。はい。 司会:ナ・ホンジン監督は、キャスティングに関して何か基準があれば教えて頂きたいと思います。 監督:一番その役にふさわしい(正しい)という役者さんを選びます。(出演する)それぞれの俳優さん達のバランスというのも一番注意する部分の1つです。それぐらいが自分の原則と言えるところです。 先ほどのファン・ジョンミンさんのエピソードに関して補足を入れさせて頂きますが、國村さんとファン・ジョンミンさんが映画の中で実際会うシーンは「ない」と言っても過言ではありません。もともとワンシーンだけ二人が会うシーンがあったのですが、それすら自分が編集の過程でカットしたので、映画の中で二人が会うシーンは無かったと思います。 司会:キム・ヨンソク(『チェイサー』主演)さんが、「甲板の上から飛び込みさせられたが、そのシーンがあまり映っていなかった」という様な事をおっしゃっていましたが、監督は國村さんの事をソンセンニム(先生)とお呼びになるほど尊敬されていらっしゃる様です。目上の方に結構無理な事をお願いするのは大変じゃなかったのかな?と思いました(笑)。韓国では年上の方に敬意を払われるので、裸にしてしまったり、結構いろんな事を、國村さんにさせてらっしゃるので(笑)。國村さんもそういう大変なシーンについては、どの様に思われているか教えて下さい(笑)。 監督:本当に申し訳なかったと思っております(笑)。ただ、シナリオがそういう風に出来上がっていたので、自分としてもどうしようもなかった、というほかありません。大変な思いをされるシーンが多かったことについては、撮影以外のところでなんとかケアをする為に、最善を尽くしたつもりであります。自分なりに頑張りました(笑)。今でも申し訳なかったと思っています。もしこの映画が日本で良い成績を残せなかったら、自分自身になんと言ったらよいかわかりませんが、良い結果を残せたらいいなと思っております。撮影を通して、沢山の事を、國村さんから学び、驚き、感嘆する事が多くありました。またそういった撮影の過程を通して、さらに尊敬し、大好きになりました。謝罪と感謝の気持ちをこの場でまた、述べさせて頂きたいと思います。 國村:なんか気恥ずかしいですね(笑)。 私もまさに監督が今おっしゃった様に、台本の中でもう、「こういう事をしなければいけない」という事が予め分かっていたので、それを理解した上でオファーを受けました。ただ一番引っかかったのは、「あれ?俺、ひょとして、このカメラの前ですっぽんぽんになることなんて出来るのかな?」という事でしたが、「この『哭声/コクソン』という作品の世界観はすごいな、そして、この男の役を僕以外の人がやっているのを見たくないな」、という気持ちが正直なところで、「観客の皆さんのご迷惑になる様なものを晒す事になっても、やってみよう」と思った次第です。ですから、監督に「ひどいことをさせられてる!」という意識は全くありませんでした。あくまで自覚的にその世界に自分から飛び込んだということです。 司会:韓国で賞もとられて、テレビで観ていてとても嬉しかったです!これからもご活躍をお祈りしております! 國村:ありがとうございます。 <場内拍手> 司会:ちなみに個人的にお聞きしたいのですが、ふんどし…姿じゃないですか? 國村:あ、言い忘れました!最初の脚本はすっぽんぽんだったんです! 司会:発案は國村さんからされたんですか? 國村:いえいえ。やっぱり韓国にも映倫に相当する様な組織があるらしく、やっぱりそらーまずかろうという(笑)それで「日本でいったらなんだ?」という事で、「そらふんどしだろう」と。劇中で、あるおじさんが「おむつ」って言ってますけど、多分見まがうという事もあったんでしょうね(笑) 司会:それじゃあ、日本で言ったら「ふんどし」だろうということで、あのセリフも付け加えられたんでしょうね。 司会:素晴らしい映画を有難うございました。監督に質問なんですが、この映画は観る側の想像に委ねる部分が沢山あると思います。監督の中で、國村さんが演じられた役については、細かい設定等は考えてあるのでしょうか?また、國村さんに質問なのですが、今回の役について、國村さんなりの解釈や背景は設定されて役作りをされたのでしょうか? 監督:映画を通して(國村さん演じる)「よそ者」はずっと観客に質問を投げかけ続ける立場にあります。これは映画そのものが観客に質問を投げかけるという設定なんですが、映画を観終えた方にもまだなお「「よそ者」をどう思いますか?」とずっと質問を投げかけ続ける映画であります。この「よそ者」というキャラクターはとても重要なのですが、その理由として、劇中の他の登場人物たちの「よそ者」に対する考えがどんどんどんどん変わってくるんです。「よそ者」に対するイメージが固まらない。まとまらないものが、まとまりつつある映画なんですが、その解釈が一人一人違うんですね。だから、「たった一つの解釈で定義するものではない」というのがこの映画の特徴であります。なので、自分自身もキャラクターを一言で定義することはできません。観客の皆さんがどんな解釈をしていようが、全ての解釈が合っていると、自分は思っています。この映画は観客の皆さんが自分で整理して完成させる。そういう映画であることを期待しております。 國村:「その男」をやるにあたって私が考えた事を申し上げます。良く言われる「役作り」という様なアプローチは機能しない、もっと言えばご覧になってわかる様に、 ※※ここからネタバレを含みますので、本編をご覧になる前の方は絶対にお読みにならないで下さい!!※※ あれは実在するものでないかもしれない。つまり、人でもなければ、何かのエネルギー体なのか、本当に存在するのか?確かな事は、「この男を見た」という奴の「噂」の中に、あの男がいるということです。最後、イサムという牧師の若者が、自分が見ている目の前の存在に、「お前はどう思う?」と逆に聞かれた時に、「お前は悪魔だ」と言った途端、すっとそこに悪魔として現れる。存在しているのかどうかもわからない、そういうイメージなんですね。ですから、その存在自体が本当に有るのかどうかも分からないものを、どう作ろう、なんてことは全く無理な話しであって、無理やり1つ何かを言葉を与え、自分の実感を伴ったイメージを与えようとした時に、このお話しの中で、あのキャラクターの「存在意義」というか「役割」というのは一体なんだろう?と。そこからアプローチした方がいいかなと思いました。 例えばですが、コクソンという片田舎の小さな町のコミュニティを池に例えて、そこにぽんっと放り込まれた、異物としての石ころ。その石ころが、ぽんっと池に投げ込まれる事によって起こる波紋。みたいなものだと。つまり無理やりに「(その男とは)なんだ?」と言われると、「池に投げ込まれる石」かもしれない。そんな事を注意しました。 司会:最後までドキドキする映画で、でもその中に笑いの要素もあり、そこが救いで良かったです。キャスティングも皆さん素晴らしかったですが、監督と國村さんから見た、現場でのチョン・ウヒさんの印象をお聞かせください。 國村:彼女も若いですが、舞台からの経験を積んで、素養をきっちりと身に付け、女優さんとして本当にクオリティが高いなと思いました。何より彼女は例えば「ムミョン」というキャラクターを自分がどういう風に捉えているかも含め、それをきちんと言葉にして喋る事ができる。やっぱり若いけどクオリティの高い女優さんである、というのが僕の印象です。 監督:たくさんの女優さんがオーディションを受けた中で、チョン・ウヒさんを選んだ理由というのは、彼女が最適な女優さんだからです。外部から見えるものではなく、その方が持つ『技』という面で、ものすごい力を感じました。私はこの役には「見せる力」があってほしいな、と思っていました。その理由としましては、2時間半の上映時間の中、全ての登場人物のバックグラウンドにあるものは「コクソン」という地名なんですが、その「コクソン」という地域の中に存在する、「神」というものを直接描写することはしなかったんです。しかし、観客に、無意識的に「神」という存在を感じさせる様な描写をしたかった。「神」を描写する手段としては、BGMや後ろの背景、時間や天気の変化を通して、観客にも届くのではないかと思っていました。チョン・ウヒさんを通して皆さんに伝えたかったんです。出演の場面もセリフも少ないのですが、映画の緊張を持続させる力がある役者が必要だと思っていたので、彼女を選びました。また現場では、すごくかわいらしい、妹の様な存在で、映画をご覧になった方はお分かりになると思いますが、期待以上にパワフルな演技をして下さいました。 司会:監督がなぜキャスティングも含めて、天気にそんなにこだわっていたのか、今の答えでもわかりました。「神」を感じさせるという。お時間の方が来てしまいましたので、公開は3/11なのですが、最速で観て頂いた皆さんにご挨拶を頂ければと思います。 國村:今日は本当にいらしていただいてありがとうございます。ほんとは最初に聞こうと思っていたのですが、どうでした? <場内拍手> ああ、良かった!!楽しんで頂けたなら本当に良かったと思います!で、ここからはお願いでございます。この『哭声/コクソン』という映画は今までには無かった映画だと思います。カテゴライズできない映画。映画の新たな楽しみ方が、この『哭声/コクソン』だと思います。ぜひお友達にこういう体験をさせてみたい、と思った方はお友達とまた一緒に観に来て下さいね。今日はありがとうございました! 監督:監督としての未練というのはあると思うのですが、この『哭声/コクソン』を作り上げた後に、「一抹の未練もない!」と言い切れます。ナ・ホンジンという監督の全てを注ぎ込んだ、未練が残らない作品と言えます。どんな評価を皆さんから頂こうが、それを全部受け止める所存であります。そんなナ・ホンジンという監督が6年をかけて全てを注ぎ込んで作った映画なので、周りのお友達に、「こういう監督が6年もかかって作った映画」だとお伝え下さい。長い間ご一緒頂きありがとうございました! 司会:ということで、ナ・ホンジン監督、國村隼さん、もう一度大きな拍手でお見送り下さい。ありがとうございました!!数日前にこの作品拝見して、どこか喉につかえたものがあったのですが、皆さんの質問、そしてお二人の回答によって、半分くらいは自分の中で咀嚼できたかなと思いました。そんな映画体験をさせてくれる作品というのは、今の上映作品の中でも珍しいと思います。3月11日公開ですが、公開後も応援して頂ければ幸いです。本日はご来場本当にありがとうございました。気を付けてお帰り下さい。 <終了> ■ ■ ■ ■ ■ 監督:ナ・ホンジン出演:クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼、チョン・ウヒ2016年/韓国/シネマスコープ/DCP5.1ch/156分©2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION配給:クロックワークス 公式サイト:http://kokuson.com/公式Twitter:@ kokuson_movie公式Facebook:https://www.facebook.com/kokuson0311 2017年3月11日、シネマート新宿他にて公開