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PROGRAM/放送作品
夕なぎ(1972)
対照的な男2人の間で女心が揺れる…イヴ・モンタン&ロミー・シュナイダー競演で綴る大人のラブストーリー
正反対な男2人に愛されるヒロインをロミー・シュナイダーがドライに好演。賢い美女と惚れやすい男というクロード・ソーテ監督作に典型的な男女関係を、抑えたトーンで描くことで大人の恋愛映画に仕上がっている。
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COLUMN/コラム2020.09.28
安易な理解を否定する、 オーソン・ウェルズ監督の悪夢のような映像とイメージが満載!
今回お勧めするのは、オーソン・ウェルズ監督の『審判』(62年)です。 これは有名な作家フランツ・カフカの同名傑作小説の映画化ですね。 監督のウェルズと言えば、映画史上の傑作のひとつ『市民ケーン』(41年) の監督です。彼は26歳で老新聞王ケーンを演じながら監督も兼任して、 様々な撮影テクニックを開発していま す。たとえば「パンフォーカス」。画面の近くにいる人物も遠くの背景にも同時にピントが合っているという肉眼 ではありえない映像ですね。 『市民ケーン』は、それ以降のあらゆる 映画に影響を与えたものすごい傑作ですが、アカデミー作品賞は獲れませんでした。ケーンのモデルは、当時の実在の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストで、彼を茶化した内容だったため、ハーストが反『市民ケーン』キャンペーンを行い、アカデミー賞で9部門にノミネ ートされながら、脚本賞のみの受賞に終わっています。これ以降もウェルズはハリウッドでなかなか映画を作れなくなり、作品数は少ないのですが、ヨーロッパで撮ったのがこの『審判』です。 原作がカフカの小説だと聞くと、重々しい映画じゃないの? と思う人も多いでしょうが、これコメディです。 映画は「K」という銀行員。保険会社で働いてたカフカ自身ですね。彼は、ある日突然“起訴”されてしまいます。 何の罪でかというと判らないんです よ。判らないまま裁判にかけられて......という、本来なら怖い話ですが、 本作は怖さよりもシュールさが強調されています。ウェルズ監督が冒頭で「こ れは悪夢(の理論)である」と説明しているように、つげ義春の『ねじ式』みたいな映画になっています。 たとえば「K」が勤めている会社では地平線の彼方まで机が並んでいて、物凄い数の従業員がタイプライターを打ち続けているんです。CGじゃなくて 実際に何百人ものエキストラとタイプライターを集めて撮影しています。こうい うありえない悪夢的なイメージはテリ ー・ギリアムの『未来世紀ブラジル』(85年)に明らかに影響を与えています。 主人公「K」を演じるのはカフカに顔が似ているアンソニー・パーキンス。彼は本作の前に、アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』(60年)で 変態殺人鬼の役を演じて、世界中で大当たりしたために、その後は変態殺人鬼役ばかりオファーされたんですね。彼はそれが嫌でハリウッドからヨーロッパへ逃げ出して、そのころに出た作品です。 その「K」は次々に美女に誘惑されます。夢には願望が出てきますから。なかでもロミー・シュナイダーがやたらエロくて可愛くて困ってしまいま す。美女たちにキスされて、ふにゃふにゃと反応するアンソニー・パーキンスは『アンダー・ザ・シルバー・レイク』(18年)のアンドリュー・ガーフィールドそっくりです。 オーソン・ウェルズ自身も「K」の弁護士役で出てきます。「私に任せとけ」と言うだけで何もしてくれない、実にウェルズらしいインチキくさい役 ですね。 『審判』というタイトルは仰々しいですが、ダークでエロチックなコメディですので、リラックスして悪夢をお楽しみください。 (談/町山智浩) MORE★INFO.●1960年にオーソン・ウェルズが、独立プロデューサーのアレクサンダー・サルキンドから、パブリックドメイン(PD)の文芸作品から何か映画を作らないか? と持ちかけられたのがそもそもの始まり。●ウェルズはフランツ・カフカの『審判』の映画化に決めたが、後に原作はPDではないことが発覚、訴訟に発展した。●ウェルズは、主役に当初ジャッキー・グ リースンを求めていた。●ウェルズは映画中で11人の声を自ら吹替えている。●本作と『シベールの日曜日』(共に62年) で使われた『アルビノーニのアダージョ』は、そもそもレモ・ジャゾットによる偽作で、トマゾ・アルビノーニとは直接的に関係はない。 (C) 1963-1984 Cantharus Productions N.V.
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PROGRAM/放送作品
審判(1962)【町山智浩撰】
町山智浩推薦。原作カフカ監督ウェルズ。悪夢的イメージと当時を代表する美人女優に溢れた、これはコメディ
町山智浩セレクトのレア映画を町山解説付きでお届け。カフカの不条理な小説を天才ウェルズが映画化。シュールで難解なアートフィルム!? いえいえ、これはコメディです!と言う、その心は?町山解説あわせて必聴。
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COLUMN/コラム2019.08.30
50歳のオードリー主演作は、 “妖精”への鎮魂歌⁉︎ 『華麗なる相続人』
「永遠の妖精」と呼ばれ、世界中の映画ファンを魅了した女優、オードリー・ヘップバーン(1929~93)。日本での人気も非常に高く、彼女のフルネームをもじった、「驚きコッペパン」などというダジャレを、多くの人々が日常的に口にしていたほどだ。 彼女が絶大なる人気を集めていたのは、『ローマの休日』(53)から『暗くなるまで待って』(67)まで、次々と名作・話題作に出演していた50~60年代に限った話ではない。『暗くなるまで…』以降は映画出演が途切れ、70年代には2本の作品にしか出演していないにも拘わらず、洋画雑誌の人気投票では、その時どきの旬の若手女優などと、常にTOPの座を競っていた。 この頃が、TVの「洋画劇場」の全盛時だったことも、大きかったと思われる。70年代後半に中坊だった我々は、『ローマの休日』『尼僧物語』(59)『マイフェアレディ』(64)『おしゃれ泥棒』(66)等々、池田昌子さんの吹替えで、ゴールデンタイムに頻繁にオンエアされるオードリー主演作にブラウン管で触れ、彼女の可憐な容姿と立ち居振る舞いに釘付けとなったものだ。 新作の製作・公開がなくとも…、いや失礼な言い方になるが、逆に新作のリリースがない分、“妖精”の魅力全開の頃の若い彼女こそが、我々にとって「リアルタイム」のオードリーであった。これこそ正に、一旦フィルムに焼き付けられた姿は年を取らない、“映画女優”のアドバンテージとも言える。 とはいえ、もちろん現実のオードリーは、齢を重ねる。彼女が40代後半になって、9年振りに銀幕復帰した『ロビンとマリアン』(76)が公開された際は、「オードリーも老けた」という声が上がると同時に、「年齢相応の輝きを放っている」という評価もされた。題材が、かの義賊ロビン・フッドと恋人マリアンの、「その後」の物語であったことや、相手役が、ジェームズ・ボンドを降りて老け役に挑むようになったショーン・コネリーだったことなども、プラスに作用したのであろう。人気投票の順位も、相変わらず高止まりであった。 そしてそれから更に3年、オードリーが50歳の時に公開されたのが、本作『華麗なる相続人』である。1979年という製作年を鑑みると、彼女の主演作として、正に万全の布陣で製作された作品だった。 原作は、シドニー・シェルダンが77年に発表した小説「血族」。シェルダンは70年代中盤から90年代まで、発表する作品のほとんどが“ベストセラー”となった、当代の流行作家であった。 多彩な人物が登場する彼の小説世界は、話の展開が早く先が読めないことが、人気を呼んでいた。ハリウッドで映画化された作品は、本作と『真夜中の向う側』(77)ぐらいだったが、TVドラマとしてシリーズ化された作品は、数多い。余談になるが、吉田栄作主演の「もう誰も愛さない」(91)など、90年代初頭に日本でブームになった、フジテレビの“ジェットコースタードラマ”は、明らかにシェルダンの小説及びアメリカでのそのドラマ化作品から、影響を受けていたものと思われる。 本作の監督を務めたのは、テレンス・ヤング。初期『007』シリーズの立役者として知られるヤングだが、オードリーとは浅からぬ縁がある。 第2次世界大戦中の大半を、オードリーはオランダのアルンヘルムで過ごし、終戦後はその郊外に在る傷病兵や退役軍人のための施設「王立廃兵院」で、ボランティアとして働いた。一方ヤングは、イギリス軍戦車部隊長として、アルンヘルム近郊で砲撃の指揮を執っており、その「廃兵院」で手当てをしてもらったこともあったという。 同じ場所で戦争を生き延びたという事実が、2人を結び付けて友情を育てたと言われる。それに加えて大きかったのは、ヤングが監督し、オードリーが長いブランクに入る直前に主演した、『暗くなるまで待って』という作品の成果であろう。 ブロードウェイでヒットした戯曲を映画化したこの作品で、オードリーは、悪漢に狙われる盲目の人妻を演じた。その役作りは高く評価され、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。 ヤングも70年代前半に受けたインタビューで、「(自作の中で好きなのは)いま作っている仕事をのぞいては『暗くなるまで待って』でしょうか。あれは、大衆的に大ヒットした映画であると同時に、世界中の映画人たちから、ほめてもらえた作品でした…」と語っている。ウィリアム・ワイラー、アルフレッド・ヒッチコック、ジョン・フォード、デヴィッド・リーン、ジョン・フランケンハイマー、ジャン=ピエール・メルヴィル、フェデリコ・フェリーニ等々、錚々たる面々から絶賛され、ヤングにとっては、『007』の監督というイメージから脱け出すきっかけとなった作品だった。 そもそもオードリーが、そのフィルモグラフィーで複数の作品で組んだ監督は、4人しか居ない。ウィリアム・ワイラー、スタンリー・ドーネン、ビリー・ワイルダー、そしてテレンス・ヤング。彼女からヤングへの信頼が厚かったことが、『暗くなるまで…』から12年の歳月を経ての、『華麗なる相続人』での再タッグに繋がったわけである。 本作は実に国際色豊かな、オールスターキャストとなっている。イギリスからジェームズ・メイスン、フランスからモーリス・ロネとロミー・シュナイダー、ドイツからゲルト・フレーベ、ギリシャからイレーネ・パパス、エジプトからオマー・シャリフといった具合に。ある者はヤングのかつての監督作に出演した縁から、またある者は、オードリーと共演出来ることが決め手となって、この作品に参集した。 『華麗なる相続人』の物語は、大製薬会社の社長が登山中に、事故を装って殺害されたことから幕開けとなる。その巨額の財産を相続した、社長の一人娘エリザベスを演じるのが、オードリーである。 彼女にも殺人者の手が迫るわけだが、容疑者となるのが、件の国際的キャストが演じる、ヒロインの血縁者たち。それぞれが犯行の動機を持ち、そしてその内の誰かが、真犯人であるという趣向だ。 こうした物語が、まるで欧米デラックス・ツアーのようなロケ地を巡りながら展開する。アメリカ・ニューヨークから、ロンドン、パリ、ローマ、地中海のサルジニア島、スイスアルプスまで、世界各地で撮影が行われた。 加えて見ものなのが、オードリーが身に纏う、華麗なるジバンシィ・ファッション。『麗しのサブリナ』(54)『パリの恋人』(57)『ティファニーで朝食を』(61)などの作品で、オードリーとは切っても切り離せない関係であったファッションデザイナーのユベール・ド・ジバンシィが、この作品でも彼女のために8点のドレスを提供している。 さてこれだけお膳立てを揃えた、“妖精”オードリー待望の、3年振りの最新主演作。いざ公開の段になってみると、批評家、一般観客双方から、見事にそっぽを向かれる結果となった。 はっきり言えば、色々と“無理”があったのだ…。 先にも記したが、シドニー・シェルダンの小説は、そのほとんどが映画化はされていない。膨大なキャラクターが登場し入り組んだ人間関係を展開する、その作品世界は、TVの連続ドラマには適しても、2時間前後でまとめ上げなければならない映画には、基本的に不向きなのである。 それ故映画化に当たっては、脚本の段階で換骨奪胎を目指すぐらい、相当な割愛と整理、再構成が必要になる。しかし本作の場合、良く言えばシェルダン原作持ち前の“ジェットコースター”のような展開で見せるが、悪く言えば、かなり粗雑なダイジェストとなってしまっている。この辺りテレンス・ヤングの腕をもってしても、如何ともし難い脚本だったのだろうか? 何よりも一番の“無理”は、オードリー主演に合わせて改変された、ヒロインの年齢設定。劇中で、殺された父親の歳が、64歳だったことが示されるが、誰もがその時点で「!?」となる。実年齢50歳のオードリー演じるエリザベスは、一体何歳という設定なのか?そもそも原作では、ヒロインは20代半ばだったのに…。 当初はジャクリーン・ビセットなど、当時30代の人気女優を主演に想定して、進められていた企画だった。しかしオードリーの起用によって、ヒロインは「年齢不詳」になってしまったのだ。この辺り資料によっては、オードリーの主演を喜んだ原作者のシェルダンが、主人公の年齢を「35歳」に変えたとも記述されている。 「年齢不詳」にしても「35歳」にしても、何だかな~という思いは、否めない。今回本作を再見してみて、近年の吉永小百合主演作品を鑑賞する際に抱くものと、同じような感慨を抱いた。前作の『ロビンとマリアン』では、せっかく年齢相応の役どころで評価されたのに、このあたり“女優”の性(さが)とでも言うべきなのか? 因みに本作は、製作当時2度目の結婚生活が暗礁に乗り上げていたオードリーには、新たなロマンスをもたらしたとも言われている。劇中でオードリーの相手役を務めるベン・ギャザラとは、“不倫”の関係だったという。オードリーとギャザラは本作の後すぐに、ピーター・ボグダノヴィッチ監督の『ニューヨークの恋人たち』(81/日本未公開)で再共演している。 …というわけで、オードリーを主演に、当時の大ベストセラーを国際的オールスターキャストで映画化した、『華麗なる相続人』。その楽しみ方を最後に提示して、〆とした。 有名ロケ地や豪華キャストを捉えた、名手フレディ・フランシスの美しい撮影、ジバンシィがデザインした艶やかな衣装などを、エンニオ・モリコーネの流麗な音楽をBGMに、まずは堪能する。その上で作品の展開に関しては、家族や友人などと“ツッコミ”を入れながら観るのが、モアベターな鑑賞法と言えるだろう。 また何だかんだ言っても、世界の映画史に燦然と輝く、“妖精”の1979年の姿を目の当たりにするだけでも、上映時間の116分を割く価値は十分にあると、私は考える。■
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PROGRAM/放送作品
華麗なる相続人
[PG12相当]大企業の重役一族が権力争いを繰り広げる…オードリー・ヘプバーン主演の骨肉ミステリー
シドニー・シェルダンのミステリー小説「血族」を映画化。テレンス・ヤング監督が主人公の年齢設定を変更しオードリー・ヘプバーンを主役に迎え、ドロドロした骨肉のミステリーにエレガントな品格を添えている。
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PROGRAM/放送作品
審判
現実か悪夢か…平凡な男が直面する不条理を描いたカフカの名作小説をオーソン・ウェルズが映画化
フランツ・カフカの名作小説を、オーソン・ウェルズが現代に舞台を移して映画化。モノクロ映像の光と影をコントラスト満点に利かせながら、悪夢めいた近未来風の世界を幻惑的に描くウェルズらしい映像センスが光る。
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ルートヴィヒ [完全復元版]
美と芸術に溺れたバイエルン王ルートヴィヒ2世の生涯…、巨匠ヴィスコンティ監督入魂の歴史大作
『地獄に堕ちた勇者ども』『ベニスに死す』に続くヴィスコンティ監督のドイツ三部作最終作。自身も貴族出身の監督が妥協なく“本物”にこだわった、まるで絵画のように美しい圧巻の歴史ドラマ。