アメリカのコメディは日本人にはつまらない・・そんなの都市伝説だ!ザ・シネマでは毎月1本、厳選したアメリカン・コメディをお届け!
アメリカン・コメディの第一人者である長谷川町蔵さんによるコラムと共にご紹介します。アメリカン・コメディ界の人物録も必見!
ラブ・アゲイン
2017.01.09
長谷川町蔵
四十代、二十代、十代。異なる世代の恋愛を鮮やかに描いたラブコメ。
伝説のコメディ映画として語り継がれることになるかもしれない豪華キャストにも注目。
平凡な日常に満足しきっていた44歳の中年サラリーマン、キャル・ウィーバー(スティーブ・カレル)に、突然人生の危機が訪れた。25年間連れ添った妻のエミリー(ジュリアン・ムーア)から離婚を切り出されたのだ。理由は彼女と職場の同僚デヴィッド(ケヴィン・ベーコン)の浮気。
ショックが冷めやらない中、家を出てひとり暮らしをすることになったキャルは、夜な夜なバーに繰り出すようになったものの、口から出るのは恨み言や泣き言ばかり。ドン底状態のそんな彼に、ある夜救いの手が差し伸べられた。「男らしさを取り戻す勇気を与えよう!」
言葉の主は、同じくバーの常連でありながら、毎晩異なる美女をお持ち帰りする若きプレイボーイ、ジェイコブ(ライアン・ゴズリング)だった。これまでエミリーとしか付き合ったことが無いキャルは尻込みしてしまうが、「彼女をもう一回振り向かるチャンスだ」と言われ、ジェイコブへの弟子入りを決意する。彼の厳しい指導のもとファッション・センスやトーク術を磨いたキャルは、努力が実ってイケてる中年プレイボーイへと変身を遂げるのだった。
しかしある日を境にジェイコブはバーに姿を見せないようになってしまう。彼は弁護士を目指す真面目女子のハンナ(エマ・ストーン)と真剣な恋に落ちていたのだ。そう、エミリーと出会った頃のキャルのように。
一方、キャルの13歳になる息子ロビー(ジョナ・ボボ)は、ベビーシッターとして家に訪れる17歳の女子高生ジェシカ(アナリー・ティプトン)に熱を上げていた。しかしジェシカには片思いの相手がいた。それは何とキャル。それぞれの恋はヒートアップしていき、ロビーと妹モリー(ジョーイ・キング)が企画したキャルとエミリーの仲直りパーティで大爆発するのだった……。
『ラブ・アゲイン』(11年)は原題『Crazy, Stupid, Love.』の通り、イカれてバカげた恋愛を描いた群像コメディだ。監督を務めたのはグレン・フィカーラとジョン・レクアのコンビ。もともと彼らは『キャッツ&ドッグス』(01年)、『バッド・サンタ』(03年)、リチャード・リンクレイター監督作『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』(05年)といったコメディの脚本を手がけてきたチームで、監督としてはジム・キャリーとユアン・マクレガーがカップルに扮して話題を呼んだ『フィリップ、きみを愛してる!』(09年)でデビューしたばかりだった。本作以降もウィル・スミス主演作『フォーカス』(15年)では脚本を兼務している。
本来は脚本家の二人が本作で監督に専念しているのは、脚本が彼らも唸るクオリティだからだ。脚本を手がけたのはダン・フォーゲルマンという人物なのだが、その彼のキャリアが凄い。脚本チームに参加したピクサー・アニメ『カーズ』(06年)であのジョン・ラセターに才能を認められ、再建期のディズニーアニメ『ボルト』(08年)、『塔の上のラプンツェル』(10年)の脚本を一手に引き受けていた才人なのだ。しかし大人向けのコメディを作りたいという欲望を抑えることができずに製作の予定もないまま影で執筆していたのが『ラブ・アゲイン』だったというわけだ。
本作の見どころは、四十代(キャルとエミリー)、二十代(ジェイコブとハンナ)、十代(ロビーとジェシカ)という異なる世代の恋愛が鮮やかに書き分けられる一方、それらが思いもかけぬ形で繋がっていることが終盤で明かされるトリッキーな展開にある。ヒントはそこかしこに転がっているので、未見の映画ファンは謎解きにチャレンジしてみるのも一興だろう。
ちなみにフィカーラとレクア、フォーゲルマンの3人は昨年テレビドラマ『This Is Us』(16年〜)でリユニオン(フォーゲルマンがクリエイター兼脚本、ほかの二人がプロデュース&監督)。本作同様、複数のカップルのドラマを平行して描いていたと思ったら、途中からそれぞれが暮らす時代が異なっていたことが明らかになる驚愕の展開で絶賛を巻き起こしている。こうしたトリッキーな仕掛けのルーツは『ラブ・アゲイン』にあるのだ。
本作の脚本執筆にあたって、フォーゲルマンは当初からキャル役をある俳優を想定して書いていたという。それがスティーブ・カレルである。カレルが当時出演していたテレビコメディ『ザ・オフィス』(05〜13年)で演じていた最低上司マイケルの<善人バージョン>こそキャルなのだ。『ザ・オフィス』そのままにダサかった彼が、洗練された男に大変身するところに本作の面白さがある。
対する妻メアリーを演じるのはジュリアン・ムーア。カレルより2つ年上の60年生まれなので、撮影時は五十代に突入していたはずなのだが、全くそうは見えない美魔女ぶり。キャル言うところの「セクシーとキュートが混じった存在」を演じきっている。
今年のアカデミー賞で本命視されているミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』(16年)でハリウッド随一のゴールデン・カップルになったライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの初共演作としても本作は記憶されるべきだろう。本作で相性の良さが買われた二人はまず『L.A. ギャング ストーリー』(13年)で再共演を果たしている。
1940年代から50年代にかけてのロサンゼルスを舞台にLA市警とギャングの戦いを描いたこのクライム・ドラマで、ふたりは警察官とギャングの情婦という立場にありながら恋に落ちるカップルを熱演。レトロなコスチュームの着こなしも評価された。これを見込まれて三度目の共演を果たしたのが、舞台が現代のロサンゼルスでありながら何処かレトロなムードが漂う『ラ・ラ・ランド』なのだ。『ラブ・アゲイン』を観た者なら、歌い踊るふたりに、『ダーティ・ダンシング』の主題歌「タイム・オブ・マイ・ライフ」を踊る本作のシーンがフラッシュバックして思わずニヤリとすることだろう。
またブレイク前のアナリー・ティプトンとジョーイ・キングが出演していることも、今では貴重である。ティプトンはもともとリアリティ番組『America's Next Top Model』で世に出たファッション・モデルで、メインキャストを務めたのは本作がはじめて。しかし明後日の方向に暴走を繰り広げるジェシカ役を見事に演じきり、新世代コメディエンヌとして注目されるようになった。以降も『ダムゼル・イン・ディストレス バイオレットの青春セラピー』(11年)、『ウォーム・ボディーズ』(13年)で脇でキラリと輝くキャラを好演。出会い系アプリを題材にした今どきのコメディ『きみといた2日間』(14年)ではマイルズ・テラーの相手役を堂々と務めている。
ジョーイ・キングは、児童文学のベストセラー「ビーザスといたずらラモーナ」の映画化作『ラモーナのおきて』(10年)で主演に抜擢されたスーパー子役。「ダークナイト」三部作の最終作『ダークナイト ライジング』(12年)では一瞬の出演ながら物語の鍵を握るキャラを好演し、陶器人形を演じた『オズ はじまりの戦い』(13年)で共演したジェームズ・フランコとザック・ブラフから可愛がられており、ふたりの監督作の常連に。またティーン文学のベストセラーの映画化作『スターガール』の主演も決まるなど、次世代のエースとして期待されている。
つまり『ラブ・アゲイン』は、現在ではそれぞれ単独で主演を張る人気者が、一堂に会していた作品ということになる。だから本作が将来的に伝説のコメディ映画として語り継がれることになっても全然おかしなことではないのだ。
© Warner Bros. Entertainment Inc.
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テッド
2016.12.09
長谷川町蔵
子ども時代の大好きなものへの依存を未だに止められない人間は、爆笑しつつ心で落涙。「ブロマンス映画」を人間とぬいぐるみに当てはめた大ヒットコメディ。
1985年。友達がひとりもいない8歳の少年ジョンは、両親からクリスマスにテディ・ベアをプレゼントされて大喜び。(安直に)テッドと名づけたジョンはある晩、夜空の星にお祈りした。「テッドが言葉を喋れたら楽しいのに」
翌朝、ジョンはビックリした。テッドが「僕をハグして!」と話しながら抱きついてきたのだ。少年の祈りが起こした奇跡は全米に報じられ、取材が殺到して大騒動に!
そんなオープニングから始まる『テッド』は、しかしその大騒動を描いた映画ではない。物語は一気に27年後の現代へとジャンプする。今ではテッドは街中で歩いたり話したりしていても誰も驚かない”過去のスター”状態で、マリファナとテレビが何より好きなボンクラ・クマでしかない。
35歳になったジョンもサラリーマンとして地味な毎日を送っていたが、彼の方には誇れるものがあった。美女のロリーと付き合っているのだ。ロリーの方もジョンにはぞっこんなのだが、子どもの頃から一緒のジョンとテッドの間には入り込めない。遂に「私とテッドどっちを取るの?」とジョンに選択を求めてしまう。結果、テッドはジョンと別に部屋を借りてスーパーで働く自立の道を強いられることになるものの、相変わらず二人は仲良しなのだった。
そんなある夜、テッドの興奮した声に誘われたジョンはロリーとの約束をすっぽかして、テッド宅で開かれていたパーティでワイルドな時間を過ごしてしまう。それが原因でロリーに愛想をつかされたジョンはテッドとも仲違い。「お前のせいで俺の人生はメチャクチャだ!」はたして3人は元通りの関係に戻れるのだろうか…。
『テッド』は、30代男とテディ・ベアの友情を描いた、ありえないコメディだ。脚本と監督、そしてテッドの声の三役を担当したのは、セス・マクファーレンという人物で、これがハリウッド・デビュー作となる。とはいえ、彼のキャリアはそれなりに長い。73年にコネチカット州で生まれたマクファーレンは、名門美大「ロード・アイランド・スクール・オブ・デザイン」卒業後に『原始家族フリントストーン』や『チキチキマシーン猛レース』で知られる名門ハンナ・バーべラ・プロダクションに入社。アニメーターとしてキャリアのスタートを切っている。
そんな彼が飛躍を遂げたのは99年のこと。フォックステレビのコメディ番組「MADtv」で手掛けたアニメパートが局の上層部に認められ、自身が製作、監督、脚本、原画、声を務めるアニメシリーズ『ファミリー・ガイ』の放映を開始することになったのだ。これが大ヒットしたため、05年から『American Dad! 』、09年から『The Cleveland Show』もスタート。一時は3本のアニメをフォックステレビで放映する”ミスター・フォックス”として君臨していた(現在も2本が放映中)。
これだけならマイク・ジャッジやトレイ・パーカー&マット・ストーンといった才人たちが他にもいるのだけれど、マクファーレンのユニークなところはレトロ志向を併せ持っていること。彼は、フランク・シナトラをはじめとするジャズ・ヴォーカリストを偏愛しているのだ。その愛がこうじてジャズ・シンガーとしても活動を開始。フルバンドをバックにスウィングの名曲を歌いまくった11年のアルバム『Music Is Better Than Words』はグラミー賞のベスト・トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバムにノミネートされた。13年にはクリスマス・ソングを歌った『Holiday For Swing』、15年にも『No One Ever Tells You』も発表している。『テッド』は、テレビアニメとジャズ・ヴォーカルという不思議すぎる二刀流で活躍していたマクファーレンが、満を侍して発表したハリウッド・デビュー作なのだ。
彼は当初この作品をアニメとして構想していたそうだが、実写が可能になるまでCG技術の発展を待とうと考え直したらしい。その判断は正しかった。薄汚れたクマのぬいぐるみが、現実世界で毒舌を吐いたりマリファナ吸ったりセックスしたり(なぜかする!)している姿はそれだけで最高におかしい。ムーヴは完全にオッさんのそれだけど、元々テディ・ベアなので微妙に可愛いらしいという、バランス感も絶妙だ。
ジョンとの友情物語は、ジャド・アパトーが確立させたロマンチック・コメディの物語構造を男同士の友情に当てはめた”ブロマンス映画”からの影響大ではあるけれど、人間とぬいぐるみに当てはめたことで”少年はテディ・ベアと別れて大人の男になれるのか?”という新たな意味合いを物語に与えている。
主人公ジョン役は、アクション・スターのイメージが強いものの、『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』や『デート & ナイト』でコメディもイケることを証明していたマーク・ウォルバーグ(本作以降は『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』『パパVS新しいパパ』など、コメディ作はウォルバーグのキャリアにとって重要な柱となる)。またロリー役には、『ファミリー・ガイ』の声優としてマクファーレンと13年間も仕事をしてきたミラ・クニスが扮している。
ノラ・ジョーンズやライアン・レイノルズといったスターが本人役で登場するシーンも見どころではあるけど、それ以上にあのサム・ジョーンズが本人役で登場してストーリー上重要な役割を果たすことが本作最大のチェック・ポイントだろう。そもそもジョンがロリーとの約束をすっぽかしてテッドのパーティに行ってしまった理由こそ、「いま家でパーティを開いているんだけど、サム・ジョーンズが来ているんだ!」とテッドに言われたからなのだ。
ここで「サム・ジョーンズって誰?」という疑問が浮かんでくるかもしれない。答えは「あの『フラッシュ・ゴードン』の主演俳優」である。『フラッシュ・ゴードン』はもともと新聞に連載されていたスペースオペラ漫画で、あの『スター・ウォーズ』にも影響を与えたとされる古典作だった。80年には『スター・ウォーズ』人気に便乗する形で実写映画化されている。ところが古臭いストーリー(無理もない、原作が書かれたのは第2次大戦前なのだから)とチャチなSFXが災いして興行的に大失敗。主演に抜擢されたサム・ジョーンズはこれっきりで過去の人になり、今ではクイーンが担当したサントラ以外は話題にすらのぼらない黒歴史映画になってしまっている。
なのにジョンは子どもの時に観て以来、『フラッシュ・ゴードン』こそが史上最高の映画と信じて疑わない。だからパーティでサム・ジョーンズに会うと大興奮してしまう。これ以降の展開が笑える。映画のBGMはクイーンのサントラばかりになり、ジョーンズ本人が大暴れするのだ!
三十男のくせにテディ・ベアとツルみ、『フラッシュ・ゴードン』を愛してやまないジョンは確かに滑稽である。だが、もしそれらをもう少し格好良さそうなもの、たとえばアクション・フィギュアや『スター・ウォーズ』に置き換えたらどうだろう? 笑えないという人は多いのではないか? 子ども時代の大好きなものへの依存を未だに止められない人間は、皆ジョンと同類なのである。映画を観た者はそんな真実をマクファーレンからそっと教えられ、爆笑しながらも(心の中の)頬に涙が伝っていることに気がつくのである。
ちなみに映画の舞台は、マクファーレンが大学時代を過ごし、ウォルバーグの故郷でもある街ボストン。水族館やボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークといった実在の場所でのロケ撮影が、この破天荒なコメディにリアリティを与えている。
© 2012 Universal City Studios
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アメリカン・サマー・ストーリー
2016.11.15
長谷川町蔵
数あるティーン・コメディの中でも最高レベル!若者たちが本能と妄想の赴くまま珍騒動を繰り広げるアメパイシリーズ!!
その伝説は、人類が滅亡するはずだった1999年に始まった。「プロムまでに童貞を捨てようぜ!」そう誓い合ったジム、オズ、ケヴィン、フィンチの4人の高校生が本能と妄想の赴くまま珍騒動を繰り広げるティーン・コメディ『アメリカン・パイ』(以下、『アメパイ』)が公開されたのだ。
監督はこれがデビュー作のポール・ワイツ、脚本は新人のアダム・ハーツ、キャストはジェイソン・ビッグス、クリス・クライン、トーマス・イアン・ニコラス、エディ・ケイ・トーマスといったほぼ無名の若手ばかりだった。だが名もない才能は奇跡を起こした。映画は爆発的なヒットを記録したのだ。 ティーンを映画館に呼び寄せたのは、タイトルの由来でもある<悶々とするあまりナニをパイに突っ込む>を筆頭とする『ポーキーズ』(82年)真っ青な下ネタ・ギャグの数々だった。でも映画を見たティーンたちは、この映画の真の魅力が登場人物のキャラ造形にあることに気がついた。 主人公の4人や相手役の女子たちはもちろん、ショーン・ウィリアム・スコット扮する敵役スティフラーやベテラン・コメディアンのユージン・レヴィやジェニファー・クーリッジがそれぞれ演じたジムのパパ、スティフラーのママといった大人たちにまで至る描写の細やかさは、数あるティーン・コメディの中でも最高レベルのものだったのだ。 『アメパイ』は、公開当時やはり単なるエロコメという誤解を受けた『初体験リッジモント・ハイ』(82年)同様、リアルな心情を掬い取ったティーンエイジャー映画の傑作だったのである。そのことは『リッジモント・ハイ』の監督エイミー・ヘッカリングが『恋は負けない』(00年)でジェイソン・ビッグスとミーナ・スヴァーリのコンビを起用したことで証明されることになる。 そんな真の魅力を、キャストも無意識レベルで感じ取っていたことは、2年後の2001年に公開され、やはり大ヒットを記録した続編『アメリカン・サマー・ストーリー』で明らかになった。こちらはそれぞれの「初体験」から1年後、あまりいい目にあってなかった4人が「最高の夏休み」を過ごすべく湖畔のリゾート地へ向かうというものだったが、前作のキャストが一人も欠けることなく(ケヴィンの兄役として1分足らずのカメオ出演だったケイシー・アフレックすら再び顔を出す!)再集結しているのだ。 ストーリー的には、ジム役のジェイソン・ビッグスと前作では飛び道具的なキャラだったミシェル役のアリソン・ハニンガンがメインとなり、ふたりの絡みには前作になかった甘酸っぱさが漂っている。下ネタは前作以上にエスカレートしているにも関わらず、前作以上にウェルメイドな仕上がりなのは、ファレリー兄弟の愛弟子でもある監督J.B.ロジャースの功績かもしれない。 二作連続の大成功は、第一作の監督ポールとプロデューサーのクリスからなるワイツ兄弟を、『アバウト・ア・ボーイ』(02年)や『ニュームーン/トワイライト・サーガ 』(09年)などを撮るメジャー監督に押しあげた。ジェイソン・ビックスはウディ・アレン監督作『僕のニューヨークライフ』(03年)に、クリス・クラインはアクション大作『ローラーボール』(01年)に主演。また子役出身のイメージが強かったアリソン・ハニンガンはコメディエンヌとしての才能を開花させ、人気テレビドラマ『ママと恋に落ちるまで』(05〜13年)に出演し、お茶の間のスターになった。 中でも特筆すべきはショーン・ウィリアム・スコットの大躍進だろう。彼は圧倒的なスティフラー人気をバックに、『ゾルタン★星人』(00年)や『ぼくたちの奉仕活動』 (08年)といった他の映画でもスティフラー的キャラを演じ続け、演技というよりパーソナリティで売るスターになった。こうした出演作の中には、トッド・フィリップスの劇映画初監督作『ロード・トリップ』 (00年)がある。つまりあの『ハングオーバー!』三部作にも『アメパイ』の遺伝子が受け継がれているのだ。(※編成部注※トッド・フィリップスは「ハングオーバー」シリーズの監督を務めている) シリーズは、2003年に公開された『アメリカン・パイ3 ウェディング大作戦』で一旦完結した。ボブ・ディランの息子であるジェシー・ディランが監督を務めたこの作品には、クリス・クライン、ミーナ・スヴァーリ、タラ・リード、シャノン・エリザベスらが残念ながら不参加だったが ジムとミシェルの結婚式を題材にいつも以上の下ネタが炸裂。 特に、ゲイ・バーで踊り、エロいストリッパー相手のバチュラー・パーティーで大爆発。ついでに犬のウンコを喰って、老婆とセックスまでするスティフラーが大活躍が光る。かつての仲間たちはみんな社会に巣立っているのに、高校時代の栄光が忘れられずにで母校で職員として働いている哀愁っぷりもイイ。もちろん彼の天敵であるフィンチやジムのパパも健在で、好サポートを見せてくれる。 単なる完結編にしてはあまりに大ヒットしてしまった結果を受けて、製作会社はスピンオフ作をDVDオリジナルで製作することを急遽決定。2005年には第4作 『アメリカン・パイ in バンド合宿』 (監督は『キャント・バイ・ミー・ラブ』(87年)で知られるスティーブ・ラッシュ)が発表された。スティフラーの弟マットが、第二作に登場したブラスバンド部のサマー・キャンプに乱入して騒動を巻き起こすというこの作品は、劇場未公開作でありながら驚異的なセールスを記録した。 その2年後には、スティフラーの従兄弟の高校生エリックが、大学の名物である全裸マラソン大会(嘘のような話だが、ミシガン大学が実際に行っている男女全裸マラソン大会をモデルにしている!)に参加する『アメリカン・パイ ハレンチマラソン大会』 (監督は『スリープオーバー』(04年)のジョー・ナスバウム) 、大学生になったエリックが友愛会ベータハウスに入会し、エリートのギークハウスと低次元の抗争を繰り広げる『アメリカン・パイ in ハレンチ課外授業』(監督:アンドリュー・ウォーラー)が立て続けに発表され、ハードな下ネタギャグが展開されたのだった。 対して2009年の第7作 『アメリカン・パイ in ハレンチ教科書』では舞台が高校に戻り、第一作に登場した幻のセックス指南本を巡るドタバタが描かれるなど、初期三部作への回帰が試みられている。ちなみにこれら全ての作品にはユージン・レヴィが顔を出しており、『アメパイ』シリーズの精神的支柱を務めていたことも記しておきたい。 こうした伝説の到達点となったのが、2012年に公開された『アメリカン・パイパイパイ!完結編 俺たちの同騒会』だ。監督と脚本を手がけたのは、初期三部作とは無関係のジョン・ハーウィッツ&ヘイデン・スクロスバーグのコンビ。だが彼らは、初期三部作では端役だったジョン・チョーの人気を確立したコメディ『Harold & Kumar』三部作(04〜11年)の監督兼脚本家でもあり、このシリーズにはエディ・ケイ・トーマスもレギュラー出演しているのだ。つまり2人は『アメパイ』のスピリットを受け継ぐ男たちなのだ。なので本作では初期三部作のオマージュが全編にわたって展開されている。 また製作総指揮という名の同窓会幹事を任されたジェイソン・ビックスとショーン・ウィリアム・スコットの呼びかけが実ったのか、第二作以来、実に11年ぶりにメインキャスト全員の再登場が実現している。この異常なほど出席率が高い同窓会の乱痴気騒ぎを前にしたなら、『アメパイ』の歴史を知るオールド・ファンはもはや歓喜の涙を流すしかないのだ。
© 2001 Universal Studios - All Rights Reserved
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俺たちスーパー・ポリティシャン めざせ下院議員!
2016.10.02
長谷川町蔵
バカ対バカによる、史上最低の選挙選!!でもこの光景ってどこかで見た記憶が…?
米国南東部のノースカロライナ州。カム・ブレイディ(ウィル・フェレル)は、5期目の当選が確実視される民主党下院議員。その人気をもってすれば、副大統領も夢ではないと言われていた…女癖が災いしてセックス・スキャンダルを巻き起こすまでは。
彼を支援してきた大企業モッチ・グローバル社のオーナー、モッチ兄弟は、このカムの破廉恥行為に激怒。代わりに地元の名士の次男坊ではあるけど出来が悪いことで有名なマーティ・ハギンス(ザック・ガリフィアナキス)を共和党候補として担ぎだす。かくしてバカ対バカによる、史上最低の選挙戦が開始されることになったのだった。
だがモッチ兄弟の真の狙いは、州内に、中国人が時給50セントで働く<米国内中国>を認める法案を通すことにあった。はたしてボンヤリしているにもほどがある二人は、モッチ兄弟の黒い野望を食い止めることが出来るのだろうか…。
2012年に全米公開されて大ヒットを記録した『俺たちスーパーポリティシャン!目指せ下院議員』で描かれる選挙戦は、コメディ映画だから当然なんだけど笑っちゃうほど最低のものだ。大物議員であるはずのカムは、具体的な政策は一切語らず、「アメリカ! キリスト! 自由!」「強いアメリカが復活する!」と連呼するばかり。マーティがパグを飼っているのを知ると「中国の犬を飼っているから、アイツは共産主義者だ」、ヒゲを生やしているのを見ると「アイツはアルカイダの仲間だ」とディスりまくる。
対するマーティも、カムが小学生のときに作った架空の国家レインボーランドを描いた童話をネタに「外国を愛する奴はアメリカから出ていけ!」と口撃し、自分の妻と浮気をしたカムをライフルで撃って支持率を急上昇させるのだから最低だ。
でもこうした光景って、どこかで見た記憶はないだろうか? そう、あらゆる演説が相手を貶めることに費やされた2016年の米国大統領選挙である。「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン(アメリカを再び偉大にする)」というあまりに漠然としたキャッチフレーズのもと、「メキシコとの国境に塀を作る(しかも費用はメキシコ持ち)」という実現不可能な公約を掲げ、「ヒラリー・クリントンがISISを作った」「オバマはアメリカで生まれていない」という嘘を公然と主張したドナルド・トランプと、カム&マーティは生き写しのようではないか。本作は、未来の大統領選を予言した戦慄すべきSF映画でもあるのだ。
だがこの<予言>は決してまぐれ当たりしたものではない。というのも、本作に関わったスタッフや俳優は政治への造詣が深い奴らばかりなのだから。
たとえば監督のジェイ・ローチ。『オースティン・パワーズ』と『ミート・ザ・ペアレンツ』の両シリーズで有名な男だけど、08年に撮ったテレビ映画『リカウント』は00年の大統領選におけるフロリダ州の投票集計について描いたシリアスな群像劇だった。
当時ジェブ・ブッシュが知事を務めていたフロリダ州では不可解な集計が各所で行われていて、もし正確に行われていたら共和党候補ジョージ・W・ブッシュ(ジェブの兄である)ではなく、民主党候補のアル・ゴアの方が大統領になっていたかもしれないと言われている。
ローチにとって『俺たちスーパーポリティシャン!』は、得意のコメディ映画ではあると同時に、『リカウント』続編としても見れる政治ドラマなのである。ちなみにローチの目下の最新作は、政府から赤狩りにあった実在の映画脚本家ダルトン・トランボの生涯を描いた伝記映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(15年)だ。
原案のアダム・マッケイは『サタデー・ナイト・ライブ』のライター出身で、同時期に出演していたウィル・フェレルと二人三脚でキャリアを築いてきた監督兼脚本家だけど、リーマン・ショックを背景に置いた『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(10年)あたりから社会派の側面を見せはじめてきた。
本作を経て作り上げた監督作『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15年)は、リーマン・ショックそのものを描いた濃厚な群像ドラマである。この作品でマッケイは庶民の生活を蔑ろにする金融資本、そしてそれをバックアップする政府への強い憤りを表明している。
そんなマッケイと長くコンビを組むウィル・フェレルも、かなりリベラルな思想の持ち主だ。自ら書き下ろし、ブロードウェイで上演した戯曲『You're Welcome America』では、『サタデー・ナイト・ライブ』時代から得意とするジョージ・W・ブッシュのモノマネをフル活用して、彼の失政を鋭く批判。またマッケイと共同で主宰するコメディ・サイト「Funny Or Die」では、これまでも性差別や同性愛嫌悪へのアンチを表明するビデオが数多く発表されており、2016年にはドラルド・トランプを茶化しまくった『The Art Of The Deal』(トランプを演じたのはジョニー・デップ!)が発表されている。
残るザック・ガリフィアナキスも一見何も考えていないように見えて、実は滅茶苦茶リベラルな男だ。なぜならガリフィアナキス家はノースカロライナ州で代々政治に関わっている一家として有名で(彼のおじさんは本当に下院議員だった)、『俺たちスーパーポリティシャン!』自体、彼の持ち込み企画なのだから。
つまり最高のコメディの作り手であると同時に、政治に多大な関心を持つ男たちが集まったからこそ、本作はとことん笑えるのと同時にぞっとさせる風刺劇に仕上がっているというわけだ。
最後に本作の悪役モッチ兄弟について触れておきたい。実は彼らにもモデルが存在する。石油や天然ガス関連の事業で天文学的な収益を上げる巨大企業コーク・インダストリーズのオーナー、コーク兄弟がそれだ。
日本で有名でないのは非上場企業だから。兄弟ふたりの資産を足すとビル・ゲイツのそれを上回るというトンデモない大富豪である彼らは、議員たちに多額の献金を行うことで、大企業への減税や環境汚染の規制緩和など行ってきた。
そんな彼らは近年、アメリカという国をより自分たちに有利なように作り変えるために、ある運動を影で後押ししていることでも知られている。政府のあらゆる規制や福祉政策を廃止し、政府の機能を最小限にする「ティー・パーティー運動」がそれだ。ティー・パーティー運動は、「お偉いさんだけがウマいことをやっている」と考えていた白人労働者階級を惹きつけ(実際は規制や福祉が無くなったら最も困るのは彼らなのだが)、一大ムーヴメントを起こし、特に共和党は半ば乗っ取られつつあるのが現状だ。もっともコーク兄弟にとっても、元々金持ちのためで他人の金では動かないトランプの登場は誤算だったようで、今回の選挙では積極的に共和党を応援してはいなかったようだが。
ちなみにモッチ兄弟の弟を演じているのがダン・エイクロイドなのは、彼がフェレルにとって『サタデー・ナイト・ライブ』の大先輩である以上に、『大逆転』(83年)の主演俳優のひとりだから。この作品でエイクロイド扮するエリート青年ウィンソープは、大富豪デューク兄弟によって、ホームレスの黒人青年バレンタイン(演じていたのは若き日のエディ・マーフィ)と立場を交換させられ、散々な目に遭う。当初ウィンソープはバレンタインを恨んでいたものの、終盤にデューク兄弟の陰謀を知ってバレンタインとタッグを組んで戦いを挑んでいく。つまり、エイクロイドの出演は、本作のクライマックスの展開を予言しているのだ。
TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.
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俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク
2016.09.14
長谷川町蔵
コメディ界のドル箱スター、ウィル・フェレル。彼が最低で最高の迷キャラクター「ロン・バーガンディー」を生み出すまで。そして規格外のカメオ出演の嵐を見逃すなかれ!
70年代後半のサンディエゴ。ローカルテレビ局のキャスター、ロン・バーガンディーは仲間の野郎どもと和気あいあいとニュース番組を作って、我が世の春を謳歌していた。だが才能と野心に満ちた女性レポーター、ヴェロニカが入社したことで状況は一変する。自分たちの無能ぶりがバレそうになったロンは、「このままでは俺たちの立つ瀬がない!」と、彼女にいやがらせをして追い出そうとするが、逆にキャスターの座を失う羽目に。果たしてロンはかつての栄光を取り戻すことが出来るのだろうか?
『俺たちニュースキャスター』は、老舗お笑い番組『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』で、90年代後半にエースとして活躍していたウィル・フェレル(主演&脚本)と、ヘッドライター(脚本家グループのリーダーで番組のかじ取り役)だったアダム・マッケイ(監督&脚本)のコンビが、番組卒業後に取り組んだ本格的な映画進出作だった。フェレルとマッケイは本作のアイディアを、ネットワーク局で最初のアンカー・ウーマンになったジェシカ・サヴィッチの自伝を読んでひらめいたという。70年代のサヴィッチは、ローカル局でキャスターを務めていたのだが、当時のテレビ局は超マッチョな世界で、ネットワーク局のアンカー・ウーマンになる夢を語ると笑われたというのだ。
そんな本に感銘を受けたのなら、普通は女性を主役にするところだろうけど(事実この本をベースに、96年にミシェル・ファイファー主演で『アンカー・ウーマン』という映画が作られている)、流石『SNL』でトップになる奴らは発想のレベルが違う。敢えて<才能ある女子をバカにするマッチョな性差別主義者>の方を主人公にして、それをフェレルが演じるというアイディアを思いついたのだ。
こうして最低で最高の迷キャラクター、ロン・バーガンディーが誕生した。まるでバート・レイノルズのようなワイルドな口ヒゲを蓄え、真っ赤なスーツに身を包んだロンは、未だに一度もリバイバルしたことがない70年代後半のイカれたセンスを体現したかのような男。しかもキャスターとしての才能はゼロで、見当外れの言動を繰り返し、興に乗るとフルートを吹きまくるのだ! 『SNL』の大先輩マイク・マイヤーズが扮した60年代の化身、オースティン・パワーズが、実はオシャレなのと比べるとマジでダサすぎる。でもこれが逆にウケた。イイところがひとつもないのに何故か憎めないロンになりきることで、フェレルはダサさを突き抜けたクールなコメディ・スターになったのである。
全くの私見だが、フェレルはこうしたキャラ造形術をベン・スティラーから学んだのではないだろうか。コメディ番組の5分間のスケッチと、上映時間が90分以上にも及ぶコメディ映画は同じお笑いでも全くの別モノだ。いくら笑いのコンセプトが良くても、その裏に人間性が感じられないと映画の観客は飽きてしまう。マイヤーズほどの天才コメディアンが、『オースティン・パワーズ』以降ヒット作を生み出せなかった理由もそこにある。
『SNL』在籍時に『オースティン・パワーズ』に脇役でゲスト出演したフェレルは、こうした問題点に気づいたのだろう。別の手本を探すようになり、その結果スティラーと共演した『ズーランダー』の中にヒントを見出したのだ。あの作品の<栄光の頂点に君臨して得意顔だった主人公が、才能が無いのがバレてドン底まで落ち、そこから何とか這い上がろうと頑張る>という基本プロットは、『タラデガ・ナイト オーバルの狼』(06年)や『俺たちフィギュアスケーター』(07年)といった以降のフェレル主演作の多くに共通するものだ。
前作から9年の歳月を経て、『俺たちニュースキャスター 史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク』で、フェレルがロン・バーガンディーを再び演じた理由のひとつは、ここいらでこの路線の集大成的な作品を作りたいとフェレルとマッケイが考えたからに違いない。
今作の舞台は1979年のニューヨーク。前作のラストでヴェロニカと共同でネットワーク局のアンカーマンに就任したロンが、ひとりクビになってしまうところから物語は始まる。失意の日々を送る彼のもとに、新規開局する24時間ニュースチャンネル、GNNからキャスター就任の誘いが舞い込む。
喜んだロンは、サンディエゴ時代の仲間を集めて番組に臨むが、担当の時間帯は午前2時から5時という、誰も観ていない時間帯だった。だがメゲないロンは「視聴者が聞くべきことを伝えるのではなく、彼らが聞きたいことを伝えるんだ」と政治的に偏向したニュースを放映したり、カーチェイスの中継を延々行うことで記録的な高視聴率を獲得していく。
GNNという名前自体は、1980年に開局したCNNのパロディだけど、むしろ本作の笑いの対象はフォックス・ニュースの方に向けられている。1996年に開局したフォックス・ニュースは、国際的な問題(視聴者が聞くべきこと)を多く報道するリベラル色が強いCNNに対し、保守的なアメリカ人のプライドをくすぐるような内容(彼らが聞きたいこと)を意識的に報道。リベラル派を「アンチ・アメリカ」とディスり、大統領選では共和党候補を熱烈に支持することで、あっという間にナンバーワン・ニュース局にのし上がった。フェレルとマッケイは、そのコンセプトを知性ゼロのロンが考えついたことにすることによって、強烈な批判を浴びせているのだ。
一見アホなギャグを追求し続けてきたかに見えるフェレルとマッケイだが、実はかなりのリベラル派。政治的なメッセージは、刑事アクション『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(10年)あたりから表面化しはじめ、政治そのものを描いた『俺たちスーパー・ポリティシャン めざせ下院議員! 』(12年)で一層深まった。『史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク』も作品としてはあくまでその延長線上にある。
ちなみに本作の後、マッケイは初めてフェレル主演作ではない映画を監督したのだが、その作品こそが、リーマン・ショックの裏側を描いて評論家にも絶賛された『マネー・ショート 華麗なる大逆転 』(15年)だったりする。アカデミー賞脚色賞を獲得した同作のプロトタイプは『史上最低!?の視聴率バトルinニューヨーク』にあるのだ。
また本作はある種の同窓会映画でもある。第一作で、挙動不審なお天気キャスターを怪演したスティーブ・カレルや、モテ男の屋外レポーターを演じたポール・ラッドは、当時はまだスターと言える存在では無かった。プロデューサーを務めたジャド・アパトーに至っては殆ど仕事が無い状態。しかし『ニュースキャスター』で手応えを感じた彼らは『40歳の童貞男』の製作へとなだれ込んでいった。その後の活躍はここに書くまでもないだろう。そんな彼らが本作でフェレルとマッケイのもとに帰ってきた。全編にパーティ・ムードが漂っているのはそのためだ。
こうしたパーティ・ムードにさらに輪をかけているのが大量のカメオ出演だ。ざっと紹介するだけでも、ハリソン・フォード、ドレイク、サシャ・バロン・コーエン、カニエ・ウエスト、ティナ・フェイ、エイミー・ポーラー、ジム・キャリー、マリオン・コティヤール、ウィル・スミス、リーアム・ニースン、ジョン・C・ライリー、キルスティン・ダンスト、そして第一作にも顔出ししたヴィンス・ヴォーンが登場する。映画ファンなら、誰がどのシーンに出るのかを固唾を飲みながら観るのも一興だろう…まあ、その固唾は笑いで吐き出してしまうだろうけど。
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