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COLUMN/コラム2015.07.17
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2015年8月】キャロル
「ロード・オブ・ザ・リング」のヴィゴ・モーテンセン主演、ナチス政権下の葛藤を描くヒューマンドラマ。 ベルリンの大学で教鞭をとるジョンは、ノイローゼ気味の妻に代わって家事と二人の子供たちの育児、そして母の介護に追われる日々。精神科医であり親友であるユダヤ人のモーリスと過ごす時間が唯一の息抜きだった。これといった主張も特徴もなく無難に生きてきたジョンだったが、昔書いた小説をヒトラーに気に入られたことをきっかけにナチ党に入党。そのことに愕然とするモーリスとの関係に亀裂が入る一方で、ジョンは教え子で愛人だったアンと再婚したり、出世し教授になったりと、これまでになく順調な人生を歩み始める。ナチ党のユダヤ人迫害が増していることを日々肌で感じているモーリスは決死の思いでジョンに助けを求めるのだが、ジョンは事態を深刻に受け止めず、自力で何とかしろと突き放す。数年後、いよいよ戦況が激化するなか強制収容所の実態を知ったジョンは、音信不通となったモーリスの行方を追うのだが・・・。 この映画は、ナチスを批判する勇者でもユダヤ人を救うヒーローでもない、自分の安全のために無難な選択をして時代に流されていく、真面目で誠実な一般市民の姿を描いています。どうしてユダヤ人の親友がいるのにナチ党に入ったの?なぜ親友を助けてあげようとしなかったの?と、ジョンのとった行動は理解しがたく、ただ流されていく姿に共感できないと感じる人は私を含め多いでしょう。しかし、「もしもジョンが自分だったら・・・?」そう置きかえると矛盾を感じてしまうところがこの映画を“面白くなく”しており、実はミソなのではないかと思うのです。「入党すれば昇進できて生活が安定する。それに社会的地位も上がる」「最近はユダヤ人への風当たりが強い。でも(モーリスは)裕福だし何とかなるだろう」と考えたジョンや、「これだけ沢山の人が支持している人気の政党なのだから大丈夫に決まってるじゃない」と深く考えない若者アン。ナチスの黎明期では、迫害の現実や変貌を遂げようとしている一国の未来の姿に恐怖するのは一部の有識者のみで、大半の一般市民がジョンやアンと同じだったのではないでしょうか。今の日本に置き換えると、そう他人事にも思えません。ちょっと痛いところ突かれた感じが、この映画を“面白くない”と感じさせる後味の悪さであり、本当の面白さのような気がするのです。 © 2007 Good Films Ltd.
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COLUMN/コラム2015.03.31
個人的に熱烈推薦!編成部スタッフ1人1本レコメンド 【2018年4月】にしこ
1954年の名匠、アルフレッド・ヒッチコックによる傑作サスペンス『ダイヤルMを廻せ!』を現代のニューヨークを舞台にリメイクした本作。と、いってもプロットを拝借して、別のサスペンスを作ってみました、という印象を受けるのは、トリックや小道具を現代風に置き換えたり、ニューヨークでのロケーションや、大富豪の豪華な生活を品よく描いていたり、オリジナルとは異なる点が多々あるからでしょうか。実業家のスティーブンは強引な経営で多額の負債を抱えていた。妻のエミリーは紳士だが、冷酷さを感じる夫への愛情を失い、画家のデビッドと秘密の逢瀬を重ねていた。エミリーの浮気を知ったスティーブンは、大資産家の令嬢である彼女が相続する予定の莫大な遺産を目当てに完全犯罪を計画。なんとエミリーの愛人デビッドに、50万ドルで殺人を引き受けさせる。計画実行の夜、完全に思えた殺人計画は、エミリーが襲ってきた男を逆に刺し殺すという予想もつかなかった出来事で、綻びが生まれていく… オリジナルでは、脛に傷を持つ夫の同級生が、殺人を持ちかけられますが、本作は、妻の愛人に直接殺人を頼むという斬新さ!また、舞台劇の様に、ほぼ1室の中で物語が展開するオリジナル版とは違い、この映画の主人公と言っても良いのは、ニューヨークの街と大富豪の豪華なペントハウスであるほど、素敵に撮影されています。 TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.